2013年2月16日

たくましく生きる日本の野生動物

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、飯島正広さんです。

飯島正広さん

 写真家そして映像作家の飯島正広さんは、世界をフィールドに、野生動物の撮影を30年以上続けてらっしゃいます。そんな飯島さんは先頃、誠文堂新光社から「365日出会う大自然 森に住む動物」という本を出されました。今回はそんな飯島さんに、日本の森に住む動物のお話をうかがいます。

ガラパゴスよりも多い日本の固有種

●今週のゲストは、写真家、そして映像作家の飯島正広さんです。よろしくお願いいたします。

「よろしくお願いいたします。」

●飯島さんは先日、新刊となる「365日出会う大自然 森に住む動物」を出版されました。この本は、日本の森に住む哺乳類を1月から12月まで月毎に分けて紹介しているんですよね。

「そうですね。私たちはカメラを持って森の中を歩いているんですが、そこで見た一年間の出来事を、日記的に、撮影できた動物を見ていただきたいというのと、動物の生態が分かるような文も載せたのが、今回の本になります。」

●動物を365日追っていると、それぞれの日で色々なドラマがあると思いますが、どうでしたか?

「私は群馬県の山の中に住んでいるんですね。東京から動物たちがいるところに行くのとは違って、自分の家の周りにいるので、毎日カメラ持って歩いているんですけど、毎日新たな発見があるんですよ。そういうものを今回の本にまとめました。」

●まさに、“動物たちの暮らしぶりに密着!”といった感じですね。

「そうですね。365日ずっと森の中で暮らしていると、色々な出来事があるんですよ。それをこの本で見ていただければと思います。」

●海外と比較して、日本の森はどうですか?

「日本は小さな国ですが、固有種が131種類と、たくさんいるんですよね。この数って、110種類の固有種がいるガラパゴスより多いんですよね。」

●ガラパゴスより多いんですか!?

「特に、陸生のものに限定すると、39種類いるんですよ。これは緯度的に北から南まで環境が違うというのもありますが、他の国と比べると多彩だと思います。これは非常に面白いところだと思いますね。」

●この本を読んでいて、1番感じた点がそこでした。

「北海道にいる固有種と沖縄にいる固有種は違うので、色々な顔が日本にいるだけで見れると思うんですね。その姿を、この本で見ていただければと思います。」

●飯島さんは今回、様々な野生動物を撮影されたかと思いますが、今回の本の中で印象に残った動物はどれになりますか?

「この本には、昔撮影した動物も入っているんですが、なかなか撮影できない動物の方が多くて、モグラの赤ちゃんを撮影するのに5年かかりましたね。巣がどこにあるのか分からないんですよ。それに関する秘密も、この本に書いていますので、是非見ていただければと思います。」

飯島正広さん

前回ご出演していただいたときも、モグラの話を少ししていただきましたが、新宿御苑にもいるんですよね!

「面白いですよね! そこだけじゃなく、都内のいたるところで見ることができるんですが、何をやっているのか分からないんですよね。見方をちょっと変えるだけで、モグラだけじゃなく、色々な動物を都内で見つけることができるんですよ。そういう面白さを色々な人に知ってもらいたくて、この本を作りました。」

●モグラに関してですが、今回の本にも掲載されているんですが、“泳いでるモグラ”の写真があるんですよね!?

「田んぼが水没したようなときに、泳いでるモグラの風景を見ることができるんですけど、鼻だけ出した状態で、犬かきのような泳ぎ方で、非常に早い速度で泳ぐんですよ。陸に上がると一目散に穴を掘り出して、地面に潜ろうとしますね。」

●鼻を少し出して、一生懸命泳いでる姿が本当に可愛いので、是非見てもらいたいですよね。

「『モグラって本当に泳ぐの?』って思うような写真も載せたので、是非見ていただければと思います。」

タヌキは大胆!

※続いて、身近な野生動物“タヌキ”のお話をうかがいました。

「タヌキの漢字“狸”を見ていただければ分かると思いますが、“里の獣”ですよね。タヌキは私の家のスタジオに毎日出てくるんですが、結構大胆なんですよね。それに比べてキツネは非常に神経質で、警戒心が強いんですね。なので、キツネとタヌキが戦っても、タヌキの方が強いですね。」

●そうなんですか! キツネの方が強そうなイメージがありました!

