今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、森沢明夫さんです。
千葉県在住の人気作家・森沢明夫さんには、日本の海岸線を旅する“渚の旅人”として2007年にご登場いただいて以来、何度かこの番組にご出演いただいています。そんな森沢さん、今や売れっ子作家として大変注目されていて、2011年には小説「津軽百年食堂」の映画化、2012年には高倉健さんの主演映画「あなたへ」を森沢さんが小説化したことで話題になりました。そしてつい最近では、森沢さんの小説で千葉県に実在する喫茶店をモデルにした作品「虹の岬の喫茶店」が原作の映画、それも吉永小百合さん主演の映画が製作されるという驚きのニュースがありました。今回は森沢さんにその映画のことや、昨年出版された心温まる絵本のお話などうかがいます。
●今回のゲストは作家の森沢明夫さんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします。」
●森沢さんといえば、“渚の旅人”として2007年の5月に出演していただいてから、何度もこの番組に出ていただいていますが、そんな森沢さんは昨年、渚を旅したときに出会った喫茶店を舞台にした小説「虹の岬の喫茶店」の映画化が決まったんですよね! おめでとうございます!
「ありがとうございます。」
●どういった経緯で映画化が決まったんですか?
「吉永さんもこの本を読んでくださってくださいましたし、東映の方も気に入ってくださったので、それがキッカケで映画化が決まりました。」
●あらすじを簡単に教えていただけますか?
「人気のない岬の先端にある小さな喫茶店があって、そこにおばあさんが一人住み込みで営業しているんですけど、そこへ心に傷を負った人たちが訪れていって、おばあさんに癒されることで人生の再生が始まるといった話です。」
●実際にある喫茶店が舞台なんですよね?
「そうなんですよ。内房にある鋸山の麓辺りにある“喫茶・岬”がそうなんですけど、そこを僕が以前訪れて気に入りましたね。その建物もすごく素敵だったので、それをモチーフにドラマを考えました。」
●その喫茶店は、千葉の方にとってはおなじみの場所じゃないでしょうか。
「昔はそれほどでもなくて、知る人ぞ知る喫茶店だったんですが、最近は本が出たこともあってか、人がたくさん来るようになりましたね。」
●その喫茶店を舞台にした小説が映画化されるということですが、主演が吉永小百合さんなんですよね?
「そうなんですよ。本当光栄ですね!」
●共演者の方も豪華なんですよね?
「阿部寛さん、笑福亭鶴瓶さん、竹内結子さんなど、かなり豪華な俳優陣になっています。」
●今、日本を代表する俳優さんたちばかりじゃないですか! 監督はどなたなんですか?
「監督は“八日目の蝉”で日本アカデミー賞10冠を獲得した成島出監督です。」
●素晴らしい監督と素晴らしいキャストで映画化されるんですね! これから撮影が進んでいくと思いますが、千葉の美しい海や自然も入ってきますよね。
「そこはすごく景色がいい喫茶店で、東京湾の先に横浜や横須賀が見えて、さらにその先には富士山が見えるんですよ。その景色は絶景なので、そこを余すところなくキレイに映像化されると思います。」
●そういう美しい景色も映像化されると、全国の皆さんにも知っていただくキッカケになりそうですね!
「日本中探しても海の向こうに富士山が見える景色ってそんなにないと思うんですよね。その景色は千葉県の誇るべき風景だと思うので、全国の皆さんに見てもらいたいですね。」
※森沢さんは小説やエッセイなどの作家としておなじみですが、昨年は、パンダ模様の泣き虫ウサギ“ミミっち”がおばあさんの病気を治すため、勇気を出して冒険する「虹の森のミミっち」という絵本を出されました。どうして森沢さんが絵本を出したのでしょうか?
「これは、先ほど話した“虹の岬の喫茶店”の中に出てくる小さな女の子が好きな絵本が“ミミっち”なんですね。この小説を書いているときに、僕の中で『この絵本を本当に絵本にしよう』と思っていました。」
●小説の中のものを具現化したんですね!
「僕の小説って、実は小説同士で繋がりがあるんですよね。ある小説に別の小説に出てくる人が出てきたりするんですよね。」
●いわゆる“カメオ出演”ですね。そんな繋がりのある今回の絵本ですが、本を書くのと絵本を書くのとでは、勝手が違ってくるんじゃないですか?
「絵本は短い分文章の中に全てを込めないといけないので、それはそれで難しいんですよね。それと、実はこの絵本、最初は違う内容を書いてたんですね。『子供にはこうなってほしいな』という流れで書いていたんですけど、イラストレーターの加藤美紀さんが『森沢さんらしくないな』ってダメだしをしてくれたんですよ。それで『こういう話はどう?』っていうことで、僕が子供を毎晩寝かしつけるときに即興で話していたものの中から、子供がお気に入りだったものを話したら、『それ面白いじゃない!』っていうことで、書いたものがこの絵本なんですね。」
●お子さんが小さいときに森沢さんが実際に話していたものをそのまま絵本にされたんですね! その絵本ができたとき、お子さんも喜んだんじゃないですか?
「『どこかで聞いたことがある』と言ってましたね(笑)」
●(笑)。小さいころから親から絵本をたくさん読んでもらうのって、すごくいい経験になりますよね!
「脳科学的にもいいとテレビ番組などでも聞いたので、いいなと思いましたね。」
●情緒が豊かになりそうですし、ボキャブラリーも増えそうですよね。今回の本は“大人も感動できる内容に”ということで書かれたそうですが、大人が読んでも気づきがありますよね。
「そうですね。意外と大人の読者が多くて、インターネットを通じてメッセージをたくさんいただいています。」
●私も絵本が好きで、軽井沢にある絵本の美術館に行ったこともあるんですけど、森沢さんはお気に入りの絵本ってありますか?
