今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、加賀谷はつみさんです。
千葉県・流山市出身、“歌って登れる”シンガー・ソングハイカーの加賀谷はつみさんは、ギターを背負って山に登り、“山頂で歌ってみた”という活動をされています。これまでに国内の数々の山に登り、頂上でギター弾きながら歌う模様がYouTubeにアップされています。そんな加賀谷さんが、なんと海外遠征! 今年9月にアメリカ西海岸にある「マウント・シャスタ」4,317メートルの登頂に成功されました。そこで、加賀谷さんに「マウント・シャスタ」がどんな山だったのか、頂上までの道のりがどうだったのか、色々お話をうかがいます。
●今回のゲストは、シンガー・ソングハイカーの加賀谷はつみさんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします。」
●加賀谷さんには、今年の2月にご出演いただきましたが、そのとき「ある大きな挑戦が控えている」ということを話していましたね。
「まだ控えている段階でしたね。」
●私も「どんな挑戦をするのかな?」ってずっと気になっていたんですけど、なんと今年の9月にアメリカの西海岸にある“マウント・シャスタ”に登頂されたんですよね!
「はい、行ってきましたー!」
●そのマウント・シャスタですが、どんな山なのか、簡単に教えていただけますか?
「一番分かりやすく説明すると、“CRYSTAL GEYSER”っていうミネラルウォーターのブランドがあるじゃないですか。そのラベルに使われている標高4,317メートルの山です。」
●4,317メートルということは、日本で一番高い山の富士山よりも高いんですね。
「そうですね。実は私、今年の夏に初めて富士山に登ったんですけど、そのときは元気に登ることができたんですね。なので、自信もついたんですけど、やっぱり4,000メートルの壁は高かったですね。」
●それだと、登山中は大変なことがあったり嬉しいことがあったりしたかと思いますが、まずは今回のマウント・シャスタに登るにあたって、テーマソングを決めたそうですが、その曲を紹介していただけますか?
「“DAYS”という曲なんですけど、“山登りをするときに口ずさんでもらえたらいいな”と思って作った曲です。」
※ここで放送では“DAYS”を聴いてもらいました。
●この曲をマウント・シャスタの頂上で歌ったんですね?
「はい、歌ってきました。実際は歌うには厳しい状態でしたが、すごく応援してくださっている方もいましたし、『シンガー・ソングハイカーのプライドにかけて、元気に歌っている姿を見せたい!』と思って、歌ってきました。」
●その登山について改めて振り返っていただきたいんですが、まず登山口に行ったのが9月5日なんですよね。登山口あたりで、標高はどのぐらいあるんですか?
「登山口はクリアクリークトレイルヘッドというところで、標高は1,600メートルぐらいです。」
●登るには色々なルートがあると思いますが、今回はどのルートを選択されたんですか?
「20個ぐらいルートがある中で、当初は“ジョン・ミューア・ルート”を通ることになっていたんですけど、連れていってもらったところは“クリア・クリーク・ルート”だったんですね。当日、ルート変更を知ったんですよ(笑)」
●いきなり驚きの事実がありましたが、まずはどこを目指したんですか?
「まずは、その日にテントを張るベースキャンプを目指しました。樹林帯を気持ちよく登っていったので『こんなにも気持ちいいだけでいいのだろうか』と思いながら歩いて、3時間で着きました。そこで少し休憩したり、歌を歌ったりしましたね。そこまでは登山に自信がない人でも気持ちよく登れる場所だと思います。私たちとしては『初日、こんなにも気持ちいいだけでいいのだろうか?』という不安がちょっとあったんですけど、ガイドさんが『今日は3時間で済んだけど、今日はゆっくり寝てください。明日はBig Day(とても長い一日)』と連呼するんですよ。なので、午後7時には寝ましたね。」
●現地の夜空はどうでしたか?
「天候がどんどんよくなっていきましたし、その日は新月だったので、午後7時はまだ星は出ていませんでしたが、夜中に起きて空を見たんですよ。日本でも2100メートルの場所で星空を見たことがありますが、同じ星空なはずなのに、星がすごく近いんですよ! すごく近くて大きくて、手を伸ばせば届きそうな感じで、星屑まで見えるような星空を見ることができました。初めて星空を見て鳥肌が立ちました。そのときに『誰でも感じることじゃないことを感じているんだな。来てよかった。』と思いましたね。」
※翌日、ベースキャンプから頂上に向けて出発した加賀谷さんたちですが、朝何時に出発したのでしょうか?
「朝というより夜中0時ですね。その時間に起きて、深夜1時に出発しました。」
●深夜1時ですか!? その時間に出発しないと間に合わないんですか?
「そうですね。次の日は一気に下りる予定だったので、下りる時間も考えると、その時間に出ないと間に合わないんですよ。」
●もちろん真っ暗ですよね?
