今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、小日向孝夫さんです。
アウトドア・アドバイザーの小日向孝夫さんは「山と渓谷社」で編集長を歴任、また「日本山岳ガイド協会」の認定ガイドの資格を持つなど、山のスペシャリストでいらっしゃいます。今回はそんな小日向さんが現在、企画・運営をされている“山ガールネット”のことや、山で行なう婚活“山婚”のことなどうかがいます。
●今回のゲストは、アウトドア・アドバイザーの小日向孝夫さんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします」
●小日向さんが企画・運営されている“山ガールネット”ですが、これはどういう組織なんですか?
「女性が山に登る機会が増えてきたんですが、何も知らないで山に行くと事故が起きたりして危ないので、そういうことをないようにしようと思って、発足された組織です」
●いつ頃から活動されているんですか?
「もう4年目に入っています」
●4年前というと、山ガールが増え始めてきたころですか?
「最初の年は、サイトのアクセス数が数万人でしたが、段々増えていって、今では100万近い人たちがアクセスしてくれています」
●この4年間でそんなにも増えたんですね!
「毎年倍のペースで増えています。中高年の方々の登山ブームが十数年前にあったんですが、その方たちの年齢が段々と高くなっていって、最近は少なくなり、目立たなくなってきたんですね。その代わり、主にOLさんたちが健康・美容・自然回帰を求めて、登山を始めたんです。ただ、それまでのおばさまたちが着ていたウエアがあまりカッコよくないということで、ファッション面からも工夫を凝らした方たちが10年近く前から出てきました。
そして『山ガールってなんだろう?』と注目を集めるようになってきたのが、ここ4、5年のことで、そこから一般的になっていったということですね。昔は登山用の服で登山したら、そのまま帰っていくのが普通だったんですが、最近では帰りに温泉に入って、着替えてから帰るんですよ。これは面白い現象だと思いました」
●それが普通だと思っていました! 小日向さんは以前、「山と渓谷社」に勤務されていましたが、そのときは登山用の服を着たまま帰っていたんですね。
「そのときからも温泉に入る人はいましたけど、全体の半分もいなかったと思いますよ」
●そのときと比べると、登山の楽しみ方もかなり様変わりしてるんですね。
「そうですね。“普通の生活の延長線上として自然の中に行く”ということになってきたんでしょうね」
※小日向さんが企画・運営している“山ガールネット”でアンケートを取ったら、興味深い結果が出たそうです。
「“山ガールの実態”というテーマだったんですけど、OLさんの64パーセントに配偶者がいないんですが、36パーセントがいらっしゃって、その中の4分の1が子供もいらっしゃるんですね」
●大体何人ぐらいに聞いたんですか?
「1632人の方に聞きました」
●その方たちがどんな回答をしたのか、興味深いです。
「“一番多い登山暦”という項目なんですが、40パーセントぐらいの方が“1年~3年”で、“1年未満”の方が25パーセントぐらいいます。“行ったことのある山”だと、1位が“富士山”で、2位が“高尾山”、そこから“丹沢大山”、“筑波山”、“金時山”、“御岳山”、“鍋割山”という順番です。それが“行ってみたい山”となると、1位が“富士山”、2位が“槍ヶ岳”、そこから“奥穂高”、“白馬岳”、“木曽駒ヶ岳”、“乗鞍岳”、“剣岳”、“北岳”という順番になるんです。つまり、有名な山に行きたいということなんですね」
●ということは、「いつかは、あの山に登るんだ!」という気持ちがあって、皆さん真剣に登山をやろうとしているんですね。
「面白いデータがあって、“ウエアを選ぶポイント”という点でアンケートを取ったところ、1位は64パーセントで“機能性”だったんです。“デザイン”じゃないんですよ。デザインは19パーセントでした」
●じゃあ、機能性ありきで、可愛ければ、よりいいっていうことなんですね。“今、購入したいグッズ”というアンケート結果も面白い結果が出たんですよね?
