今回は二組のスペシャル・ゲストをお迎えしています。この番組とは1993年からお付き合いいただいている作家C.W.ニコルさん。そして、今年結成10周年を迎えた、ニコルさん公認のバンド、D.W.ニコルズのわたなべだいすけさんと千葉真奈美さんです。
ニコルさんとD.W.ニコルズはとっても仲良しで、今年、長野県・信濃町にある“アファンの森”でレコーディングしたり、ビデオの撮影を行なったり、またシンポジウムでライヴ・セッションをやったりと、自然と音楽を一緒に楽しんでらっしゃいます。
今回はそんなニコルさんとD.W.ニコルズの和気あいあいトークをお送りします。
●今回は二組のゲストをお迎えしています。この番組とは長い付き合いとなる作家C.W.ニコルさんです。
ニコルさん「こんばんは。黒姫の赤鬼です」
●ご無沙汰しています! お元気でしたか?
ニコルさん「元気よ」
●そして、もう一組は今年結成10周年を迎えたバンド、D.W.ニコルズのわたなべだいすけさんと千葉真奈美さんです。
わたなべさん「神奈川生まれの青鬼、わたなべだいすけです。よろしくお願いします(笑)」
千葉さん「東京都出身の小鬼、千葉真奈美です。よろしくお願いします!」
●鬼だらけでいいですね! 今回はこんな皆さんをお迎えしてお送りしていきます。
まずはリスナーの皆さんも気になっていると思うんですが、バンド名がニコルさんの名前にすごく似てますよね?
わたなべさん「僕のイニシャルがD.Wで、それをバンド名に入れたいと思って最初にバンド名を考えたときに、C.W.ニコルさんを思い浮かべてしまいまして、バンドなので“ズ”を付けたんです。そうしたら、真ん中に“ニコ”っていう言葉が入って可愛くて、これはいいと思ってこれにしたいと思っていたんですが、ニコルさんに黙ってつけてバカにしてると思われたら嫌だな~と思って、“こっちは真剣な気持ちでやっている”ということを伝えたくて、ニコルさん側に連絡したら、『どうぞ』ということで、許可をいただきました」
ニコルさん「一応、どんな音楽をやっているのか聴きました。僕が嫌いな音楽だったら断ろうと思ってました」
わたなべさん「音源もお送りしていたので、聴いていただいた上で許可をもらってます」
●バンドの曲がナチュラルで、ニコルさんのイメージにピッタリだと感じました。
わたなべさん「基本的にはアコースティック・サウンドだし、ニコルさんはエレクトリックなうるさい音楽は嫌いなんですよね」
ニコルさん「それに、彼らはハーモニーを奏でているんですよね。多くのグループはユニゾンしかできないし、歌は下手だしね(笑)」
わたなべさん「もっと言いましょう! ニコルさん、ラジオの電波に乗せてもっと言いましょう!(笑)」
ニコルさん「彼らの曲は“詞”が全部聴き取れるんですよ。今となっては、英語圏の曲もあまり詞が聴き取れないので、聴いてて退屈してまうんですよ。でも、彼らの曲は聴き取れるからすごくいいよね」
●では、早速、D.W.ニコルズの曲をリスナーの皆さんにも聴いていただきましょう。
実は今回、10月に早稲田大学大隈記念大講堂で開催された“森の音楽会”で行なわれたライヴの模様を特別にオンエアさせていただけるということなので、その中から1曲お届けしたいのですが、どれにしますか?
わたなべさん「では、ニコルさんの“アファンの森”に行って、色々な話を聞きつつ森を見て、そこで笑顔で走り回る子供たちをイメージして作曲して、アファンの森でレコーディングした“ハッピーラッキーデイ”という曲があるんですが、そのライヴ・ヴァージョンを聴いていただきたいと思います」
※ここで、放送では「ハッピーラッキーデイ」のライヴ・ヴァージョンを聴いていただきました。
●私も何度かアファンの森に行ったことがあるんですが、「ハッピーラッキーデイ」を聴いたら、アファンの森にいる気持ちになったんですよね!
千葉さん「それは嬉しいです! 外でレコーディングしたこと自体初めてだったんですが、森に向かって歌ったらすごく気持ちよくて楽しかったですね!」
●鳥の鳴き声も入ってますよね?
千葉さん「外でレコーディングしたんで入ってます」
ニコルさん「そういうのを彼らにやってほしかったんです。それまではたまにあったけど、彼らもやってくれたし、一緒に音楽を作ることができて感謝してます」
●ニコルさんもD.W.ニコルズのメンバーに会ったことで、もう一度(音楽を)やろうという気分になったんですね。じゃあ、ニコルさんもD.W.ニコルズのメンバーの一員みたいな感じなんですね
わたなべさん「僕らのおじいちゃんですから!」
ニコルさん「ゴッドファーザーと言ってほしいね(笑)」
●(笑)。アファンの森に行くことによって、何か変わったことってありますか?
