今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、大垣文義さんと大西瞳さんです。
グリーンセイバーとは、NPO法人「樹木・環境ネットワーク協会」が行なっている検定試験及び資格のことで、以前、この番組でも取り上げたことがありますが、今回、改めて、その資格にフォーカス。一体どんな資格なのかを、「樹木・環境ネットワーク協会」の専務理事・大垣文義さんにうかがう他、実際にその資格を持ち、どのように活動を行なっているのか、NPO法人「南房総リパブリック」の理事としても活躍されている大西瞳さんにお話をうかがいます。
●今回は、グリーンセイバーをご紹介します。まずは、NPO法人「樹木・環境ネットワーク協会」の専務理事・大垣文義さんにお話をうかがいます。よろしくお願いします。
大垣さん「よろしくお願いします。」
●実は、この番組のスタッフでグリーンセイバーを取得している人がいて、私もすごく興味があるんですが、このグリーンセイバーが、いつ・どのような目的で作られた資格なんですか?
大垣さん「私どもの協会が民間団体として始まったのが1995年なんですが、そのときの立ち上げメンバーの一人に“山野忠彦”という人がいたんですね。この人は、全国の古木を治療していたんですが、彼がそれをしていたときの日本はバブル景気で、宅地や工業化、海岸の埋め立てなどで、日本の自然環境がどんどん失われていたんですね。『このままではいけない!』ということで、立ち上がった経緯があって、その際に、森づくり・人づくりの一環として“グリーンセイバー制度”を発足させたんです。それが1998年のことでした。」
●ということは、15年の歴史があるんですね。
大垣さん「そのころの日本に対する危機意識があって、森づくり・人づくりがスタートしたんですね。」
●これまでたくさんの方が受験して、たくさんの方が資格を取得されたかと思いますが、合格者はこれまで何人ぐらいいるんですか?
大垣さん「資格には3段階あるんですが、合計で3500人ぐらいですね。」
●資格には3段階あるということですが、どういったものがあるのか、詳しく教えていただけますか?
大垣さん「最初は“ベーシック”という段階がありまして、それよりもより専門的な段階として“アドバンス”があります。そして、それより上のレベルで、地方の緑のこととかも知った上で、周りの人に指導できる“マスター”というレベルがあります。」
●ちなみに、大垣さんはどの段階なんですか?
大垣さん「私は1998年にベーシック、その3年後にマスターを取得しています。」
●それぞれでセミナーなどがあって、それを受講してから受験するといった感じなのでしょうか?
大垣さん「そうですね。私の場合は、セミナーのことに気づいたのが遅くて、独学でやりましたが、セミナーは受講された方を見ていると、楽しそうですね。」
●独学の場合は、どういった流れで受験するんですか?
大垣さん「テキストを買って、それを読んだ上で受験する形になりますね。色々なやり方で受験することができます。」
●検定委員といった方はいらっしゃるんですか?
大垣さん「検定委員の方々がすごく特徴的な人たちなんですよね。“日本の植物学の父”といわれている“牧野富太郎さん”という方が江戸の末期から明治にかけていらっしゃったんですが、この方は日本で初となる文化功労者になったんですが、その次に植物学から文化功労者になったのが、この検定委員長の“岩槻邦男さん”なんですね。この方を委員長として、東京大学の同じ研究室の方を中心に、5~6名います。」
●その方たちに教えを請うことってできるんですか?
大垣さん「セミナーやスクーリングを受けたり、先生方で独自にイベントを開いたり、私どもの協会が主催するイベントなどに来ていただいたりしているので、チャンスは何回でもあります。」
●今、全国には3,500人のグリーンセイバーの方がいるということですが、活動しているフィールドはどういったところがあるんですか?
大垣さん「グリーンセイバーって一つの知識ですよね? その知識を使って、実際に里山を管理したり保全したりする場所は、岩手から和歌山まで14ヶ所あって、ボランティアやグリーンセイバーが、それぞれ独自で活動しています。」
●その活動の具体的な内容について教えてください。
大垣さん「今日は、千葉県南房総市で実際に活動している、マスターの資格を持っている“大西瞳さん”が来ていますので、彼女が詳しい話をしてくれると思いますよ。」
●ここからは、グリーンセイバー・マスターの大西瞳さんにお話をうかがっていきます。まず、大西さんは、グリーンセイバーの資格を取ろうと思ったキッカケはなんだったんですか?
大西さん「私は、ランドスケープデザインという、建物周辺の建物以外の空間の設計の仕事をしているんですが、グリーンセイバーとは真逆のことをしているんですよね。例えば、まっさらにした土地に建物が建ったとします。そこに新たに植物を植えて、環境を作っていくのが仕事なんですが、クライアントによって植える植物が決まるので、環境に即したものを植えるわけではないんですね。 そういうことをしていくうちに、『これはちゃんと考えた方がいいな』と思うことがありまして、そこで出会ったのが、グリーンセイバーだったんです。『知識をしっかりと持った上で設計をしていけば、酷くなることはないんじゃないか』と思いまして、この資格を取ろうと思いました。元々植物が好きだったので、そういう仕事をしているんですが、グリーンセイバーになったことで、知らなかったことも学べたので、よかったと思っています。」
●大西さんは現在、南房総をフィールドに活動されていますが、どういった活動をしているんですか?
大西さん「グリーンセイバーを取得してから、大好きな南房総で仲間と一緒に“南房総リパブリック”というNPO法人を立ち上げました。南房総は土地が非常に肥えていて、暖かくて、植物も豊かなのに、東京からそれほど遠くないところなんですが、どんどん荒廃していっているんですよね。それをみんなでなんとかしようということで、活動しています。
活動には、“里山保全”、“環境保全”、“農家さんへの支援”、“地域居住”があります。例えば、“里山保全”の部分だと、里山学校を開いて、里山の楽しさを子供たちに教えて、その面白さを知ってもらって、子供たちの興味を少しでも里山に向けることで、保全に繋げていくことをしています。」
●グリーンセイバーで学んだ知識は、その活動の中でどのように生かしているんですか?
