今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、島本美由紀さんです。
料理研究家の島本美由紀さんは世界50カ国、170回を超える海外旅行を経験。旅先で得た知識や感覚を、お料理や家事に活かしてらっしゃいます。お料理本や旅のガイド本、そしてエッセイなども手掛け、食を通したエコ活動も行なってらっしゃいます。そんな島本さんを都内のキッチン・スタジオに訪ね、旅やお料理のお話をたくさんうかがってきました。今回はそのときの模様をお届けします。
●今週のゲストは、旅する料理研究家の島本美由紀さんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします」
●旅する料理研究家ということですが、実際に旅に出て日本にはないような料理を食べてみて、どうですか?
「そこの気候や地域に基づいた料理が豊富にあって、例えば東南アジアは1年中暖かいので、ハーブといった緑の野菜がたくさんあるんですね。なので、意外と野菜をたくさん食べるんですよ。また、パプアニューギニアはイモの種類が30~50ぐらいあるんです。そういった“食”で現地の暮らしが見えてくるんですよ。それがすごく楽しいです」
●海外に行くと、その土地でしか食べられないものだったり育たないものが多いんですね。
「そうですね。パプアニューギニアや山奥の地域ではお魚はほとんど食べられないので、“土で育てて食べられるもの”としてイモが発展していきましたね。あと、土を大きく掘って、そこに裁いた鳥や豚をイモや野菜と一緒に埋めて、石を焼いて葉っぱを被せて蒸し焼きにしたりしていますね。また、ハワイやフィジーやニューカレドニアといった南国でもそういう風にしていて、道具がないからこそ、工夫して調理をしているんですよね」
●私たちは、普段ボタン1つで温められたりするじゃないですか。
「そうですよね。でも、旅に出て思うのは、ここ日本はすごく恵まれているので、どうしてもモノを所有してしまいますよね。たくさんのモノに囲まれて生活してしまうので、いつの間にかその管理ができなくなって片付けが大変になったりしますが、私は以前モンゴルの遊牧民のところにホームステイをしたことがあるんですけど、遊牧民はあのゲルの中という限られたスペースの中で暮らして移動していくので、最小限のモノだけで暮らしているんですね。そういったところに1週間暮らしてみて日本に帰ってくると、自分の家のモノの多さに気づくんですよね。モノを買ってきたけど、これって本当は必要ないんじゃないかと思ったりするんですよ。
食もそうで、モンゴルはお客さんが来ると歓迎の意味を込めて、自分たちが飼っている家畜を裁いて調理してくれるんですが、そこで命の大切さを改めて感じました。家畜1匹殺して、裁いたお肉を乾燥させたり、ヤギのお乳から摂ったミルクでチーズを作ったり、毛皮を売ったり、毛皮で布団を作ったりして、その殺した家畜1匹を最後まで使い切る精神も私たちは普段の生活で忘れかけていたことだと思うので、そういった旅で気づかせてもらいました。食だけじゃなく、暮らし全般を考え直すキッカケを旅でもらってます」
※島本さんは、どんなキッカケで旅先の料理を学ぶようになったのでしょうか?
「インドかネパールで旅したときに家の庭で何かを作っていた人がいたんです。そこに偶然通りかかって、何を作っているのか気になってずっと見ていたら、『食べる?』って誘われて、食べに行ったのがキッカケです。そこで作っているところを見させてもらったりしていくうちに、旅で観光地を回るだけじゃなく、暮らしの中に入りたいと思うようになっていきました。そこからはなるべくホームステイをさせていただけるところを探したりしていますし、モンゴルもホームステイを受け入れてくれる遊牧民の方を探して、料理が上手な奥さんがいるところを現地の旅行会社さんに探してもらいました。そうやって、色々学んでいくのが楽しかったですね。そうしたら欲がどんどん出てきて、家に帰ってきてからも学んだ料理を作ってみたいと思いました。やっぱり旅先で食べた美味しいものは日本に帰ってきてからも食べたいし、家族や友達にも食べさせてあげたいと思いましたね」
●それは何よりのお土産ですね!