「キツネの場合、単独で出てくることが多いんですが、タヌキは子育てが終わる秋ぐらいまでは、家族単位で生活しているので、“みんなでいれば怖くない”じゃないですけど、数で戦いますね。見ていると非常に面白いですよ。」

●タヌキはどんなものを食べているんですか?

「タヌキは雑食なので、私の家の周りにいるタヌキだと、人間の生活空間にいるので、農家が作っている苗にいるネズミを食べたり、柿が落ちていたらそれを食べたり、春先には田んぼでカエルを食べてますね。だから、動物や植物など、何でも食べます。なので、割と人間の目につきやすいんですよね。」

●あと、動物たちの子育てを見て、飯島さんはどういったことを感じますか?

「“たくましい”の一言に尽きますね! いかに人間がか弱くて、守られているかというのがよく分かりますよ。人間に比べて、日本の森に住んでいる動物たちが、いかにたくましいかを感じますね。動物たちにとって、子育てってすごく大変なんですよ。エサを取ってくるだけでも大変なのに、そんな中で動物たちが子育てをしている姿を、今回の本に入れています。」

●たくましい姿といえば、“リスの引越し”がありますよね。

「あれも、いつやるのか分からないんですよね。リスって、巣をいくつか持っているんですが、なんで巣を変えるのかというと、長く使っているとダニなどの小さな虫が出てきて、暮らしづらくなってくるんですね。リスを見ていると、体をかいたりしているんですけど、その理由は恐らく小さな虫が原因だと思うんですよね。それを防ぐために、子育てのときに、子供を口にくわえて運ぶんですよ。ただ、それがいつやるのか分かればいいんですが、それが分からないので、朝から晩まで一日中、リスを驚かさない位置でずっと見ているんですよね。
 そして、出てきたら出てきたで、運ぶスピードが速いんですよ! しかも、地面を移動するのではなくて、枝伝いに移動するときもあるので、枝に葉っぱがあると見えなかったりするんですよ。なので、運ぶ姿を撮るチャンスは一瞬なので、自分がいる位置がいいかどうかによりますよね。距離は、森にもよるんですけど、150~200メートルぐらい運ぶんですね。しかも、一番最初に運び出すときって、その巣に子供が入っているのか分からないんですよ。メスが入っていってるから、恐らくいるんだろうという予測は立てられるんですが、リスはフェイントをかけるために、他の巣に出入りするときがあるんですね。なので、どこの巣に入っているのか、正確には分からないんですよ。でも、複数ある巣の中で、出入りする回数が最も多い巣に子供がいるんだろうなっていう予想は立てられるので、そこで待つしかないんですよね。」

飯島正広さん

●その奇跡的に撮れた写真が入っているんですね。

「あの大きなリスの子供をくわえて、しかもジャンプして木の上を渡っていくんですよ。それを見てると、子供を落とさないかとヒヤヒヤするんですよね。」

●出会うコツってあるんですか?

「出会うなら、時間をかけるしかないと思うんですね。この本の最後にも書いているんですが、動物の足あとだったり、イノシシやシカが木につけた傷、ツキノワグマが柿の木につけた爪あとなどを見ながら森の中を歩いているんですよね。また、木の穴の周りをかじってたりすると、近くにムササビがいるという証拠なので、夜に来てムササビを待つんですよね。実際に来たら、それが本物かどうかを見て、確認が取れたら、動物たちを驚かさないようにして、撮影できればラッキーですね。こういう風にしてても、出会えないことの方が多いんですよね。」

●それだと、今回の写真を撮るのに、どのぐらいの期間をかけたんですか?

「こういう撮影を30年近くやってきているんですが、その日々の蓄積ですね。これまでの経験から、季節的なことは分かっているので、季節ごとでどこに行けばどういう光景が見られるのか予測できるので、それを撮りたいときには、その前後で見られる場所に行くんですね。
 とはいえ、行っても環境が変わっていて、そのときは見ることができないといったことはよくありますね。行ったところが埋め立てられていたり、森が伐採されてたりするんですよ。そうなると、動物たちが真っ先に追い出されるんですよ。この狭い日本にこれだけ多彩な種類の動物がいるということに気がついてほしいですね。例えばネズミだって色々な種類がいますし、モグラだって色々な種類がいるんですよ。そんな様々な種類が日本の中にいるって思うだけでも嬉しくなってくるし、この本を見て、それに気がついてくれれば嬉しいですよね。」

