今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、長谷部雅一さんです。
“おとなの自然塾”や“ファシリテーション講座”などのプログラムを実施しているBE-NATURE SCHOOL。今回のゲスト、長谷部雅一さんはそのスクールのプログラム・ディレクターとして活躍されています。
そんな長谷部さんは、子供たちの自然教育のお仕事もされていて、今年『ネイチャーエデュケーション』という本を出されました。副題に“身近な公園で子どもを夢中にさせる自然教育”とあるんですが、今回はそんな自然教育のノウハウをうかがっていきたいと思います。
※子供の頃、自然の中で遊ぶと色々な学びや発見がありましたが、そんな自然の中で遊ぶと、こんな効果もあるそうです。
「面白い例がありまして、最近では“自然体育”という言葉を作って、とある保育園で自然の中で体を作っていくという年間プログラムを始めたんですが、自然を見たり感じたりする力だけじゃなくて、自然の中で遊ぶことにも慣れると思うんですね。
自然の中には平らなところってないじゃないですか。凸凹があったり、斜面があったりするところを走ったり(なにかを)探したりしているだけで、小学校に入って体育をしていくために必要な体幹が鍛えられたり、転んでも怪我をしにくい体ができたりするんですよね。ある子供は、丸太をまたぎながら進んでいたら、いつの間にか跳び箱が跳べるようになったそうなんですね。そうしているうちに体をキレイに使えるようになってくると思うんです。(体の)決まった使い方ではできないことばかりなので、そういうことも面白い視点として最近出てきました」
●それはすごく面白いですね! 例えば、子供が鉄棒で逆上がりができなかったり、とび箱が跳べなくて悩んでる親御さんとかいると思いますが、自然の中で遊ぶことで(基礎体力の)ベースが上がるんですね。
「上がると思います。鉄棒で逆上がりができるようになりたかったり、前転ができるようになりたいということに対して、アドバイスを保育園の先生から求められたりするんです。まだデータは取れていませんが、木登りや坂道を走ったりして、自然の中で遊んでいると、自分がイメージした動きが段々とできるようになってくるんですね。そうなってきたら、分かりやすい見本を一度見せてあげると、すぐにできるようになった子が急に増えたりしているんですよ」
●楽しみながら運動神経がよくなるって最高ですよね!
「1時間半ずっと自然の中で体を動かしているんですが、飽きる子がいないんですね」
●そのときは、特別に指導したりしていないんですか?
「ベースはそれだけで十分だと思います。ただ、ステップを踏んでもう少し体全体を作ってあげるには、僕らが仕掛けを作ってあげたり、ルールを作ってあげたりすることで、よりスピードが増しますね」
●どんな仕掛けやルールがあるんですか?
「競争の要素を取り入れたり、チーム戦にしたりすることで、助け合う子供たちが出てきたり、それによってさらに頑張ろうとする子供たちも出てきたりして、社会性や人間関係づくりなども目論みながら設定していくと、さらに変わってくることもありますね」
●本当に色々なことが学べるんですね!
※自然教育のプロとして活躍されている長谷部さんですが、子供たちと接するコツは、世界一周の旅を通して学んだそうです。一体どんな旅だったんでしょうか?
「しっちゃかめっちゃかでした(笑)。というのも、(僕は)小・中・高の主要5教科の成績が酷くて、人に見せられたものじゃなかったんですね。でも、“社会や世界史に出てきたもの、その本物を見てみたい”と思って行ってみたんですが、それが2回目の海外旅行だったんです。まず、980円ぐらいで売ってた世界地図帳みたいなものを買ったんです。それには大きい幹線道路だけが載っていて“そこから続けていけば、どうにかなるか”と思って行ったので、常に困っていました(笑)」
●(笑)。それをどうやってクリアしたんですか?
