今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、長野由美子さんです。
2013年9月に一般社団法人になった自然保護団体「ジュエル・ビートルズ」は、中米コスタリカやオーストラリア、そして千葉などで環境教育や森林保全などの活動を行なっています。その代表・長野由美子さんに、主にコスタリカで行なっている学校農園や環境教育のお話などうかがいます。
※長野さんは、子どものころから虫が大好きで、よく絵を描いていたそうです。今のライフワークはそんな経験がもとになっているようです。
「父が好きな那須に山荘があるんです。そこに行って自然の中で(葉っぱに)止まっている蛾とかを描くことが多かったんですが、それがキッカケでアートと自然が繋がっていきました。それで、今でも自然の中からインスピレーションを受けてアートを作っています」
●今だと、新幹線の先頭車両が生き物からインスピレーションを受けてデザインされたといわれていますが、実際にそうなんですよね?
「あれはカワセミのクチバシから取ったデザインなんですね。“ネイチャーテクノロジー”という分野なんですが、そういう風に自然の中からインスピレーションを受けてアートを作るというものですね」
●長野さんは、どんな生き物からインスピレーションを受けてアートを作っているんですか?
「コスタリカに行っていたときはツノゼミの形がすごく面白かったので、ツノゼミからインスピレーションを受けたことは多かったですね」
●ツノゼミって、角があるんですよね。その角はどんな形をしているんですか?
「コブやプロペラ、傘の柄の部分、鳥のフンみたいな形とか色々な形があります」
●そういったところから、アートのヒントを得ているんですね。
「そうですね。あとは植物とかからもインスピレーションを受けています」
●植物だと、どんなものから得ていますか?
「最近だと豆の房からですね。今年3月まで長野県の木曽にいて、学校林プロジェクトをやっていたんですが、そこはヒノキがとても有名なところなので、ヒノキでスプーンを作っていて、そのスプーンのデザインとして、豆の房を参考にしました」
●豆の房をスプーンにすると美しいし、持ちやすそうですね!
「そうなんですよ。なので、手に力が入らない方も手に馴染んで持ちやすいと思います」
●ということは、自然のデザインって、すごく優れているんですね!
「そうだと思います。そういうものが日常の中にあると、気持ちが穏やかになりますし、使いやすかったりするので、とてもいいと思います」
※中米コスタリカで取り組んだ学校農園についてうかがいました。
「2005年からJICAのボランティアとして中央アメリカのコスタリカ共和国に行ってます。最初、コスタリカの教育省の環境教育局に配属され、『ゴミをなんとかしてほしい』というところから活動がスタートしました。3000平米ぐらいあるところでしたが、ゴミしかないようなところだったんですね。そこを少しずつ片付けていきました。片付けても水がなかったので、最初は子供がペットボトルに水を入れて運んでいました。学校の土地の一部ではありますが、3000平米って結構広いので、水道局にお願いをしてタンクを取り付けてもらって水を引いて、生ゴミから有機堆肥を作って、小学校6年生と一緒に小さい畑を作りました」
●元々はゴミだらけの場所が農園になることで、周りの人はそこにゴミを出さない気持ちになるんですか?
「変わっていきましたね」
●ちなみに、どんな作物を育てたんですか?
「トマトやナス、向こうはパクチーをよく食べるのでパクチー、蕎麦やコーヒーも育てました。そこでは“アグロフォレストリー農法”という木や森を育てながら農作物を作る農法だったので、苗木も植えていきつつ、畑を作っていきました。キャベツも育てたんですよ。虫がたくさん来て食べられたりもしたんですが作りましたね。
畑の隣に“オープンバタフライガーデン”という蝶が来れるような花を育てたりする野外型の蝶園を作ろうとしたら、みんなから『バカじゃないの? 蝶が来たら、幼虫が野菜を食べてしまうじゃないか』って言われたんですよね(笑)。それでもコスタリカには蝶がたくさんいるので、やってみたいと思って、作ってみました」
●結果的にはどうでしたか? 作物は無事でしたか?
