NECグループでは“人と地球に優しい情報社会の実現”をビジョンに掲げ、色々な社会貢献活動を行なっていて、その中の1つに“田んぼ作りプロジェクト”があります。
このプロジェクトは、耕作放棄地を再生し、稲を植え、無農薬・無化学肥料で育て、収穫したお米でお酒を作るというもので、今年3月には、1年を通して行なわれているこのプロジェクトの締めくくりとなる新酒の蔵出しイベントの取材リポートを、そして6月にはお酒づくりのための初めの一歩、“田植えイベント”の取材リポートをお送りしました。
そして、今回は植えた稲を刈る“稲刈り編”です! 果たして長澤はちゃんと稲を刈ることができたのか? 乞うご期待です!
※まずは、このプロジェクトを進めているNEC・CSR社会貢献室の池田俊一さんにお話をうかがいました。
●今日は稲刈りということですが、改めて、NEC田んぼ作りプロジェクトがどういったものなのか、教えていただけますか?
池田さん「このプロジェクトは元々、社員の環境教育のためにスタートしまして、NPO法人アサザ基金さんと一緒になって進めているプロジェクトになります。1年を通したプロジェクトになっていて、田植え、草刈り、稲刈りと脱穀、獲れたお米でお酒を造るといった流れになります。それを通じて、ものづくりを体験してもらうという内容になっています。お米ってどういう風に作られているのか興味がある人がたくさんいまして、1年間通じて参加する社員も多くいます」
●今日もたくさんの方が参加されていますが、何人ぐらい参加されているんですか?
池田さん「約100名の社員とその家族が参加しています」
●人気のあるイベントなんですよね?
池田さん「人気がありまして、今回も抽選でした。応募はもっと多かったです」
●社内でも注目されているプロジェクトなんですね!
池田さん「そうですね。“子供にそういった体験をしてもらいたい”という社員が多くて、今回小さなお子さんも多く参加されています」
●このプロジェクトは社外でも注目されているんですよね?
池田さん「今年、環境省の“環境 人づくり企業大賞”に選ばれました。このプロジェクトは2004年にスタートしましたが、当時はまだこういった取り組みは各企業ではありませんでした。それが色々な企業様に注目されて、広がっているということで、先駆的な実績が評価されたということです」
●今日は私も稲刈りをしますので、よろしくお願いします!
池田さん「稲刈りは年間スケジュールの中でもかなりハードな活動になりますので、一緒に頑張りましょう! よろしくお願いします!」
※続いては、NECと協働で田んぼ作りプロジェクトを進めているNPO法人アサザ基金の代表・飯島博さんにお話をうかがいました。
●前回、この田んぼで泥んこになりながら田植えをさせていただきましたが、それが立派に実りましたね!
飯島さん「いいお米が獲れそうですね」
●今年はどうですか?
飯島さん「全国的には今年はお米の出来があまりよくないみたいですが、この谷津田は環境がとても安定していることもあるのか、例年より少し多めに獲れると思います」
●この田んぼは、毎年実りが安定しているんですか?
飯島さん「そうですね。実は、この谷津田は最初にお米作りが始まったところなんですね。この谷津田でお米を確実に収穫しながら、川の近くだったり湖の近くの大きな田んぼに新田開発をしていったんですね。昔の人はここが安定して収穫できるということを知っていて、私たちもやってみたらその通りになったということですね」
●なぜ安定しているんですか?
飯島さん「谷津田には周りに森があるので、湧き水が絶えないんですよ。なので、水の心配がいりません。そして、森に囲まれている谷間にある田んぼなので、日陰になるということでマイナスに取られていますが、視点を変えれば、周りが森なので、台風が来ても被害が抑えられるんですよ。
それに、トンボやクモやカエルなど、生態系がすごく豊かなので、害虫の大発生もあまりないんですね。そういう風に、昔の人は自然に守られてできる場所を知っていたからこの谷津田を大事にしていたんですよ。生産性は低いですが、集落のみんなが食べていける分のお米を確実に獲っていたんですよね」
●これからは天災とか色々なことが起きる可能性がありますが、そんな中で安定した食料が供給できる谷津田はすごく貴重ですね!
