今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、関健作さんです。
ブータン写真家の関健作さんは2007年から2010年までの3年間、青年海外協力隊の体育教師としてブータンの小中学校で体育を教えてらっしゃいました。滞在期間中は写真撮影にも力を入れ、ブータンの人々や風景を独自の視点でたくさん撮り溜め、帰国後は写真家として活動をスタート。現在は、ブータンの人々の生き方などを日本に紹介したり、ブータンに体育道具を送るなど、青少年の支援も行なってらっしゃいます。今回はそんな関さんを写真展会場に訪ね、お話をうかがってきたときの模様をお送りします。
●今週のゲストは、ブータン写真家の関健作さんです。よろしくお願いいたします。
「よろしくお願いいたします。」
●関さんの写真展を拝見させていただいたのですが、まず、子供たちの笑顔がすごく印象的ですね! あの笑顔を見ていると、心が温かくなって、目頭が熱くなるような感じがしました。
「ありがとうございます。」
●まず、ブータン王国はどういったところなのか説明すると、ヒマラヤ山脈の麓にある国で、国土は日本の九州ほど。人口は70万人ということですが、主要産業は農業なんですか?
「そうですね。国民の9割の方が農業をしていますね。」
●農作物は何を作っているんですか?
「お米やジャガイモなどを主に作っているんですが、“世界一料理が辛い”と言われているほど、ブータン人は唐辛子がすごく好きなんですよ。唐辛子は毎日食べるので、唐辛子は生活必需品ですね。」
●それって、日本の農作物と似ている気がしますね。
「基本的には似ていますね。風景も、田園風景がありますし、『日本に似ているね』って言う人が多いですね。」
●やっぱりそうなんですね。今回の写真展を見たときに、なんとなく懐かしい感感じがしたんですよね。
「特に年配の方から『懐かしいな』という意見をいただくことが多いですね。」
●ブータン人も日本人と同じモンゴロイドなので、日本人に似ていますよね。
「すごく似てますね。違和感なく溶け込めました(笑)」
●日本人である私たちも親しみをもてますよね(笑)。そして、ブータン人も親日家の方が多いんですよね?
「そうですね。大体のブータン人は日本人のことが大好きで、日本人だと分かったら、すごく仲よくしてくれますね。なぜなら、農業や教育の部分で、日本は昔からブータンに支援しているので、日本とブータンは仲がいいですね。」
●最近では、2011年の11月にワンチュク国王が美しいお后様と一緒に来日されましたよね。私も、ニュースで取り上げられていたので、記憶に残っているんですが、この来日は、昔からの親交があったから来てくれたのでしょうか?
「そうですね。昔からの支援のお礼を伝えたかったのと、特に2011年は震災直後だったので、“日本を元気にしたい”という想いから、来日されたと思います。」
●王様は日本で精力的に活動されていて、その姿が印象的だったんですが、関さんはどのように見ていたんですか?
「王様にはブータンでお会いしたこともありますし、来日したときにもお会いしたんですが、王様は国民からすごく愛されているんですよね。なぜなら、国民との交流を大事にする方なので、王様と国民との距離が近いんですよね。なので、国民から愛されているのはもちろんのこと、僕たちにとっても、それほど緊張せずに接することができる王様ですね。
ブータンでお会いしたのは、ブータンに唯一ある体育館で、王様が大好きなバスケットボールの練習の見学をしにいったときだったんですが、練習が終わったら、観客席にいる僕のところにまで会いにきてくれて、『君たちは、日本のボランティアですよね? いつも協力に感謝しています』という言葉をかけていただきました。」
※ブータンに3年間、体育教師として滞在した関さんですが、帰国してから写真家の道に進んだキッカケは何だったのでしょうか?
「元々ブータンが大好きで、ブータンにすごく興味があって、ブータンで体育を教えにいったんですけど、そのときにブータン人を撮影していたら、それがすごく楽しくて、カメラにハマってしまったんです。日本に帰ってきてからは体育の教員をやったんですね。教員って、教科書に載っているものを子供たちに教えていくんですが、それに魅力を感じなかったんですね。『これは自分らしくない。せっかくの人生、自分が楽しいと思える仕事をしたい』と思って、写真家になりました。」
●そもそも、ブータンに興味を持ったキッカケは何だったんですか?
「いくつかキッカケがあるんですが、大きなキッカケは、家族みんな登山が大好きで、小さいころから山に行ってたので、僕も自然と山が好きになったんですよ。そうなると、ヒマラヤやエベレストに憧れたんですよね。それで、ヒマラヤの国を調べているうちに、ブータンを知ったんですよ。ブータンはすごく平和で幸せな国ということで、『いつか行ってみたいな』と思っていました。」
●ブータンの山に登ったりしたんですか?
