今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、北山陽一さんです。
ゴスペラーズの「北山陽一」さんは、環境問題に造詣が深く、環境gooというサイトで“ぼんやり学会”というコラムを、2008年7月から連載されています。そこで今回は北山さんに、環境や健康、そして東日本大震災の被災者支援活動についてうかがいます。
※北山さんは、お母さんの影響や、使用済み核燃料の再処理工場がある六ヶ所村にほど近い、青森県八戸市出身ということで、高校生の頃から環境に関心を持ち、慶応大学・環境情報学部で学ばれています。そして現在はゴスペラーズのメンバーとして音楽活動のかたわら、環境gooというサイトで“ぼんやり学会”というコラムを2008年7月から連載され、環境や社会に関して、色々なメッセージを発してらっしゃいます。北山さんは“環境は人間を取りまくすべてのものだ”とおっしゃっていますが、まずはそのへんのことを、詳しくお話いただきました。
「環境問題やエコっていうと、“環境を守らないといけない”とか、環境を地球に置き換えて、“地球が人間にいじめられている”というイメージを持っている人が多い気がしているんですけど、僕はそれは大きな間違いだと思っているんですね。例えばなので、いじめるつもりとか全然ないので、普通に答えてほしいんですが、何で地球に優しくすると思いますか?」
●地球に優しくすることで、直接的ではないけど、自分にも優しくすることができるからじゃないですかね。例えば、地球が温暖化によって悪い方向にいっていったら、自分の生活も悪くなってしまうんじゃないかと思うから、優しくしようとするんじゃないでしょうか。
「そうですよね。だから、みんな地球を人に見立てて、“優しくすれば優しくしてもらえる”と思っているということですよね。それもいいことなんですけど、僕は実際はそんなに甘くないと思っているんですね。“地球のために優しくする”というのは、自分たちが継続的に繁栄するために優しくするという捉え方なので、その捉え方自体にはそれほど気にしていないんですが、“地球のために”という言葉のもう一歩先に進む人もいるんですよね。
そもそも“地球のため”っていっても、地球というのは、人類がいようがいまいが、生態系があろうがなかろうが地球なんですよね。『地球が死んでしまう』っていう人がいますけど、“地球が死ぬ”ということがどういうことなのかを、もうちょっとよく考えてほしいんですよね。
要するに、何が言いたいかというと、広い意味で環境問題に取り組んで、解決しようとしている人たちって、生態系がこれからも持続するように努力すべきだと考えている人たちだと思いますが、それって、結局は自分たちのためなんですよ。『環境にいいことをしよう』とか『地球にいいことをしよう』といったようなことにすることで、いきなり自分の生活から離れてしまうんですよね。離れた方が後々切り捨てやすくなるので、最初からブームが起きて、ブームが終わることを見越しているんじゃないかと思うんですね。僕のコラムでも書いてますけど、これだけ分業が進んだ社会の中だと、自分が日常生活に感じられてるものだけで生きられるわけですよね。でも、実際はそれを支えるために、たくさんの人が色々なことをやっているじゃないですか。その部分を見なくても生きていけるわけだけど、その部分を考えることが、自分の環境を捉えるということになるんですよね。むしろ、自分の環境をしっかりと捉えないと、自分の環境をキープできないんですよね。
“環境にいいことをする”って、何かいいことをするとか、何かいいことをするのを考えるのではなくて、自分がどういう状況にあるのかを捉えることが一番大切だと僕は思っています。」
※北山さんは、個人的に気になったことがあれば調べたり、自ら取材にも出かけています。自分の出したゴミがどう処理されているのかを知るために、品川区の清掃工場やリサイクルの再生工場にも見学に行ったそうです。北山さんが強く関心を持ち、同時に疑問に思っているのが、“ペットボトルのリサイクル”。アルミ缶やスティール缶は原材料から製品にするよりもはるかに少ないエネルギーでリサイクルできますが、ペットボトルはリサイクルするためには、多くのエネルギーを使うことが分かったそうです。そんなこともあって、北山さんはペットボトル入りの飲み物は買わない、もし買ったとしたら、ペットボトルは、リサイクルするのではなく、燃えるゴミとして出すことにしたとおっしゃっています。
