2014年1月4日

馬がいる風景~引退馬協会「沼田恭子」の熱い想い

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 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンは、今年2014年の干支“午”にちなみ、馬に深い愛情と熱い想いを持っていらっしゃる方にフォーカス! その方とは、千葉県香取市にある乗馬倶楽部イグレットの代表、そしてNPO法人・引退馬協会の代表理事でいらっしゃる「沼田恭子」さんです。乗馬に始まり、競走馬の生産・育成、そして乗馬倶楽部の運営など40年ほど馬の世界に関わってらっしゃる沼田さんは、引退した競走馬を活かす活動をされています。そんな沼田さんを乗馬倶楽部イグレットに訪ねて、色々お話をうかがってきました。

長澤ゆき、乗馬に挑戦!

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●私は今、千葉県香取市にある乗馬倶楽部・イグレットに来ています。こちらは雑木林に囲まれている非常にのどかな場所にありまして、私の目の前にはクラブハウス、そして後ろには厩舎があります。そして、私の隣に乗馬倶楽部・イグレットの代表、そしてNPO法人・引退馬協会の代表理事の沼田恭子さんがいらっしゃいます。よろしくお願いします。

恭子さん「よろしくお願いします。」

●ここはどのぐらいの敷地があるんですか?

恭子さん「6,000坪ぐらいですね。」

●スタッフは何人ぐらいいらっしゃるんですか?

恭子さん「8人ぐらいでやっています。」

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●このイグレットは、他の乗馬倶楽部にはない特徴があるということなんですが、それはどんなところなんですか?

恭子さん「3歳ぐらいのお子さんから高齢の方まで安心して乗っていただけるようにしています。」

●3歳から乗れるんですか!?

恭子さん「3歳ぐらいのお子さんを乗せてくれる“ショコラちゃん”という可愛いポニーがいるんですよ。」

●そうなると、家族みんなで楽しめますね! お馬さんたちもノビノビと過ごしているように見えますね。

恭子さん「馬の習性に合った飼養管理をなるべくしようと思っています。馬って、一日に何十キロも歩きながら草を食べる動物なので、放牧や並足などをできるような環境づくりをしていますね。」

●お馬さんがたくさんいるようなんですが、何頭ぐらいいるんですか?

恭子さん「30頭ぐらいですね。」

●年齢はどのぐらいなんですか?

恭子さん「若い子だと1歳ぐらいで、33歳のおじいちゃんまでいます。」

●33歳ですか!? 私より年上ですね(笑)。33歳って、馬にしては高齢ですよね?

恭子さん「かなり高齢です」
    (註:33歳は人間の年齢にすると100歳を超えるといわれています)

●それだけ、長い間育ててらっしゃるんですね。

恭子さん「そうですね。乗馬なので、お世話になった馬たちには最後までゆっくりと過ごしてもらえるような配慮をしつつ生活してもらっています。」

●そして、今日は私も乗馬体験をさせていただけないでしょうか?

恭子さん「大丈夫ですよ!」

●ありがとうございます!

※場所を移動し、長澤ゆきが乗馬体験に挑戦します。

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放牧中の馬たち。思い思いの場所でくつろいでました。
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厩舎には、めんこい馬たちが休憩中!?

●今からインストラクターの沼田曜さんと一緒に乗馬体験をします。よろしくお願いします!

曜さん「よろしくお願いします!」

●私、久々の乗馬なんですけど、大丈夫ですか?

曜さん「大丈夫です!」

●そして私の目の前には白くて美しいお馬さんがいますが、このお馬さんのお名前は何ですか?

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曜さん「“朝霧(あさぎり)”という21歳の男の子です。」

●21歳の男の子ですか。人間にするとおじさんぐらいですかね(笑)。

※まずは乗るための基本的なレクチャーを受けます。

曜さん「まずは、たずなをたてがみと一緒に掴んで鞍を右手で掴んだら、勢いよく乗ってください。」

●はい! せーのっ! あー乗れました! すごく高いです! 普段の視界とは全然違いますね! 