「真っ暗です。でも、星がすごくキレイなんですよ。星空に向かって歩いていく感じだったので、“星になっていく”感じがして、すごく楽しかったです。登り始めたときから急だったんですけど、暗くて周りがあまり見えなかったので、どこが頂上か分からないからこそ、星に向かって登っていく感じ楽しみながら登ってましたね。」
●ベースキャンプまでは樹林帯だったということですが、そこから先はどうだったんですか?
「足場的には、『富士山のような感じだよ』と言われていたんですけど、もはや砂浜のような感じで、ホコリに近い土でした。それでいて急だし、工事現場や線路などにあるような石が積まれている感じなので、すごく歩きづらいんですよね。なので、思うように進めなかったですね。」
●それは大変そうですね。
「なので、ストックを使って登りました。上を何度見ても、トレイルが見えないんですよ。それは、地面が砂なので足あとが付かないから、トレイルが見えないんだと思うんですね。なので、ガイドさんは、日本だったら『こんな道歩きます? 大丈夫ですか?』って思うような道を登っていくんですよね(笑)」
●(笑)。それでいて、夜に出発しているから見えないんですよね?
「そうですね。寒さもあったので、『早く太陽が上がってほしいな』って思いましたね。かなり着こんで登っていたんですけど、登っていたら大体暑くなってくるので、上着を脱いだり着たりするじゃないですか。それをしないでも大丈夫なぐらい寒かったんですよ。だから早く太陽が上がってほしいと思いながら登ってました。」
●念願の太陽は、どのぐらいのタイミングで上がってきたんですか?
「6時半ぐらいに太陽が上がってきたんですけど、その時点で3900メートルぐらいでした。明るくなって初めて知ったんですけど、地平線が見たことがないぐらい広かったです。よく『世界は広大だ』っていうじゃないですか。その“広大”の意味を肌で感じましたね。そして太陽が上がってきたときも、同じ太陽なはずなのに、熱さも大きさも全く違うように感じたんですよね。太陽がちょっと上がってきただけで暑くなるぐらい一気に暖かくなったんですよね。日本一のところよりも高いところで太陽を感じたので、『4,000メートルって、こんなにもすごいんだな』って感じましたね。」
※マウント・シャスタの頂上を見て、加賀谷さんは初めて覚えた感覚があったそうです。
「山頂を見たとき、そびえ立っている感じがして怖いんですよね。存在感がすごすぎるんですよ。『お前はここまで来れるのか?』って、山に見下ろされてる感じがしたんですよね。あと、実は私、元々高所恐怖症なんですよ。3年前ぐらいから1,000~2,000メートルぐらいの山に興味を持ち始めて登っているので、慣れもあってか、恐怖症が出てなかったんですけど、4,000メートルのところに行ったら、それが甦ってきたんですよね。太陽が上がってきたときから、ちょっと足がすくんじゃったんですよね。
あと2時間ぐらいで山頂に着くというときには体力的にも限界にきていたんですね。そのときに、日本で応援してくれているチームの中の一人の女の子が『辛くなったら、この手紙を読んでください』って渡してくれた手紙があったので読んだら、号泣しちゃいましたけど、すごくパワーになりました。内容をざっくり言うと、『応援しています。日本で待っています』って書いてあったんですけど、『これは頑張らないといけない!』って思いましたね。
『あと2時間、踏ん張ろう!』としたときに、ヘルメットを被るように指示されたんですね。ということは、もっと険しくなるし、落石の可能性が高い場所に行くということなんですね。気合いを入れて行こうとしたら、いきなり踏ん張りが利かなくて、自分の体1つ分下がってしまったんですよ。前に進めないし、高くて怖いけど、絶対にやり遂げたいという色々な想いから、涙が止まらなくなってしまったんですね。そこから山頂まで泣きっぱなしでした。気が動転しているから、自分では分からなかったんですが、かなり泣いていたみたいで、後ろにいたスタッフの方が『これはまずい』と思ったみたいで、近くまで来てくれて『落ち着こう。酸欠になっちゃうから深呼吸して』っていわれて深呼吸したんですよ。そこから『あそこまで行けるね?』『はい、行けます』といったやり取りをやり続けながら登りましたね。」
●最後は一歩ずつ進むような感じだったんですね。
「これがもし私の趣味として一人で行ってたら、そこで諦めていたと思うんですよ。私はこれまで諦めることとかなかったんですけど、初めて『諦めないといけないのか』と頭によぎったぐらい、限界を感じたんですよね。でも、その手紙を読んだことによって『自分だけの挑戦じゃないんだ』と思いましたし、『自分のためじゃなくて、応援してくれている人たちのために頑張りたい!』という気持ちが強くなったんですね。なので、すごく泣いてしんどかったんですけど、その気持ちがあったから登りきれたと思います。“自分のため”と思うと、限界も限られてきますけど、“誰かのために頑張りたい”と思ったら、自分の限界を越えられるんだと学びましたね。」
※頂上にたどり着いたときは、どんな気持ちだったのでしょうか?
