今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、ERIKOさんです。
モデルで定住旅行家のERIKOさんは、鳥取県米子市生まれ。17歳でモデルとしての活動をスタート。高校生の頃に、語学留学のためにイギリスやアメリカに滞在。卒業後はイタリア、アルゼンチン、ロシア、そしてインドを訪れ、長期滞在型の旅を繰り返していたそうです。現在も観光ではなくホームステイをしながら、1カ所に長く滞在する定住型の旅をされています。ちなみに、英語、イタリア語、スペイン語、ロシア語、ポルトガル語、そして日本語を含め、6カ国語を話せる才媛なんです。
そんなERIKOさんが、まもなく1年4ヶ月かけた中南米の旅をまとめた本「暮らす旅びと~ひとりで渡った中南米縦断10万5千キロ~」を出版されます。今回はERIKOさんに、なぜ長期滞在する定住型の旅をするようになったのか、そして旅先でのエピソードなどうかがいます。
●今回のゲストは、モデルで定住旅行家のERIKOさんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします」
●定住旅行家って肩書き、面白いですね。
「自分で作りました」
●どんな想いを込めて作ったんですか?
「旅行家ってたくさんいると思いますが、私の旅のスタイルが、世界の色々なところに行ってホームステイをして、現地の人と一緒に生活をしながら暮らすように旅をするというスタイルなんです」
●最初からそのスタイルで旅していたんですか?
「最初は旅をメインにしていたわけではなく、語学留学をたくさんしていました。そのときから各国でホームステイをしていたんです。最初は語学しか興味がなく、その国の文化や習慣には興味がなかったんですが、一緒に生活をしていくと、言語と生活が密接に関わっていることに気づいて、色々な人生や生き方が見えてきたんですね。それで日本に帰ってくると、こっちでも色々なことがあるじゃないですか。そのときに励まされたりするのが、その人たちの生き方だったり人生観だったりしたので、徐々に興味を持つようになって、語学留学を終えたあたりから今のスタイルで旅をするようになりました」
●現地の人たちの人生や暮らしに興味があるんですね。
「そうですね。そういうことを知るのがすごく好きです。みんな人生は1度きり、その形が違うだけで、色々なことを見せてくれるのが、自分にとってすごく魅力的なんですよね」
●でも、いきなり行って、そういった人生の深い部分ってすぐには見せてくれないんじゃないですか?
「国によりますね。例えば、中南米の国だとすごくオープンなので、最初から壁がなく入っていけます」
●そこに入ったときからファミリーみたいな感じですか?
「中南米はそういったところが多かったです」
●暮らすように旅をすることと、他の旅のスタイルとの一番の違いって、どんなところですか?
「私の中で旅行というと、新しいものやキレイな景色を見たり美味しいものを食べたりと、いつもの日常から抜け出すことだと思っていて、私の場合は、新しさや新鮮さを越えたところにある“地味な日常”が出るまで一緒にいるのが好きなんですよね(笑)」
●(笑)。世界遺産とか見に行かないんですか?
「見に行かないときもあります(笑)」
●ちょっともったいない気がします!
「実は私、旅行が苦手で、そういったところや景色を見るのも好きですが、現地の人がいて、その人たちの生活があって、それを体感したあとにその景色を見に行くと、伝わってくるものが違うんですよね。だから、人が主体になっていると思います」
●ERIKOさんは3月上旬に「暮らす旅びと~ひとりで渡った中南米縦断10万5千キロ~」を出版されますが、10万5千キロを一人で旅したんですね?
「そうですね。地球2周ちょっとですね(笑)」
●すごいですね!(笑) 具体的には、どこからスタートして、どういった国に行ったんですか?
「ボリビアという国からスタートして、南米を回ってカリブの島々に行って、中米を通って、最後は北米のメキシコに行きました」
●ホームステイをしていて、印象に残ったことってありますか?
