今回から2週にわたってスペシャル・エディション「ベスト・オブ・ザ・フリントストーン2014」をお送りします。
2014年も50組を越えるゲストの方にご出演いただきました。今年は午年ということで、千葉県香取市にある乗馬倶楽部イグレットの取材から始まり、4月にはこの番組が23年目に突入。5月にはシェルパ斉藤さんの指導のもと、長澤初めてのキャンプ体験。8月には幕張メッセで開催された「宇宙博」を取材。10月には手賀沼でナイトウォーク、水面に浮かぶ皆既月食を楽しみました。そして12月からチャレンジとしてシリーズ「異常気象」をスタートさせました。
簡単に振り返っただけでも、色々な分野の多彩なゲストにお話をうかがい、さらにはアウトドアでの取材や体験も多かった、そんな1年だったと思います。
そこで“ベスト・オブ・ザ・フリントストーン2014パート1”ということで、今回は今年1月から6月までの上半期からセレクトした5人のゲストの方の、また聴きたい、記憶に残るメッセージをお届けします。
※まずご登場いただくのは、石の斧で家を造る大工の雨宮国広さんです。山梨県甲州市にある雨宮さんの作業場を訪ね、近くの雑木林でお話をうかがいました。石斧は、縄文時代の人たちが木を倒したり加工したりするときに使っていたとされる道具ですが、雨宮さんは電動の道具ではなく、石斧はじめ、鉞(まさかり)など、手道具を使うことにこだわってらっしゃいます。それはなぜなんでしょうか?
雨宮さん「まず、気持ちがすごく入り込むんですよ。今のものづくりの工程って、電話一本で材料が角材として加工された状態で自分に届くんですね。中には、さらに刻まれていて、あとは組み立てるだけという状態になっているときもあります。それに対して、手道具だと、斧を担いで山に入って何百年も生きた木と向き合って、拝んでから斧を入れて木を伐り倒すことになるんですね。そうなると、その木と向き合う時間がたくさんあって、『この木の枝の先まで無駄なく使おう』という気持ちになってくるんですよ。
そこから“鉞(まさかり)”などで角材にしたり、“まいびき(ノコギリ)”で板にしたり、“ちょうな”で削って滑らかにしたりすることで、木と友達になれたり、“大切に使おう”という気持ちが芽生えるんですね。仕事にもそういう気持ちや汗が入り込んだりするので、出来上がりが機械とは明らかに違うと思います。そういうものが昔の民家だったり、みんなの拠り所になる建物になると思うんです。それは、ものづくりの過程で込められた人々の想いや祈りを感じるからだと思います」
●木はただの材料じゃなくて、友達なんですね!
雨宮さん「友達と言ったら大げさかもしれないですけど、お互い欠かせない存在ですね」
●そこから石斧と出会いましたが、石斧は別格ですか?
雨宮さん「そうですね。どこが別格かというと、仕事をしていて、最高に気持ちいいんですよ! 電気道具との違いは、電気道具だと『僕はこうしたい』という無理強引が利くんですね。それに対して石斧だと、相手の気持ちになって寄り添っていかないと、跳ね返されるんですよ。絶対に無理強引が利かないんです。木が割りたい方向とかを読み取らないと伐れないんですよね。それが人間が本来持っている体内時計や感覚すべてに一致してきて、電気道具で作業するより時間はかかりますが、それが相手を理解することに繋がって、相手に寄り添うことで一体になれるかを分からせてくれるんです。そして、木だけじゃなく、周りの風や色々な動物の鳴き声などすべてと一体となって、仕事ができるんですよ」
※続いては、NPO法人「風と土の自然学校」の代表・梅崎靖志さんです。風と土の自然学校は、環境教育のスペシャリストとして活躍されている梅崎さんが2011年に立ち上げた自然学校で、拠点は山梨県都留市にある古民家。そこにご家族3人で暮らし、お米や野菜づくりなど、循環型の田舎暮らしを実践してらっしゃいます。どんな暮らしぶりなんでしょうか。
梅崎さん「よく田舎暮らしを“スローライフ”といわれますけど、スローライフは忙しいんです。田舎暮らしって、自分の手で自分の暮らしを作らないといけないじゃないですか。そうすると、種を撒いたり草を刈ったりするだけじゃなく、僕の奥さんがやっていることですけど、自分で使う酢を柿で作ったり、大根を刻んで干すと切干大根ができるので、干したりしています。買ってくることもできますが、買う代わりに自分で作るんですね。
そうなると、やることがたくさんあるんですね。ただ、それは『忙しくて大変!』ということではなくて、“自分の手で自分の生活に必要なものを作る”ということが楽しいことだと思うので、忙しさと同時に楽しさもあるんですね」