曜さん「では、前に進みましょう。少し揺れますので、体を起こしておきましょう。そして、高いところを見ておいてくださいね。では行きますね!」

●おーっ! 動きましたー! 確かに上下に少し揺れますね。

曜さん「今は“常足(なみあし)”という歩法なんですけど、波に揺れている感じがすると思います。」

●確かにそうですね。こうやって歩いていると、朝霧と一緒に歩いている感じがすごくしますね。

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※次に、馬の操作方法を教えていただきました。

曜さん「では、馬の操作の仕方をやってみましょう。まずはたずなの持ち方ですが、手をパーにして、小指と親指に引っ掛けます。そのまま握って親指が一番上になるように持ちます。左に曲がりたいときは、左のたずなを引いてあげると、馬が左を向くので、左に曲がってくれます。馬を動かすとき、馬を蹴ってください。そうすると馬が動いてくれます。」

●うあーっ! すごーい! 曜さんにたずなを持ってもらうことなく前に進んでます! でも、今どんどん入り口に向かって進んでいるので、これは右に曲がった方がいいですよね?

曜さん「そうですね。右に曲がりましょう。」

●右に曲がりましょうねー。

曜さん「そうです! そんな感じです! 曲がりきったら、たずなを元に戻しましょう。そして止まってしまったら、蹴ってください。」

●動いた! すごーい! 私の指示でもちゃんと動いてくれるんですね!

※乗馬体験は次のステップに移ります。

曜さん「今度は速足(はやあし)をやってもらいます。速足のときは私が前でたずなを持っていますので、安心してください。常足のときは波に揺れているような感じだったと思いますが、速足のときは上下に揺れます。そして、2拍子で動きます。そのときに寄りかかってもいいですので、偉そうにしてください。それではいきますね!」

●おーっ! 今かなり上下に揺れてます! 朝霧と一緒に走ってる感じがします。風を切って走ってる感じがします。

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※そして、速足のあとは常足での散歩です。

●尻尾を振っているのは、ハエが気になるんですか?

曜さん「そうですね。ハエを払っているんです。」

●耳が敏感に動いてるじゃないですか。これは音を聴いているんですか?

曜さん「そうですね。馬は耳で情報収集をしています。馬の耳は表情と同じで、耳が立っているときは緊張しているときなんですね。それとは違って、今みたいに耳が横に広がっているときはリラックスしているときだったり、周りの音を聴いているときなんですね。」

●そうなんですね。

曜さん「それでは、乗ったところに戻って終わりにしましょう。」

●あ、そうか。降りるんですね。
 では降ります! 朝霧ありがとう! 本当楽しかったです! 乗っていると、お馬さんと一緒に走っている感覚がすごくありますね!

曜さん「それはよかったです!」

●でも、実際は朝霧に乗せてもらったんだと思いますけどね(笑)。すごく楽しい時間をありがとうございました!

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気持ちが優しい「朝霧」を真ん中にインストラクターの沼田曜さんと記念写真。

いつの間にか馬に支えられています。

※沼田さんは1997年に引退馬協会の前身“イグレット軽種馬フォスターペアレントの会”を設立し、引退馬たちの里親制度をスタートさせました。競走馬たちが引退した後、どのような生活を送っているのか、競走馬たちの現状についてうかがいました。

恭子さん「年間7,000頭ぐらいのサラブレッドが生まれているんですが、その中で残れるのはエリート中のエリートの子たちだと思うんですね。なので、残れなかった子たちは活かしきれていないですね。」

●現状は、厳しい状況なんですね。

恭子さん「ただ、みなさんが『活かすことができるんだ』と認識してもらえただけでも、すごく大きなことだと思いますね。」

●具体的には、どのように活動しているんですか?

