今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、タカコ・ナカムラさんです。
今回のゲストである料理家のタカコ・ナカムラさんは、“ホールフード”を提唱しています。“ホールフード”は直訳すると“まるごとの食べ物”という意味で、自然の恵みを全て無駄なく使い切ることですが、それだけではなく、食のあり方や暮らし、環境にまで通じる奥の深い考え方です。今回は台所からライフスタイルや環境を考えていきたいと思います。また、ナカムラさんオススメの、野菜をまるごと使ったお料理のお話もうかがいます。
●今回のゲストは、“ホールフード”を提唱している料理家のタカコ・ナカムラさんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします」
●今回、“タカコ・ナカムラ・ホールフードスクール”のキッチンスタジオにお邪魔をして、お話をうかがいます。タカコさんは“ホールフード”を提唱されていますが、“ホールフード”ってどういったものなんですか?
「“ホール”は“丸ごと・全体”という意味で、“フード”は“食べ物”なので、直訳すると“まるごとの食べ物(全体食)”を表しますが、私の場合はその後ろに“ライフ”が付くのがフル・フレーズになります。健康や美容のことを考えると、どうしても食べ物のことばかり考えてしまって、暮らし方や農業のこと、水や土といった環境のことにまで考えがいかないんですよね。でも、本当は全部考えていかないと完結しないと私は考えているので、“ホールフード・ライフ”ということで表現しています」
●その考えに至ったキッカケは何だったんですか?
「1980年代に食の勉強でアメリカに行ったんです。そのときにお世話になった方や知り合った方にステキな方が非常に多く、その中で“食”にこだわっている方は、ライフスタイル全体がすごくステキだったんですよね。それで、環境や水のことなどに段々と興味がわいてきたというところですね」
●どんなライフスタイルだったんですか?
「1980年代なので、アロマテラピーとかガーデニングといったことって今の日本では一般的になってきましたけど、当時の日本にはそういうものがなかったんですよ。なので、友達の家に行くと、いい香りがするハーブの石鹸があったり、歯磨き粉もステキなハーブの味がしたり、シャンプーやリンスもナチュラルなものを使っていたり、オーガニックコットンがあったりしたんですよね。そういうライフスタイルを見たとき、“私がやりたいのは、こういう生活だ”と思いました」
●当時それを見たとき、衝撃的だったんですね。
「そうですね。そのときの日本はバブルの時期だったので、ナチュラルとは対極にあるような状態で、ギラギラしているものが流行っていたので、カルチャーショックを受けましたね」
※ナカムラさんは、丸ごと野菜を食べられるように“ベジブロス”という出汁を提案されています。いったいどんな物なのでしょうか?
「“ベジブロス”というのは、“ベジタブル”と“ブロス(出汁)”を掛け合わせた言葉で、“野菜の出汁”のことなんです。野菜の出汁はプロの料理人なら誰でも取っていて、食べられるところで出汁を取るんですが、私の場合は皮や根っこ、種などといった今まで捨てていたところで出汁を取ります」
●ナカムラさんのベジブロスはどんな味がするんですか?
「優しいコンソメみたいな味ですね。野菜だけで取ったまろやかで優しい味です」
●出汁の取り方は、普通に鍋で煮ればいいんですか?
「はい。野菜の切れ端を水に入れて、弱火で30分ぐらい煮て、こします。わざわざベジブロスのために作るのではなく、日々の料理のときに余った皮とかを1週間ぐらい貯めておいて(それで出汁を)取ったり、料理を仕込んでいる途中で切れ端を少しずつ入れていって(出汁を)取るという感じです」
●簡単なんですね。
「簡単です。誰でもできます」
●ベジブロスを使ったレシピってありますか?
「一番簡単なのは、ベジブロスでお米を炊きます」
●ご飯を炊くのに使っていいんですね!
「大丈夫です。“ベジブロスって、何に使えるんですか?”ってよく質問されるんですが、料理で水を使うものは全てベジブロスに置き換えることができると教えています」
●それで炊いたご飯は野菜の味がするんですか?
「そうですね。炊き込みご飯のような味がします。ベジブロスで炊いたご飯を食べると、白米だけ食べているけど、野菜もたくさん摂っていることになるんですよね」
●そのご飯にカレーをかけて食べたりするのもいいですよね! これからの時期、色々な食材が出てくると思いますが、ベジブロスを使ったオススメのレシピってありますか?
「春だとハマグリやアサリが美味しい季節なので、アサリを鍋に入れてベジブロスを加えて、アサリの蓋が開いたら火を止めて、好きな春野菜を入れて、アサリのミネストローネみたいな感じでいただくというすごく簡単なレシピです。アサリの出汁だけだと、すごい量のアサリを使わないといけないんですね。でも、ベジブロスだと、アサリがあまりいらないですし、美味しいです」
※ナカムラさんは、日本の伝統食にも注目されています。中でも、最近話題の醗酵食についてうかがいました。
「日本の醗酵醸造の文化というのは、世界に誇れるものだと思うんですね。和食は世界でも認められるようになりましたが、その和食を下から支えているのは醗酵食だと思います」
●今は塩麹などが注目されていますが、もっと摂った方がいいんですか?