「“泣いた赤鬼”という絵本は、子供のころはもちろんのこと、大人になって読み返してもすごく響きますね。」
●どんな話でしたっけ?
「人間と友達になりたい赤鬼のために青鬼が悪い奴のフリをするんです。それで赤鬼が青鬼をやっつけるフリをして、青鬼はそこからいなくなってしまうんですね。それがキッカケで赤鬼は人間と仲良くなれたけれど、青鬼が赤鬼の前に現れることはなくなってしまったんですね。それで、大事な友達を失ってしまって悲しむという話なんです。これこそまさに“友情”ですよね。」
●絵本にしては珍しい、悲しいお話ですね。
「そうなんですよ。いいお話なんだけど、悲しいお話なんですよね。」
※昨年、森沢さんは絵本以外にも「22世紀の般若心経」という本を出されました。どうして般若心経に注目されたのでしょうか?
「新作の小説を書こうと思って、何か名言や素敵な教えないかと思ってインターネットで調べていたんですね。そのときに『そういえば、般若心経の意味を知らないな』と思って、調べてみたんです。僕はそれまで、般若心経ってお経だから、死んだ人を成仏させるためのものだと思っていたんですけど、よく調べてみると、お釈迦様が生きている人たちに対しての癒しと許しの教えだったんですよね。 『生きるって素敵だよ』と言ってくれている教えだったので、そのことに感動して『これはみんなに教えないと!』と思って、作家の言葉で超訳して、“世界一分かりやすく”しようと思って書いたのが、この本です。」
●般若心経って全て漢字で書かれているので分からないですし、意味を理解するのが難しかったんですけど、森沢さんの本を読んで「なるほど。こういうことが書かれていたのか」と思って、すごく分かりやすかったです。
「読んだら分かったと思いますけど、死んだ人向けのものじゃないですよね?」
●そうですね。生きるヒントだったり、前向きになれるメッセージがたくさん詰まっていましたね。
「多分、人生が楽になるんじゃないかと思いますね。」
●また、タイトルが素敵ですよね! このタイトルにはどんな想いが込められているんですか?
「なぜ“22世紀”という言葉をつけたかというと、『この教えが100年後、22世紀になったころには、世の中のほとんどの人が普通に知っていて、みんなが普通に幸せになっていて笑顔になっているといいな』という想いを込めてつけました。」
●今回、素敵な写真も載せていますよね。
「古財秀昭さんという動物園の写真を撮っている方が撮影された写真を載せているんですけど、すごくシンクロしていると思ったんですよね。」
●文と写真が驚くほどピッタリなんですよね!
「実はこれ、みんなで選んだんですよね。」
●少しご紹介すると、シロクマが水の中で仰向けになって浮かんでいる写真があるんですが、そのときの言葉が「ふわり ふわり 心が浮かんでいるような 平和で しずかで やさしくて 広々とした ほんとうの世界に すべてをゆだねてみるかい? ほら、力を抜いてごらん」と書かれているんですよね。まさにこのシロクマの気持ちを表している言葉ですよね!
「写真にピッタリですよね!」
●自然の生き物たちって、あらかじめこういうことを知っていて生きているように感じますよね。
「自然の生き物たちって、お釈迦様の教えを知ってそうですよね。力を抜いて、楽に生きてますよね。」
●それに、すごくシンプルですよね。
「無駄なこと考えてないですよね。昔お釈迦様が説法をしたとき、動物が聞きに集まってきたといわれているんですよ。そういう話もあったので、今回の写真を見たときに『ピッタリだ!』と思いましたね。」
●もしかしたら、動物たちの方が身近に感じているかもしれないですね。
「般若心経って、『全ては幻だから、何も考えないで心を解き放って、自由に楽にしてればいいんだよ』というお話なんですけど、動物ってまさにそうじゃないですか。余計なことは考えてなくて、打算もなければ自分をカッコよく見せようともしないで、そのままで生きてるなと思ったんですよね。なので、この本の写真を初めて見せてもらったときに『これは般若心経とピッタリだな』と思って、僕の中ですごくフィットしたんですよね。」
(この他の森沢明夫さんのインタビューもご覧下さい)
森沢さんの小説の舞台となった千葉県の鋸山の麓、明鐘岬に実在する喫茶店、私はまだ行ったことがないのですが、写真を見て、そこから見える景色が本当に美しいので、ぜひ一度行ってみたくなりました。キラキラと光る海とその向こうにある雄大な富士山。そんな景色が映画になるのも、すごく楽しみですね。
千葉県の明鐘岬に実在する喫茶店をモデルにした森沢さんの小説「虹の岬の喫茶店」を原作とした映画「ふしぎな岬の物語」は吉永小百合さん主演で初のプロデュース作品。監督は成島出さんで、共演は笑福亭鶴瓶さん、阿部寛さん、竹内結子さん他。クランクインは2月で、公開は秋の予定となっています。
TOブックス/定価1,575円
パンダのような泣き虫ウサギ「ミミっち」を主人公とした絵本「虹の森のミミっち」は、大事なことは何かを教えてくれる素晴らしい絵本。子供だけじゃなく、大人も胸がキュンとする内容です。
主婦の友社/定価1,365円
副題に「読むと心がふわっと軽くなる」とあるように、温かい言葉に気持ちが楽になります。なにより、分かりやすい文章と動物園で撮影された、今まで見たこともないような動物たちの写真に癒されると思いますよ。
その他、森沢さんの近況はオフィシャルブログ「あおぞら落書帳」をご覧ください。