飯島さん「昔の人たちの知恵と歴史がここに眠っているんですね。確かに今は技術が発達して河川の周りで水をたくさん引きながら、大きな田んぼを作っているじゃないですか。とはいえ、昔も“お米は3年に1回収穫できればいい”といわれていたんですね。それはどうしてかというと、洪水のせいなんですね。今も地球環境が大きく変動していて“大災害の時代に入った”といわれていますが、そういうことを考えたら、昔の人たちの知恵にもう一度戻って、自分たちのお米を確実に獲ることができる基盤となる田んぼを守ることが大事だと思います。
今はもう大規模化はできないので、農業政策からは見捨てられていますが、こういうところの価値を改めて見出していくことも、これからの持続可能な社会を考えていく上で重要じゃないかと思いますね」
●そんな谷津田でこの後、稲刈りをさせていただくんですが、既に刈られている稲が干されていいますね。あんな感じで刈ったものを乾燥させるんですね。
飯島さん「そうですね。今では機械で刈って、すぐ脱穀して袋詰めしてしまうんですが、私たちの場合は“おだがけ”といって、ああやって刈った後に逆さまにして吊るしています。ああいう風にしておくと、稲の養分がお米に下りてくるんですね。それによってうま味が出てくるんですよね。なので、おだがけしたお米は普通のより高く販売されています」
●それは楽しみですね! ところで稲刈りが終わった田んぼはどうなるんですか?
飯島さん「稲刈りすると見通しがよくなりますよね。皆さんが稲刈りすると足あとがたくさんできるじゃないですか。そこに水が入って、水溜りがいっぱいできるわけですよ。そこに、今待ってる生き物たちが入ってくるんですよね。これがどんどん増えてきますよ。
今、絶滅危惧種に指定されるんじゃないかと話題になっている“アキアカネ”が、その水溜りに卵を産むんですね。今、アキアカネが減っているのには色々な理由がありますが、その1つに水源地となる田んぼが耕作放棄されて、そこに草が生えて水源が見えない状態になってしまい、アキアカネが山から下りてきても卵を産む場所が見つけられないということがあるんですね」
●稲刈りが終わったあとの谷津田にも役割があるんですね!
飯島さん「このあと色々な野鳥が来てエサを捕ったり、色々な生き物の住処となって、冬の間のもとても大事な場所なんですね。 あと、もう1つ大事なことがありまして、湧き水は全国共通で大体15度ぐらいなんですよ。なので、凍らないんです。冬の間も凍らないで閉ざされることなく水源が維持されるので、生き物にとって、すごく大事なところですね」
●NEC田んぼ作りプロジェクトの達人師範、山田勲さんにお話をうかがいます。よろしくお願いします。
山田さん「よろしくお願いします」
●山田さんはなぜこのプロジェクトに参加しようと思ったんですか?
山田さん「母方の実家に田んぼがありまして、そこで子供のころに作業していました。この歳になって、またその経験ができるのならやってみようと思って参加するようになりました」
●大人になって改めてやってみてどうですか?
山田さん「子供のころに感じたあの土の感覚を思い出して、小さいころの経験が体に染み付いて残っているんだということを感じました」
●会社の人たちと一緒に田んぼ作りをするのって、どうですか?
山田さん「1つの作業をチームを組んでみんなで分担してやることで、達成感が味わえますね」
●この田んぼの経験が仕事に活かされたり、逆に仕事の経験が田んぼ作りに活かされたりするんですか?
山田さん「仕事でもチームプレイで作業をすることがありますので、この田んぼでの作業に繋がるものがあると思います」
●山田さんはNECの社内制度の資格も取られているんですよね?
山田さん「“NECプロフェッショナル認定制度”の“ビジネス・コーディネーター”という資格を今年取得しました。これは、さらに高い専門性を身につけて、一緒に新しい事業を作り出していくということを役割としています。仕事でも田んぼでも活かせるので、共通することってあるんだなと感じてます」
●今日は私も稲刈りをさせていただきたいと思いますので、教えてください!
