今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、田久保雅己さんです。
ヨット・ボートの総合出版社「舵社」の常務取締役・田久保雅己さんは、この番組と20年以上に渡ってお付き合いいただき、海やマリンスポーツに誘ってくださったキーパーソンなんです。現在も海のライフスタイルマガジン『シー・ドリーム』ほかの編集長を務めるかたわら、「マリンジャーナリスト会議」や「海へみんなで行こう(UMI)協議会」の会長ほか、色々な海関連の団体の理事や委員を務め、マリンスポーツやマリンレジャーの普及に尽力されています。
今回は海やヨットをこよなく愛する田久保さんに、今年制定されてから20周年を迎える「海の日」関連のイベントや、北海道のスコッチ・クルージングのお話などうかがいます。
●今回のゲストは、ヨット・ボートの総合出版社「舵社」の田久保雅己さんです。ご無沙汰しています。
「ご無沙汰しています」
●田久保さんは舵社にお勤めになって40年近くになるそうですが、長年マリンスポーツに携わってこられて、状況って変わってきているんですか?
「バブル期が一番売れていた時代でしたが、そこから右肩下がりで、落ち込んだ状態がずっと続いています。規模としては4分の1ぐらいまで落ちています。例えば、ヨットのオーナーさんだと、平均年齢がどんどん上がるだけで、新しく入ってくる人がなかなかいないんですよね。
最近、ある読者の方からお手紙をいただいたんですが、すぐ近くにヨットハーバーがあるらしく、ヨットがハーバーを出たり入ったりするのを20年間憧れながら見ていたそうなんですね。そして、やっとお金に余裕が出てきたからやってみようと思ってヨットハーバーに行ってみたら“関係者以外立入禁止”と書いてあったそうです。雰囲気も入りにくいそうなんですね。そういうお手紙をいただいてすごく残念な気持ちになりました。なので、“壁を低くして、誰でも入れるようにしないといけないし、体験していただくことで、その楽しさが分かるんじゃないか”と思って、色々な活動をしています」
●具体的にはどんな活動をしているんですか?
「ヨットの場合だと、風を受けて走っていくという感覚を言葉で説明しても分かりづらいじゃないですか。エンジンで走るモーターボートでさえも言葉では分からないと思うんですね。遊覧船とは違って、海の上を自分で自由に動けて、その先は世界に通じていて、7つの海を縦横無尽に走れる感覚は体験しないと伝わらないなと思って、体験乗船会をたくさんやっています」
●その体験乗船会は、どこかの団体が主催しているものなんですか?
「そうですね。日本セーリング連盟やマリンスポーツ財団など、色々な組織があります。それを束ねようという話が国土交通省の海事局から来まして、“海へみんなで行こう”の頭文字を取って“UMI協議会”が設立されました。16団体が加盟していて、ロングボードの上に立って漕ぐスタンドアップパドル系やセーリング、ダイビング系の団体も入っているんですが、僕はそこの会長をやっています。“UMIちゃんねる”というホームページも開いたりして、できるだけ壁を低くしていこうという活動をしています」
※現在、田久保さんが会長を務める「マリンジャーナリスト会議」では1996年から、海の日に“海と遊ぼう720(ななにいまる)”というイベントを開催しています。一体どんなイベントなんでしょうか?
「これは長年やっている運動なんですが、7月20日に普及のために、ヨットやボートに乗りたい人と、乗せたい人がメディアを通じて出会うというものです。これはマリンジャーナリスト会議のホームページにもうすぐ(開催要項やリストなどが)掲載されるので見ていただければと思います。(「海の日」をはさんで)2ヶ月間ほど実施しますが、体験乗船会をやっているところが近くにあって、“ここなら行けるな”と思ったら、そこのヨットやボートのオーナーさんたちの連絡先が掲載されていますので、そこに電話していただければ、ご案内していただけるようになっています。これは長年やっているので、船に乗って“楽しい!”と思ってそのままその船のクルーになったり、ヨット教室に通ったりした方もいらっしゃいます」
●それぞれのニーズが合致しているから、それはいいですね!