「『それって、自治体の取り組みから外れてませんか?』って言われてしまったら、『すみません』って言うしかないんですけど、僕はそういう風にしてます。どうしてかっていうと、それは気持ちよさの問題なんですよね。リサイクルと一口に言っても、“リサイクルはできますか?”という質問と“リサイクルはできてますか?”という質問は別なんですよね。リサイクル法をよく見てみると、収集したペットボトルを専門業者に引き渡した時点で、法律的にはリサイクルが成立するんですよね。だから、引き渡した後はどうなったのかって、チェックする必要がないですし、誰もしてないんですよ。
じゃあ、実際にどうなっているのかというと、例えば、家ペットボトルを処理するときに、時間と労力を消費して、ラベルを剥がして、キャップを取って、中を洗って、ペットボトルとプラスチックゴミとなるキャップとラベルを分けてゴミを出しているじゃないですか。ペットボトルの再生工場に見学に行っていただければすぐ分かるんですけど、そこにはゴミとなったペットボトルを積んだトラックがどんどん来るんですね。到着したら、すぐそのペットボトルを荷台から下ろされるわけですけど、それを見た瞬間に、それが住宅街から来たのかどうかがすぐ分かるんですよね。僕が最初に見学に行ったとき、最初に来たトラックが住宅街から来たものだったんですけど、荷台が下ろされたペットボトルが真っ白でキレイなペットボトルたちだったんですよ。そのとき、『みなさん、ちゃんとやっているんだなぁ』って感激したんですけど、四台目ぐらいに来たトラックの荷台から下ろされたら、色々とりどりのペットボトルが出てきたんですよ。『これはどこから来たものなんですか?』って工場の人に聞いたら『これはコンビニから来たものですね』って言うんですよ。
コンビニに限らず、商業施設にあるゴミ箱のゴミって、分別の作業をされることなく収集されてくるんですね。じゃあ、最初からゴミが分けられてるのかっていえばそうではなく、最初は同じところに溜められるんですね。そこからベルトコンベアーで運ばれるんですけど、僕が見たときは八人ぐらいの作業員がキャップやラベルを剥がしながら、分別しているんですよ。僕はそれを見て『何か違和感があって嫌だな』って思ったんですね。だって、その作業員の作業にもお金が支払われていて、誰が払っているんだろうって考えたら、比率の問題はあるにしろ、公共事業なので、税金から支払われてるところもあると思うんですね。結果的に色々なことがあって、うまく処理されて、ペットボトルから何になるかというと、一センチ×一センチぐらいのペットフレークと呼ばれる繊維の原料になるんですね。
ペットボトルをリサイクルすると、ペットボトルになると思っている人が多かった時期があったみたいですが、日本に二つぐらいの工場があって、そこで実際にやってみると、採算が合わずに閉鎖されてしまったんですね。なので、結果的にペットフレークができたんですけど、それをどうするかというと、入札で売り出されるんですよ。日本で精密に作られたことによって質がよく、さらに、収集などで税金を使っていることで、安価なペットフレークをどこが買っていくのかというと、中国のぬいぐるみ工場が買っていくそうなんですね。ペットボトルの再生工場で働いてる人がそう言うんですよ! 日本で消費されて、“リサイクルのために”と“少しでも資源を役立てよう”という気持ちで、みんなが一生懸命分別をしたり、税金を支払ったりしたものが原料となって、違う国の工場に安く売られ、それによって、ぬいぐるみとなって世界中に流通している。確かに、大きな意味でリサイクルをしていると思って、気持ちいいと感じられる人がいれば、問題ないと思いますが、僕は納得がいかなかったんですよね。」
※・・・というのがペットボトルに関しての北山さんの考え方なんですが、ペットボトルは「容器包装リサイクル法」で企業にリサイクルが義務づけられています。
その法律の内容についてはここでは触れませんが、ペットボトルも、国内での再商品化を前提とし、住民や市町村の努力で集められています。その一部が海外に輸出されている。そこに疑問を感じるのは北山さんだけではないと思いますが、みなさんはどう考えますか?
