今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、西田賢司さんです。
探検昆虫学者の西田賢司さんは、中央アメリカにあるコスタリカの森に住んで、日々、昆虫の採取や研究をされています。これまでに発見した新種は1,000種以上! まさに新種発見のエキスパートでいらっしゃいます。そんな西田さんが日本に一時帰国。タイトなスケジュールの中、この番組のために時間を作ってくださいました。
きょうは先頃、西田さんが出版した 『ミラクル昆虫ワールド コスタリカ』という図鑑に載っている“ガンダムに出てくる丸い形のロボット「ハロ」みたいなコガネムシ”や“飛ぶと消えるチョウ”のお話などうかがいます。
西田さんが住んで研究を進めている中央アメリカにあるコスタリカ共和国。国土面積は九州と四国を合わせたよりも小さいんですが、その3分の1以上が国立公園や自然保護区に指定されている環境保護の先進国なんです。
気流が複雑なため、熱帯雨林だけでなく、乾燥した林もあれば、湿気の多い森、さらに熱帯の高山地帯など、多様な環境が狭い国土に凝縮されています。そのため、世界でも類を見ない生物多様性を誇る国になっています。
そんな生き物王国コスタリカにいる“ガンダムのハロ”みたいな昆虫について聞いてみました。
「“マンマルコガネ”というコガネムシの一種で、ダンゴムシみたいに丸くなります。これは日本にもいますが、メタリックな光沢があるので、ロボットみたいになってます」
●丸くなるときの形がいいですよね。これは、外敵から身を守るためにこうなるんですよね?
「そうです。つかんでも滑りますし、突っついたりしても全く動かないので、生きてるのか死んでるのか分からないときがあるぐらいです(笑)」
●ガンダムのハロのモデルはこれなんじゃないかと思うぐらいそっくりなので、リスナーの方には是非この写真を見ていただきたいと思います。次は“飛ぶと消えるチョウ”をご紹介いただけますか?
「もちろん実際にはいるんですが、目で追うのが大変なんですよね」
●この写真を見ると、羽がスケルトンなんですよ! これが飛ぶと消えたように見えなくなるんですね?
「そうですね。止まっているときも分かりにくいですが、飛ぶと余計に分からなくなります」
●種類は何ですか?
「“スカシマダラ(またはトンボマダラ)”と呼ばれているマダラチョウの仲間で、日本だとアサギマダラに近いですね」
●こういったチョウがコスタリカにはたくさんいるんですか?
「結構います。なので、捕まえてみないとどの種なのか分からないんですよね」
●チョウといえば、私たちはモンシロチョウやアゲハチョウのイメージが強いので、透明なチョウがいるとは思いませんでした! コスタリカにいると、こういう驚きの連発じゃないですか?
「毎日、何かしら知らなかったことを学んでいます」
●次は図鑑の表紙にもなっている“ジンガサハムシ”なんですが、写真を見ると(体の色に)エメラルドグリーンとイエローが入っていて、宝石のような美しい昆虫ですね。これはなんという昆虫なんですか?
「これはハムシの仲間で、ジンガサの形をしているんですが、透明な羽が特徴です。また、自分で色を変えることができます。敵が近づいてきたら赤に変色します」
●赤だと補食されにくいのですか?
「威嚇するための赤だと思います」
●色が変わる瞬間を見たことはありますか?
「はい、見てたことあります」
●どんな風に変わるんですか?
「5分ぐらいかけてゆっくり変化していきます。最初“なんで変化するのかな?”と思っていたんですが、調べていくうちに外敵が近づいてきたり、ストレスを感じたりすると変化することが分かりました」
●なんで色を変えることができるんですか?
「(表皮の)下の方に赤い色の水があって、水分調整でそれを見せるかどうかで変化するみたいですね」
●死んでもこの色なんですか?
「死ぬと茶色くなります。ハムシの仲間は大抵、生きているときと死んでいるときの色は全然違いますね。だから、昆虫の標本と実際の色がかなり違うので、探すときは意外と難しいです」
●そういうこともあるから、西田さんは生きている昆虫にこだわっているんですか?
「そうですね。生きていると新しい発見があったり予想外なことが起きたりするんですよね」
※西田さんは生きた昆虫をどんな風に集めているのでしょうか?
「昆虫はそれほど大きくないので、食べている植物が分かれば、枝や葉と一緒に袋に入れて持ち帰って、それを観察したり写真を撮ったり記録を取ったりして発表しています。なので、僕は網をあまり振りません」
●どんな風に捕まえるんですか?
「小さい透明なビニール袋を入れた、大きいゴミ袋を腰から2つぐらいぶら下げて、何かを見つけたらその小さい袋に入れて、ゴミ袋の中に貯めていくという感じですね」
●色々な生き物がその環境ごと、袋の中に入っているんですね?
「そうですね。それを部屋や家の前にぶら下げて成虫になるまで飼育しています。成虫になったら、それを標本にします」
●ということは、家中にそのビニールがぶら下がっている状態ですか?
「そうですね。100ぐらいはぶら下がっていると思います(笑)」
●(笑)。西田さんが生活するスペースは残っているんですか?
「かなり狭いです(笑)」
●(笑)。一緒に暮らしている感じですね。
「何が起こるか分からないので、常に目が行き届く場所にぶら下げています」
●1分1秒でそんなにも変化するんですか?