「1位が“ザック”で、そこから“登山靴・レインウエア”で、3番目が高度計が付いている“登山用時計”なんですよ。“ザック”は登山の経験を積んでくると道具が段々と多くなってくるので、大きい物が欲しくなってくるんですね。“登山靴”も、最初はゴアテックスじゃないものを履いていた人が『やっぱりゴアテックスがあった方が濡れなくていい!』ということで、そういうものを買ったりするんですね。ただ、“登山用時計”が3番目だったのが意外でした」
●それはどういった背景があるんでしょうか?
「高い山に登ると、標高が気になってくるんですね。頂上の高さは分かっているんですが、自分は今どの辺りにいるのかが分からないから、それを登山用時計で数字として知ることができるから欲しいんだと思います。それに、方位磁石も大抵の登山用時計には付いているので、それで方角を知ることができるんです。となると、やっぱり求めるのは“機能性”なんですね」
●この結果を受けて、山ガールが出始めた頃と今を比べると、どんどん本格的になってきているということですね。
「おっしゃる通りですね。“欲しいブランド”という項目でアンケートを取ると、有名メーカーばっかりなんですよ。1位は“モンベル”で、“マムート”、“コロンビア”、“ノースフェイス”、“パタゴニア”という順番になるんですよ。ということは、そういうものを知っているということなんですね。僕は知ってるだけでもすごいなって思いました」
●皆さん雑誌とかで勉強されているんですね。
「だから、あんまりふわふわしていないということですね」
※“山ガールネット”では、初心者向けのイベントを開催しています。
「初心者には、山のノウハウを覚えてもらうということで、“山ガール・カレッジ”というイベントをやっています。これは、地図の読み方や天気の判断、山の楽な登り方と安全な下り方、植物や動物に対する知識などを、毎回テーマを変えて、勉強してもらうイベントです。その他にも“山ガール・チャレンジ”というものをやっていて、『一人ではなかなか行けないけど、誰か連れていってくれれば行ける』という人向けのイベントです。この夏では、北アルプスの穂高岳や燕岳(つばくろだけ)、赤岳、北岳に行く計画があります」
●確かに、一人だとちょっと不安だけど、仲間がいたら安心だし、みんなで行けば楽しいですよね! “山ガールネット”では、その他にも色々なイベントを予定しているんですよね?
「最近では“山婚”というイベントをやっています。今まで3回やっているんですが、男性・女性それぞれで気に入った人の名前を書いてもらって、お互いの名前を書いてカップルができたことを“成婚”と呼んでいて、その割合が30パーセントぐらいあるんですよ」
●結構な確率ですね!
「この“山婚”では、同じ趣味を持った人が集まっているっていうのが大きいですけど、それでも私たちは成婚できるように工夫していたりするんです」
●どんなことをしているんですか?
「休む度に隣の人を変えてもらったり、歩くときも上りと下りで歩く順番を変えてもらったり、食事はバーベキューなど、一緒にやらないとできないものにしたりといったことをしています」
●写真で拝見させていただいたんですが、ストレッチを男女でやってましたよね? あれはいいなと思いました。登る前って、距離感がありますよね。そこで一緒にストレッチをすることで、打ち解けるんじゃないですか。
「あと、一本橋を一緒に渡るということもしてますね」
●それは例の“つり橋効果”ですよね!?
「そのときには男の人に先に行ってもらって、必ず手を貸すようにしてますね」
●そういうドキドキすることを一緒に体験したり、キレイなものを一緒に見て感動を共有したりすることで、距離が縮まりそうですよね。
「やっぱり、女性はフォローしてくれる男性がいてくれた方がいいですよね。色々な山に行っているんですが、下りが長かったり厳しかったりすると怖いじゃないですか。そういうときにフォローしてくれる人がいてくれたら好印象を持ちますよね」
●男性の本質が見えそうですね! 私も独身なので、是非参加したいなと思ったんですけど、近々ではいつごろありますか?