「でも、昔は買い物がすごく好きで、スーパーに入ると調味料とか色々とたくさん買っていたんですが、結局使わずに捨ててしまったり、1回使っただけで捨ててしまったりと、無駄にしていることが多かったので、私の料理は海外で学んだ料理を日本のスーパーで売っている食材でなるべく作れるように工夫しています」
●海外の料理というと、それ用の食材や調味料を用意しないといけないと思っていたんですが、日本のものでできるんですね!
「できます! 例えば“ナンプラー”ですが、もちろんナンプラーを使った方が魚介のうま味が感じられるのですごく美味しいんですが、中には臭みが苦手だという方もいるので何かで代用できるかと考えたら、普通のしょうゆだと塩分が少し足りないので“薄口しょうゆ”がオススメです。薄口しょうゆの方が塩分が高めなので、ナンプラーに似た味わいになります。それだと臭みが出ないので、子供も“ガパオライス”という今流行りのタイ料理が食べられるようになります」
●“ガパオライス”が食卓に並ぶと、家族の会話も弾みそうですね!
「そうですよね! 最近、日本の夏もすごく暑くなりましたよね。私この7月に仕事でベトナムに行っていたんですが、ベトナムの方が涼しかったんですよ。そうなると、日本の食も気候に合わせて変わってくると思います。今までは和食が多かったかと思いますが、去年ぐらいからエスニック料理がブームになってきているんですよ。なぜならそれは暑さで刺激を求めていたり、元気が出そうなイメージがありますよね。冬も一気に寒くなってきたりするので、韓国料理みたいなキムチを取り入れた体が温まるような料理が家庭に浸透してくたりと、日本も気候に合わせて食文化が変わってきています」
※島本さんはルー大柴さんやギタリストのcharさん等が参加されている“MOTTAINAI”キャンペーンにも参加されています。一体どんなキャンペーンなんでしょうか?
「元々“MOTTAINAI”という活動でノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんを中心として立ち上がった団体です。“もったいない”という言葉にワンガリ・マータイさんは『日本には素晴らしい言葉がありますね。ただモノを捨てるだけではなく、モノを大切に使うのはいい』と共感されていたんですね。でも“もったいない”という言葉には“物を捨てる”ということだけではなく、色々な使い方があると思っています。私は“食”に関することが中心となっていて、食べられずに捨ててしまう食材はもったいない、郷土料理が失われてしまうのはもったいないと思いますし、私が20歳のときに母が亡くなっているんですが、そのときにお母さんの料理って大切だったことに気づいたんですね。それが料理研究家になったキッカケでもあるんですが、今お母さんから料理を教わる人が少なくなってきているので、母の味を引き継がないのはもったいないって思っています。その母の味が子供の舌を作っていくと思いますし、何かあったときにホッとする味が母の味だと思うんですね。そういうものを引き継いでほしいなと思っています」
●お母さんの料理って、どのレストランに行っても食べられない心温まる味ですよね!
「そうですよね! 何が一番好きですか?」
●私はうどんですかね。
「何か特徴があるんですか?」
●シンプルなうどんなんですが、母の実家が埼玉県なので具材が色々入っていて、それが外では食べられないうどんで好きですね。
「レシピは学びましたか?」
●習ったんですが、自分で作ってもなかなか同じようにならないんですよね。同じように作っているはずなんですが、どうしてなんでしょうか?
「それはお母さんの愛情が入っているからじゃないでしょうか?(笑) あと、お母さんは分量を量らずに目分量だったりしますよね。その“ちょっとした加減”が“お母さんの味”でもあるので、同じようにはなかなかできないんですが、あるとき突然できるようになったりするんですよね」
●私もいつかあのうどんが作れるようになりたいです。
「大切なものって失って気づいたりするんですよ。私も母が亡くならなかったら、食に対する大切なものとか想いが分からずにいたと思うんですね。なので、今でもお母さんがいる方はお母さんから料理を学んでもらいたいと思っています」
●“食材のMOTTAINAI”は、どんな風にすると無駄にしないで済むのでしょうか?
