今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、藤田健一郎さんです。
南房総・館山のシーカヤックガイド・藤田健一郎さんは、イルカやウミガメ、野鳥や昆虫など、地元・館山の生き物を観察し、独自の調査を行なってらっしゃいます。今週はそんな藤田さんに、南房総で観察できたイルカやウミガメの産卵のお話などうかがいます。
※まずは、藤田さんが代表を務めるシーカヤック・サービスの名前「6DORSALS KAYAK SERVICES」にも関係する、南房総で観察できたイルカのお話をしていただきました。
「僕が南房総で興味を持った生き物はイルカなんですね。今は定着していないんですが、興味を持ち始めたときにはミナミハンドウイルカという種類が6頭住み着いていて、それをシーカヤックに乗って観察に行くようになりましたね。」
●6頭もいたんですか!?
「そうですね。その群れはどういう群れなのか、すごく興味がわいたので、1頭ずつ識別していきました。子供が1頭と、その母親が1頭いて、その他はオスだったんですね。恐らく血が繋がっていたのはその母子だけで、あとは、そこでたまたま出くわして、一緒に住むようになったんじゃないかと予想しています。また、伊豆諸島にある御蔵島には、ミナミハンドウイルカが住んでいるんですが、そこから来た個体が含まれていることも分かったりしましたね。」
●カヤックで観察するって、どういう風に観察したんですか?
「イルカを見つけたら、できるだけ向こうから寄ってくるように、200メートルぐらい離れて、ひたすら待ってますね。」
●待っていると、近づいてくるんですか!?
「向こうの機嫌がよければ、来てくれますね。機嫌が悪かったら離れていってしまいます。」
●そこはイルカの気分次第なんですね。そこから、個体の識別ができるようになって、ある程度分かったイルカが近づいてくると嬉しいですよね!
「すごく嬉しいですね! こっちの一方的な想いですが、友達になれたような感じですよね。」
●藤田さんが代表を務めるシーカヤック・サービスの名前を“6DORSALS KAYAK SERVICES”という名前にされているんですよね?
「そうですね。最初見たときに、6頭いたのと、カヤックからイルカを見ると、水中じゃないので、主に背ビレが見えるので、6つの背ビレが並んでいる風景をイメージして、背ビレのことを“ドーサルフィン”というところから、そういう名前を付けました。」
●そのイルカたちって、現在はどうしているんですか?
「2003年までに子供のイルカ以外はいなくなっていって、2004年の始めぐらいには、その子供もいなくなってしまいました。そこから、どこに行ったかは確認されていません。」
●なんでいなくなってしまったんですか?
「それはイルカに聞かないと分からないですね(苦笑)。」
●ちょっと寂しいですね。
「いなくなった直後は寂しかったですけど、逆にいうと、個体識別が既にできているので、どこかに行ったときに誰かが写真を撮っていて、それを見ることができれば、さらに新しいことが分かるので、それを期待していますね。」
●確かに、御蔵島に戻っているかもしれないですしね。もし、再会できたら、どうしますか?
「『久しぶり!』って言いたいですね(笑)」
●イルカもきっと「久しぶり!」って言うんじゃないでしょうか(笑)
●この時期、南房総では、ウミガメの上陸が見られるそうなんですが、どんな種類のウミガメが見られるのでしょうか?
「産卵するのはアカウミガメだけですね。ただ、海上ではアオウミガメも見れます。」
●産卵は、いつ頃がピークなんですか?
「季節的には今頃がすごくよくて、5月の終わりから8月いっぱいが産卵の季節ですね。」
●今年はどうですか?
「今年は5月10日に初めて、産卵された形跡が確認されました。」
●実際の産卵って、どんな感じなんですか?
「初めて見たときは、分かっていてもビックリしますね。カメは大きいので、それが夜の砂浜を移動していると、驚きますよね。」
●よくテレビなどを見ると、涙を流しながら産卵していますけど、あんな風に産卵しているんですよね。
「あれは、塩分を排出しているといわれていますけど、産卵に苦労しているのは、見てて感じますね。1個ずつゆっくりと産んで、時間をかけて丁寧に埋めていくんですよね。そういうのを見ると、かなりの苦労を感じますね。」
●産卵をしているときは、人間はできるだけ見ない方がいいですよね?
「そうですね。でも、経験として、一度は見ておいた方がいいと思いますね。とはいえ、野生動物なので、できるだけ人は関わらない方がいいと思います。例えば、鳥が巣を作っているときに何度も巣の穴を覗いてたら、鳥が巣を作るのを止めちゃうかもしれないじゃないですか。それと同じで、カメはすごくゆっくりと動く動物なので、みんなついつい近くで観察してしまうんですが、あまり関わらずにできるだけ距離を置いて観察をするというのが一番ベターですね。」
●その卵が孵化しますけど、小さいカメが土の中から出てきて、海の方に歩いていく姿がすごく可愛いですよね!