「休日は必ず山に登ってましたね(笑)。長い休みを取って、ヒマラヤを登ったりしてましたね。」
●どうでしたか?
「素晴らしすぎましたね。空気はキレイだし、7,000メートル級の山々を見ていると、拝みたくなるぐらい美しいですね。」
●関さんは2007年から2010年まで、体育教師として、ブータンの小中学生に体育を教えていたということですが、どんな授業をしていたんですか?
「僕が行った学校には最初、体育という教科がなかったので、『体育をやるぞ!』と言っても、『体育って何?』って、生徒や同僚から聞かれてしまったんですね。まさに一からのスタートでした。ブータンに行く前に想像していたのは、日本の体育を教えることだったんですが、それをやろうにも、まず道具がないんですよ。あるのは潰れたバレーボールが1つだけだったので、当然、日本の体育はできないですよね。なので、まずは、道具を使わないでできる運動や、ブータンって、景色はキレイなんですけど、結構ゴミが落ちているので、そのゴミを拾って、ボール状にして、そのボールに“ガーベッジボール”と名付けて、それを使った運動をしたりして、身の回りにあるものを使って、体育をやっていました。」
●子供たちとはどのようにしてコミュニケーションを取っていたんですか?
「僕は昔から言語がすごく苦手で、行く前は英検3級をギリギリ取れる実力しかなかったんですね。ブータンは英語も通じるところがあるんですが、現地の言語で“ゾンカ語”という言葉があるんですね。特に小さい子は、英語はダメだけどゾンカ語はオッケーっていう子が多いので、より現地の人たちとコミュニケーションを取りたかったので、ゾンカ語を勉強しました。」
●ゾンカ語はかなり習得されたんですね?
「そうですね。一日3時間ぐらい勉強したり、子供たちに『ゾンカ語を教えろ』といって、教えてもらってましたね(笑)」
●先生なのに、子供たちから教えてもらってたんですね(笑)。そのゾンカ語をいくつか教えてもらっていいですか?
「もちろんです!」
●例えば、「おはようございます」、「こんにちは」はどのように言うんですか?
「これは“グズザンポーラ”といいます。」
●“グズザンポーラ”ですか。これは朝・昼・晩問わずに使える言葉ですか?
「そうですね。いつでも使える言葉ですね。」
●あと、ご飯を食べるときに「いただきます」は、どういう風に言うんですか?
「『いただきます』は言わないですね。」
●言わないんですか!?
「言わずに食べちゃいます(笑)」
●(笑)。「ごちそうさま」も言わないんですか?
「言わないですね。」
●あと、よく使われる言葉やフレーズってありますか?
「よく周りの人から言われたのは“ガテジョニモ”っていう言葉ですね。これは『どこに行くの?』っていう意味なんですね。」
●それに対する返事はどんな感じなんですか?
「『散歩に行きます』という場合は、“シワジョニ”といいます。“シワ”が『散歩』で、“ジョニ”が『行く』という意味です。」
●となると、「○○に行く」というときは「○○ジョニ」っていう感じで言うんですね。割と濁音が多いですね。
「濁音だらけですね(笑)」
●(笑)。ゾンカ語の中で、日本語の発音に似ている言葉ってあるんですか?
「意外と、日本語と共通点が多いんですよ。例えば、数の数え方は“チ(1)”“ニ(2)”“スム(3)”“シ(4)”“ンガ(5)”“ドゥ(6)”“ドィン(7)”“ゲ(8)”“グ(9)”“チュタム(10)”というんですが、1から5まではすごく似てますね。」
●確かにそうですね! そういったところでも共通点を感じますね! ゾンカ語の中でも、関さんが好きな言葉ってありますか?
「“ガトト・キトト”という言葉があるんですが、これは“幸せと平和”という意味なんですね。」
●それはいい言葉ですね。
※ブータンにすっかり惚れ込んだしまった関さんなんですが、滞在中の生活はどうしていたんでしょうか。どこかの家にホームステイしていたのでしょうか?
「ホームステイではなく、1つの家が4つに区切られていて、その中の1つを借りて生活していました。なので、一人暮らしでしたね。」
●日本での生活の違いで、戸惑うことってありましたか?
「食事に困りましたね。先ほども話しましたが、ブータンの料理は“世界一辛い”と言われているので、最初の1ヶ月ぐらいは毎日腹痛でした。」
●1ヶ月ぐらいしたら、慣れたんですか?
「辛さには慣れました。」
●一人暮らしだったということなんですが、近所や周囲の人との交流はありましたか?