ペットボトルの回収量や再商品化について詳しくは「日本容器包装リサイクル協会」のホームページをぜひご覧ください。
※北山さんは環境gooのコラム“ぼんやり学会”でも書かれていますが、1999年11月にレコーディングの技術を学ぶためにアメリカのアトランタに行ったとき、有名な女性ヴォイス・トレーナーから一日だけレッスンを受けたそうです。そのとき、トレーナーから食事制限を勧められ、三ヶ月経つと細胞が入れ替わり、その人が元々持っている声になると言われたそうです。そこでゴスペラーズのメンバー全員、トレーナーの指示通り、豚肉、牛肉、乳製品、カフェイン、アルコールをきっぱり止め、三ヵ月間トライしてみたそうです。
「結構厳しめですよね。三ヶ月やれということですけど、11月からですから、忘年会シーズンを前にスタートしたんですよね(笑)」
●一番辛い時期に始めたんですね(笑)。
「ゴスペラーズのメンバーも『どうしたものかね?』って言いつつ、とりあえず熱めのお湯をいただいてたりしてたんですが、僕らが沈痛な感じだと、周りのスタッフはお酒が飲めないじゃないですか。せっかくの忘年会シーズンに、飲まないっていうのもどうかということで、『僕らは盛り上がるだけ盛り上がろう!』ということで、そのときはそれで楽しくやってましたね。
その三ヶ月が終わったときに僕らのツアーがあったので、いつものスタッフに僕らのパフォーマンスを見てもらうことになるんですね。そのトレーナーからは『調子がよくなるかどうかは、その人次第』って言われてたんですけど、正直、辛いんですよ。僕個人としては別にいいんだけど、やっぱりお酒も飲みたいし、僕は洋菓子が大好きで、ケーキバイキングに一人で行くような男なので、『できれば、元の生活に戻りたいな』って思うわけですよ。この食事制限って自己申告制なので、特に変わりがないって思ったら、元の生活に戻れるんですけど、やっていくうちに、自分で思っていた以上の効果がでているなって実感してたのと同じように、スタッフから『北山さん、全然違います!』って言うんですよ。
そうなってくると、引くに引けなくなってきたので、三ヶ月終わったときの解禁日を最後に、基本的には続けています。ただ、最初の三年はすごく厳しくやってきて、メンバーやマネージャーにすごくプレッシャーをかけてしまったので、そこから徐々に緩めています。」
●今はどんな感じで行なっているんですか?
「例えば、最近は忙しくて消費できていませんが、繰り越しなしで、月に一杯だけとんこつラーメンを食べていいとか、年に五枚の“24時間禁酒解禁カード”があって、それを使うと、使用してから24時間はお酒を飲んでいいといったような緩め方をしてますね。」
●それ以外は今まで通りという感じなんですね?
「そうですね。ただ、それ以外にもトレーナーから言われたルールがあるので、自分が元々持っていた栄養摂取バランスから禁止されたものを抜いていくと、バランスが崩れるんですよね。それで一度体調を崩してしまうんですが、『最初の三ヶ月は必ずやる』と言われていたので、そこから体調を再構成していくにあたり、色々な実験をしていくんですね。例えば、食事のときに一口百回噛んでみるとか、今だと小麦を抜いているんですけど、そういった色々なことを自分の体で実験して、自分に最適な食生活を見つけようとしています。
最初は辛かったですけど、緩め方も含めて、自分でバランスが取れるようになってくると、食事制限が楽しくなってくるんですよね。ここで、最初の話に戻るんですけど、“環境から自分を作る”わけですよね。自分の原料って何なのかって考えたら、“飲み物と食べ物と空気”ですよね。それって環境から生まれてくるもので、それを取り入れて自分のものにしますよね? それをどうやって、どんなものを取り入れるのかによって、次の自分を作り上げるので、そこでいいものを適切に取っていかないと、自分の思ったようなパフォーマンスが出ないんですよね。僕たちは自分の体が楽器なので、『ちょっと調子悪いから、メンテナンスに出しておいて』っていうわけにはいかないわけですよ。だから、自分の体を思ったように奏でるためには、自分である程度運動をして、自分の体をコントロールするのと、ステアリングを切ったり、アクセルを踏んだりして、車を整備するように、自分の体を整備する必要があるんですよね。そこに気づけたのは、すごくラッキーだなって思ってます。」
※北山さんは、東日本大震災の復興支援の一環として“ハタチ基金”に協力されています。一体、どんな基金なのでしょうか?
「これは、元々は“カタリバ”というNPOをやっている今村久美さんという、僕の大学の後輩が、東日本大震災を受けて『何ができないか?』ということで、彼女なりにたくさん考えた結果、作った基金なんです。僕は、このネーミングが素晴らしいと思っているんですね。また、この基金は、“震災のときに生まれた子どもがいたとしたら、その子が二十歳になるまで支援していく”という考え方なんですよね。ネーミングのセンスと彼女の熱意に心を打たれて、『何か一緒にできることがあったら、やっていきたい』と彼女と話をして、今でも頻繁に連絡を取り合ったりしてます。
彼女のすごいところは、基金を立ち上げただけじゃなく、最初は女川町に行って、今は大槌町に住んで、現場で色々な支援活動をしているんですよね。彼女は『次の日本を作るのは、被災した地域の子どもたちだと思っているんです。彼らをどう導くかにかかっているんです』と言ってるんですね。なぜかというと、子どもたちに作文を書かせると、ほぼ例外なく“誰かの役に立ちたい”“社会の役に立つ人間になりたい”って書くんですね。そういうことって、全国どこを探しても、そんな地域はないと思うんですよね。そこに今エネルギーがあって、子どもたちの心が燃えてるんですね。
心が燃えてる子どもたちって、可能性がすごく秘めているので、色々なキッカケを正しく提供するだけで、一気にガラッと変わるんですよね。震災前の町や村の状況を考えると、そういうにならなかったような子どもたちが、人の役に立つために、何をすればいいのかを自分で分かってきているということを聞いていますので、これからが本当に楽しみですし、僕もそういう組織を作って、関わっていこうとしています。」
●それが、“Always with Smile”なんですね?
