今回は、年末恒例企画“ベスト・オブ・ザ・フリントストーン2015”をお送りします。今年も約50組のゲストがこの番組に出演してくださいましたが、その中から、特に記憶に留めておきたいメッセージを厳選してお届けします。
※まず最初にご紹介するのは、海洋ジャーナリスト・内田正洋さんと娘さんの沙希ちゃんです。今年26歳になる沙希ちゃんは、ハワイの伝統的な航海カヌー“ホクレア号航海プロジェクト”のメンバーで、現在、世界一周の航海にチャレンジされています。今年1月に出演してくださったときにこんな話をしてくださいました。
沙希さん「自然がないと自分たちはないし、自分たちは自然の一部なんだと実感しました。
都会にいると“人間は強い”っていう気持ちになっていたりするじゃないですか。それが海の上では全く思わないですね。自然に対して“ありがとう”っていう気持ちでいますね。特に海の上では。この6ヶ月の経験で色々なことを学んだし、感じたこともたくさんあるので、特に若い人たちに知ってもらいたいことがたくさんありますね」
●たとえば、どんなことですか?
沙希さん「私が思ったのが“人生で本当に大切なものってそこまで多くなくて、船の上だとそれがすごくクリアに見える”っていうことなんですね。自然のことだったり、自分たちは自然がないと存在しないこと、周りと一緒に生きていかないといけないこととかすごく色々気づきました。 人間関係も、船の上ではみんな家族だと思って、最初は嫌だと思っている人でも最終的には受け入れられるんですよね。陸だと逃げることができるんですけど、船の上ではできないですし、プライバシーもほとんどないので、人を受け入れる方法とかは変わりました。今までだと、嫌な人だったら無視していた人も、自分がいつも気にするようになったんですよ。そういうことも人生の中で大切なことだと思いますし、夢を持つことも大切だと思うんですよね。
『ホクレア号も当時は“そんなことできる人なんていない”といわれたけど、今ではこうしてやっているんだ。だから、ありえないことなんてないんだ』ってキャプテンが話してくれたんですよ。私もそれを信じてるので、夢は絶対に叶うと思うし、怖いこととかたくさんあると思うけど、勇気を出したら色々なことが見えてくるので、怖がらずにやってほしいですね。そうすれば、人生で大切なことが明確に見えてくるので、これをたくさんの人に知ってほしいです。自分だけ知ってるのはすごくもったいないと思うんですよね。なので、知ってもらいたいです」
内田さん「沙希の場合は、まだ自分の中だけの話だけど、ホクレア号のことも考えてみると、ホクレア号が(航海に)出たころは“ONE OCEAN”と言っていたのが、今では“ONE OCEAN,ONE ISLAND EARTH”と言い始めましたからね。そういう感覚は、あのカヌーの上だからこそ、実感するんですよね。嫌な人と一緒にいないといけないんですよ。だから、大陸の中で、国同士で戦っていても、結局は“ONE ISLAND EARTH”にいるんですよ。そういう意識が陸で生活している人たちには抜けているんじゃないかというのが、カヌー側からのメッセージですね。はっきりしてきたなと」
※続いては、今年2月に出てくださった自然写真家の太田達也さんです。太田さんは、北海道などに生息する野生動物や自然に魅せられ、“いのちの絆”をテーマに撮影活動を続けてらっしゃいます。
太田さん「本州の野生動物もそうですが、北海道はより厳しい環境ですので、全ての動物が命を謳歌しているように見えて、こっちも力強さと感動がすごく伝わってくるんですよね。それと、繋がるという意味では、親子の繋がりだけじゃなく、もっと大きな繋がりもあるんです。
北海道には海があって森があって川があるんですけど、その象徴の1つとしてシャケがあるんですね。シャケは色々な動物たちの糧となる生き物なんです。シャケが海から上がってきて、川を遡上して森に還っていくんですが、そのシャケをヒグマが食べて、食べられたシャケは養分となって森に還っていくんですよ。そういうサイクルを目の当たりにできるのが、北海道なんです。