「まず一番最初に困るのは“言語”ですよね。これができないとご飯も食べられないし、両替もできないし、国境も越えられない場合があるんですね。あと、国境を越えたばかりのところは田舎だったりすることもあるので、英語を話せる人から現地の言葉を教えてもらうという手段が取れないことがあるんです。
そういうことを積み重ねていくうちに“現地の子供に教えてもらおう”と思うようになってきたんです。それで、現地の子供と接しながら色々なことを教えてもらいました。例えば、市場で一番安いパン屋を教えてもらったり、お水の値段を教えて“それは高すぎるからお金を返してもらってこい”といったことを、遊びながら教えてもらいましたね(笑)
そうやって子供たちと遊んでいくうちに、“世界中の子供たちって、遊んでて好きなことって変わらないな”って思ったんですね。それが一番の発見でした。今の仕事をするようになってから、そのときのことを思い出したら“子供たちと遊ぶときに重要なことって、大人が一生懸命考えるよりも子供たちがそうしたくなる資質というのが重要じゃないか”ということを思い出して、活用するようになりましたね」
●その資質はどんなことなんですか?
「簡単なものでいうと、競争したり、イタズラをしたり、投げたり、遠くや高いところから跳んだり、驚かしたりするというどんな子供がやっても楽しそうなことは全世界一緒でしたね」
●そう言われてみると、友達の子供と競争をしたりすると飽きないですよね! そういうのは世界共通なんですね。
「それが始まると、言葉を超えて、みんな一緒になれますね」
●国によって、子供たちの生活状況って全然違うじゃないですか。それでも、遊び心は変わらないものなんですか?
「それは僕もずっと不思議でした。僕らの目線からすると、その国の情勢はすごく辛いなぁと思っていたりしたんですが、その中でも子供たちは楽しいことを見つけたり、幸せを感じたりすることができるんですよね。それを現地に入って気づきました。なので、遊び方もどこも変わらないということに気づきましたね」
※一緒に遊んでくれる大人の存在で自然遊びの楽しさも変わってくると思いますが、私たち大人はどんな事を意識すれば良いのでしょうか?
「これは保護者の方からも幼稚園や保育園の先生方から“虫がどうしても苦手だったり、汚れるのが嫌な子に対してどうすればいいのか?”ということをよく聞かれるんですが、そこに関しては無理に好きになってもらおうとは思っていなくて、それはそれなりに一緒に付き合う気持ちになったり、子供たちの発見を尊重したり、立ち止まってみて面白いものを見つけたり、葉っぱの形や虫への疑問といった子供目線になれるような心の状態になってくれると嬉しいですね」
●子供目線になるって難しいかと思いますが、普段の生活で気をつけることってありますか?
「仕事をしている方やお子さんを連れてお買い物をしている親御さんは、すごく早いスピードで動いていますよね。そうじゃないと子供が寝る時間に間に合わなかったり、次の打ち合わせに間に合わないという生活スピードになってしまうと思いますが、たまにはそのスピードを落としてみてください。それをすることで目に入ってくる情報量が増えてくると思うんですね。
例えば“あの自転車かわいいな”とか“あのパン屋さんからいい匂いがしてきたな”といった感じで気づけるようになって、それが自然の中でできるようになると、“あそこに虫がいる”とか“知らない花がある”という風に変わってくるんじゃないかと思っています。1日の中でほんの一瞬でもいいので、そういう風にしていただけるだけで変わるかなと思います」
●確かに大人と子供ではスピードが全然違いますよね。子供目線になるには、その子供のスピードに合わせることが大事なんですね。あと、本に書かれている“壁際族”が気になったんですが、これはどういったことなんでしょうか?