大西さん「その活動の拠点で生活をしている農家さんがメインとなって里山学校を開いたんですが、地形図を見ながら山に入っていったんですね。そのときに『この話はグリーンセイバーを勉強しているときに聞いたな』とか植物に関わることや虫のこと、他の生き物のことなどを知る上で、非常に役に立っています。
NPOを立ち上げたメンバーは、もちろん南房総の人もいるんですが、私も含めて、ほとんどが東京在住の人なんですね。そんな私たちがどれだけ南房総が豊かで、私たちにとって面白味があるところなのか、少しずつ伝えていっているんですが、それが今の私たちの一番の課題だったりするんですね。地元の人たちともっと交流を深めて、教えてもらうことってたくさんあると思うので、色々な活動をやっていきたいと思っているんですが、現地の高齢化が進んでいる上にニーズも少なくなっているので、メンバーみんな忙しいけれど、少しでも一緒にやっていくことで、少しでもみんなの理解を得ようとしています。」
●これから、南房総をもっとよくするために、やってみたい活動や計画ってありますか?
大西さん「南房総リパブリックのメンバーの多くが建築家なんです。私は南房総の植物が豊かなのが楽しくて来ているんですが、建築家の人たちは『今の日本の林業の問題点について考えたい』ということで参加しているんですね。なので、間伐材を利用して森を守っていったり、元の森に戻したりするために、間伐材を使ったプロジェクトを、スタートさせようとしています。 今、建築や農業を学んでいる大学生と一緒に、コンペをやってみたりして、南房総の間伐材で作ったLVLという合板を使って拠点づくりをしながら、里山や農業をしている地域に必要なものができて、私たちとの繋がりの場を作っていくことができるのかを探しているところなので、是非とも色々な人に知ってもらったり、参加してもらいたいと思っています。」
●実は、私も6月2日に実施されるグリーンセイバーのベーシックの試験を受けようと思っているんですが、そこでアドバイスをいただきたいのですが、大西さんはどうやって勉強したんですか?
大西さん「ベーシック、アドバンス、マスターのそれぞれでテキストが2冊ずつに分かれているんですが、内容が非常にいいので、まず、この本を普通の本として読んでいただくといいかと思います。私の場合は、興味のあるものばかりの内容だったので、無理して覚えようとして覚えたわけではありませんが、知らない言葉が出てきたら、それを調べつつ、この本の内容をマスターすれば、試験には合格できますね。
ただ、普段忙しくて、ゆっくりと勉強する時間がなかなか取れない人は、セミナーを受講するという手もあります。これは、丸一日、二日間に渡って、先生方がテキストに沿ったお話をしてくれるんですが、自分たちの研究分野の話も散りばめながら話をしてくれたりするので、非常に面白くて、自然と頭に入って、試験に望めると思います。」
●実は、先ほどそのテキストの中身を見させていただいたんですが、ざっと見ただけでも、私には難しくて不安になったんですけど、セミナーを受講すれば、楽しく勉強できるんですね?
大西さん「そうですね。特に、私みたいに音で聴いた方が頭に入る人はその方がいいので、話を聴いていると、面白いと感じると思いますよ。先生方が研究してくれたことも散りばめて話してくれますし、そういった話はテキストの中には入っていないことなので、是非、参加してみてください。」
●不安ですが、頑張ります! ちなみに、資格には3段階あって、中でも“ベーシック”が覚えることがたくさんあって、大変だと聞いているんですが、それは本当ですか?
大西さん「“ベーシック”って基礎のことを学ぶんですね。例えば、植物って茎があって葉っぱがあって、花が咲き、実ができるじゃないですか。その茎や葉っぱの中の仕組みを学んだり、生き物全般の基礎的なことを学べるので、覚えることが多いというより、基礎的なところをしっかりと学んでおけば、それより先は難しくないかと思いますね。
あと、日本人って、季節と植物と一緒に生活をしてきたので、そういう文化的な歴史とかも出てくるんですね。なので、環境を広範囲に渡って学ぶことができるので、それほど難しく考えなくていいかと思います。」
勉強をする事自体が久しぶりな私…。合格出来るのか今から不安ではありますが、大西さんもおっしゃっていたように、楽しみながら学んで、6月には皆さんにいい報告ができるように頑張りたいと思います。植物や生態系に興味がある方は、私と一緒に受験を検討されてみてはいかがでしょうか?
今回ご紹介したグリーンセイバーの資格検定試験が、6月に実施されます。その前に、初級にあたる「ベイシック・コース」のセミナーが、小田急線の参宮橋駅近くの「国立オリンピック記念・青少年総合センター」で開催されます。今回のお話で、受けてみたいと思われた方は、是非ご参加ください。
◎日程:4月20日(土)と21日(日)
◎定員:50名
◎受講料:一般・17,000円、会員と学生・15,000円
樹木・環境ネットワーク協会では随時、活動をサポートしてくださる会員を募集しています。個人会員で年会費5,000円です。活動内容なども含めて、詳しくは、樹木・環境ネットワーク協会のホームページをご覧ください。
大西さんは、NPO法人・南房総リパブリックの理事としても活躍されています。南房総の豊かな自然を利用した里山学校や市民農園、そして、目黒区でコミュニティ・カフェ「洗足カフェ」を運営されるなど、南房総と東京を結ぶ個性的な活動を行なっています。詳しくはホームページをご覧ください。