「そうですね。味噌や醤油、お酢でも本物のものでないと、体にはあまりいい効果がないんですよね。そういうものを私は“調味料”だと思っています。“調味料”と“醗酵食”はそれほど違いはないんですが、本物じゃないものは加工食品の部類になると思いますね。味噌や醤油の形はしているけれど、加工食品だと思うので、本物を使った方が、体にもいいと思います」
●その本物は、どこに行けばあるんですか?
「結構ありますよ」
●食にもう少し興味を持って、素材からこだわってみる必要があるんですね。
「そうですね。実は、スーパーとかには本物からそうじゃないものまで並んでいるんですよね。その中から本物を探す必要があるんです。そうしたとき、ある程度値段が高いものに(本物が)多いんですよ。でも、生産現場を見てみると、その(値段の)高さに納得するんですよね。大豆や塩などの原材料の値段が全然違いますし、それを手間隙かけて作っているので、ある程度の値段がするのは当たり前だと思います。でも、高いものをたくさん使うのではなく、ちょっとした料理のコツによって、それを少量で済ませるのが、ホールフードの料理なんです」
●いいものを選ぶコツってありますか?
「まず、原材料表示を見てください。皆さん賞味期限とか製造年月日は見るんですけど、私はそこはあまり見ずに原材料が表示されているラベルを見ます」
●具体的には、どの表示に注目すればいいですか?
「例えば味噌を買うとき、“そもそも、味噌って何で作られているかを知らないといけない”んですよね。知らないと、原材料を見ても判断できないです。味噌は大豆と麹と塩の3つだけなんです。それ以外のものが書いてあると、本物の味噌ではないと判断しています」
●となると、お酢はどうなんですか?
「お酢は色々な種類があるんですが、米酢の場合、米と米麹以外いらないんです。なので、それ以外が入っていると、本物じゃないと判断しています」
●早速、明日の買い物からやってみようと思います!
●ライフスタイル全般で私たちが意識しないといけないことってありますか?
「“美味しい安全な水が飲みたい”となったとき、“自分はウォーターサーバーを持っている”とか“自分はペットボトルのミネラルウォーターを飲んでいる”ということだけではなく、ゴミはちゃんと分別したり、食器とかを洗うとき合成洗剤を使わないといったことも大切だと思うんですね」
●自分が健康ならいいっていうことじゃないですよね。
「“自分だけ”という考え方が、環境汚染や食の問題などを引き起こしていると思うので、できるだけ遠くを見据えて物を選んだり使ったりしていくことが大切だと思います」
●その遠くを見据えるとき、“食”って身近で入りやすい入り口ですよね。
「そうですね。毎日食べるものなので、身近な問題だと思います。何かを変えるとき、なんとなく変えるのはすごく難しいことだと思うんですね。だから私は“知る”ということが大切だと思います。ゴミにしても、今どれだけのゴミが出ていて、スーパーの買い物袋を作るのに石油がどれだけ必要なのかなどを知ると、マイバッグを持っていったりしますし、日本の自給率の現状を知ると“国産のものを買おう”とか“農業を応援しよう”って思うと思いますし、有機野菜といっても、わずか0.18パーセントしか流通していないのが現状なんですけど、そういう数字だったり、現状を“知る”ことがすごく大切だと思います。知っていくと、少しずつ変わっていくと思います。そうやって、その人のライフスタイルに根付いていくと思います」
●有機野菜が0.18パーセントしか流通していないなんて驚きました。
「有機野菜ってどこでも買えそうな気がするじゃないですか。流行っている感じがするじゃないですか。でも、実際の野菜の流通量からすると、わずかな数字なんですよね」
●ということは、有機野菜をもっと積極的に使っていかないと、生産者さんたちは大変ですよね。
「辞めちゃいますよね。作ってくれている方の生活が成り立たないです。買う人がいないと、作ってくれる人がいなくなってしまいます」
●そういう有機野菜の実情を知っただけでも有機野菜を使おうと思ったので、そういったことをもっと知っていく必要があるんですね。
「そうやって“興味を持ってもらうこと”が大切なんですよね。新聞やラジオなど色々なところで情報を得ることができますので、知ってもらって知ったことに関して、そのまま流してしまわないで、関心を持ってもらうことだけでも変わってくると思います」
食べることは生きること。だから、食にまつわる全てを考えることは、生き方そのものを考えることなのかもしれません。台所から、自分のこと、環境のこと、そして地球のことを考えてみようと思います。
ナカムラさんは大田区上池台のキッチンスタジオで“タカコ・ナカムラ・ホールフードスクール”を開校されていて、無料の体験講座も行なっています。今月は18日と25日のいずれも水曜日の午後1時半からとなっています。
そして、今月から、ホールフード基礎講座のeラーニング(通信講座)がスタートしました。詳しくは、“タカコ・ナカムラ・ホールフードスクール”のオフィシャルサイトをご覧ください。
ナカムラさんは、お味噌や醤油など、発酵食のスペシャリストを育てるための養成講座も行なってらっしゃいます。今月は21日(土)と22日(日)の2日間。詳しくはナカムラさんが代表を務める「ホールフード協会」のオフィシャルサイトをご覧ください。
パンローリング株式会社 本体価格1,200円
ナカムラさんは「ベジブロス」の本も出してらっしゃいます。ベジブロスの材料や作り方ほか、59のレシピを掲載。炊飯器で焚く「ベジブロスごはん」のレシピも載っていますよ。
詳しくは「ナカムラ」さんのホームページをご覧ください