千葉さん「私は虫が苦手なので、メンバーの中ではアウトドアが苦手なほうなんですが、その私がアファンの森に行って虫に対して少し強くなりました」
●都会で見る虫とああいった森で見る虫って全然違いますよね。
千葉さん「全然違います!」
ニコルさん「この30年の間、森の中で歌とか色々なものを録音したんですが、アコースティックの曲をそこでやって10秒ぐらい待ってみると、森が応えてくれるんですよ。動物たちが楽しそうに騒がしくなるんですよ。毎回そうなんです。それだと、やってる側も嬉しくなりますよね」
●森はちゃんと分かってるんですね。
わたなべさん「でも“エレクトリックな音楽だと森は嫌がるから、森の中では絶対に使わないで”ってニコルさんから言われていたので、今回はアコースティックな楽器のみのレコーディングとなっています」
●森が好きな音楽と嫌いな音楽ってあるんですね。
ニコルさん「エレクトリックな音楽の中に、私たちには聴こえない音で森が嫌いなものがあるんじゃないかな。でも、アコースティックな音楽であれば、大きな楽器であっても鳥たちは喜ぶんですよ。大きさじゃないんです」
※ニコルさんはもうじき2頭の馬を飼います。どうして馬を飼おうと思ったのでしょうか?
ニコルさん「まず、国有林を間伐しないといけません。なぜなら、木の成長を促すために光を当てないといけないからなんですね。そうなると木を伐り出すことになるんですが、そのときに機械を使うと森にダメージを与えてしまいます。しかし、馬を使うとダメージがありません。なので、アファンの森の中でいつも使いたいんです。なので、2頭飼うことにしました」
●なんて名前なんですか?
ニコルさん「“雪丸”と“茶々丸”です。雪丸は6歳の道産子。茶々丸は6歳で道産子とアメリカのコートフォースのミックスで、カウボーイがよく乗っていた馬です」
●ブログで2頭の写真を見ました。雪丸君は白い馬で、茶々丸君は茶色いんですが、顔の真ん中に白い部分があって、それが可愛いんですよ!
ニコルさん「茶々丸が甘えん坊でいたずらっ子。雪丸は頭がよくてすごくよく働くんだけど、頑固です(笑)」
わたなべさん「いたずらっ子の茶々丸の方が可愛かったりするんですか?」
ニコルさん「いや、両方可愛いですね(笑)。来年の6月から黒姫に来ます。今は彼らの家(ホースロッジ)を作ってます」
●そこには世話をする人もいるんですか?
ニコルさん「その家の2階に彼らを世話する人が住めるようになっています。そして、そこに集まってホースセラピーをすることもできます」
●以前、森の中で馬を使って作業するところを見させていただきましたが、すごく効率的で感動しました。細い道でもコースを的確に移動して、必要な材木を運んでくれるんですよね。
ニコルさん「特に斜面があると、馬は一番安全な道を移動します。そこを何度も移動すると道ができます。人間が手入れをするだけで、散歩道がトレッキングコースになるんですよ。本当に合理的だと思います」
●今では機械での作業がメインになっちゃってますけど、馬には色々なメリットがあるんですよね。
ニコルさん「機械もいいけど、ハイブリッドで考えてます。機械が入れない、入っちゃいけないところは馬でやりますし、軽トラックが入れるような道だったら、丸太を積むことができる特別の馬車があるので、それを使って出します。それで大型トラックが入るところまで行けば、日本の森も手入れができます。
それに、僕はもう75歳だから山に行きたくても重い荷物を持っていくことができないんですよ。そこで馬が荷物を背負ってくれれば、テントとか食べ物とか冷えてるワインやビールを持っていくことができるんですね。そういうトレッキングもしたいんですよ。普段山に登らない人も案内したいんですよ」
●ここで、森と馬と歌が一つになった「ホースロギングのうた」を聴いていただきましょう。
わたなべさん「そうですね。この曲はニコルさんが英語で書いた歌詞を訳して、そこに僕なりの言葉も入れているので、歌詞の意味は損なわずに僕のエッセンスを少し入れています」
※ここで、放送では「ホースロギングのうた」のライヴ・ヴァージョンを聴いていただきました。
●いいですね! 皆さんの楽しい雰囲気が伝わってきます。
ニコルさん「これは練習なし」
わたなべさん「当日少し合わせただけなので、僕もニコルさんもこのときちょっと緊張していました(笑)。でも、大人数で楽しかったですね」
ニコルさん「この曲は馬のリズムなんですよ。僕はリズムは基本的に3つあると思っています。人間の心臓の鼓動、馬、海の3つです。この曲は馬に乗っている感じがしますね」
●そうやって聴くと、さらに楽しくなりますね!