「みんな蝶園の方に行ったので、畑は無事でした。それで『由美子の言うことは正しかった。天才だ!』って言ってくれました(笑)」
※2005年から取り組んだコスタリカの学校農園は、今も続いているのでしょうか?
「今も続いていて、もう11年になります。実は、その土地はサンホセ市の土地で最初に10年契約を結んでいたんですが、去年がその10年になって、契約が切れたんですね。でも、その小学校の校長先生が再契約をしてくださったんですが、その年数が100年なんです! なので、これからの100年間、そこで環境教育ができるようになりました。すごいですよね。太っ腹ですよね!」
●そうですよね! 100年っていったら、半永久的みたいな感じじゃないですか!
「本当は10年契約にしようと思ったら、ラテンのノリで丸が1個多くついて100年になったのかもしれないですよね(笑)」
●(笑)。現地の人たちはそれだけ長く続けたいという気持ちがあるということですよね!
「そうですよね。サンホセ市がすごく協力してくださっているので、本当に頭が下がります」
●学校農園のどういったところに、サンホセ市の人たちの共感を得たと思いますか?
「ゴミ置き場だったところが学校農園になって、そこから植物や蝶の名前を覚えるようになりましたし、始めた当初、児童が1500人ぐらいいたので教室が足りなかったんですよ。私たちはそこを“緑の教室”という名前を付けたんですが、子供たちも教室の中で勉強するより畑で体を動かしながら勉強した方が楽しいということに気づいたんですね。かけ算が苦手な子がすごくいて、計算するとき、みんな足してたんですよ。それが畑を足で歩いてみたら、そのかけ算ができるようになったんですよ」
●学習能力も高くなるんですね!
「算数だけじゃなく、植物の名前も覚えますし、文字も覚えるので国語も向上するんですよ。さらに、体育にも繋がりましたね」
●ただ自然のことを知ることができるだけじゃなく、勉強にも役に立っていたんですね!
「また、それまでは生ゴミを捨ててましたけど、生ゴミがリサイクルできるということを覚えたことで、リサイクルのことを学んだんですね。そこもすごく大きいと思います」
●日本の子供たちもそういったことを色々な資料で勉強していると思いますが、実際にやってみて学んだこととは違いますよね。
「そうですね。座学が苦手な子がいると思いますが、トマトやニンジンを作って食べてみるという実践的な教育の場があると覚えると思います」
●ジュエル・ビートルズでは今後、そういう活動の場を広げていくんですね。
「そうですね」
※ジュエル・ビートルズでは国内でも環境教育的なプログラムを行なっています。参加した子どもはどんな発見があるのでしょうか?
「例えば、草木染めをしたときに、たまたま生えていた野生のビワがあったんですよ。ビワって実はオレンジで、葉っぱは緑じゃないですか。その葉っぱを煮出して和紙を染めたんですが、実と同じオレンジ色に染まったんです! それで葉っぱも実と同じオレンジ色(の色素がある)ということが分かったんですね」
●私も知りませんでした! 自然のことってまだ知らないことたくさんありますね! そういう風にしていくことで、自然をより身近に感じたり、自然に対する意識が変わっていくんですね。
「自然を日常生活に取り入れるようになると、感性が変わってくると思います。アイデアもどんどん出てくるようになりますし、色に対しても敏感になりますよね。同じ緑でも、光によって見え方が違うので、絵を描くときも様々な緑を作り出せるようになって、より豊かな絵が描けるようになりますね」
私も子供のころ、かけ算は苦手でしたが、そんなかけ算が苦手な子はそれができるようになって、さらに植物の名前から言葉も覚えられて、学校の勉強は机の上で学ぶだけではなく、自然のフィールドに出ることも本当に大切なんですね。
自然保護団体「ジュエル・ビートルズ」では、探検昆虫学者・西田賢司さんを講師に迎え、千葉県長柄町の森で昆虫探検ツアーを企画するなどとてもユニークな活動を行なっています。また、コスタリカで行なっている“森をつくる農業”アグロフォレストリーなど、詳しく知りたい方はジュエル・ビートルズのホームページをご覧ください。