今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、松鳥むうさんです。
イラストレーターの松鳥むうさんは“ちょこちょこ歩く”イラストレーターということで、“ちょこ旅”という本のシリーズを出してらっしゃいます。その最新号が「ちょこ旅 小笠原&伊豆諸島編」なんです。今回はそんな松鳥さんに、小笠原など島旅のお話をうかがいます。
※まずは、“ちょこ旅”とは、どんな旅なのかうかがいました。
「この本に書かれている旅では安く済ませて楽しむというのがベースとなっています。」
●では、“ちょこちょこ歩く”という意味での“ちょこ旅”というわけではないんですか?
「あ、それもあります!(笑)」
●(笑)。ということは、色々な意味が含まれているんですね。
「そうですね。そもそも、私が車や原付バイクに乗れないから徒歩か自転車しか移動手段がないのと、お金がそれほどあるわけではないからなんですけど、“安上がりでも色々とやりたい”という想いから、こういう旅をしているんです。」
●今回の本には、そんな“ちょこ旅”がたくさん掲載されているんですね。松鳥さんはいつごろから、このような旅を始めたんですか?
「二十歳のとき、初めて屋久島に行ったときが初めてで、そのスタイルで色々なところを旅したことをフリーペーパーにして、フリーマーケットでイラストを売っていたときに配っていたのが始まりです。そのフリーペーパーを見た編集者さんが『これを本にしないか?』ということで、本にしたという感じですね。」
●初めての屋久島の旅って、どんな旅だったんですか?
「まだ学生で関西に住んでいるときに行ったんですが、お金がなかったので、夜行電車に乗って九州まで行って、そこから青春18きっぷで鹿児島まで行って、そこからフェリーで屋久島に行くという、学割か青春18きっぷで行けるルートで行きました。屋久島に着いたら、まず宿を探したんですが、当時はまだネットが普及されていないときだったので、役場で宿リストをもらって、その中で一番安い宿を探したら、素泊まりの宿があったので、そこにしたんです。そこは、みんなで話すことができるスペースがあるので、夜は泊まっている人と“三岳”というお酒を飲みながら盛り上がってましたね。
それまでは“旅”というと家族旅行しかしたことがなかったんですけど、一人で旅をしたら、旅先で友達ができるというのが楽しいし、屋久島もよかったので、そこから“島”と“安い宿”を一緒に巡るようになりました。」
●私も屋久島に行ったことがあるんですけど、旅をしている人同士で仲良くなりますし、現地の人とも仲良くなれる雰囲気があって、島旅って、それならではの楽しみ方ってありますよね。
「みんな島に来ただけでテンションが上がるんで、余計ですよね(笑)」
●(笑)。それからずっと島ばかりを旅しているんですか?
「私は島が好きなので、一人旅では島が中心ですね。沖縄や小笠原、伊豆諸島に行ってます。」
●行くときは大抵一人ですか?
「そうですね。一人ですね。」
●なぜ一人にこだわっているんですか?
「島を旅するときは、一人で行った方が、周りの人が声をかけてくれるんですよね。そうすると、現地の人と話しやすくなったり、島の人たちと仲良くなったりするので、コミュニケーションのキッカケを作るには、一人旅の方が多いと思って、一人で旅をしてますね。」
●旅をするときは、何か目的をもって行くことが多いんですか?
「本を書く目的な場合は、見たいものとかをあらかじめ決めていきますが、個人で行く場合は、屋久島の場合は縄文杉が見たかったですけど、基本は“その島に行きたい”という気持ちだけで行くので、特に見るものとかは決めていかないですね。なんとなくの情報を得て“この島はいい!”っていう感覚があったら、それで行くことが多いです。むしろ、私は何もない島の方が好きだったりするんですよね(笑)」
●(笑)。なぜ、何もないところの方が好きなんですか?