「『気持ちいい!』って言えるものなんだろうなと想像していたんですが、実際は、最後は這うような感じだったので『よかったー!』って安心した感じでしたね。それに山頂もすごく狭くて、日本みたいに“ここが山頂です”といった看板があるわけではないので、ちょっとタッチするぐらいしかできなかったんですし、風もすごく吹いていたので、その場で歌うとか写真を撮るとかスペースも時間もなく、『とにかく下りよう。そうしないと夜になってしまう』ということなので下りて、少し開けた場所があったので、そこで休憩がてら写真を撮ったり歌ったりしました。」
●4,000メートル越えた場所で歌ってみて、どうでしたか?
「頭がガンガンしていたので気持ち悪い気分もありましたし、その場の空気感的にも歌う感じではなかったんですね。そんな中でも、スタッフの方に『1曲・・・。1コーラス・・・。1フレーズだけ・・・』って意識を朦朧としながらお願いして、そのスタッフも意識を朦朧としながら『はいはい。じゃあサビだけな』ってオッケーを出してくれたんですよ(笑)。なので、チューニングもろくにせず、合っているのか分からない状態で歌ったんですね。
ちゃんと歌って、みんなに対して『応援してくれてありがとう』ということを形として残したかったんですよ。無事に歌っているところを撮影できたんですけど、後から見返したら、空気が薄くなっているせいか、いつものように息継ぎをしても声が出ないんですよね。だから、思った以上に音程が外れてたんですよね(笑)」
●(笑)。とはいえ、過酷な環境ですから、仕方ないですよね。
「帰ってから改めて見たときに『この歌、残念だなー。これアップしていいのかなー?』っていう想いもあったんですけど、リアルさがあるということで、許してください(笑)」
●(笑)。その映像はどこかで見ることができるんですか?
「YouTubeで“加賀谷はつみが山頂で歌ってみた”という企画をやっているんですけど、そちらでチェックすることができます。そこで歌ってみたことで、私たちが酸素の濃い中でこうやって息できる、歌が歌えるってありがたいなって改めて思いました。」
●そうですよね。今も普通に息ができて、苦しくないのは当たり前のことだと思っていました。
「そういうことを感じられるのも、山の魅力だと思いますね。そういう意味では、すごくいい経験をさせていただきました。」
●さて、加賀谷さんは先日、ニュー・アルバム「シンガーソングハイカー」をリリースされました。どんなアルバムになっていますか?
「このアルバムは、音楽好きにはもちろん、アウトドア好きにも聴いてもらいたい1枚ですけど、13歳のときに歌手になろうと決めて、15年間音楽が好きで走り続けた結果、リリースできたアルバムになっています。短いですが、私の半生が歌詞となりメロディになって表現されたアルバムになりましたので、多くの方に聴いてもらいたいと思います。そして、これを聴いていただければ、今の“シンガー・ソングハイカー・加賀谷はつみ”が、ほぼ分かっていただけると思います。」
●本当に加賀谷さんらしいアルバムだなと思いました!
「山の中で作った曲もあったり、日常生活だったり恋愛していく中で生まれた曲もあったりするので、幅広い世代の方に聴いていただけるアルバムだと思います。」
●それでは、このニュー・アルバムの中から1曲聴いていただきたいと思いますが、どの曲がいいでしょうか?
「タイトルに悩みに悩んで、こだわりにこだわった“8合目Love”という曲を聴いていただきたいと思います。」
●いいですね! やっぱり8合目Loveなんですか?
「そうなんですよ! この曲の説明をするのもいいですが、みなさんが聴いて『これが8合目Loveなんだな』と考えながら聴いてもらうのも、面白いかなと思っています。」
※ここで放送では“8合目Love”を聴いてもらいました。
マウント・シャスタ登頂のテーマソングで、私も大好きな加賀谷さんのナンバー“Days”の歌詞の中に「歩こう キラッキラ 光る太陽の下 もっと輝きたいから」 というフレーズがあるんですが、この部分が加賀谷さんのイメージにピッタリだと思いました。今後さらに色々な山に登って、ますます魅力的なシンガーになっていく加賀谷さんを、これらもずっと応援させていただきます。
ワーナーミュージック・ジャパン
/WPCL-11475/定価3,100円
加賀谷さんのファースト・アルバム。今回お届けした「DAYS」と「8合目Love」他、ボーナストラックを含め、15曲収録されています。加賀谷さんの思いがいっぱい詰まった素晴らしいアルバムに仕上がっていますので、是非チェックしてみてください。
加賀谷さんの活動や近況などは、オフィシャル・サイトをご覧ください。