「色々なところに滞在させていただので、ちゃんとしたベッドで寝るときもあれば、ハンモックで寝ることもあったんですが、お客様用の部屋がないので、子供部屋で寝させていただいたことがよくあったんですね。でも、子供たちは嫌な顔を一切しないんですよ。やっぱり、自分の部屋を他人に貸したくないじゃないですか。それでも、すぐに貸してくれるんですよね。どうしてなのかと思ったら、子供たちは自分の部屋と思っていなくて“親から貸してもらっている部屋”だと思っていることを、一緒に生活して分かりました。だから、親から“貸してくれ”って言われたら、すぐ開放するんですよね」
●それ以外に、子供たちの意識が日本と違うと思ったことってありますか?
「食事のときや食事が終わった後は親のお手伝いは必ずしますし、子供が思春期でも家族が一番大切なので、土日でも自分の恋人とデートするより、家族と過ごすことが多いんですね。優先順位では家族が一番最初なんですね。時間があるときに恋人とデートするといった感じなので、家族中心で事が回っているんですよ。
あと、興味深かったのは、女の子って別れ際はあっさりしてるんですよ。逆に男の子はメソメソしてるんですね。“じゃあね!”って言って出ていこうとすると、泣くのは男の子の方が多いんです。女の子は“行かないで!”って言うんですが、行くときになると“じゃあね!”ってあっさりしてるんですよ(笑)」
●生活で不便なことはありましたか?
「お風呂がないところとか多くて、代わりに近くの川に入ったりしていましたが、パラグアイの人の家に泊まらせていただいたとき、お風呂が五右衛門風呂だったんですね。パラグアイって日本人移住地が5つあって、今でも日本の伝統的な生活をしている人がたくさんいるんですが、(五右衛門風呂を)見たことありますか?」
●実際に見たことはないです。
「ですよね(笑)。ドラム缶の下で火を焚いて、お湯を沸かして(湯船の中に)板を沈めて入るんですが、日本でも入れなのにパラグアイで日本の文化を体験しているというのは驚きました。すごく気持ちよかったです! 今まで入ったお風呂の中で一番気持ちよくて、よく寝むれました。(体の)芯から温まって、疲れがすごく取れました」
※ERIKOさんは登山にも挑戦したそうです。
「一番ハードだったのが、エクアドルにあるコトパクシという山でしたね。そこは5897メートルあるんですが、頂上まであと100メートルっていうところでホワイトアウトになってしまって、泣く泣く下山しました」
●無理はダメですからね。なぜ、その山に登ろうと思ったんですか?
「その山の土の色が真っ赤で、私が行ったときは雪が積もっていて、白と赤のコントラストがものすごくキレイで“登りたい!”って一目惚れした感じですね。その山に登る前にルコピチンチャという4,600メートルぐらいの山に登って高所順応してから登ったんですが、すごくハードでした」
●その登山をするための準備って、日本でしていませんよね?
「そうですね。旅の途中で準備をしたりしていました。例えば、ベネズエラのロライマ(2,810メートル)ではトレッキングして(体を慣らして)から登りました」
●日本でも登山やトレッキングはしていたんですか?
「実は登山がすごく好きなんです。地元が鳥取県で大山があるので、地元に帰るとそこに登ったりしています」
●中南米の山を登ってみて、どうでしたか?
「ガイドさんと一緒に登ったんですが、日本のガイドさんとの大きな違いは、“下山するときはERIKOが決めろ”って言ったことですね。日本のガイドさんだと、ガイドさんが判断すると思いますが、その人もプロのガイドさんなんですが、“登るなら一緒に行くし、下りるなら一緒に下りるので、自分で決めてください”って言ってくれたのは、すごく印象的でした」
●自己責任なんですね。山の景色はどうでしたか?
「すごく美しかったですね」
●よく“日本の山とスケール感が違う”って聞きますが、どうでしたか?
「周囲には高い山がたくさんあるので、登ると、そこからまた高い山が見えるんですよね。それはスケールが大きい感じがしましたね。あと、この本(『暮らす旅びと』)の表紙にも使われている山はコスタリカのチリポという3,800メートルぐらいの山なんですが、ここの頂上に登ったとき、すごく天気がよく、湖も見えましたし、遠くにカリブ海も見えたので、すごく感動しました。ここはなかなか晴れないみたいなので、すごくラッキーでした」
●見えたときは、どういう想いでしたか?