山田さん「スパルタでいきますので、よろしくお願いします!」
※早速、山田さんによる稲刈りのレクチャーです。
●田んぼに入ると足がとられますね!
山田さん「かなり柔らかいですからね。では、稲刈り作業の説明をします。作業は大きく分けて3つあります。まずは“稲を刈る作業”、そして“刈った稲を束ねる作業”、最後に“束ねた稲をおだに掛けて干す”となります。
まずは刈り方から説明します。刈るときは束ねて掴んで根元を刈ってください。大人が掴んだ一束がお茶碗1杯分のお米になるんですが、それを4つ重ねていきます。それだけで4人家族のお茶碗1杯分のお米ができるわけです。束の縛り方ですが、まずは麻ひもを半分にしてください。それで束を固結びで縛ってください。これで縛ることができました」
●ちょっと持ってみていいですか?
山田さん「どうぞ」
●結構ずっしりしますね!
山田さん「この重さが収穫したときの喜びだと思います。では、最後におだという物干し竿みたいなものに掛けていきます。最後にポンポンポンと刈ったところを軽く叩いてあげてください。それをすることで縛り方が少し緩かったりするところが詰まって落ちにくくなります。これをおだにどんどん掛けていって干していくという流れになります。それの繰り返しで、今日1日で全て刈っていきます。相当ぬかるんでいますが、大丈夫ですか?」
●今、私の足は膝近くまで入っている状態です(笑)。早速刈っていきたいと思います。今私がいるのは、以前私が田植えをした辺りだと思いますが、私の肩ぐらいまで大きくなったんですね!
山田さん「これは“日本晴”という品種で、コシヒカリなどよりも大きく成長するものです」
●そうなんですね! これを刈っていくわけですね。まずはこの束をしっかりと握って、根元を鎌で刈ります! ・・・結構力がいりますね。あ、刈れましたー! 結構感動しますね!
山田さん「今日までの積み重ねがここに至っているということで、1年で一番嬉しい日ですね」
●その重みが、今私の左手に伝わってきています!
山田さん「まだまだありますので、引き続きよろしくお願いします」
●これで満足しちゃいけないですね!
※引き続き、稲刈りをしていきます。
●この刈っていく感触がいいですね!
山田さん「立派に育っていると思いますので、今年は刈り甲斐があると思いますよ」
●この一束がお茶碗1杯分になるんですよね。
山田さん「そうですね。田植えしたときは2本の苗だったと思いますが、それがここまで成長して、大切な食べ物になるんですよね。2粒が何千粒になるんですから、自然の力ってすごいですよね!」
●そうですね。今、小さなクモがいました! さっきバッタもいましたし、生き物がたくさんいますね!
山田さん「豊かな証拠ですね。こうやって自然を守っていると、生き物たちも集まってきてくれますので、それもこの活動の1つですね」
●そうですね。稲刈りしながら生き物観察も楽しめますね!
山田さん「それも楽しみにきている人もいると思います」
※無事に稲を刈ることができました。ここで、参加者の方に感想を聞いてみました。
ユウキ君(9歳)「楽しいです!」
●これ、ユウキ君が普段食べているご飯になるんだよ?
ユウキ君「すごいですよね!」
●これからご飯食べるとき、意識変わりそう?
ユウキ君「変わりそうかも。ふりかけ、いらなくなるかも」
●お父さんにもうかがいますが、どうして参加しようと思ったんですか?
イバタさん「都会に住んでいると、お米や田んぼに触れる機会がないので、子供にご飯がどうやってなるのかを教えたくて来ました」
※別の方にも聞いてみました。
●今日はどちらからいらしたんですか?
ヤナトリさん「川崎から来ました」
●ここでの作業は初めてですか?
ヤナトリさん「ここは、田植えから2回目です」
●私もです!(笑) 前回植えた稲がここまで立派に育ったのを見たら感動したんですが、どうでしたか?
ヤナトリさん「いっぱい実ってくれて嬉しいです!」
●カリナちゃん、今稲刈りしてるけど、どう?
カリナちゃん(6歳)「楽しい!」
※稲刈りがほぼ終わったので、アサザ基金の安保満貴さんが行なっていた午後のプログラムに参加しました。
●今、何を捕まえているんですか?
