今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、岡本裕子さんです。
春になると南の国から日本にやってくる身近な鳥“ツバメ”が近年減っていると言われています。そこで日本野鳥の会では現在“消えゆくツバメをまもろうキャンペーン”を行なっていますが、そんなツバメのお話を日本野鳥の会・自然保護室の岡本裕子さんにうかがいます。
※ツバメは一体どこからやってくるのでしょうか?
「日本にやってくるツバメは主にフィリピンやインドネシアなど、東南アジアで冬を越しているんじゃないかと言われています。日本には子育てのためにやってきて、秋の訪れと共に東南アジアへと渡っていきます。毎年数千キロという長い旅をしています」
●そんなに長い距離を移動しているんですね。今「日本にやってくるツバメは」とおっしゃいましたが、他にも色々な種類のツバメがいるんですか?
「ツバメが子育てをする場所はアジアの国々の中でも、韓国や台湾、中国など色々あります。それぞれの種類がどこから渡ってくるのかを全ては調べられていませんが、日本で子育てをするツバメは東南アジアの中ではフィリピンの方から来ていると思われます。あと、ヨーロッパでもツバメは子育てをしていて、そこで子育てをするツバメはアフリカの南の方で冬を越します。こんな感じで、世界中に分布しています」
●世界的に身近な鳥なんですね。
「そうですね。日本やアジアの国の家の造りがツバメの子育てに適しているので、軒下に巣を作りますが、ヨーロッパでは、農家の納屋といった田舎の方に作るようで、私たちがよく見る家の目の前で子育てをする風景は違う国では貴重なのかもしれません」
●都会派のツバメはアジアだけなんですね。
「ツバメは人通りの多いところ人の目に触れるところで子育てをするんですが、これは人がいることで、カラスやネコなどの外敵から守るという考えからきているものだと思います」
●人と共存しているんですね。
「 “ツバメが巣を作るところは繁盛する”と昔からいわれていますので、人とツバメはいい関係を築いていると思います」
●ちなみに、オスとメスの違いはどんなところなんですか?
「並んでいるところを比べてみるとよく分かりますが、ツバメの特徴でもある尾の部分がオスの方がやや細長いんですよ。そして、喉の部分の赤がオスの方が濃く鮮やかに見えるので、一緒にいるところをよく観察すると、違いが分かるかもしれないですね」
●どんなときにオスとメスは一緒にいるんですか?
「もうまもなくツバメが渡ってきますが、オスの方が先に渡ってきて、巣作りの場所を探すんですね。その後メスが来て、一緒に子育てを始めます。そのときにオスとメスが協力して巣を作ります。そのときに一緒にいるところを見ることができると思います」
●先にお父さんが下見にくるんですね!
※ツバメの子育てについてうかがいました。
「ツバメは大体4~6個ぐらいの卵を産むんですが、雛は食欲旺盛なので、オスとメスが協力して雛に食べ物を運んでいます」
●先ほど、“オスが巣を作るところを見にくる”とおっしゃいましたが、どんなところがツバメの巣作りに適しているんですか?
「軒先のある家の下や商店街のアーケード、ガソリンスタンド、高速道路のサービスエリアなどで見られることがあります。あと、ツバメを歓迎する家では、巣の台になるような板を付けているところもありますね」
●その巣もあっという間に作っているイメージがあるんですが、一体どんな風に作られているんですか?
「ツバメの巣は泥と枯れ草でできているんですが、親ドリは田んぼや湿地から泥を咥えてきて一粒ずつ積み重ねていって、そこに枯れ草を入れて、塗り固めるようにお椀を半分に切ったような巣を作っていきます」
●どんな風に塗り固めてるんですか?
「これからツバメがやってくるので是非観察していただきたいんですが、ツバメはほとんど飛び回っていて、地面には滅多に下りないんですね。でも、巣作りのときは地面に下りて、一粒ずつ咥えて持っていて、最初はその粒を壁に付けていくところから始めて、少しずつ固めていきます」
●ちょっとずつ積み重ねていってるんですね。その割には結構早いですよね?
「昔作った巣を補修して使うこともあります」
●ということは、また同じところに同じ個体が戻ってきているんですか?
「戻ってくることもあります。ただ、自然界は非常に厳しい世界なので、カップルとなったオスとメスが両方生き延びる可能性って非常に低いんですね。なので、両方とも無事生き残っていたら、そのときのカップルと言っていいと思いますが、どちらかに何かがあった場合は入れ替わっている可能性があります。もし、ツバメに戻ってきてほしいときは、前の年に作った巣はそのまま残しておけば、戻ってくる可能性は高いです」
●そして、やっぱり気になるのはツバメの鳴き声ですよね! 身近にいるので聞いたことがある人も多いかと思いますが、何気なく聞いていると思いますので、実際にどんな泣き声なのか改めて聞かせてもらえませんか?
※放送ではここでツバメの鳴き声を聞いていただきました。
ツバメの音声:鳴き声タッチペン(音源:上田秀雄/ネイチャーサウンド)で再生。
「どんな風に聞こえますか?」
●たくさんの音が聞こえて賑やかですね。
「人によって聞こえ方が違ってくると思いますが、聞きなしでは『ツチクッテ ムシクッテ シブーイ』と言っているように表現しています。泥を咥えて巣を作って虫を食べるというツバメの生活を表しています」
●「ツチクッテ ムシクッテ シブーイ」ですか!? もう一度聞かせてもらえますか?