「そうですね。僕はゴスペラーズのメンバーなので、音楽の分野で何かしていくのが筋だと思っていて、試行錯誤を繰り返したんですね。結果として、“アカペラでできることを探すのが自然だ”と思ったんですね。ハモると、自然と仲間になるんですよね。歌いたい子どもたちを集めて一緒にハモって、うまくハモれたときって、子どもたちの顔が輝いて、仲間感がすごく出るんですよね。
よく、色々なゲームをして、打ち解けようとする“アイスブレイキング”ってあるじゃないですか。歌に抵抗がない子どもたちであれば、ハモるだけで、その効果があるんですよね。そういうことも使っていきたいなと思っています。アカペラは、人がいたらできるんで、人数さえ揃えばどこでもできるし、大体人数が揃いやすいんですよね。そうすると、『何か手伝わせてほしい』って言いやすくなるので、アカペラはそういった面でも効果が高いと思っていたので、アカペラを口実に、ハモることで仲間になれるということをすごく感じたんですね。仲間になれば、仲間だから、誰かのことをイメージできるじゃないですか。そういう繋がりが強くなっていったらいいなと思っていて、今回の震災のことで、継続的に支援をしようと思っていると、東北以外でも色々な関わりができてくると思うんですね。
アカペラって、一人一人の責任が重いので、結束力が高まりやすいんですよね。もし、そういうネットワークが日本中にできれば、どこかで何かがあったときに、『お前、大丈夫?』って、その人の顔を思い浮かべることができるんですよ。それってすごいことですよね!」
北山さんはゴミ問題に本当に造詣が深く、地域によるゴミの回収・処理方法の違いについても色々と教えていただきました。自分たちで処理場に行き、細かく分別しながらゴミを出す地域もあるそうですよ。私も少し気になって、自分が住んでいる地域でどんなゴミ処理が行われているのか調べてみたんですが、地域でリユースできる物を冊子にしていたり、色々な取り組みがなされていて、とても興味深かったです。今まで環境問題というと、難しく、大きく捉えていましたが、これからは北山さんがおっしゃっていたように、まずは日常生活で感じられる“身近な環境”から考えていきたいと思います。
Ki/oon Music/KSCL-2143/定価3,100円
ヒット・シングル『STEP!』、『It's Alright~君といるだけで~』も収録されたゴスペラーズの1年5ヶ月ぶりとなる最新アルバム。どれも聴きごたえのある極上のアルバムです! また、このアルバムに収録されている『astro note』は、北山陽一さんが作曲を担当されています。
Ki/oon Music/KSCL-2190/定価1,020円
2013年1月30日にリリースされるニュー・シングル。“極上のラブ・バラードに仕上がっている”というこの曲は、2013年2月から全国ロードショー公開される『きいろいゾウ』の主題歌となっています。
ゴスペラーズは現在、全国ツアーの真っ最中。2013年3月まで続きますので、是非チェックしてみてください(会場によってはチケットがSOLD OUTになっていることもあります)。
その他、ゴスペラーズの詳しい情報については、オフィシャルサイトをご覧ください。
北山さんは、“環境goo”というサイト内にある“My Life,My style”というページで『ぼんやり学会』というコラムを連載しています。ゴスペラーズの北山さんとはまた違った一面が見られますので、是非チェックしてみてください。
今回のお話にもあった“ハタチ基金”とは、北山さんの大学の後輩である今村久美さんが立ち上げた東日本大震災支援基金で、“東日本大震災で被災した子供たちが自立した20歳へと成長するように支援していく”をコンセプトに活動しています。
それに感銘を受けた北山さんが立ち上げた『Always with Smile』では、“アカペラでハモることで、たくさんの仲間を作り、助け合っていく”ということを目的として活動しています。
いずれも、詳しいことを知りたい方は、ホームページをご覧ください。