今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンは、習志野市にある「谷津干潟自然観察センター」の取材リポートをお送りします。谷津干潟は今でこそ、鳥獣保護区や湿地を保護するための世界的な条約“ラムサール条約”に登録されていますが、今から40年ほど前は、不法投棄のゴミとヘドロに覆われた悲惨な状態だったそうです。そんな谷津干潟の再生のきっかけとなった人が、以前番組でもご紹介したことがある森田三郎さん。子供のころに遊んだ、きれいな干潟を取り戻したいという思いで、たった一人でゴミを拾い始めたそうです。周囲の奇異な目を気にしながらも、長年辛抱強く活動を続け、いつしか地域住民の協力を得られ、干潟の再生につながったということなんです。そんな谷津干潟がラムサール条約に登録されて今年で20周年を迎えます。そこで先日、「谷津干潟自然観察センター」にお邪魔して、レンジャーの「井坂紗弓」さんに干潟のことや、飛来する水鳥のことなどうかがってきました。
●今回は、谷津干潟自然観察センターの取材リポートをお送りします。今回お話をうかがうのは、谷津干潟自然観察センターのレンジャー、井坂紗弓さんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします。」
●私はここに来るのは初めてなんですが、谷津干潟を見てビックリしたのが、周りは住宅街なんですよね。
「そうなんです。驚かれる方が多いんですが、周りは住宅地や学校、道路などで囲まれているので、池や湖のような雰囲気がありますね。こういう干潟は世界でも珍しいみたいです。」
●確かに池や湖のように見えるんですが、干潟ということで、海に繋がっているんですよね?
「そうなんですよ。この干潟には水路が2本あります。その水路は東京湾と繋がっているんですね。そのおかげで潮の満ち引きがあるんですね。」
●始めからこういう形の干潟じゃなかったですよね?
「そうなんです。周りが埋め立てられて、今のような形に取り残された形になっていて、元々はもっと広大な干潟でした。」
●広さはどのぐらいなんですか?
「面積にすると、40ヘクタールほどで、東京ドーム9個分ぐらいの大きさです。」
●今、日本にある干潟の中では大きい方ですか?
「そうですね。でも、昔の谷津干潟と比べれば、とても狭くなってしまいましたね。」
●昔はどのぐらいの大きさだったんですか?
「3、4キロ先の沖まで干潟だったといわれています。」
●谷津干潟には、どんな生き物がいるんですか?
「海と繋がっているので、海の生き物がたくさん住んでいます。カレイやエイなどといった魚はもちろん、泥の上に生息するカニや泥の中に生息するコカイ、アサリといった生き物もたくさんいます。」
●たくさんいるんですね! そういった生き物をエサとする鳥がたくさん飛んでくるんですね。どのような鳥が来るんですか?
「干潟の中に来る水鳥と、干潟の周りにある公園に来る鳥を総合すると、年間で110種類ぐらい来ます。その中で、水辺で暮らしている鳥は70種類ぐらいです。」
●その鳥たちにとって、非常に貴重で、安心できる場所なんですね。それだけたくさんの生き物がいることを実感しますか?
「そうですね。例えば、水の中にプランクトンがたくさん来ている様子が、水の色や濁りで分かりますね。他にも、干潟が引けばカニがたくさんいますし、鳥も猛禽類がときどき来るんですね。猛禽類が来るということは、それだけ多くの鳥が来ている証拠になりますし、その多くの鳥を支える様々な生き物がいるので、生態系が成り立っているということを感じますね。谷津干潟は生き物の種類と数が非常に多いので、すごくイキイキしている場所だなと思いましたね。」
※ここで、長澤と井坂さんは、野鳥観察のために、外に出ました。
●私たちは今、谷津干潟自然観察センターの外に出て、遊歩道に来ました。こうやって改めて干潟を見ると、すごく大きいですよね!
「そうですね。今は潮が引いている時間なので、眺めがとてもよくなっていますね。」
●今は肉眼で観察しているんですが、それでもかなりたくさんの鳥が来ているのが分かります。
「かなり大きな群れが来ていますね。」
●この時期には、どのような鳥が来ているんですか?