「“選んでもらった”感じがしました。天気がすごく変わりやすいので、見えない力に決めてもらった感じがしましたね」
●これから旅してみたい国ってありますか?
「フィンランドのラップランドに“サーミ”という民族がいるんですが、そこに今年の5月から行こうと思っています」
●それはサーミ人に惹かれたからですか?
「そうですね」
●どんなところに惹かれたんですか?
「そこで生活をしている人たちにも近代化の波が押し寄せていて、トラディショナルな生活をしている人がかなり減ってきているという話を聞いたんですね。それを聞いたとき、“まだ間に合う!”と思ったんですね。もし、私の次の世代の人たちがそういうのを見たいと思ったとしても、もうなくなっているかもしれないので、この時代に生まれ、まだそれを見ることができるので、見にいこうと思って、決めました」
●やっぱり、一緒に暮らすんですか?
「はい、もちろんです」
●どんな感じなんでしょうね?
「私も想像できないんです。ホームステイさせてくれる方はトナカイをたくさん飼育しているみたいで、5月だとトナカイの出産に立ち会えるようなので、それも楽しみにしてます」
●どんなことをしてみたいですか?
「特別なことじゃなく日常を見たいので、彼らの日常をゆっくりと見ていきたいと思います」
●どのぐらい滞在するんですか?
「全部で1ヶ月半ぐらいですね」
●そこからどこに行くんですか?
「そこからロシアにちょっとだけ寄って、日本に帰ってきます。今年は国内でも定住旅行を始めようと思っていて、今計画中です」
●国内だとどこなんですか?
「今考えているのは利尻島ですね」
●そこでもステキな出会いがありそうですね! 今回の中南米の旅を通して、皆さんに一番伝えたいことって、どんなことですか?
「私にとって旅は1つの手段だと思っていて、それを使って色々な人たちの生き方などを知るということをやっているんですね。それまでは語学留学をいくつもやってきたんですが、学ぶ言語がマニアックで“それってお金にならないよね”とか“あまり意味がないよね”とか言われてきたんですけど、それは私が好きでやってきたことだったんです。だから、すぐには結果が出ないことでも、そういう小さい種をたくさん見つけていったら、自分が本当にしたいことにたどり着ける気がします」
番組では色々な旅のスタイルの方にお話をうかがってきましたが、女性一人で定住しながら旅をするという方は初めてだったので、どのお話もとても新鮮でした。でも重要なのは、旅のスタイルではなく“ERIKOさんが旅に出る理由”。「本当の意味での旅とは、誰かの心の中に入っていくこと。そこに人間の儚さと美しさがある」と本の後書きでもそんな風に書かれている、ERIKOさんの今後の旅にも注目していきたいと思います。
かまくら春秋社/価格1,620円
3月初旬に出るERIKOさんのこの本は、2012年3月から2013年7月にかけて、1年4ヶ月かけた中南米の旅の記録とエピソードが満載。計画から資金集め、旅先の手配など、何でもこなしてしまうERIKOさんの行動力、勇気に驚きます。そして、訪れた国の基礎知識的なデータと共に、必ず掲載されているのが“東日本大震災の時に、その国が日本にどんな支援をしたか”という説明文。これはERIKOさんいわく「中南米の国々が行なった支援活動が、日本ではあまりしられていないから」と。“中南米の国々と日本を結ぶ架け橋的な存在になれたら”というERIKOさんの思いがあります。
近々、ERIKOさんと、以前この番組に出てくださった文筆家の福元ひろこさんとのトークショーが3月14日(土)の午後3時から下北沢の本屋さん「B&B」で行なわれます。詳しくはB&Bのホームページをご覧ください。
ERIKOさんのこれまでの活動のことや近況など、詳しくはブログとFacebookでチェックすることができますので、是非ご覧ください。