レンズを通して動物を見ていたい

※飯島さんの新刊に載っているモグラとキノコの興味深い関係について話していただきました。

「京都大学の名誉教授である相良教授がいるんですけど、この方は“キノコの大先生”で、モグラとキノコの関係を解き明かした、非常にユニークな研究を発表されたんですよね。“モグラとある特殊のキノコが共生している”という内容なんですけど、その先生に『一緒に発掘に連れていってくれませんか?』と手紙を書いたんですよね。
 先生は、研究のために巣を取ったりするんですけど、モグラは同じところに同じような巣を作るんですよね。その場所がよほど居心地がいいのか分からないんですけど、以前とほぼ変わらないところに作るんですよ。しかも、1000枚の葉っぱを使って、人間の頭ぐらいの巣を作るんですよね。その横に、ある特殊のキノコが出てくるんですよね。これももちろん、先生の協力がなかったら撮影できませんでした。その辺りの話も、写真と共に今回の本に書かれていますので、是非とも見ていただければと思います。」

●今後、見てみたい・撮ってみたい野生動物っていますか?

「実は今、日本のモグラとネズミの全種の図鑑を作っているんですね。既に4年かかっているんですが、まだ撮れていない種類が2種類いるんですよ。そこまで珍しいというわけではないんですが、北海道にいる種類と、南アルプスにいるトガリネズミの仲間がまだ撮れてないですね。トガリネズミの仲間は、去年からずっと通っているんですが、他の種類は撮れるものの、それだけは撮れないんですよね。その種類と他の違いって、シッポがちょっと短いっていうだけなんですよ。その2種類を是非、今年中に撮りたいなと思っています。」

●飯島さんをそこまで駆り立てる、野生動物に対する情熱って、どこからくるんですか?

「写真を撮ることが仕事なので撮るんですが、それ以前に、動物を見ていたいんですよ。山の動物は多彩だし、行動も面白いので、見ているだけで面白いんですよね。そういう姿をレンズを通して、みなさんに知っていただければと思っています。ほとんど姿を見せてくれないですけど、同じ日本に生息している動物を見ていただきたいという気持ちで撮影をしています。」

●アナザーワールドじゃないですけど、私たちが見えている世界はほんのわずかで、その裏にはまだまだ知らない世界が広がっているんですね!

「そうなんですよね。そういう世界を一つ一つを、動物の邪魔にならない範囲で撮影していけば、色々な人に伝えられるんじゃないかと思いますね。同じ日本に住んでいる仲間ですから、そういうことも考えてもらえると嬉しいなと思います。」

飯島正広さん


(この他の飯島正広さんのインタビューもご覧下さい)

YUKI'S MONOLOGUE ~ゆきちゃんのひと言~

 たくさんの野生動物を撮り続けてらっしゃる飯島さんに、「日本では絶滅したとされている“ニホンオオカミ”と“ニホンカワウソ”がもし見つかったら、撮ってみたいですか?」と質問してみたのですが、「ニホンカワウソに関しては、まだいる可能性もあるので、ぜひ撮ってみたい」ということでした。私も、あのかわいい風貌とワイルドな性質のカワウソが大好きなので、是非、ニホンカワウソの姿を飯島さんに写真に収めてほしいです。

INFORMATION

「365日出会う大自然 森に住む動物」

新刊
365日出会う大自然 森に住む動物

 誠文堂新光社 / 定価2,520円

飯島さんの新刊となるこの本には、今回のお話にも出てきたモグラやタヌキ、リスなど、身近な動物たちの写真が満載。飯島さんだからこそ撮れた素晴らしい写真ばかりです。動物たちに対する飯島さんの飽くなき好奇心や愛情を感じる本です。

オフィシャルサイト

 飯島さんのオフィシャルサイト「アジア・ネイチャー・ヴィジョン」には、最新の写真もたくさん掲載されています。気になる方は、是非ご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. PICTURE OF YOU / BOYZONE

M2. WONDERLAND / SIMPLY RED

M3. NATURAL ANIMAL / ECHOBELLY

M4. HERE,THERE AND EVERYWHERE / THE BEATLES

M5. YOU’RE ONLY HUMAN(SECOND WIND) / BILLY JOEL

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」