「南の方の国から北上してくるシギやチドリの群れがたくさんやってきます。」
●観察するときのコツってありますか?
「シギやチドリは、潮が引いたときにエサを捕りに干潟に来るんですね。なので、引き潮のときに観察されると、たくさん見られます。」
●シギやチドリって、どのような特徴があるんですか?
「シギはクチバシが長くて足も長い鳥なんですね。干潟を歩き回りながら、クチバシで地面を突くようにエサを食べる特徴があります。そして、チドリは、目で干潟の上にいるゴカイやカニなどを探して、見つけたら駆け寄って食べるという鳥ですね。」
●そういった動きも観察することで、見ることができるんですね。ここで、実際に観察をしてみたいんですが、今回、望遠鏡を持っていただきました。今、鳥たちはいますか?
「はい、たくさん見えていますよ。」
●私も見させていただきますね! たくさんいますね!! 長いクチバシで、地面を一生懸命掘っている鳥がいるんですが、これは何という鳥ですか?
「シギの仲間で“ハマシギ”という鳥ですね。お腹が黒くて、背中がこげ茶色っぽい色をしています。ミシンをかけるように干潟を突っつきながら歩き回る鳥で、かなりの数が来ますね。」
●私が見た限りでも、40羽ぐらいいますね! ミシンのようにクチバシで地面を突っついているのは、エサを探して食べているんですね。何を食べているんですか?
「干潟の中にいる小さなゴカイやカニなどを食べたり、最近分かったものだと、泥の表面にあるバイオフィルムといった有機物などを食べたりしているみたいですね。」
●今、シギより一回り大きめで、胸元が白と黒のツートンカラーで、背中が茶色で、顔がパンダみたいな鳥が何羽か飛んできたんですが、あれは何という鳥ですか?
「“キョウジョシギ”という鳥ですね。背中の模様が艶やかなので、“京都の女の人のようにキレイ”というところから、名前が付いたという説があります。」
●本当に着物を着ているみたいで、キレイな模様をしていますね! これもシギの仲間なんですね。それから、奥の方に、さらに大きくて、顔からお腹にかけて真っ黒で、頭が白くて、羽根が白と黒の斑模様になっているんですが、これは何という鳥なんですか?
「これは“ダイゼン”というチドリの仲間です。周りをうかがうように、じっとたたずんでいる姿をよく見ますね。そのたたずんでいる姿で周りのエサを探してから、駆け寄って食べますね。」
●ちょっと観察しただけで、たくさんの種類の鳥を見ることができるんですね!
「今の時期は、南からたくさんのシギやチドリがやってくるので、一番多くの種類を見ることができる時期なんですね。」
●ここに来れば、レンジャーの方から指導をしていただけるんですか?
「はい。自然観察センターには、私のようなレンジャーが常駐していますし、館内には望遠鏡もあります。」
●こういったところで日々観察していると、水鳥の飛来で季節を感じることってありますか?
「そうですね。ここは渡り鳥がやってくる場所なので、季節によって違う種類の鳥を見ることができます。今の時期ではシギやチドリが見られますが、夏になるとサギの仲間が増えてきてますし、冬になるとカモの仲間が増えてきます。そういった感じで、季節に合った鳥がやってきます。そういうところで、季節を感じることができますね。」
●一年中飽きないですね!
「そうですね。鳥は一年中やってきますので、オススメです。」
※自然観察センターに戻って、再び井坂さんにお話をうかがいます。
●この貴重な谷津干潟の湿地を保護するための世界的な条約“ラムサール条約”に登録されたのが1993年ということで、今年で20周年になるんですよね。やはり、この条約に登録された意義は大きかったのでしょうか?
「そうですね。元々、ここは埋め立てられた後に残されたところに鳥が集まっている場所で、渡り鳥にとって非常に重要な場所だと認められたことが、登録されるキッカケの一つになっていますが、“鳥がいる”というPR以外に、“みんなで保全していこう”という意識が芽生えるという意味でも、非常に大きいことだと思います。」
●ここが登録されたのは、日本で何番目だったんですか?