恭子さん「直接的な活動としては、里親を募って馬を繋養してもらったりしていますし、ファンの方が『大切な馬をなんとかしたい』という想いで、自分で里親を募ったりするんですが、そのお手伝いを全面的にしています。それを“引退馬ネット”と呼んでいます。」

●それはいいですね! 自分が好きだから思い入れも強いと思いますからね!

恭子さん「でも、一人だと馬一頭を養うというのは難しいんですね。数年はできるかもしれないですが、馬は長く生きる動物なので、終生を見てあげるためには色々な人の力を借りないと、最終的には厳しい状態になることが予想されますよね。」

●長く生きる馬で、どのぐらいまで生きるんですか?

恭子さん「30歳ぐらいまで生きる子はいますね。」

●30歳ぐらいですか。競走馬って5~6歳ぐらいで引退しますよね。そうすると、残り20年以上は生きるということですよね?

恭子さん「そのぐらいの気持ちで馬を繋養した方がいいと思いますね。」

●それだけの期間、何かしらの役割を見つけてあげないといけないですよね。

恭子さん「だから、色々な人の目に届いて、色々な人の力が合わさるように活動をしていかないと、馬がかわいそうなことになっちゃうと思いますね。」

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●“里親制度”なんですけど、現状はどのような感じなのでしょうか?

恭子さん「“フォスターホース”と呼ばれる、協会が所有する馬たちは10頭ぐらいいるんですけど、その子たちを300人近い人たちで支えています。同様に、引退馬ネットでも10頭ぐらいいますが、馬たちの特徴などを書いたプロフィールのようなものを、引退馬協会のホームページに掲載していますので、『この馬を支えたい』と思ったら、私たちのところにご連絡をいただけたら、すぐにも里親になることができます。」

●性格が分かるというのはいいですね!

恭子さん「10頭いれば10頭とも性格が違うので、面白いですよ。」

●どことなく自分の性格に似ている子を見つけて、その子を支えるっていうのもいいですよね。

恭子さん「参加してくださる方の多くは、最初は『馬をなんとかしたい! 支えたい!』と思って参加してくださるんですけど、いつの間にか『馬に支えられてます』っていうんですよね。『会いにくると元気をもらえて、かえって仕事が頑張れる』とおっしゃる方が多いですね。」

馬は人間のパートナー

※沼田さんが馬にハマったキッカケは何だったのでしょうか?

恭子さん「小さいころから馬に乗りたかったんですけど、両親が『ダメ!』っていうので、なかなか乗ることができなかったんですね。なので、学生時代に一人暮らしを始めてから、チャンスだと思って、乗馬倶楽部に通うようになりました。」

●そこで馬と初めて触れ合ったわけですけど、そのときの気持ちはどんな感じでしたか?

恭子さん「『大きいな!』っていう感じでしたね! 自分が想像していたのよりも大きい動物でした。」

●私も久しぶりにお馬さんと触れ合いましたけど、大きいと思いました。そして、すごく優しい感じがしました。

恭子さん「本当にそうだと思います。」

●そこから馬の魅力にハマってしまったんですね?

恭子さん「そうですね。結婚してからも主人が馬に関する仕事をしていたので、馬とは切っても切れない関係ですね。」

●今いる馬たちみんな大好きだと思いますけど、特に思い入れがある馬っていますか?

恭子さん「亡くなった主人がカナダから買ってきた馬がつい最近30歳で亡くなってしまったんですけど、その子はすごく思い入れがありましたね。」

●ご主人は馬に関する仕事をされていたんですね。

恭子さん「そうですね。馬に関する仕事をする家系出身ですし、子供のころから馬に乗っていた人だったので、ずっと馬が身近にいた人でしたね。」

●この乗馬倶楽部もご主人と一緒に立ち上げられたんですよね?