「そうですね。次の瞬間出てきたり羽化が始まったりしますね」
●昆虫の世界はペースが早いんですね。
「何かが起きると早いですが、成長はそれほど早いわけではないですね」
●変化のタイミングが突然なんですね。
「そうですね。それを逃すと、また探さないといけなくなります」
●そうなると、(袋の中にいる)100種に近い団体を常に注意している感じなんですね。家族が100人以上いるようなものじゃないですね! 嫌になることとかないですか?
「世話好きなので、それは全くないですね(笑)。小さいころから生き物の世話をずっとしてきたので、それが今になって役に立っています」
●一生懸命育てて孵化した昆虫を成虫になったら標本にするんですよね? そのときはどんな気持ちなんですか?
「複雑な気持ちはありますが、そもそも研究が目的なので、自然保護に還元すると思って、命は奪うけど、その命を無駄にしないという想いでやっています」
※近所の公園や家の庭でもたくさんの虫たちに出会うことができる日本ですが、これは世界と比べてどうなんでしょうか?
「北米やヨーロッパに行っても昆虫はあまりいないですよね。日本は街中でもセミがすごく鳴いているし、コオロギやバッタもいるので、多様性がすごく高いと思います」
●そうすると、子供たちが昆虫を観察するチャンスに恵まれていますよね。西田さんから「こんなところ観察するといいんじゃないか」というアドバイスがあればお願いします。
「緑があるところに積極的に行ってもらえれば、色々な昆虫がいると思いますし、近所の草むらや公園などに行ってじっくり観察してもられば、色々なものが見えてくるはずなので、是非見てもらえればと思います」
●西田さんのように昆虫そのものだけじゃなく、周りがどういう環境なのかというのも一緒にチェックするといいですよね。
「そこですよね! 小さいものを見つめていると、人間社会も含めて、全体の環境が見えてくると思います」
●昆虫の世界から学ぶことってたくさんあるんですね! ちなみに、コスタリカにはいつ頃戻るんですか?
「9月半ばに戻ります」
●今後、コスタリカではどんな研究をする予定ですか?
「まずは飼育していたものを確認して、ナナフシの調査をしないといけないので、他の研究者と一緒に遠出したり、コスタリカ内を移動したりします。あと、アメリカから出る本があるので、出版に向けての最終調整もしないといけないですね」
●ちなみに、ナナフシの調査はどんなことをするんですか?
「標本を増やしたり、生態を観察したりします」
●日本のナナフシとは違うんですか?
「種数が多いし、新種だらけなので、名前を付けたりします」
●そんなにも新種を発見できるものなんですか?
「新種の方が多いですね」
●今までどのぐらい発見されたんですか?
「見つけているものだけでも1,000は超えてるはずですね」
●新種を見つけると、自分の名前を付けることができるといいますが、西田さんの名前が付いている昆虫っているんですか?
「自分では付けませんが、誰かが付けることはあります。10ぐらいはあるかもしれないですね」
●どんな名前ですか?
「“アイソキーティスケンジィ”とかですね」
●それはどんな昆虫なんですか?
「蛾ですね。イラガの一種で、幼虫が宇宙生物のような感じなんですよ」
●成虫になると、どんな感じなんですか?
「普通の茶色い蛾になります(笑)」
●かなりギャップがありますね(笑)。それは見てみたいです。
「最近幼虫を見つけたところで、写真も撮れました!」
●では、近々その姿を見ることができるんですね。それは楽しみですね! 西田さんは昆虫からどんなことを感じてほしいですか?
「環境の変化が分かりやすい生き物の1つで、身の周りにどんな昆虫がいるか分かっていけば、意識をし始めると思うんですね。お金があることが“生きること”なのか、住む場所があることが“生きること”なのか、考え方が変わっていくと思うので、子供たちに対してよりよい地球環境への刺激を与えられたらいいなと思います」
●最後に1つ。西田さんが一番好きな昆虫は何ですか?
「小さい蛾ですね」
●なんで小さい蛾が一番好きなんですか?
「誰も相手にしないからですね。誰も相手にしなかったり、注目を集めないけど、その昆虫も何かをしていて、僕たちと繋がっているので、僕は“陰の立役者”みたいな昆虫を好きになってしまいますね」
※この他の西田賢司さんのトークもご覧下さい。
きょうお話に出てきた、機動戦士ガンダムに登場するハロみたいなコガネムシに、飛ぶと消えるチョウ、他にも自分の抜け殻をまるでトーテンポールのように重ねるハムシや、まるでフクロウのような目玉の模様が羽にある昆虫まで、西田さんの本に載っているコスタリカの昆虫たちはまさにミラクル! 見ているだけでワクワクしました。西田さんには、ぜひ今後もたくさんの新種を発見していただき、その昆虫が生きる環境、そしてどんな風に生きているのか、昆虫たちのことを色々教えていただければ嬉しいです。
日経ナショナル ジオグラフィック社
/本体価格1,800円
西田さんの新刊となるこの図鑑には、帯に“美しい虫、ヘンな虫、スゴイ虫”と書いてある通り、“動戦士ガンダムに登場するハロみたいなマンマルコガネ”や、“飛ぶと消えるトンボマダラ”など、西田さんだから見つけて、採取し、写真を撮った摩訶不思議な昆虫が満載です。
西田さんのオフィシャルサイトには初めて見るような珍しい昆虫の写真やビデオなどが満載なので、ぜひご覧ください。