「その他に、UMI協議会では、豊洲で“マリンチャレンジ2015”というイベントをやることになっています」
●どういったイベントですか?
「海の日の前の週の7月11日と12日に、“東電掘り”というららぽーとから歩いて15分ぐらいのところでヨットやカヌー、キッズボートなどに乗れるようにしようと準備しています」
※今年、舵社が一般社団法人・海洋連盟ほかと共同で「海のポスターグランプリ(うみぽす)」を開催します。どんなポスターグランプリなんでしょうか?
「“おらが村の海自慢”をポスターにして応募してもらおうというものです。ただ、ポスターそのものを作って応募するというものだと大変じゃないですか。そうじゃなく、海の素晴らしさを画用紙に絵を描いて写真を撮って送ってもらうだけで大丈夫です。または自分で作成したポスターに文字を入れて写真を撮って送ってもらってもいいです。これが一般の部で、スマホのアプリでも送っていただけます。“この海キレイだな”と思ったら写真を撮って、キャッチフレーズを入れて、そのアプリを使って送れるシステムになっています。これがアプリの部です」
●それは参加しやすいですね!
「7月末まで受け付けていますので、どんどん応募していただければと思います。ベスト100に残れば、あとで作成する作品集に掲載されます」
●ちなみに、グランプリだと何かあるんですか?
「グランプリだと賞金30万円です。アプリの部は10万円です」
●お金じゃないとは思いますが、これは嬉しいですね!
「それに、海の風景じゃないといけないわけではないんです。旅先で出会った海の幸をポスターにしてもらってもいいし、文字だけで海の素晴らしさを表現してもらってもいいです。もしくは立体物を作って表現してもらってもいいです。例えば、(気仙沼の漁師)畠山重篤さんが言っている“森は海の恋人”ということであれば、海をイメージする山や湖の何かを表現してくれてもいいんですよ」
●それはすごく広がりますね!
「“海のポスター”というと、どうしてもキレイな海と白い砂浜をイメージするじゃないですか。そうじゃなく、色々なパターンで応募していただくと、すごく楽しいんじゃないかと思います」
※田久保さんは「東京湾再生官民連携フォーラム」の企画委員でもいらっしゃいます。このフォーラムは、“東京湾を美しく豊かな海に再生するために、みんなが連携して10年間かけて色々なアイディアをしていこう”というものです。そのフォーラムのもと、現在7つのプロジェクト・チームが組織されています。
その1つが“東京湾大感謝祭”。今年は10月24日(土)と25日(日)に横浜赤レンガ倉庫周辺で、ワークショップやステージイベント、体験乗船会など、様々な催しが行なわれることになっています。
東京湾という身近な海に少しでも関心を持ってもらいたいという田久保さんの思いを感じますが、田久保さんが東京湾をきれいにしたいと強く思った、こんな出来事があったそうです。
「20年ぐらい前の話ですが、フランスのヨット乗りが日本に来たとき、東京夢の島マリーナからヨットに乗ったんですね。そのときは白いカッパを着てクルーザーに乗ったんですが、海が荒れていて波をかぶったんです。帰ってきたらカッパが緑っぽく汚れてたんですよ。そのとき彼が“Tokyo Dirty Bay”って言ったんですよ」
●そんな風に言われてしまったんですね。
「そうなんですよ。すごく残念な気持ちになりましたね。20年ぐらい前の東京湾はくさい臭いがするとかもあったりしたんですが、最近は(水質も)随分よくなってきています。でも、これからの10年を見たとき、2020年に東京オリンピックがあるじゃないですか。やはりおもてなしをしないといけないじゃないですか。だけど、よく聞くのは空から来る人へのおもてなしの話ばかりで、海から見に来る人もいるんじゃないでしょうか。ヨット競技を見に大きなヨットやボートで来る方もいると思いますので、“海からのおもてなし”も必要だと提言しています」
●そう言われてみるとそうですよね! もう1つの玄関口になりますよね!
