2015年3月21日

NEC田んぼ作りプロジェクト取材リポート!
~100年後にトキを呼び戻したい~

 NECグループでは“人と地球に優しい情報社会の実現”をビジョンに掲げ、色々な社会貢献活動を行なっています。その1つである“田んぼ作りプロジェクト”は、使われなくなった田んぼを再生し、稲を植え、無農薬・無化学肥料で育て、収穫したお米でお酒を作っています。先日、仕込んだ新酒の蔵出しイベントがあるということで、茨城県石岡市にある白菊酒造に取材に行ってきました。今回はその時の模様をお送りします。

楽しい里山体験

※2004年から始まった“田んぼ作りプロジェクト”は、絶滅が危惧されている水生植物“アサザ”を守る活動を行なっているNPO法人・アサザ基金と恊働で進めているプロジェクトで、現在は茨城県石岡市と牛久市の2カ所の田んぼを借りて、無農薬・無化学肥料でお米を作っています。
 春の田植えから夏の草取り、秋の稲刈り、冬の酒仕込みと1年を通して、季節ごとに体験イベントがあり、年間で約1,100人ものグループ社員やそのご家族が参加しています。先日、1年に1回の締めくくりとして、石岡市の白菊酒造で新酒蔵出しイベントが行なわれました。

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 私たち取材班も、酒造見学やラベル貼りなどのお手伝いをさせていただいた後、そのプロジェクトを進めているNECコーポレートコミュニケーション部CSR・社会貢献室のマネージャー・池田俊一さんと、同じくCSR・社会貢献室の松下直子さんにお話をうかがいました。
 まずは池田さんに、なぜNECでお米づくりをしていのか聞いてみました

池田さん「NECグループは企業の社会的責任(CSR)の一環として、世界中で社会貢献活動を行なっています。この社会貢献活動は“安全・安心な社会づくり”“すべての人がデジタル社会の恩恵を享受する”“気候変動への対応と環境保全”“多様性に富んだ人材の育成”という4つのテーマに基づいて行なっています。 その中の1つである“田んぼ作りプロジェクト”は、“気候変動への対応と環境保全”というテーマに基づいてスタートしたプロジェクトとなります」

●このプロジェクトは、いつから始まったんですか?

松下さん「2004年からスタートしたので、今年で11年目となります。田植えから草取り、稲刈りをフィールドで行なっていて、ご家族で参加していただく方が非常に多いですね」

●その人気の理由はどこにあると思いますか?

松下さん「“楽しくないと続かない”とプロジェクトを始めたときから考えています。なので、田植え・草取り・稲刈りだけではなく、かかし作りをしたり、ホタル観察をしたり、餅つきをしたりしています」

●かかし作りもするんですか!?

松下さん「田んぼですので、(稲を)スズメとか食べられないようにしないといけないですし、昔から行なわれていたことも大切に考えているので、伝統農法をやってみるとか、昔よく見かけたかかしを作っています。子供たちには小さくて着られなくなった洋服を持ってきてもらって、それで作っています」

●伝統農法にこだわったのはなぜですか?

松下さん「今や田舎暮らし体験ってできなくなってきていますし、なにより“地域の方との交流”をすごく大切に考えているので、田植え・草取り・稲刈りは全て機械でできますが、自ら体験することが非常に大切だと思っています。なので、手で植えて手で刈って、色々なものを手作りで作るという昔ながらの手法を体験してもらっています」

●NPO法人・アサザ基金とは、どういったキッカケで恊働で行なうことになったんですか?

松下さん「NPO法人・アサザ基金さんは、霞ヶ浦の水質浄化を目指した活動をされています。“田んぼ作りプロジェクト”では、社員が自然体験をして、自然のものに触れるということをやってみたいと思っていました。アサザ基金さんは、霞ヶ浦の水質浄化をどういう風に考えていたかというと、使われなくなった田んぼに湧き水が吸い込まれて湿地帯になるんですが、それを元の田んぼに戻して、畦ができ、そこから流れた水が小川に流れ、霞ヶ浦に流れていきます。
 そうやって霞ヶ浦の水質が浄化されていくんですが、段々とそれがされなくなってしまい、キレイな水が流れ込まなくなってしまったので、アサザ基金さんはその活動を推進されているんですね。私たちもその活動に感銘を受けて、協力させていただくことになりました。ただし、私たちの目標は“環境教育”で、アサザ基金さんは“水質浄化”です。そうやって、お互いに違った目的を持ちながら、1つのプロジェクトを楽しく進めていっています」

