今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、森山伸也さんです。
アウトドアライターの森山伸也さんはキャンプ道具や食料を背負って、国内外のロングトレイルを歩く旅にすっかりハマってしまい、ここ数年は北欧“ラップランド”のロングトレイルにどっぷり浸っています。ラップランドとはヨーロッパ北部のスカンジナヴィア半島からロシア北西部のコラ半島まで広がる地方で、先住民族サーミ人が住んでいる地域。国でいうと、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ロシアの4カ国にまたがっていて、その大部分が北極圏に属しています。今回はそんなラップランドに魅了された森山さんに、トレイルを歩く旅について色々お話をうかがいます。
*ラップランドの写真協力:森山伸也
●今回のゲストは、アウトドアライターの森山伸也さんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします」
●この番組には3年ぶりに来ていただきました。そんな森山さんは先日『北緯66.6°北欧ラップランド歩き旅』という本を出版されました。タイトルからして面白そうなんですが、ラップランドを歩こうと思ったのはどうしてなんですか?
「ラップランドは日本では情報が少ないところなんですね。それが僕の好奇心を駆り立てて、色々調べていると、ロングトレイルがたくさんあることが分かったんですね。それを日本の皆さんに紹介したいというのが動機でした。実際に行ってみると、テントをどこにでも張っていいし、水も飲めるし、焚き火もしていいといった感じで、すごく自由なんですね。日本だと国立公園内の山だと焚き火ができなかったり、テントを張れるところも限定されてしまうなどの制限があるんですが、ラップランドは自由で危険な動物もいなくて、開放感を持って歩ける道なんです」
●最高じゃないですか!
「そうなんですよ! なので、毎年のように行って、これまで4回に渡って旅をしています」
●そんな最高な場所なのに、行く人があまりいないんですか?
「それが僕も未だに不思議に思っていて、アメリカやニュージーランドといった東側の国のトレイル情報はたくさんあるのに、ヨーロッパやそれより北の方の情報がないのが不思議なんですよ」
●もしかしたら、あまり知られてないから、人気がないのかもしれないですね。森山さんは4回行っているということですが、全部同じコースを歩いているんですか?
「いや、それぞれ違うコースを歩いてます。1回目は“北極圏トレイル”という800キロの道を歩きに行ったんですが、450キロぐらいのところで足が痛くなって途中でリタイアしてしまいました。2回目はサーレク国立公園というスウェーデンの国立公園に行きました。そこは足の踏み跡とかがないし、小屋もないという自然そのままのところを地図を見ながらテントで寝泊りしつつ、100キロほど歩きました。3回目は北極圏トレイルと“クングスレーデン”というスウェーデンで一番有名なトレイルがあるんですけど、そこと合わせて850キロほど歩きました。4回目はノルウェーのロフォーテン諸島というところを100キロほど歩いてきました。4回歩きましたが、まだまだ広くて歩きたいところがまだたくさんあります」
●何回も通いたくなるということは、それだけ色々な道があるからということですか?
「そうですね。道がたくさんありますし、ラップランドのいいところは“道じゃないところも歩ける”んですよね。ツンドラ気候で低木ばかりなので、自分の好きなところを地図を見ながら好きなところを歩けるんですよ。そういう自由さが楽しいんですよね。トレイルも楽しめるし、道がないところも歩けるということで、懐が深い大地だと思います」
※森山さんは、ラップランドでどんな夜を過ごすのでしょうか?
「それがまた楽しいんですよ。午後になると『今日はどこに寝ようかな?』って思いながら場所を探しつつ歩いているんですが、午後5時頃になると歩き終えてテントを張って寝ます。とはいえ、向こうは白夜で、8月の上旬とかだと午後11時ぐらいまで明るいんですよ。なので、ついつい歩いちゃうんですよね。先ほど、1回目は足を痛めてリタイアしたって話したかと思いますが、それは白夜のせいで歩きすぎたからなんです(笑)。
その白夜もラップランドの魅力の一つで、いつでも歩けるんですよ。例えば、朝起きて雨が降っていたとしたら、とりあえず待つじゃないですか。それが13時に晴れたとしたら、13時から22時頃まで歩けますよね。なので、自分が考えたプランで歩けるので、そういった“白夜の世界で歩ける楽しみ”もありますね」
●時計は見ないんですか?
「あまり見ないですね。歩いている間は特に見ないです。ずっと明るいので、時間に左右されずに歩きたいときに歩いて、疲れたら寝るといった感じです。時間から解放されるというのは、日本にいると難しいですけど、白夜の世界ではそれができるんですよ。それも魅力ですね」
●ありのままですね。
「そうですね。近くにトナカイがいたりするんですが、トナカイと同じような気持ちで、ご飯を食べたいときに食べて、歩きたいときに歩くといった感じですね」
●森山さんがラップランドを旅していて、印象的な人との出会いってありましたか?
「ノルウェーの方なんですが、その人は僕と同じトレイルを歩いていたんですが、その人は釣竿を持っていたんです。彼は北極のサーモンなどを釣って、それを食べながら歩いている人だったんですね。それを見て、僕も将来やってみたいなって思いました」
●現地の方はそういう旅のスタイルが多いんですか?
「多かったですね。ブルーベリーを摘みながらだったり、キノコを採りながらだったりと、大地の恵みをいただいて、それを食べながら歩くという方が多かったですね。毎日歩いているとお腹がすくので、すごく羨ましかったです」
●旅をしているときの装備も違ってましたか?
「装備もすごくクラシックで、日本だと乾きやすいパンツやゴアテックスのジャケットといったスタイルだと思うんですが、向こうの人たちはそういったところを深く考えてないようで、ウールのパンツやウールのジャケットを着たり、セーターを着たり、レインブーツを履いて川の中を歩いていたりするんですよね。自然だけじゃなく人も自由で、自分のスタイルで山を楽しんでるんですよ。自由な自然に惹かれて行ったんですが、そういった人にも惹かれました。それらがうまく絡み合って、ラップランドの魅力になってるんだと思いましたね」
●そんな方たちとどんな話をしたんですか?
「向こうの人たちにとってはアジア人が珍しいみたいで、『アジア人を初めて見たよ』とか『日本ではどんなものを食べているの?』といった感じで、トレイルのことだけじゃなくて、日常生活のことを話したりしましたね」
●また会いたいですか?
「会いたいですね。北欧の人たちって謙虚で、助けを求められたら何も見返りを求めずに、自分たちが知っている情報などを提供してくれたりしてくれるので、温かい人ばかりなんですよね。そういったところが日本人に似ているなって思うんですよ。そういう人の魅力も、僕がラップランドに惹かれている要素だと思います」
※この他の 森山伸也さんのトークもご覧下さい。
北欧の人たちが日本人に似ているというお話は印象的でした。確かに、音楽、インテリア、雑貨など、好みに通じるところがありますよね。そんな北欧を旅した森山さんの初の著書『北緯66.6°北欧ラップランド歩き旅』は、本の帯に「世界でいちばん自由に歩ける”道”だった」と書かれているように、自由に旅されたエピソードが満載で、すごく面白いです。興味がある方は是非チェックして下さい。
本の雑誌社/本体価格1,500円
森山さんの初となるこの本は、2008年から2010年にかけて行なったロングトレイルの歩き旅の模様が綴られています。ラップランドのロングトレイルの情報が満載なので、行ってみたいなと思った方には、旅のガイドブックにもなると思います。
森山さんのブログには、旅の模様などが書かれていますので、是非ともチェックしてみてください。