心がけているのは、フィールドに入ったとき、撮ることよりも彼らと遊ぶことを意識しています。“彼らの生息地に入らせていただいている”という謙虚な気持ちで森に入っていくんですね。そうすると、こちらが意識しなくても、彼らから寄ってきます。ときには、手の近くまで来る場合もあります。そういう意味でも繋がっているんですよね。動物・風景・人間という枠を超えて、1つの地球だったり、惑星で繋がっているって感じますね」
※続いてご登場いただくのは、ドキュメンタリー映画“地球交響曲/ガイアシンフォニー”の監督・龍村仁さんです。“第八番”が公開された直後にお話をうかがうことが出来ました。
龍村さん「日本人は、自分たちの血の中に縄文時代から連綿と作ってきている感性や記憶があるんですよ。この映画をご覧いただくと、理屈的なことではなく、自分の中に眠っている5千年から1万年の記憶があるんだよ。それが活性化されると、この困難な時代に何が大切なのかが分かってくると思います。科学的に物質を分析することも大事ですが、同時に宇宙の中の一員として樹によって生かされている私たちが直感的に持っている記憶が、この困難な時代を克服していく上で一番大切なものだと思います。今回のコンセプトは“畏れと美と知恵と勇気と”なんです。この中の“畏れ”という言葉には“いつ何時、命が絶たれるかもしれない”という意味も含んでいるんです。その上で、初めて自分を遥かに超えた大いなるものへの畏敬の念が浮かんでくるんですよね。次の“美”ですが、人間は直感的に“美しい”と感じるものと、“これは嫌だな”と思うものがあるんですよ。“美しい”と感じられるものは、単なる情緒的なものじゃなく、宇宙的な秩序の関係の中で感じているんだと思うんですね。
例えば、被災地には5メートルぐらいの防潮堤を作っていたのに、それ以上の津波が来てしまったから、今度は10メートルぐらいのものにすれば防げると考えていますが、実際にそんな防潮堤が作られたら『なんか嫌だな』って思うと思います。自然が作ったすごく美しい海辺がそれによって塞がれたときに感じるその感覚は、大切にした方がいいと僕は思います」
※今年9月には、世界的なウナギ博士! 日本大学・教授の塚本勝巳さんに出演していただきました。塚本先生は、世界で初めてウナギの卵を採取したことで知られる研究者で、謎だらけのウナギの生態を解明しようと40年に渡って調査・研究を続けてらっしゃいます。そんな塚本先生が、ウナギが卵を産む時期についての仮説を紹介してくださいました。
塚本さん「ウナギの産卵期って夏なんですよ。初夏を中心に、それぞれの月の新月の2~4日前の3日間のみって決まっているんですよ」
●なぜそれが分かるんですか!?
塚本さん「海の生物は月の動きに敏感です。特に潮の満ち干きがあるようなところに棲んでいる生物は、潮のリズムで生活しています。ウナギも河口にやってきて、出ていきますよね。それも月のリズムが体に刷り込まれています。さらに、ウナギは潮の満ち干きだけじゃなく、天空にかかる月の満ち欠けを感じることができるんですね。
先ほど、ウナギは水深200メートルぐらいのところで産卵すると話しましたが、そこは人間が見ると真っ暗な世界ですが、魚は人よりも一桁低い照度でも光を感じることができるので、ウナギも感じることができますし、先ほど黄ウナギから銀ウナギに変体すると話しましたが、あれは産卵するのに適した体になるために目が大きくなったり浮き袋が大きくなったりするんですよ。目が大きくなって光を感じやすくなっているので、水深200メートルでも1000メートルのあたりでも満月のときが分かりますし、満月が分かれば新月も分かるんですよね。なので、月のリズムは絶対に分かっているはずなんです」
※続いてご紹介するのは、今年10月に出演してくださった国立極地研究所の生物学者・田邊優貴子さんです。田邊さんは、北極や南極をフィールドに、主に植物や湖を対象に調査・研究を行なっていますが、去年、昭和基地よりも寒い内陸の湖に潜ったときにこんな光景に出会ったとおっしゃっていました。
田邊さん「湖底に近づいていったら、昭和基地の近くの湖と似たような構造が見えてきたと思って近寄ってみたら、ピンクと紫を混ぜたような色が湖底一面に広がっていました」
●それは何なんですか?