「日本では9番目で、干潟の中では初でした。」
●干潟って、潮干狩りといったイメージがあったんですが、ラムサール条約に登録されたことで、“それだけじゃない干潟”という認識が生まれたんじゃないかと思います。
「日本の中で、埋め立てなどで干潟のような水辺がどんどん減ってしまっているので、潮干狩りで触れるのも大事だし、『こういう場所がまだあるんだ』ということを知ってもらう、いいキッカケになったのではないかと思います。」
●鳥たちがたくさん来て、豊かな自然が残っているということは、私たちにとってもすごく大切なことなんですよね?
「そうですね。渡り鳥は何年も前からここに飛んできていますけど、鳥だけじゃなく、人にとっても潮干狩りをしてアサリを食べさせてもらったり、海苔を採ったり、魚を捕ったりと、漁業の場所にもなっているので、食料も供給してくれます。そして、干潟の中の生き物は浄化作用の大きな担い手で、日々、カニたちが有機物を分解したり、ゴカイが体積した有機物を分解したりしながら暮らしてくれることで、浄化の役割もあるし、小さな魚が育つような場所にもなっています。さらに、水辺って、人々がそこからうるおいを持って暮らせる力を持っているんですよ。そういった様々な作用があるんですよね。」
●確かに、色々な意味でうるおいが持てる場所ですね!
「そうですよね! 心の中のうるおいにもなっているんじゃないかと思いますね。」
実は、海浜幕張のスタジオに行く度に、住宅街の中にある谷津干潟の存在がとても気になっていたんですが、実際に行ってみて、たくさんの水鳥がいるので本当に驚きました。可愛らしい鳥たちを観察しているだけでも、とても癒されると思うので、是非、ラムサール条約登録20周年を迎える谷津干潟にご家族で行ってみてはいかがでしょうか?
谷津干潟自然観察センターはJR京葉線の新習志野駅から徒歩20分のところにあり、水鳥の観察にオススメ。1階と地下1階の観察フロアから谷津干潟が一望できますよ。常駐するレンジャーに聞けば、その日に見られる鳥たちの情報や観察のコツなども教えてくださいます。観察用のスコープや野鳥図鑑も完備しています。
◎開館時間:午前9時から午後5時まで(休館日は基本的に毎週月曜日)
◎入館料:高校生以上・360円、65歳以上・180円、小学生以下・無料
“ラムサール条約”に登録されて今年で20周年を迎える谷津干潟。来月6月10日は、登録された記念日で「谷津干潟の日」となっています。そんな20周年を記念して、6月から谷津干潟自然観察センターで様々なイベントが開催されます。
◎6月1日(土)
午前11時から:『ラムサール条約登録20周年・谷津干潟の日記念式典』
また、この日は、プロの料理人が魚のさばき方を教えてくれる『東京湾の恵みを頂きます!~魚のさばき方教室~』を数回行ないます。
◎6月2日(日)
午後0時半から:『おりがみ教室』(鳥の帽子を作ります)
また、6月1日と2日の両日、谷津干潟のクイズにチャレンジしながら、干潟の周辺を巡る『スタンプラリー』も行なわれます。
◎6月8日(土)
午前10時から:『谷津干潟市民クリーン作戦』(干潟に流れてきたゴミを拾います)
午後0時15分から:東邦大学・元教授「風呂田利夫」さんと一緒に谷津干潟に入って、楽しみながら生き物調査を行ないます。
◎6月9日(日)
午前10時から:『20周年記念シンポジウム』
第1部・映像作品「谷津の海 いのちとくらし」上映、
谷津干潟ジュニア・レンジャーによる活動発表
第2部・シンポジウム『谷津干潟のこれからを考えるヒント』
パネラー・東邦大学・元教授「風呂田利夫」さん、
NPO法人・盤州里海の会「金満智男」さん他
他にも、記念イベントとして、8月24日(土)に、谷津干潟一周3.5キロを2千人の皆さんの協力の下、1万3千枚の黄色いハンカチで包む「8.24愛で包もう谷津干潟」を開催。現在、センター内に黄色いハンカチにメッセージを書くコーナーを設置してありますので、ぜひご協力ください。
◎詳しい情報:谷津干潟ラムサール条約登録20周年記念特設ページ