「だから、東京湾を美しくして、“美しい豊かな東京湾で海からのおもてなし”をしようというのが原点になります」
●となると、もうあまり時間がないですよね。間に合いますか?
「できるだけキレイにしないといけないですね。それに、海外から大きなヨットで来た方が停められるような場所を整備した方がいいんじゃないかと話をしています」
●私たちができることってありますか?
「“東京湾再生官民連携フォーラム”のメンバーには誰でもなれますので、ホームページをチェックしてもらってメンバーになってもらったり、当たり前のことですが東京湾にゴミを捨てないとか、ちょっとした身近なことをやっていただけたらと思います」
※以前この番組に出演してくださったときに、「ヨットで日本を巡る旅をしている」とおっしゃっていました。そこで、今年の旅の予定をうかがいました。
「今年は北海道・余市のウイスキーを作っているところへ、みんなでクルージングしに行こうという話が出ています。それを“スコッチ・クルージング”といいます。これは英国のスコットランドでやっているんですが、シングルモルトの蒸留所がたくさんスコットランドにあって、その蒸留所を巡るクルージングがあるんですよ。なんと、50~60艇ぐらい出て、行った先で試飲して、1週間ぐらい巡るんですよ。それの日本版をやろうということで、小樽に集合して、そこから余市に行って、海辺の蒸留所で試飲して帰ってこようという旅です」
●いいですね! 海の上で飲むお酒は格別でしょうね!
「そうなんですよ! 僕が雑誌を作るにあたって“スコッチウィスキーがなぜ世界のヨット乗りにこんなにも人気があるのか?”と思って調べてみたら、あの匂いは潮の香りなんですよ。海辺に長年堆積したものを炊いて香り付けをしているんですね。なので、あの辺りの島で蒸留されたシングルモルトのラベルを見ると、ヨットの絵が描かれているものが結構あるんですよ。だから、世界中からあそこに向けてクルージングする人がいるんですよね。それの日本版をやろうということですね。小樽はマリーナですが、小樽からみんなで出発して、余市の漁港に行きます」
●ほかに行ってみたいところはありますか?
「五島列島にもう一度行ってみたいなと思ってます。あそこはいいですよ! 元々あそこは隠れキリシタンが長崎市内では(教会を)作ることができないから、五島列島に移って、教会を海辺に建てているんですね。ヨットで海上から見てみると、岩場の先にマリア像が立っていたりするんですよ。隠れキリシタンがバレないように通って建てたんでしょうね。クルージングで行くと、マリア像や教会が次々と見えるんですよ。その風景はすごく不思議ですよ。あそこには島がたくさんあるじゃないですか。その島を巡りながら、豊富な海の幸を堪能することができるので、もう一度行きたいですね」
●田久保さん的にもオススメなんですね。最後に田久保さんにとって“海”とは何ですか?
「僕にとって“海”は“癒しの場所”ですね。潮風を浴びながらビールとかを1杯飲むと日頃の疲れがスッと抜けて幸せになれる、そんな場所です」
※この他の田久保雅己さんのトークもご覧下さい。
田久保さんのお話にもあった“海と遊ぼう720”ですが、“ヨットを一度体験してみたい!”という方にはいいキャンペーンですよね。7月20日の海の日前後の約2か月間、各地で開催されるということなので私も、近くにヨットのオーナーさんがいないか探してみようと思います。
今回のお話にもあったこのイベントは、水辺の安全教室や魚釣りゲーム、カヌーやディンギー、スタンドアップパドルなどの体験が出来ます。是非足を運んで、海での遊びを体験してください。
◎日程:7月11日(土)と12日(日)
◎会場:江東区豊洲6丁目第二公園とその前の東電掘り
◎詳しい情報:UMIちゃんねるのホームページ
こちらもお話にありましたが、どなたでも応募可能です。テーマは“日本の海”。グランプリの賞金は一般の部で30万円、アプリの部で10万円となっています。テーマに沿っているものであれば表現方法は自由ですので、ふるってご応募ください!
◎募集期間:7月31日(金)まで
◎詳しい情報:海のポスターグランプリのオフィシャルサイト