恭子さん「そうですね。主人が病気にかかっていたので、主人を励ましたかったので作りました。」

●ご主人もここにいるたくさんの馬たちに癒されていたんですね。ここに通われる方はご主人と同じように、馬たちに癒されてるんですよね。

恭子さん「そうですね。『ここに来ると落ち着く』と言ってくださる方が多いですね。」

●私も今回ここに来て、すごく落ち着きました(笑)。世界には色々な生き物がいますけど、馬って昔から私たちと一緒に生活してきた生き物ですから、潜在的に身近に感じるんじゃないかと思います。

恭子さん「そうですね。犬と同じぐらい長いパートナーですよね。」

●そういう意味でも、競走馬として引退した後も幸せに生きてほしいですよね!

恭子さん「そうですね。サラブレッドって選りすぐりの血統で、すごく大切に育てられた存在なので、たとえ競馬で使われなくなったことで終わらせるというのはもったいないと思っているんですね。なので、活かせる方法がたくさんあったらいいなと思います。」

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馬を愛する沼田恭子さんと。

●沼田さんは被災馬を保護する活動もされていますよね?

恭子さん「そうですね。震災が起きた当初は、食料支援や馬のレスキューとかもやっていましたが、去年3頭の馬を協会の方に譲り受けて、その馬たちの終生を見るために、鹿児島のホーストラストに預けています。」

●そのお馬さんたちは、そこでのんびりと過ごしているんでしょうね。

恭子さん「のんびり過ごしてくれていると思います。」

●最後にうかがいたいんですが、沼田さんにとって“馬の魅力”ってどんなところにありますか?

恭子さん「馬って穏やかで大きくてキレイな動物ですよね。なので、一緒にいるだけで癒されますし、落ち着く存在ですね。」

●では、今年2014年は午年なので、引退馬協会としての今年の目標は何でしょうか?

恭子さん「引退馬協会としては“競走馬を引退したサラブレッドが1頭でも多く活かされること”を目標にしていますので、日本中に馬が活かされている景色が増えることを願っていますし、1ヶ所でも多く増やしたいですね。」

YUKI'S MONOLOGUE ~ゆきちゃんのひと言~

 短い時間でしたが、今回乗馬を体験させてもらって、馬の温もりや優しさ、そして人と馬との信頼関係を改めて感じました。昔から畑を耕す農耕馬や荷物を運ぶ馬車、そして移動用に使われていた馬がいたりと、馬は人間の大事なパートナー。そう思うと、午年の今年は沼田さんのおっしゃっていた、引退した競走馬のこと、そして“馬がいる風景”のことをしっかりと考えていきたいと思います。

INFORMATION

乗馬倶楽部・イグレット

 沼田さんが代表を務める乗馬倶楽部・イグレットでは、乗馬体験ができます。料金は30分で保険料を含め3,250円。また、3歳から小学生限定の「ポニー体験」は15分で、同じく保険料込で2,200円となっています。他にも初心者を対象にした乗馬スクールもあります。

NPO法人・引退馬協会

 NPO法人・引退馬協会では、随時会員を募集しています。会員は“一般会員”“フォスターペアレント会員”“賛同会員”の3タイプ。このうち、里親として直接支援するのは“フォスターペアレント会員”で、会費は月額1,000円。維持管理費は月額2,000円からとなっています。

フォスターペアレント制度

 引退馬協会の里親制度“フォスターペアレント制度”で、現在直接支援している馬は全部で10頭。その内、イグレットにいるのは、「ハリマブライト」と「トウショウフェノマ」の2頭。残りは北海道や鹿児島の牧場にいます。他にも引退馬協会の体外支援「引退馬ネット」では11頭の馬をサポートしています。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. BOOM! / MAIA HIRASAWA

M2. SPANISH HORSES / AZTEC CAMERA

M3. DREAMS / THE CRANBERRIES

M4. WILD HORSES / GARTH BROOKS

M5. SOMEONE TO CALL MY LOVER / JANET JACKSON

M6. ハピネス / AI

M7. SO MANY WAYS / CAROLE KING

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」