「今って調味料がものすごくありますよね。勢いで買ってしまうと使い方が分からなかったり、海外のスーパーがたくさん入ってくることによって、焼肉のタレが1リットルあったりしますよね。その方がお得だったりして買ってしまうと思いますが、自分の暮らしに合わないサイズの調味料を買ってしまうと、どうしても残ってしまいますし、一度開封してしまうと風味が変わってしまうので、日持ちしないこともあって捨ててしまう人がいるんですね。私も昔はそうでした。新しいドレッシングを見つけると『美味しいかも!?』と思って勢いで買っていたんですが、結局捨てることになっていたんですね。その“捨てる”ことが“お金を捨てる”ことと一緒かもしれないと思ったんですよ。そう思うと、どこかでセーブがかかります。せっかく稼いだお金を大切に使おうと思ったら、そういった“無駄買い”をしないようにしようと思うんですよね。
あと、ドレッシングは“サラダにかけるもの”だと思っている人が多くて、つい3本ぐらいが冷蔵庫に入りっぱなしになっていると思いますが、“サラダにかけるもの”だと思っているから使い切れないんですよね。例えば、お肉を炒めるときに青じそドレッシングで炒めたりすると、ドレッシングの酸味が取れたりしますし、すごく美味しい炒めものができたりしますし、から揚げの下味に使って揚げても味がしっかり付いていて美味しいです」
●野菜を上手に保存する方法ってありますか?
「レタスを1玉買ったとします。レタスは乾燥に弱いので、気づいたら萎びてたりするんですよね。では、どうやって保存するのかというと、濡らせたキッチンペーパーをレタスの芯の部分に置いて、育った環境と同じように保存をすると野菜にストレスがかからないので長持ちします。実際にやってみたら、お水を吸っていたので1週間経ってもイキイキしていました。ただ、ニンジンとかは体中に水分が付いていると腐りやすくなるので、乾いたキッチンペーパーを巻いて保存しておくと3週間ぐらいもちます。
今の時代に一番オススメなのは“冷凍保存”です。『野菜は冷凍できないんじゃないか?』っていうイメージがあると思いますが、基本的にはどんな野菜でも生から冷凍することができます。例えばホウレン草ですが、昔は茹でて水分を搾ってラップを包んで冷凍していたかと思いますが、もちろんそれでもいいんですが、忙しいと茹でるのが手間になりますよね。そういった場合は、生のホウレン草を買ってきたらざく切りにして、保存用袋に入れて冷凍するだけで1ヶ月もちます。使いたいときは既にざく切りにしているので、ザルに使いたい分だけ入れて上から熱湯をかけてください。野菜は冷凍していると組織が壊れるので、傷口から水分が出ていきます。そのときに灰汁も一緒に出ていくので、さっと茹でなくてもおひたしになったりします」
●それは簡単ですね!
「なので、1人暮らしの人にはもちろん、野菜を全部使い切るのが難しい高齢者の方とかにもオススメです。そして、白菜も使い切れなかったらざく切りにして冷凍してあげると、凍って組織が壊れることによって、普通の2分の1の時間で火が通ります。なので、時短にもなりますし、あと1品欲しいと思ったときに、さっと使うことができるのでオススメです」
●白菜はこれからの時期、鍋とかで使うから買うじゃないですか。でも、いつも余らせちゃうんですよね。どうしようかと思っていましたが、これはすごく助かります!
「そういう風にしておくと、味噌汁が飲みたいときに凍った白菜を鍋に入れるだけで、すぐしんなりします。中にはキノコとかうま味がアップするものとかもあるので、上手に冷凍してあげると、暮らしに潤いをくれると思います」
時短料理や食材の保存方法は、実は旅を出るために考えたという本当に旅好きな島本さん。そんな旅をする事で見えてきた自分のライフスタイル、日本でもちょっと工夫することで“無駄なくシンプル”に生きられるんですよね。島本さんがおっしゃっていた“地球にもお財布にも優しい暮らし”を私も改めて意識してみようと思います。
島本さんはお料理や家事、旅の本を数多く出版されています。その中で、今年出版されたオススメの著書をご紹介します。
講談社/本体価格1,200円
生鮮食品から乾物、加工食品まで全部で200アイテムの適切な保存方法を解説しています。
小学館/本体価格1,000円
お野菜の冷凍保存に関する本。お野菜の冷凍・解凍法を分かりやすく紹介。目からウロコの方法が紹介されています。
島本さんが主宰されているお料理教室のことなど、詳しくは、オフィシャル・サイトをご覧ください。