安保さん「“シオヤトンボ”というヤゴの幼虫ですね。ちゃんと羽がありますね」
●本当ですね! これが大人になると、飛んでいるトンボぐらいの大きさになるんですね。
安保さん「そうですね。一晩であのぐらいの大きさになります」
●一晩であれぐらいになるんですか?
安保さん「そうなんです。6~10時間ぐらいかけてトンボになります」
●昔からここにいたんですか?
安保さん「ちょっとだけいました。でも、ここは3年ぐらい前まで背の高い草がたくさん生えていたんですね。そうなると、水面が見えないじゃないですか。それを、今みたいにトンボを捕りながら踏み耕をすることで、他のトンボたちに“あそこには水があるんだ”ということを教えています。その結果、歩いていてもトンボが見つかるぐらい増えました」
●では、来年にはもっと増えているかもしれないですね!
安保さん「ここ、数えるのも大変なぐらいいますよ(笑)。ここは毎月調査をしているんですが、シオカラトンボが出てくる時期とアカトンボのピーク時は数えるのが大変です(笑)」
※最後に、アサザ基金の代表・飯島博さんに、今後の展望などをうかがいました。
●今日1日かけて稲刈りを行ないましたが、無事終わりました。
飯島さん「お疲れ様でした」
●お疲れ様でした。少し疲れましたが、すごく充実しました!
飯島さん「それはよかったです」
●前回、「環境再生には“ネットワーク”がキーワードの1つだ」とおっしゃっていましたが、今後NECとのネットワークはどのように展開していきますか?
飯島さん「ネックワークというのは、今までの枠組みや繋がりを越えた新しい広がりを生み出していくもので、それによって、想定外の出会いや色々なキッカケを生み出してくれるのが、本来のネットワークだと思うんですね。なので、このNECさんと協働の取り組みも、環境や水源地の保全、霞ヶ浦の再生という枠組みを越えて、もっと違う環境だったり、違う業種の人たちとのコラボレーションといったような展開していければいいなと思っています」
●この田んぼには、これからどんな夢がありますか?
飯島さん「この田んぼの長さが1キロ以上もあるので、谷全体を再生していくことを目的としています。周辺からの農薬の影響や色々な環境汚染の影響が少ない場所で、一番上流にある田んぼなんですね。その利点を生かして、水源地として流域全体、さらには霞ヶ浦へと生き物たちが広がっていくようにしていきたいと思っています」
●私はこの谷津田で作業を2回体験させていただきましたが、これは1年では終わらないプログラムで、来年以降も見続けていきたいなと思いました。また是非、参加させていただいてもいいでしょうか?
飯島さん「自然はどんどん変化していくので、今年見た風景や出会った生き物たちとは違う姿が見られます。なので、付き合っていったらキリがないですね。まさに自分自身の友になるものだと思うので、引き続き色々な形で参加していただけたらと思います」
今回8面の田んぼから約400キロのお米を収穫したんですが、稲刈りが全部終わって充実感がすごくありました。それにしても、このNEC田んぼ作りプロジェクトは、社員の社会貢献や環境教育はもちろんですが、谷津田が再生できて、そこに生き物が戻ってくる。そして周辺の自然が再生し、下流の霞ヶ浦まで綺麗になるなんて、本当に今回植えた苗のように一粒でたくさんの実りのあるプロジェクトですよね。
今年もNECグループでは「C & Cユーザーフォーラム & iEXPO 2015」を11月12日(木)と13日(金)の2日間、東京国際フォーラムで開催します。NECの遠藤社長や各界を代表する有識者の講演を始め、ビッグデータやサイバーセキュリティなど、今注目されているIT のテーマに沿った67のセミナーや100の展示をご用意しています。
展示では、ビジネスに革新をもたらすといわれているモノのインターネット「IoT」の活用で社会インフラを支えるNECの技術やソリューションをご紹介します。
また、来年から運用が始まるマイナンバー制度を活用した未来モデルやワークスタイルなど、社会やビジネスの課題を解決するソリューションも数多くご用意しています。
詳しくは、特設サイトをご覧ください。