「観光地があると、みんなそこに行くじゃないですか。だから、島の人と話したいと思ったら、観光地がないところの方が『ここには観光地がないのに、何で来たの?』って聞かれたりするので、キッカケ作りがしやすいんですよね。それに、観光客がそれほど来ないので、結構話してくれる人と出会うと、すごく仲良くなれたり、いつの間にか島を案内してもらったりすることがあるので、何もないところの方が好きですね。」
※伊豆諸島は小笠原諸島と同じ東京都の島。住所は東京都になります。伊豆諸島は伊豆大島から孀婦岩といわれる岩まで、百ほどの島で構成されていますが、人が住んでいる島は本土に近い順に“伊豆大島”“利島”“新島”“式根島”“神津島”“三宅島”“御蔵島”“八丈島”“青ヶ島”の、全部で9つの島になります。そんな伊豆諸島の中から、まずは松鳥さんが一番好きな青ヶ島の特徴についてうかがいました。
「“二重カルデラ”といって、断崖絶壁の外側に山があって、真ん中にプリン型の山があるという地形があるんですけど、それを島の一番高いところから見ると、二重カルデラと周辺にある海が見渡せるんですよね。しかも、青ヶ島って観光地じゃないから、人がほとんど来ないので、その景色を好きな時間に行っても独り占めできて、叫ぼうが何しようが自由なんですよね(笑)」
●(笑)。叫んじゃいましたか?
「叫ぶより飛び込みたくなりました(笑)。真ん中の山が、緑のプリンみたいであまりにもふわふわに見えて、『飛び込んでも大丈夫じゃないか』と思っちゃったんですよね(笑)」
●(笑)。でも、そのぐらい美しい自然景観なんですよね?
「そうですね。それと、小さい島で船などがなかなか来ないところなので、人の出入りが少ないんですね。だから、島の人たちのコミュニケーションがしっかりしているので、私みたいな知らない人が来たら、みんな声をかけてくださるんですよ。なので、“人と話せる”のと“景色がいい”の二点で、青ヶ島が好きな島の上位にきますね。」
●その青ヶ島って、東京都なんですよね?
「東京です。車は品川ナンバーです。同じ東京都ですけど、環境とか全然違うんですよね。東京って、ビルばっかりじゃないですか。でも、ちょっと外に出たら、住所が同じ東京都なのに、火山が動いてたりするところがあるんですよね。三宅島も火山が噴火して真っ黒になってしまっているところがあるんですけど、それが、緑に変わっていく変遷が、東京都の島で見られるというのが、すごいなって思うんですよね。」
●そうですよね! 今回の本の中で、伊豆七島の生き物のことも書いてましたよね?
「伊豆諸島で一番ビックリしたのは、御蔵島ではドルフィンスイムができるんですね。沖縄の海って、エメラルドや水色のイメージがあるんですけど、伊豆諸島の海は、濃いブルーで結構透明なんですね。東京湾を見ていると、向こうも汚いっていうイメージがあると思いますが、大島の海ですらすごくキレイで、南下すればするほどキレイになっていくんですよね。
御蔵島にはイルカが住んでいるので、カナヅチでシュノーケルも浮いてるぐらいしかできない私でも、イルカが向こうから寄ってきますし、泳げる人はイルカと一緒に泳いだりしてるんですよね。それが東京でできるので、水族館よりも迫力がありますよ。」
※松鳥さんは東京から船で25時半かかる小笠原にすっかりハマってしまったようなんですが、水が苦手だった松鳥さんは、小笠原でこんな風に変わったそうです。
「私は、泳げないのと、水が顔にかかるのが嫌いなので、沖縄に行ったときも、水着を持っていかずに、膝まで入って海を眺めてただけだったんですけど、小笠原に行くことなったとき、友達が『小笠原に行ったら、イルカと泳がないと意味がない!』とか『小笠原の海に入ったら、人生観が変わる!』って言うんですよね。そうすると気になってきて、『小笠原の海に入ったら、何かが変わるんじゃないかな?』って思い始めたんですよ。
でも、イルカと泳ぐにはシュノーケルができないとダメなので、現地に行って、『初なんですけど、マンツーマンで教えてくれるところありませんか?』って聞いたら教えてくれて、そこで練習をしました。最初は全然できなかったんですけど、次の日にはスタッフさんのサポートありでドルフィンスイムに参加したら、今まで見ていなかった世界がそこには広がっていて、『中ってこんな景色なんだ!』って驚きましたね。」
●人生観は変わりましたか?