●ここからは“森の学校”のお話をうかがっていきたいと思います。ニコルさんは2012年から宮城県東松島市に森の学校を作るためのプロジェクトを進めているんですよね。2017年の開校を目指して色々活動されているということですが、どんな学校ですか?
ニコルさん「東松島市に住んでいる人27名を震災後に、きれいな森でリラックスしてもらおうと、黒姫に招待しました。その森を見て街の人たちから『新しい学校を作らないといけないし、森も暗いので、森と学校作りを手伝ってほしい』と言われたんですね。それで今やっています。
でも、僕から色々条件を出しました。僕は鉄筋コンクリートに興味はありません。学校は木造じゃないと絶対にダメです。木造だと子供のアレルギーや風邪とかが圧倒的に少なくなります。それに地震にも強いです」
●それは意外です。鉄筋の方が地震に強そうだと思ってました。
ニコルさん「ちょっと待って! 世界で一番古い木造建築物が奈良にあるじゃないですか! それに、木が腐っても簡単に直せるんですよ。だから、コンクリートよりも長持ちするんです。なので、学校は木造の方が絶対にいい! 今やカリフォルニアとかは木造に変えていってます。それに、くっついている森も教室になるので、森から学ぶこともできますし、森で学ぶこともできるんですよね。この学校は日本一の学校になりますよ」
わたなべさん「これは(日本一の学校に)なるなぁ。そこに入りたかったなぁ」
ニコルさん「僕は義務教育を受けていない日本人ですよ」
わたなべさん「ニコルさん入っちゃいますか? じゃあ僕も入っちゃいます!(笑)」
●(笑)。その森作りは実際に進んでいるんですか?
ニコルさん「そうですね。音を楽しめる“サウンド・シェルター”という小屋や展望台、ツリー・ハウス、歩く道とかを作りましたし、光が入るようにしたので、花がすごく咲くようになりました。珍しい鳥も巣を作っています。学校を作るのに時間がかかっている理由として、街全体を動かしているからなんです」
●森で育った子供たちって、運動神経とかもよくなるらしいですね。
ニコルさん「全然違いますね。バランス感覚はもちろん、五感も使っているので、目も耳も違いますね」
●そこに通った子供たちが将来どうなるのか、そこも楽しみですね!
ニコルさん「森の中で子供たちのためにコンサートや朗読をするための場所を作ります。そこで、D.W.ニコルズの4人にコンサートをやってもらいたいです」
わたなべさん「最初にやらせてください!」
●今後はそういった森の中でライヴをしたいっていう気持ちがあったりしますか?
わたなべさん「森の中だけじゃなく、ライヴはライヴハウスとかじゃないとできないものじゃないので、最近色々な機材を揃えていて、どこでもライヴができるようにしています。それに、アコースティック楽器の強みって、電気がなくても音を聴かせることができるし、ギターと歌があればどこでもライヴができるので、色々なところで活動していきたいと思っています」
ニコルさん「森は場所によって、こだまがあるじゃないですか」
わたなべさん「ありますね。そういうものを色々と感じてみたいですね」
千葉さん「すごく楽しかったので、また一緒にやりたいってみんなと話していたんですよ。またC.W.ニコル・バンドの皆さんとまた一緒にやりたいです」
●最後にもう1曲お届けしたいと思います。
わたなべさん「僕らのライヴの最後にみんなと大合唱している“グッデイ”のライヴ・ヴァージョンです」
※ここで、放送では「グッデイ」のライヴ・ヴァージョンを聴いていただきました。
“森と音楽は深い関係にある”というお話をしてくださったニコルさんですが、実は子供のころ、森に入るときに歌を歌うと森と仲良くなれるという経験もしたそうです。C.W.ニコルさんとD.W.ニコルズとの和気あいあいトークは、まだまだ尽きない感じでしたので、ぜひまたこの番組でもお送りできればと思います。
D.W.ニコルズのニュー・シングルはライヴ会場限定シングルとしてリリースされていますが、この度、彼らのオフィシャル・サイトでネット通販がスタートしました! このCDには、ニコルさんとコラボした「ホースロギングのうた」も収録されています。パッケージが紙の箱になっていて、開けると、わたなべさんが描いたイラストのカードや歌詞カード、アファンの森で撮った写真などが入っています。
D.W.ニコルズのニュー・イヤー・コンサートが決定しています!
◎1月8日(金)大阪・BIG CAT
◎1月24日(日)東京・グローブ座
既にチケットは販売中です。詳しくはD.W.ニコルズのオフィシャル・サイトをご覧ください。
山と渓谷社/本体価格1,300円
ニコルさんの新刊は、解剖学者・養老孟司さんとの対談集。便利になりすぎた現代の生活に警鐘を鳴らし、子供たちの育て方や日本人の生き方についての対談が収められています。
一般社団法人C.W.ニコル・アファンの森財団では、活動を支援してくださる会員を随時募集しています。詳しい情報はオフィシャル・サイトをご覧ください。