「ありましたね。特に、僕が行ったタシヤンテェという地域は、首都から車で3日かかるところにあるんですが、滞在してる間は、孤独を感じることはなかったですね。なぜなら、ブータン人は道を歩いていると、『どこ行くんだ?』『何しに行くんだ?』といった感じで、必ず声をかけてくるんですよ。だから、孤独を感じることはなかったですね。」
●なんでそんなに声をかけてくるんですか?
「興味があるというのと、人と話していたいからじゃないでしょうか。みんな結構のんびりしていて、時間にすごく余裕を持っているので、『話をしようじゃないか』という感じの人が多かったですね。」
●ブータンといえば、“国民総幸福量(GNH)”といって、“経済発展よりも国民の幸せが大事”という目標を掲げたことで世界的にも有名ですが、ブータンに滞在していて、それを感じましたか?
「ブータン人って、お祈りをすることを生活の一部としていて、朝・昼・晩、ずっとお祈りをしている人が多いんですね。特に、お年寄りの方がお祈りをしているんですが、そういう方に話をうかがったことがあるんですが、少年のようなキラキラした目をしながら、『私たちはすごく幸せだ』と言ってるんですね。話を聞いた人は80歳の方だったんですが、『なんで幸せなんですか?』って聞いたら、『昔は忙しくて、お祈りする時間がなかったけれど、今は朝から晩までお祈りすることができるんだ。それはすごく平和なことで、幸せなんだ』と話してたんですね。
あくまで僕の周りには、病気などで、将来に対して不安を持っているお年寄りの方がたくさんいるんですが、ブータンのお年寄りの方って、すごく幸せそうなんですよね。そういう人たちを見て、子供たちは育つので、将来への不安をあまり持ってないんですよね。そういうところで、国民総幸福量を感じましたね。ブータンの人たちは“輪廻転生”といって、人は生まれ変わると信じているので、『来世、いい生まれ変わりができるように、今世もいいことをしようじゃないか。今世で悪いことをすると、来世で痛い目を見るから、今はいいことをして、人に優しくして、来世もいい生まれ変わりをしようじゃないか』という考え方の人が多いですね。」
●私たちは、人と比較して、自分が劣っていたりすると、「幸せじゃないんじゃないか」と感じてしまうじゃないですか。ブータンの方は、そういったことはないんでしょうか?
「無いといえば嘘になると思いますが、日本よりかはそういった意識はすごく薄いですね。僕もずっとスポーツをやってきて、他者と比較をして、負けたら無価値みたいな価値観で生きてきたんですが、ブータンの人って、“自分は自分だ!”という考え方の人が多いので、自分なりの幸せを追求している人が多かったですね。」
●それは、仏教のお祈りからくるものがあるかと思いますが、他に、ブータンの雄大な自然がもたらしてくれる幸せというものもあるのでしょうか?
「もちろんあります! 空気がとてもおいしいし、景色はキレイだし、水が絶えず流れているという恵まれた環境なので、食べるものに困らないんですよね。なので、奪い合うというより、分け合う精神が根付いているので、そういったところに、自然の影響があると思いますね。農業もみんなで一緒になってやって、できた農作物も分け合って食べながら楽しんでるんですよ。それを見てると、すごく幸せそうでしたね。」
●そういう話を聞くと、私たちも学ぶところが多いですね。関さんが「この感覚は日本に持ち帰りたいな」と思ったことはありますか?
「“ブータン=幸せの国”ということで有名なので、ブータンの人たちに『あなたにとって、幸せって何ですか?』って質問したんですね。すると、『友達が幸せなときは私も幸せです』とか『お母さんが幸せなときは私も幸せ』とか『この世に生まれてきただけで幸せ』といった答えが返ってきて、すごく幸せの度合いが大きくて、ほんの些細なことに対しても、感謝してるんですよ。日本に帰ってきて思うのは、日本ってすごく恵まれていると思うんですが、その恵まれていることに対して、日本の人は気づいていなかったり、当たり前と感じていたりする人が多いなと感じましたね。」
番組の冒頭でもお話したのですが、関さんのブータンの写真は、子供たちのキラキラとした目と、その笑顔がとても印象的でした。日本の子供たちも、もっともっと笑顔になれる社会を、大人がどんな風に作っていかなければならないのか、関さんのお話を伺って、改めて考えさせられました。
関さんの写真展「Smile from Bhutan」は、2007年から2010年までの3年間、ブータンに滞在中に撮った写真と、2012年に行って撮った最新の写真の中から厳選した30点を展示。全国のモンベル・サロンで順次公開されますが、首都圏では3月9日から24日まで、南町田のグランベリーモール店で開催されます。入場は無料です。ぜひブータンの人々や子供たちの幸せな笑顔に触れてください。
その他の関さんに関する情報は、オフィシャルサイトをご覧ください。