今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、山口健太さんです。
自転車で世界を旅してこられた山口健太さんは、アジア、ヨーロッパ、アフリカの3大陸を2年7ヶ月かけ、4万8千キロを走破。そして5月13日に帰国されました。なぜ自転車で世界を旅したのか。実は山口さん、2009年にアメリカのコミュニティ・カレッジに留学していたときに、自転車で3ヶ月かけてアラスカ州からワシントン州シアトルまでの7,000キロを走り、すっかり自転車の旅に魅了されたそうです。そして、その旅で、自転車で5年かけて世界一周にチャレンジしているドイツ人の旅人に出会い、衝撃を受け、いつか自分も世界を見てみたいと思い、ついには世界に飛び出しました。今回はそんな山口さんに、人力の旅だからこそのリアルな体験談をうかがいます。
●今回のゲストは、自転車で世界を旅してこられた山口健太さんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします」
●山口さんは、アジア・ヨーロッパ・アフリカの3大陸を自転車で2年7ヶ月かけて旅をされて、5月13日に帰国されたばかりです。今回は、その旅の話をたっぷりとうかがいたいと思います。まずは、そのルートを説明していただけますか?
「2011年の9月末に飛行機でインドネシアのバリ島に行って、5ヶ月かけて東南アジアを回った後、中国に入りました。そこからカザフスタンに行ってから中央アジアに入り、アルメニア・グルジアを走った後、トルコ。そしてインスタブールに2012年の12月に着きました。そこからオーストリアに渡って雪解けを待って、春にヨーロッパを走り、スペインからジブラルタル海峡を渡って、西アフリカのモロッコ。そこから東アフリカにあるケニアのナイロビまで飛んで、喜望峰まで行ってから、2014年の5月1日にゴールしました。元々ここまで線をつなぐことにこだわりはなかったんですが、地図を見て自分が走ったところを線でつないでみると、『もっとつなぎたい』という気持ちになってきたんですよね(笑)」
●それは自転車の旅ならではですよね!(笑)
「自転車に乗ってる人は、その気持ちが分かると思います(笑)。始めた頃、インスタブールに行ってから南米に行こうかと思ったんですけど、走っている間にアフリカのことを聞く機会が多くて、『アフリカに行きたい』と思って、途中で計画を変更して、アフリカに行くことにしました」
●ということは、ゴールは決めずに行ったんですね。
「そうですね。ゴールは決めていませんでしたね」
※実は山口さん、ボツアナで野生のゾウに出会い、こんな思いをされたそうです。
「ボツアナにはゾウがいっぱいいるんですね。ゾウが道端にいたので写真を撮っていたら、子ゾウをかばおうと、親のゾウがすごく怒ってるんですよ。それまでにサファリとかでゾウを近くで見ているので、慣れてるつもりだったんですけど、自転車に乗っているときにゾウと遭遇すると、車の中では感じられない殺気をものすごく感じたんですね。すぐに逃げようとしたんですけど、足がガクガクになってて、走り出すことができなかったんですよ」
●確かに、動物園で見るゾウって、「かわいい!」って思うじゃないですか。そんなゾウから殺気を感じるのは、自転車の旅ならではの体験ですよね。そんな近くにゾウがいるんですね。
「他にも、ケニアとタンザニアの国境にはキリンがいましたし、バブーン(ヒヒ)も普通のサルじゃなくて、大きくてアクビをすると大きな牙がすごく出てるんですよね。あれの群れの横を走るときはすごく怖かったですね。荷物の中に食料とか入ってるじゃないですか。たまにバナナとか入っていたりするんですよ。そのときは『何もしないでくれ!』って祈るばかりですよね」
●旅の最中は基本的に野宿だったんですか?
「そうですね。でも、誰もいないようなところでキャンプするのは好きじゃないので、村とか人がいるところに行って、許可を取ってテントを張ることが多かったですね。アフリカの村は子供がすごく多いので、アフリカの村でテントを張ると暗くなるまで囲まれてしまうんですよ(笑)。それはそれで面白いんですけどね」
●(笑)。それがキッカケでコミュニケーションを取ったりして仲良くなったりするんですよね。
「それが自転車の醍醐味ですよね。観光客が行かないようなところに行って、色々な人に出会ったり、なかなかできないような体験ができるというのがよかったりするので、それが好きで自転車にずっと乗ってる人って多いと思うんですよ」
●山口さんは様々な国を移動して、つないで旅をしてきましたが、その国々で色々な特徴があったんじゃないですか?