「そうですね。産卵して60日ぐらい経ったときに孵化が始まるので、その頃に孵化しているシーンを見ようと思ったら、その場所に通うんですが、母親はゆっくりと歩いていきますが、子供はパタパタと歩いていきますね。たまに朝まで歩いている子がいたりしますね。」
●それは、のんびりしている子と急いで行っちゃう子とかがいたりするんですね(笑)。1回の孵化で、どのぐらいの数が海に帰るんですか?
「1つの巣に100個前後の卵があるので、それの条件が整えば、ほとんど孵化するときがありますし、悪天候などで波に流されたりしてしまったら、あまり孵化しないときもあります。それは自然のことなので、仕方ないと思いますね。」
●孵化のためには、色々な条件が必要なんですね。産卵のための条件ってどんなものがあるんですか?
「僕たちが気にするべきことは、光るものを海岸に置いておかないことが大切ですね。親がその光を警戒するんですよ。僕は、上陸した足あとを朝に記録しているんですが、それを見ると、すごく迷った後に場所を決めて、帰りも迷いながら帰っているんですよね。他でもそういうことはあると思いますが、南房総は特に多いんですよ。例えば、キャンプをするときって、夜になるとランタンとかヘッドランプとか使いますよね? 関東の砂浜のどこの場所に産卵のために上がってきてもおかしくないので、そのときは、海側に明かりがいかないようにしてあげてください。あと、花火をやるときも夕方に済ませるなど、時間帯を選ぶのもいいと思います。」
●館山には、他にも素晴らしい野生動物がたくさんいると思いますが、他にはどういった動物を観察されているんですか?
「春は色々な鳥が繁殖をする季節なので、ハヤブサやシロチドリなどを観察しています。ハヤブサは今年も2羽が孵化して、巣立っていきました。シロチドリは砂浜に巣を作るので、砂丘が必要なんですね。」
●今、その砂丘が減少しているって話題になっているじゃないですか。南房総はどうですか?
「南房総も砂丘が崩れているところがあったり、コンクリートで埋め立てられたりしているんですね。なので、僕としては、そこに動物がいるということを知ってもらうためにも、毎年の繁殖行動を記録していかないといけないと思っているんですね。そうしないと、そこの環境がどんどん変わっていってしまいますからね。」
●確かに、毎年、動物たちは定期的に繁殖しに来ているんですよね。
「僕たちが思っている以上に、砂の山が大切なんですよね。それを保護することが大切だと思います。」
●本当にバラエティに富んだたくさんの生き物が、南房総に来ているんですね。
「そうですね。南房総に定着している動物がいますけど、それ以外にも、季節によってやってきて、活用したら去っていく動物もいるんですよね。なので、全ての種類を特定するのは難しいですが、本当に豊かですね。」
●ということは、藤田さんは動物の訪れで、季節の変化を感じているということですか?
「そうですね。南房総に住んでからは毎年そうですね。」
●それって、すごく素敵ですよね!
「僕は東京生まれなので、それは幸せなことだと思いますね。」
●海で楽しむために、私たちが注意しないといけないことってなんですか?
「これから夏休みの前半ぐらいまでは、シロチドリが砂浜でちょっと草が生えているようなところに卵を3つぐらい産むんですね。それは、木の上にある巣にあるのではなく、地面にただ置いているだけなんですね。だから、僕たちはまず気づかないので、知らずに踏んでしまうということがあるんですよね。そこに注意していただきたいのと、ウミガメも来ますので、先ほど話した光に注意してもらいたいです。今の時期なら、海水浴場で泳いでたら、水中でウミガメと出会うという人がいますので、『近くにいるかもしれない』と思って、泳いでもらえればと思いますね。」
●“動物たちと一緒にいる”ということを常に意識した方がいいんですね?
「そうですね。“海水浴場とはいえ、人間だけのスペースじゃない”ということを意識して、遊んでもらえればと思います。」
●私も気をつけたいと思います! シーカヤックで海に出ると、水面と近いですよね。それだけでも、普段とは違った景色が見えてくるんじゃないですか?
「そうですね。シーカヤックで海に出ると、イルカやウミガメなどがどういう気持ちでいるかを、人間でありながら感じられるんですよね。海から人間が生活している丘を見て、どう思っているのかを疑似体験できる乗り物じゃないかなと思いますね。」
『シーカヤックに乗ると、イルカやウミガメの目線になって海から陸を見ることができる』と、藤田さんはおっしゃっていましたが、私もシーカヤックに乗ったとき、確かに海がすごく近くて、今までとは違った目線になったことを覚えています。イルカやウミガメ、そして海に住むたくさんの生き物達がどんな思いで周りを見ているのか、そんな思いを馳せながら、南房総の海をシーカヤックで進むと本当に気持ちがいいでしょうね。
南房総で出会ったイルカやウミガメ、野鳥などの観察記録は、藤田さんが代表を務める「6DORSALS KAYAK SERVICES」のオフィシャル・サイトにきちんと掲載されています。写真を交えつつ、詳しく解説させてくださっています。