※梅崎さんは“パーマカルチャー”という考え方をベースに活動されています。 “パーマカルチャー”は、“パーマネント(永久な)”と“アグリカルチャー(農業)”、または“カルチャー(文化)”という言葉をひとつにした造語。人間にとって永久的に持続可能な環境を作りだすためのデザイン体系のことで、1970年代にオーストラリアで生まれました。そんな“パーマカルチャー”について具体的に話してくださいました。
梅崎さん「パーマカルチャーというのは、自然の循環の中に自分の暮らしを入れることが大事だと思うんですね。例えば、自分が食べるものを自分で作ることだったり、エネルギーを自然の中から得ることがそうだと思うんですよね。具体的にいうと、先ほど田んぼから出た“もみがら”でピザを焼きましたよね。それに、今だと山に木がありますが、それを伐採して、そのまま捨てられるものがありますよね。そういったものをもらってくれば、薪として使えるじゃないですか。
なので、パーマカルチャーは『これをしないといけない』っていうことはなくて、100人いれば100通りのパーマカルチャーの考え方があって、それを完璧にするのは大変かもしれないですけど、できることは、都会暮らしだとしても必ずあるんですよ。例えば“ダンボール・コンポスト”というものがありますが、それを使えば、米ぬかと生ゴミを混ぜることで発酵分解していくんですね。そうすれば、生ゴミの量が減らせるだけじゃなくて、できた堆肥をプランターに入れるとか、地面があるところに返していくこともできますよね。だから『環境のために!』っていうより、どうやって自分の暮らしを自分の手で作りながら楽しむのかを考えながらやることが大事だと思います」
※今年を振り返ってみると、この番組の1つのキーワードとして“林業”があります。
林業女子の竹内雅絵さんに来ていただいたり、「日本に健全な森をつくり直す委員会」主催の林業支援イベントを取材したりと、2014年のフリントストーンは“林業YEAR”だったといえるかも知れませんが、そのキッカケになったのは、5月に公開され、大ヒットした映画「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」でした。エンターテインメントとして楽しめ、そのうえ、しっかり林業を表現してらっしゃる矢口史靖監督の手腕は素晴らしいと思いましたね。そんな映画「WOOD JOB!」の、あるシーンにからめて、矢口監督がこんな話をしてくださいました。
矢口さん「中村林業の親方の清一さんが車の中で勇気君に『自分たちが普段切ってる大木は、自分たちのおじいさん、ひいおじいさん辺りの人たちが植えた木で、植えた人たちの顔も知らないんだ。それを伐って、市場に出して、生活の糧にしている。そして、自分たちが普段植えている小さな苗が大きくなって、伐られるときには自分たちが死んでいて、子や孫、さらにその先の世代の人間たちが伐る。でも、その成果を見ることはできない。だから、過去を受け継いで、未来を作っていく一部分しか自分は担当できないんだ』という話をするシーンがあるんですね。
その話は、実は取材のときに林業家さんから聞いた話をそのままセリフにしました。だから、林業って、自分の人生の中だけでは完結しない仕事をしているという壮大な一面と、チェーンソーで切ったり高いところに登ったりというパワフルな一面の二面性がある不思議でカッコいい神聖な仕事なんだと思っています。
土に苗を植えるという作業が一見すると農家に似ているので、農業に見えなくもないんですけど、農業だと、植えて収穫できた野菜を自分で食べても美味しいですし、食べていただいた方からの『美味しい』というリアクションがモチベーションになるじゃないですか。でも林業は、自分が死んだ後にそれが実現するという不思議な一面があるんです
※今年6月には、神奈川県の三崎にあるシーボニア・マリーナで開催された海洋冒険家・白石康次郎さんの“リビエラ大人の海洋塾”に参加し、取材させていただきました。大型の手漕ぎボート“カッターボート”を使った“地獄の特訓”カッター講習のあとに、豪華なクルーザーでセーリングの体験もしましたが、ヨットで単独世界一周を3度も成し遂げた白石さんがセーリング中にこんな話をしてくださいました。
白石さん「2ヶ月もすればサンフランシスコですね。気持ちいいでしょ?」
●気持ちいいです!
白石さん「風のパワーでだけで10トン近い船を動かすんですよ」
●今こうやっている数分間でも風が結構変わるじゃないですか。頻繁に様子を見ているんですよね?
白石さん「そうですね。例えば、低気圧が通過しているとかスコールが発生したりすると、頻繁に風が変わるので、そのときは休むことができないです。逆に風が弱くなったら、セイル面積を広くしないといけないので、メインセイルを上げていかないといけないので、それもまた大変ですね」
●白石さんはこれで世界一周をしたじゃないですか。夜とか眠れたんですか?
白石さん「1時間以上寝ないですね」
●大変ですね!