●田んぼだけじゃなく、周辺の環境まで変えていこうという繋がりができているんですね。

松下さん「昔“里山”という言葉をよく聞いたかと思いますが、今その里山をなかなか感じることが少なくなっていると思います。特にNECの社員は都内や神奈川などに住んでいることが多く、そうなると、周りに土がないんですね。そういったところに住んでいる家族は“自分たちの子供は土に触れさせたい”という想いがあって、昔ながらの里山体験として参加していただいて、それを感じてもらればと思っています。
 そして、アサザ基金さんとは“100年後にトキを呼び戻したい”という想いを共有しています。100年後にNECの田んぼにトキを呼べるように無農薬・無化学肥料で作っていって、生き物がたくさん集まる田んぼにしていくことを目指しています。実際に、既にたくさんの生き物が戻ってきていて、子供たちもその生き物を獲ったり、観察したりして、楽しんでくれていると思います」

IT企業らしい田んぼ作り

※ものづくりの原点として、そして環境教育の一環としてNECが11年前から行なっている“田んぼ作りプロジェクト”。荒れ果てていた田んぼを再生してお米づくりを行なっているということでしたが、10年前の田んぼは、生き物的にはどうだったんでしょうか。

松下さん「昔の田んぼを知っている方なら普通のことだったことだと思いますが、まず、カエルがいませんでした。荒れ果てた田んぼに雑草が生えてくると、水の中に卵を産むカエルはもちろん、色々な生き物が卵を産む場所がなくなってしまっていたんですね。トンボも水面に卵を産みますので、彼らもやってこないです。そういった色々な小さな生き物がいないということは、それを食べる大きな生き物もいないということになるので、生き物が全くいない環境になってしまうんですね」

●それが今では少しずつ戻ってきているんですね。

松下さん「はい。11年やってきていますので、もし昔の田んぼを知っている方が来てくれる機会があったら“懐かしい風景だな”と思っていただける田んぼになったかと思います。また、周囲の田んぼは地元の農家さんが使っているんですが、その田んぼでは少量ではあるけれど、除草剤を使っているところがあるんですね。その田んぼとNECの田んぼの狭間に立ってみると、片やトンボは飛んでおらず、片やたくさん飛んでいるんですね。まるでそこには見えない壁があるようで、生き物はどこが安全かをよく知っているんだと思いました」

●そんなに違うんですね。IT企業らしい田んぼ作りってあったりしますか?

松下さん「実は、田んぼには“ネットワークセンサー”というものを備えています。これは、気温・水温・降水量など7つぐらいのデータを10分間置きぐらいに収集しています。このデータを使って、トンボはいつごろ卵を産んでいるのか、ホタルはいつごろ出てきているのかということを分析することができます。NECではそういうデータを集めて、色々と研究をしています」

●そのデータを今後、農業に活かせるようになるんですか?

松下さん「そうですね。こういったデータが農業ICTソリューションといった分野で使えるように、さらに技術を発展させていきたいと思っています。その実証実験を今、田んぼでやっているというイメージを持っていただければと思います。」

●昔ながらの農法と最新技術がNECの田んぼにはあるんですね。そこで穫れたお米でお酒造りまでされるんですよね。

池田さん「お米は、田植えをして草を取って稲刈りをして1年かけて育て、その成果物としてのお米を使って日本酒を造っています。何か物を作る喜びを、実体験として子供たちにも分かるんじゃないかと思っています」

(右から)NECコーポレートコミュニケーション部 CSR・社会貢献室マネジャー池田俊一さん、同じく松下直子さん、白菊酒造の廣瀬慶之助さん、達人師範の今泉謙二さん、そして長澤ゆき。
(右から)NECコーポレートコミュニケーション部 CSR・社会貢献室
マネジャー池田俊一さん、同じく松下直子さん、
白菊酒造の廣瀬慶之助さん、達人師範の今泉謙二さん、そして長澤ゆき。

達人師範、登場!