「やっぱり宗教が違いますよね。生活に密着した宗教があったりして面白かったですね。あと、音楽ですね。中央アジアだと、聴いていると草原を駆け抜ける馬を想像できたり、アフリカだと陽気だったり、民族音楽を民族楽器で弾いたりしていたりするんですけど、それを聴きながら走るのって楽しいんですよね。もちろん、イヤホンをすると危ないので、小さなスピーカーで聴いてました。中央アジアの草原を駆け抜ける馬を想像するような音楽を聴くと、4,000メートルぐらいの峠もウキウキしながら越えられたりするんですよね」
●自分もそのリズムに乗って走っちゃうんですね!
「そうですね。西サハラを走っているときは、砂漠の中で生きている人たちの生活が思い浮かぶような音楽を聴きながら走ると、それはそれで面白いんですよね」
●そういう音楽を、現地の人たちはいつも演奏していたり歌ったりしているんですか?
「そうですね。中央アジアとかアフリカとかもそうですし、西アフリカだと歌謡曲みたいな歌があって、それが街角から聴こえてきたりしますし、携帯から音楽を流す人もいたりするんですけど、それも現地の曲だったりするんで、それを聴いてると楽しいですね」
●食事はどうですか?
「違いますね。特に中国は安くて美味しいものが多くて、1回の食事で300円ぐらいで済みますし、ご飯のおかわりが自由だったりするので、毎日たらふく食べてました。“食は中国にあり”って言われていると思いますが、小さな町に行くと冷蔵庫しか置いてないんですけど、その冷蔵庫の中から食材を選んで出してきて、『このぐらいのお金で、こういった料理を食べたい』って言えば、作ってくれるんですよね。それはすごいと思いました! 毎回美味しいご飯を食べることができてよかったです」
●2年7ヶ月に渡って旅をしてきて帰ってきましたが、今その旅を振り返って、どんなことを思いますか?
「何ヶ月も野宿生活が続いて、マットレスで寝る生活が多かったので腰も痛かったし、そんな生活をしながらも、よく帰ってこれたなって思います。それも、道中に助けてくれた方々とか、日本から応援メッセージを送ってくださった方々などのおかげですね。走っていると、自分の身に何かが起きてもおかしくない状態なので、皆さんに僕は“生かされている”と思うんですよね。なので、感謝の気持ちでいっぱいです。だから、僕は帰ってきて、何かをしないといけないんだと思いました」
●どんなことをしようと思っていますか?
「自分が経験してきたことを伝えていきたいということもありますが、将来的には発展途上国の人たちの自立支援をやってみたいですし、走っている間にも色々なアイデアがあったんですけど、それを今から形にしていって、行動に移していきたいと思っています」
●“伝えたい”ということですが、今、1つだけリスナーの方に伝えるとしたら、何を伝えますか?
「色々な国で色々な方にお世話になって、色々な旅人にも出会ったんですが、その中で僕は自転車で世界を周ることができてすごく幸せ者なんですけど、“家族から与えてもらえる幸せ”が人生の中で一番大切だと思いますね」
●それは何か経験したから、そう思うんですか?
「色々な国で色々な家庭にお世話になりましたし、長期間1人で旅をしている人と出会ったりしているうちに、そういう風に感じるようになりました」
●4万8千キロを走ってきた中で、一番忘れられない景色ってありますか?
「チベット高原の山の中を走ったり、中央アジアの景色もすごかったですが、僕の中で一番残っているのは、モーリタニアを走り抜けると砂漠の景色がずっと続くんですけど、セネガル川に到着すると、景色が一変するんですよね。森と水辺が出てきて、水辺からイノシシが出てきたり、水辺をよく見てみるとフラミンゴがいたりして、景色がすごく変わるので、すごく衝撃的だったんですよ。そのセネガル川を越えると、トレーディングポストの街があるんですけど、そこに行くと、アフリカのおばちゃんたちがカラフルな服を着て、頭にカラフルな巻物を巻いて、魚とか野菜を売ってるんですよね。あのときの景色の変化がすごくて、今でも脳裏に焼きついてます」
●すごいですね! 国によって違いますし、野生動物がいたり、色々な自然がある中で、人間もいる。そういった色々な風景が、この地球上にあるんだなと、お話を聞いて感じました。
(写真協力:山口健太)
砂漠があって、その先の川を越えるとフラミンゴがいて、その向こうには人々の暮らしがある。山口さんのお話をうかがっていると、地球の多様性に驚かされました。そして、それを自転車でつないでこられたように、全部つながっているんだと改めて感じることができました。これからも、その世界を見てきたグローバルな目線でたくさんのことを伝えてほしいですね。
アジア、ヨーロッパ、アフリカの3大陸を2年7ヶ月かけ、4万8千キロを自転車で走破した模様は、山口健太さんのブログをぜひ見てください。写真もたくさん掲載されていて、どんな旅だったのか、よくわかります。ブログを見ていると、一緒に旅をしている気分にもなれるし、山口さんの視点や考え方もよくわかりますよ。