「それからシュノーケルぐらいはできるようになりました。魚と一緒に泳ぐといったことが楽しく思えるようになってきたので、旅の幅が広がりました(笑)」
●(笑)。それも小笠原の海の力ですね! だって、それまでは沖縄に行っても泳ごうと思わなかったんですよね!?
「全然(笑)。『海は見るもんだ』って思ってましたからね(笑)」
●小笠原の海はすごいですね!(笑)
「今では、『小笠原に行くけど、泳げないんだよね』っていう子がいたら、『いや、それでも入った方がいい! スタッフさんに『泳げないけど入りたい』って言って、入らせてもらった方がいい』って言いますね(笑)」
●すごく説得力がありますね(笑)。他に、小笠原で印象に残っていることってありますか?
「小笠原には、ザトウクジラが繁殖のために来るんですけど、私はザトウクジラを海の中で見たんですよ! 船長が『イルカがいるんで、入っていいですよ』って言ったんで入ったら、イルカじゃなくてザトウクジラがいたんですよ。それを見た瞬間に、『もういい。お腹いっぱい!』って思いましたね(笑)。大満足でした(笑)」
●(笑)。それぐらい存在感が大きかったですか?
「小笠原のホエールウォッチングって、他のとは違って、クジラが目の前でジャンプをしたり、船のすぐそばに来たりして、すごく近くで数多く見ることができるんですよね。運もありますけど、一回のツアーで十頭ぐらい見れたりします。それを海の中で見てしまうと、クジラがさらに大きく見えるんですよね。うまく言葉で表現できないんで、実際に見てほしいですね(笑)」
●(笑)。今回の本の中でも、その様子がイラストで紹介されているんですが、その絵もページから飛び出すぐらいの大きさなんですよね! 私もその絵を見て、どんな感じだったのかが分かりました。
「生で見ると本当すごくて、興奮のあまり、横にいた知らない人を叩いてました(笑)」
●(笑)。クジラもそうですけど、小笠原の自然って、スケールが大きいですよね。
「大きいですね。海の中も下まで透明なんですけど、底が見えないんですよね。イルカを追いかけてシュノーケルで中に入ると、イルカと私が宇宙にいる感じがするんですよ。小笠原の海の色を“ボニンブルー”って表現されるんですが、それが一面に広がっていて、私とイルカが宇宙の中にいる感じがするんですよね。そのぐらい、小笠原の海が大きすぎて、小さい悩みごととかどうでもよくなってくるんですよね。」
●それは是非行ってみたいですね。
「25時間半の船旅も、行ってみたらあっという間ですよ(笑)。乗るまでは『どんだけ長いんだろう』って思ってたんですが、乗っている人と喋ってたりお酒を飲んでたりしてたら、あっという間に着きましたね(笑)」
以前、ダイビングで海に潜った時に、空を飛んでいるような感覚になったことはあるんですが、松島さんのおっしゃっていた宇宙の中にいるような感覚はまだ味わったことがないので、ぜひ一度、小笠原のボニンブルーの海の中で体験してみたいですね!
アスペクト/定価1,500円
松鳥さんのちょこ旅シリーズの最新号となるこの本には、小笠原や伊豆諸島などで体験したことなどが、可愛いイラストと手書きの文章で綴られています。島までの交通手段やイラスト・マップ、お店の情報なども掲載されていますので、旅のガイドブックとしても使えます。
現在、モンベルの各店舗で「ちょこ旅原画展全国ツアー」を開催中。首都圏では、2013年1月12日(土)から26日(日)まで、町田にあるモンベル・グランベリーモール店で開催予定となっています。
松鳥さんの詳しい情報などはオフィシャルサイト『よろず屋*むう』をご覧ください。シンプルかつかわいらしいサイトとなっていて、サイトからブログにも飛んでいけます。