白石さん「楽をしにいっているんじゃなく、大変なことをしにいっているんで、大丈夫ですね。そんな大変の向こうには幸せが待ってるんですよね」
●どんなときに幸せを感じましたか?
白石さん「船と自分と風と地球が一体になる瞬間があるんですね。海を渡っていて、渡った先には家族や仲間が待ってるんですよ。それってすごく嬉しいことなんですよね。なので、海を渡っていると、行く前の地球と行った後の地球はちょっと違っているんです。より輝いて見えるんですよ。そういう苦難がなければ、輝かないんですよ。モノって、磨かないと輝かないじゃないですか」
※セーリングを楽しんでいると、急に天候が変わり、海上が霞んできました。
白石さん「もう200メートル前は見えないですね。こういうときに船と衝突したりするので危険ですね」
●目印がないって怖いですね。
「これだと方向を失ってしまいますよね。皆さん、ヨットが突然出てくるかもしれないので、周りをよく見てくださいね! 何かあったら教えてください!」
●こういうときには、どういう風に対処するのがいいんですか?
「見張りを厳重にすることですね。発見が遅れると当たってしまいますからね」
●あまり動かない方がいいんですか?
「いや、よく見ていればいいんです」
●世界一周をしているときも、色々な天候の変化に対応してきたんですよね?
「そうですね。ガスったり、雨が降ったり、風がなかったり、嵐が何日も続いたりしましたが、自然って人間が作り出したものじゃないので、“何が起こるか分からないのが常”なんです。それにどう対処するのかが問われるんですよ。『こうあってほしい』という希望は海にはないんですよ。でも、絶望もなければ、楽観もないし、悲観もないんです。だから、そのときそのときで適切な対応を的確に対処すればいいんです。だから、どんなことが起きても冷静に対処できるように、日頃訓練を積むんですよ」
※今回最後にご登場いただくのは、フォトグラファーの杏橋幹彦さんです。杏橋さんは、酸素ボンベを付けずに海に入り、波の裏側を撮る写真家として大変注目されています。そんな杏橋さんが波の裏側で起こっている現象や色について、こんな興味深い話をされていました。
杏橋さん「美しいものに言葉はなくていいと思うんですね。それほど誰にも汚されてないと思うんですよね」
●強いて言えば、琉球ガラスの泡が入った状態でしょうか。でもそれとも違う感じがします。
杏橋さん「雨って海の水じゃないですか。それが海に戻っている瞬間でもあるんですけど、その風景がガラス細工みたいにキレイで不思議ですよね。雲みたいな写真がいくつかあると思いますが、雲って空気の中にある水の分子が集まったものですけど、この“水の中の雲”も同じものだと思うんですね」
●写真を見ていただければ分かると思いますが、空にある雲と同じ形をしているんですよ。ただ、色が濃い青なんです。まるで水墨画のようですね。
杏橋さん「この色は絵の具ではないと思うんですね。地球には“言葉にはない青”というものが存在していると思うんですよ。実は墨って黒じゃないんですよ。ある書道家の先生に聞いてみたんですけど、『墨は本当は“青墨”といって、古い松を焼いて作るもので、真っ黒じゃないんです』と教えてもらったときはドキッとしましたね。水の中に溶けているものって、純粋になればなるほど、水墨画のようになっていくんじゃないかと思っています」
今回は「ベスト・オブ・ザ・フリントストーン2014パート1」をお届けしましたが、あなたが印象に残ったゲストの方は登場しましたか? 今回スタッフと改めて今年の放送をすべて振り返ったんですが、本当に素晴らしいコメントがたくさんありました。このHPで過去のゲスト・トークを見ることが出来るので、ぜひご覧ください。
雨宮さんの近況については、オフィシャルサイトをご覧ください。
梅崎さんが代表を務めるNPO法人「風と土の自然学校」では、2015年1月4日(日)と12日(月・祝)に“もちつき&自然農体験会”が開催されます。自然農の種の撒き方など、興味深い内容になっていますので、是非ご参加ください。詳しい情報は、風と土の自然学校のブログをご覧ください。
矢口史靖監督の映画「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」は現在、Blu-rayとDVDでリリースされています。惜しくも見逃してしまったという方は、是非ご購入ください。
白石さんの近況については、オフィシャルサイトをご覧ください。
杏橋さんの近況については、オフィシャルサイトをご覧ください。
SLOW JAM RECORDS/税込2,700円
今回、東田トモヒロさんが3月にリリースしたアルバム『timelessworld』から「New days」をオンエアいたしましたが、そんな東田さん、先日ニュー・アルバム『The Roasters』をリリースしました。今作は、東田さん率いる3ピースバンド“東田トモヒロ&The Roasters”のファースト・アルバムとなっています。
東田さんの近況も含め、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。