「9月13日と14日に赤城山で行ないます。そこには赤城神社があるんですけど、そこは“縁結びの神様”が祭られているところなんですね。そこに祝詞をあげてもらってから登ります。そしてバーベキューをやったり飲み会をやったりします。お風呂は一緒に入ることはできませんが(笑)、帰りにお風呂に入っていただいて帰っていただきます。
そして、9月27日と28日にもありまして、これは上高地で行ないます。そこにある徳本峠(とくごうとうげ)は登るのに3時間ぐらいかかるんですが、感動的なぐらい穂高がキレイに見えるんですよ。そして、そこには穂高神社があるんですが、その中に“明神池”があって、そこにいる神主さんに祝詞をあげてもらいます。男性の参加がいつも少ないので、男性の方に是非とも来ていただきたいと思います」
※夏の登山で気になるのは“日焼け”ですよね。そこで、どんな対策をすればいいか聞いてみました。
「日焼けの原因は“紫外線”ですが、紫外線は標高が1000メートル高くなるにつれて10パーセントずつ増えていくんですね。例えば、富士山は3776メートルあるので、地上よりも35~40パーセント紫外線が強くなるんです。それに、紫外線は日焼けだけじゃなく、目にも入ってくるんですよ。だから、標高が高い山に行くときはサングラスをすることをオススメします。
日焼けって海岸でするイメージがありますが、海岸は標高が低いので、(紫外線の)割合的にはあまり高くないんですね。ただ、海岸は照り返しがあるので、結果的に強くなるんです。山も白い砂があるところだったり、雪があるところでは照り返しがありますし、海岸よりも紫外線が強いので、海よりも山の方が気をつけないといけないんですね」
●考えてみれば、お日様に近づいていくんですよね。日焼けにはかなり注意した方がいいですね。あと、水分補給ですが、どういう風に水分補給をするのがいいんですか?
「水分は“自分の体重×5×行動時間”で必要な量を計算できるんです。例えば、5時間歩くとしたら、1500ccぐらいということになります。そして、血液の中に入っている水分・塩分・鉄分などが汗として全て出ていってしまうので、休む度に水分を補給していく方がいいですね。つまり、出た分はすぐに補給することが大切なんです。ただ、重要なのは、水分以外も出ていってしまうから、総合的に補給しないといけないんですよ。だから、アルカリイオン飲料だったり、塩分と養分と一緒に水分を摂っておくといいんですね」
※最後に、この夏オススメの山をうかがいました。
「やはり“夏にしか行けない山”に行っていただきたいですね。まずは“富士山”ですが、これはありきたりなので、北アルプスに行ってほしいですね。初心者でも比較的登りやすいのが、長野県に安曇野というところがあって、そこから行ける“燕岳”がオススメです。そこには“燕山荘”という有名な山小屋があるんですが、ケーキやコーヒーなどを味わうことができますし、生ビールもありますし、夜にはご主人がアルペンホルンを吹いてくれるんです。そして、そこには“コマクサ”というピンク色の可愛い花があります。そして、ライチョウが親子でいます。さらに、北アルプスの盟主である“槍ヶ岳”と“穂高岳”が見えますし、夕陽も朝陽も見えますので、オススメですね」
小日向さんが「最近では日常の延長線上に山がある」とおっしゃっていましたが、山婚はまさにその1つですよね。同じ景色を見て、同じように美しいと感じる。それってすごく素敵なことだと思うんですが、そんな同じ価値観の方との出会いが山婚にはありそうだなと思いました。
小日向さんが企画・運営されている「山ガールネット」では、山で行なう婚活 “山婚”の他、初心者向けの登山講習“山ガール・カレッジ”や、ワンステップ上を目指したい方向けの“山ガール・チャレンジ”など、講習会も色々と企画されています。是非チェックしてみてください。