「子供たちと遊んでいると面白くて、公園の遊具で遊んでいるときは(公園の中でも)メインとなるところで遊んでいるんですが、それに飽きてくると、公園の生け垣のような壁になっているところに溜まり始めるんですね。ときにはしゃがんで何を見ているかと思ったら、くしゃみによって自分たちが食べていた、アメを含んだヨダレが地面に落ちて、それに群がっていたアリをずっと見ていたりしていたんですよね(笑)。
そういう生き物が発生する確率が高い場所って、実はそういう壁際なんですよ。普段はなかなか行かない場所ですけど、そういう“際の部分”こそ面白いことが起きやすいので、“そういうところが面白いと思えるような人になってほしい”という意味で付けさせていただきました」
●「そんな隅っこで遊ばないで真ん中のほうで遊びなさい!」って言ってしまいがちですが、そういうところにこそ色々な自然があるんですね。
「それがたとえ10メートル×10メートルのすごく小さな都市公園でも、生け垣は必ずあって、そこには小さな生き物や小さな葉っぱがありますし、草がキレイに刈られてる場所でも、そういった際だと面白い形の雑草があるので、そここそ遊ぶチャンスが広がっている場所だったりしますね」
●そこに宝の山があるんですね!
「いっぱいあります! むしろ、今は管理が行き届きすぎて、雑草自体を見る機会が減っているんですよね。でも、そういうところだと強い雑草がいっぱい残っているので、出会う確率が高いですね」
※危険なことや、やってはいけないことを子供に伝えるにはどうすればいいのでしょうか?
「特に小さなお子さんに関しては、ただ“ダメだよ”と言っても、自分のやりたい欲求を押さえつけられた感じがして、ストレスになるだけみたいなんですね。なので、僕も色々なやり方を試させていただいている中で、“もし、ここでジャンプして失敗してしまったら怪我をしてしまうかもしれなくて、そうなったら僕はとても悲しくて寂しい気持ちになるから止めてほしいな”と言うと理解してもらえたりします。
あと、アウトドアイベントをやらせていただく中で、大人が“ダメだ”ということって、その人自身に経験がなかったりして、予測がつかないからやらせたくないっていうのが多いんですよね。もしも、そういう風に思っているなら、まず一緒にやってみることをオススメします。そうすると、子供にやらせても大丈夫かどうかが分かると思いますので、ただ“ダメだ”という気持ちが少し減ってくるんじゃないかと思います。それが本当に危ないということになれば、さっき言ったような言い方で伝えれば、3歳ぐらいの子供でも理解します」
●子供と一緒に遊ぶことが大事ということですね。
「そうですね。もちろん面倒だったり気分が乗らなかったりすると思います。全部付き合うのも難しいと思いますが、“ここは一緒にやった方が、この子にとっていいかもしれない”という瞬間がきっとあると思うので、そのときだけでも一緒にやっていただくだけでも、大人の中でのOKラインが増えてきますし、子供にとっても“一緒にやった”という楽しい思い出もできますし、自分ができたという達成感も味わえると思うので、いいことがいっぱい起きると思うんですね」
●最後に、子供を持っている親御さんたちにメッセージをお願いします。
「日頃とても忙しくされていると思いますし、僕も仕事をしているのでその気持ちはすごくよく分かるんですが、休日や半日だけでも時間があるというときには、小さな公園でもいいので、子供の五感が開いて育つのにいい自然がある場所へ、一緒に行ってみるということをしていただけると嬉しいなと思います」
“自然教育”と聞くと、特別な場所と専門的な知識がないと難しいのかなと思っていたんですが、大人たちの工夫次第で身近な公園などでも自然教育が出来るんですね。落ち葉に木の実、自然の落し物がたくさんあるこの季節。子供の目線で楽しみながら、ぜひ子供たちとたくさん自然遊びしたいですね。
みくに出版/本体価格1,300円
副題に“身近な公園で子どもを夢中にさせる自然教育”とあるように、経験から導きだされた実践的な自然教育のノウハウが詰まっています。自然遊びのテクニックや、身近な公園で自然遊びをするためのヒントが満載です! 公園での遊び方は春、夏、秋、冬と季節ごとになっています。
長谷部さんがプログラム・ディレクターを務めるBE-NATURE SCHOOLでは、大人向けの自然塾なども行なっています。詳しくはBE-NATURE SCHOOLのオフィシャルサイトをご覧ください。