※放送ではここでもう一度ツバメの鳴き声を聞いていただきました。
「もっと色々なことを言っているように聞こえるかもしれません。是非、これからツバメが渡ってきたら、その声にも耳を傾けてもらえたらと思います。巣の材料にできるような泥が取れる田んぼや虫がたくさんいるような水辺があることでツバメの子育てを支えているということを、この声からも分かると思います」
※ツバメは今、その数が減少しているようです。
「2012年から“消えゆくツバメをまもろうキャンペーン”を実施しています。日本野鳥の会のこれまでの自然保護活動の中ではシマフクロウやタンチョウなど、絶滅の危機にある野鳥とその生息環境を守ることをテーマに活動してきましたが、身近な野鳥に改めて目を向けたとき、その代表であるツバメも減っているのではないかといわれています」
●それは全国的に減っているんですか?
「いくつかの調査結果で減少傾向にあるといわれていて、そこで日本野鳥の会でも2013年から“ツバメの子育て状況調査”というものを実施していて、全国各地の方からツバメの子育ての観察結果をインターネットで寄せてもらって調査しています」
●どうやって調査しているんですか?
「これはどなたでもできることで、家の近くで巣を作っているツバメを観察していただいて、そこに雛は何羽いるのか、親ドリの様子をインターネット上で入力していただくだけになっています。こういった調査でもいくつか分かってきていることがありまして、ツバメが子育てに失敗している原因の中に“人が巣を落としている”ことがあります。もちろんカラスなどの外敵にやられてしまうこともあるんですが、原因の1割がこの理由なんです。やはり“ツバメを見守る”という人間の気持ちが大事なんじゃないかと思っていますので、今後これを広めていければと思っています」
●どうしても「フンが気になる」という方がいらっしゃいますからね。それを予防する方法とかあったりするんですか?
「例えば、傘を逆さまにしたものをぶら下げてフン避けにしたり、段ボールやトレイみたいなおのを下に置いていただけたらいいかと思います。ツバメの子育ての期間はそれほど長いものではないので、雛が育つまでの間は温かく見守っていただけたらと思います」
●ツバメが減ってきている原因は何が考えられるんですか?
「いくつか考えられると思いますが、1つの要因として“私たちの身近な環境が変わったことによって、ツバメの食べ物になる虫が少なくなったこと”が挙げられると思います。また、ツバメは民家の軒先に巣を作りますので、住宅の構造が変わったりすると、ツバメが巣を作れる場所が少なくなってしまっていることも影響していると考えられます」
●ということは、どちらも人間が原因なんですね。
「そうですね。私たちにとって身近な存在ゆえに“身近な環境のバロメーター”といってもいいかもしれないですね」
●そうなってくると、どんなことができますか?
「私たちは台湾の小学校と一緒にツバメの学習を始めたんですが、その中で子供たちが気づいたことを感想として寄せてくれているんですが、『まずは“ツバメが来てくれることを歓迎して、ツバメの子育てを応援することが大事”なんじゃないかと思います。そしてツバメが何を食べているのかを考えると、ツバメは飛んでいる虫を食べるので、そういう虫が生きていける環境を守ることが大事じゃないかと思います』という感想を寄せていただきました」
●その意見、子供たちから出てきたんですか!?
「そうなんです。彼らと一緒にツバメの親ドリが雛に何を運んでいるのかを見るんですね。そういうものを見る中で、子供たちはツバメだけじゃなく、食べ物になっている虫や周りの環境など、ツバメ以外の生き物も含めた自然の仕組みに段々と興味を持つようになってきました」
●すごく身近な鳥ですが、子育てを見せてくれるなんてなかなかないですよね。
「そうですね。私たち日本野鳥の会も『野鳥の子育てを観察してください』とは言いにくいところがあるんですが、ツバメの場合は私たちの近くで子育ての様子を見せてくれるので、この春はツバメの子育てを観察していただけたらと思います」
●観察していると、自分が子育てをしている気持ちになりますよね(笑)。巣立っていってしまうと寂しくなったりしますよね。
「ホッとするところと寂しくなる部分がありますよね」
●いつも通る駅に毎年ツバメが巣を作っているので、そのツバメを観察したいと思います。
「観察したら、どんなに小さい情報でもいいので、是非“ツバメの子育て状況調査”に情報を寄せていただけたらと思います」
昔から日本の春の風景には欠かせないツバメ。多くの里山があった時代から、都市化が進んだ今でもそれは変わらないですよね。小さい頃観察したり、大人になってからも意外なところで見つけてなんだか心が和んだり、春の記憶の中にいつもいるツバメが、もしいなくなってしまったらと思うと、本当に寂しいことだと思います。岡本さんがおっしゃっていましたが、ツバメは私たちの身近な環境のバロメーター。ツバメがいつまでもやってきてくれる環境を守っていきたいですね。
今回のお話にも出てきた“消えゆくツバメをまもろうキャンペーン”日本野鳥の会のオフィシャル・サイトには、このキャンペーンの特設ページがあって、一般の方からツバメの子育て観察情報を募集しています。どんな小さな情報でもいいということなので、是非少しでも観察したら、情報を提供してください。そして、ツバメの観察を世界に広げようと、英語と中国語の“ツバメ観察ガイドブック”があり、サイトから自由にダウンロードできますよ。また、サイトにはツバメの現状や生態なども載っています。そして、活動を支援してくださる会員登録や寄付も随時受け付けています。詳しくは日本野鳥の会のオフィシャル・サイトをぜひご覧ください。