田邊さん「“シアノバクテリア”という生き物です。バクテリアなんですが、光合成をする生き物で、今から27億年前に生まれた初めて光エネルギーを使って酸素を発生させた“光合成”の仕組みを発明した生き物なんです。それまでメタンや二酸化炭素が地球の大気を生成していたのが、それが生まれたことによって酸素が段々と増えていって、私たち人間みたいに酸素を使って呼吸して生きる生き物が進化していったんですね」
●ということは、そこに人類誕生の秘密が隠されているということですね?
田邊さん「それもそうですし、そのときは酸素を使って呼吸する生き物がいなかったんですよ。というのも、“活性酸素”という言葉をよく聞くと思いますが、酸素はDNAを傷つけてしまうデメリットがあって、生き物は酸素があまり好きではなかったんですが、酸素がどんどん増えていったことで、DNAを壁で隔てようとする“真核生物”が生まれたんですね。それによって、バクテリアみたいな“原核生物”とは違って、DNAを細胞の中で隔てることができたので、酸素を使ってエネルギーを作るという仕組みができあがったんです」
●酸素が地球上にできたことによって、今までの生態系がガラッと変わったんですね。
田邊さん「生態系もそうですし、生き物そのものの仕組みが変わったんですね。そして、その湖には、変わる前の姿があるんです。なので、その湖に潜ってそれを見たときに“私は27億年前の生態系を見ているんじゃないか。地球の原始を見てしまった”という気持ちになりました」
※最後にご登場いただくのは、今年6月に出演してくださった探検家、そして武蔵野美術大学の教授でもいらっしゃる関野吉晴さんです。関野さんは“縄文号とパクール号の航海”というドキュメンタリー映画になった丸木舟での4,700キロの航海について、こんな感想を話してくださいました。
関野さん「異文化共生社会というのは、違いを認め合えればやっていけると思います。今回はその人間同士の関係よりも人間と自然の関係をより感じました。特に“自然は恵みを与えてくれるもので、自然がなかったら僕たちは生きていけない”ということをすごく感じましたね。中でも太陽はすごく重要だということをすごく感じました。朝の海の上は風も吹いているので、すごく寒いので、太陽が上がってくるのを待っているんですよ。でも、それも時間が経ってくるとすごく暑くなってくるんですね。人間はすごく身勝手なもので、“早く隠れてくれよ!”って思っちゃうんですよね(笑)。植物も太陽がないと生きていけないわけで、植物が光合成をしてくれるから有機物ができて、それを草食動物が食べて、その動物を雑食・肉食動物が食べて、それらを人間が食べるわけじゃないですか。だから、人間にとって太陽や植物がないと生きていけないわけですけど、嫌な存在でもあるわけですよ。でも、それはしょうがないですし、彼らをコントロールすることはできないんですよね。ただ、僕たちには“科学”があるんですよ。“科学”は何に使うかというと、自然を知って、よりよくするために使うんですよね。台風が来るのは仕方ないんです。進む方向も変えられないので、僕たちはいかに予測して防ぐことに科学を使うぐらいしかできないんですよ。それにかかっていると思います」
たくさんの印象的な言葉ありましたが、中でも海洋ジャーナリストの内田さんがおっしゃっていた“ONE ISLAND EARTH”が、全てのメッセージに繋がっているように思いました。私たちは地球という1つの船に乗っていると考えれば、今起きている色々な問題の解決の糸口が見えてくるような気がします。
今回ご紹介したゲストの最新情報は、公式ホームページなどの各サイトをご覧ください。