※このプロジェクトには、田植えや稲刈りなどの合間に、積極的に参加したい方向けに“達人コース”があり、現在170名ほどの方が登録しているそうです。参加回数や習得した技術によって“達人”“達人師範代”“達人師範”に昇格する制度になっています。今回、“達人師範”である日本電気通信システムの今泉謙二さんにお話をうかがうことができました。

●今泉さんは、なぜこのコースに参加しようと思ったんですか?

今泉さん「このプロジェクトがスタートする頃に、私も野外活動をしようと思っていて、フィールドを探している最中でした。そんな中、社内でこういうプロジェクトが立ち上がることを聞いて、そこからずっと参加しています」

●これまでどのぐらい参加されたんですか?

今泉さん「イベントは年7回ぐらいありまして、それを11年やってきてますから、70回ぐらいですね。達人コースはそれに加えて年20回ぐらい、それも10年ぐらいやってきているので、200回ぐらい参加しています」

●それだけ参加されているなら色々な経験をされたかと思いますが、特に印象に残っているイベントってありますか?

今泉さん「始めてから3年目のときに上総掘りで井戸を掘ったときはすごく疲れましたが、初めての経験だったので、すごく楽しかったです」

●上総掘りでの井戸掘りってどんな感じなんですか?

今泉さん「やぐらを組んで鉄管を突っ込んで、上下させながら穴を掘っていきます。それで10数メートル掘りました」

●掘ったところから水が出てきたんですか?

今泉さん「はい、出てきました」

●大変だったけど、水が出た瞬間は嬉しかったんじゃないですか?

今泉さん「はい、嬉しかったですね」

上総堀り
<上総堀り>
千葉県上総地方で考案され江戸時代後期より伝わる、井戸掘りの掘削技法。
1995年に国指定重要有形民俗文化財に指定。
又、2006年には技術そのものが国指定無形民俗文化財に指定されています。

●それだけたくさん参加されて、自分の中で変わったことってありますか?

今泉さん「生き物が増えたところを見ていると楽しいですよね。始めたときにはいなかったオニヤンマとかが、数年後には見られるようになったので、それが嬉しかったですね」

●今回は新酒の蔵出しでしたが、どうでしたか?

今泉さん「毎回、試飲が楽しみで、美味しく飲ませていただいています(笑)」

●田起こしから始めて、苗を育て、お酒になって飲んだじゃないですか。どういう気持ちですか?

今泉さん「自分たちの手で1年かけて育ててきたので、“やった!”っていう感じですね。とりあえず、これで1年が終わりましたので、また次の1年に向けてスタートするぞっていう気持ちですね」

●今年も、次の田植えの準備などをしているんですか?

今泉さん「もう準備を始めています」

●私も今度は田植えから参加させていただきたいと思っているので、次はNECの田んぼでお会いできるのを楽しみにしています!

今泉さん「是非お越しください。お待ちしています!」

霞ヶ浦がキレイになってきて嬉しい

※創業から210年の歴史を誇る白菊酒造の青年社長・廣瀬慶之助さんに、今回蔵出しした新酒『愛酊で笑呼(あいてぃでえこ)』の出来についてうかがいました。
(*『愛酊で笑呼(あいてぃでえこ)』はNECの環境コンセプト「IT、で、エコ」にちなんで命名)

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廣瀬さん「今年は冬場が非常に冷え込んだ厳しい寒さでしたので、お酒が順調に醗酵して、とてもいいお酒ができました」

●私も先ほど試飲をさせていただきましたが、すごく飲みやすくて味がしっかりしてました。

廣瀬さん「“愛酊で笑呼”は純米の原酒で、今年は淡麗辛口なんですが、その中にも純米酒らしいしっかりとした味わいがあって、美味しいお酒になっていると思います」

●“今年は”とおっしゃいましたが、その年によって味が変わってくるんですか?

廣瀬さん「そうですね。毎年気候が変わってきますし、お米の出来も変わってきます。それによって、味は微妙に変化しています」

●最初に「無農薬・無化学肥料のお米でお酒を作りませんか?」と提案されたときは、どう思いましたか?

廣瀬さん「当社では無農薬・無化学肥料のお米でお酒を造ったことがなかったので、最初はどういうお酒ができるのか、不安はありました」

●実際に作ってみて、どうでしたか?

廣瀬さん「お米は“日本晴”という品種を使っているんですが、NECの社員と家族が丹精込めて一生懸命作ってくれましたので、とてもいいお米でしたし、お酒も造りやすくできたと思います」

廣瀬さんの後ろ姿。法被がきまってます!
廣瀬さんの後ろ姿。法被がきまってます!

●お酒造りの決め手といえば“お米”と“水”だと思うんですが、使っている水はどんなものなんですか?

廣瀬さん「当社で使っている水は蔵の中にある井戸水を使っていて、およそ100メートル掘った深井戸なんですが、そこから取った軟水を使っています。それによって、柔らかいお酒を造ることができます」

●その水も試飲させていただいたんですが、柔らかくてマイルドで、すごく美味しかったです! 水が美味しいということは、そこを取り巻く環境も大事になってきますよね?

廣瀬さん「そうですね。お米も美味しい水がないとできないですし、醸造に適した水でもあるので、この水にはすごく感謝しています」

●そうなってくると、NECがやっている無農薬・無化学肥料の田んぼ作りに共感する部分が多いんじゃないですか?

廣瀬さん「うちの会社が霞ヶ浦の目の前にあって、私も子供のころから汚れた霞ヶ浦を見てきていたので、そのときから“もっとキレイにならないかな”と思っていました。そういう意味でも、NECの方々と一緒にこのプロジェクトを進めていけるのは素晴らしいことだと思います」

●今後に向けて、想いがあれば教えてください。

廣瀬さん「このプロジェクトは100年かけてトキやコウノトリに霞ヶ浦流域に来てもらうというものなので、私たちも100年先までお酒造りをやっていかないといけないですし、環境づくりも地域の皆さんと一緒にやっていければと思っています」

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※それでは最後にNECの池田俊一さんと松下直子さんに今後の抱負をうかがいました。

松下さん「今やっている谷津田という地域には再生する地域がまだまだたくさんあります。今後、本当にトキがこれるように、色々な生き物が戻ってこれるように、参加者の方と一緒に楽しくいい環境づくりをしていきたいと思っています」

池田さん「NECの社員の中にも、このプロジェクトのことを知らない人が多いんですね。そういったこれまで参加していない社員にも積極的に参加してもらって、全社を挙げての活動になることで、より持続的な活動になって、社会に波及していくといいなと思っています」

●次は田植えですか?

松下さん「はい。既に2月から準備が始まっています。4月に苗床を作って、6月に田植えを行なう予定になっています」

●それは私も参加できますか?

松下さん「是非また取材に来ていただければ、楽しんで参加していただけると思います!」

●では、次は田んぼでお会いできるのを楽しみにしています!

松下さん「田んぼでお待ちしています!」

NEC田んぼ作りプロジェクト

YUKI'S MONOLOGUE ~ゆきちゃんのひと言~

 田んぼの再生は周辺環境の再生にも繋がるんですね。100年後トキが舞う田んぼが実現したら、本当にステキだなと思います。私も是非次回は田植えに参加をさせていただいて、お米作りには欠かせない地元の農家さんにもお話もうかがってみたいです。

INFORMATION

NEC田んぼ作りプロジェクト

 NECとNPO法人・アサザ基金、白菊酒造がコラボレーションして行なわれているこのプロジェクトは、田んぼ作りを通じて周辺の環境を再生させ、100年後にトキが戻ってこれるようにするという目標で行なわれています。詳しくは、“NEC田んぼ作りプロジェクト”のオフィシャルサイトをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. BABY I LOVE YOUR WAY / BIG MOUNTAIN

M2. THERE MUST BE AN ANGEL(PLAYING WITH MY HEART) / EURYTHMICS

M3. WHAT MAKES YOU BEAUTIFUL / ONE DIRECTION

M4. STAND BY ME / JOHN LENNON

M5. LEAN ON ME / CLUB NOUVEAU

M6. BOOM! / MAIA HIRASAWA

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」