今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、赤坂剛史さんです。
極地ランナーの赤坂剛史さんは、地球上でも過酷な極地をフィールドに200キロ以上走るレースに出場してきたその道のエキスパート! そんな赤坂さんがここ数年、力をいれてらっしゃるのが、石川県白山市で行なうアドヴェンチャーレース“白山ジオトレイル”。食糧などを背負って自然豊かな山麓や林道をコースに7日間で250キロを走破するレースなんです。
今回はそのレースの実行委員長を務める赤坂さんに、アドヴェンチャーレースの魅力や醍醐味をうかがいたいと思います。
※極地ランナーの赤坂さんに、“極地”とはどういったところなのかうかがいました。
「僕が走ってきたのはサハラ砂漠やゴビ砂漠といった暑いところや、南極大陸など寒いところでマラソンをしてきました」
●どのぐらいの距離を走ってきたんですか?
「僕が参加していたカテゴリの大会だと、250キロとフルマラソンよりも長い距離を走ってましたね」
●かなり長い距離を走ってるんですね! なぜそんな大変なことにチャレンジしようと思ったんですか?
「元々はフルマラソンをやっていて、その後にウルトラマラソンという100キロを走るレースに出るようになったんです。それをしているうちに、すごく暑かったり寒かったりする上に、もっと長い距離を走るアドベンチャー的要素があるマラソンがあることを知って、『これは面白そうだ』と思って、サハラ砂漠を走ったのがキッカケでした」
●実際に走ってみてどうでしたか?
「普通のフルマラソンやウルトラマラソンと比べても、ものすごく辛くてしんどいですよね。暑いところだと気温が50度以上あるので気持ち悪いぐらい汗がダラダラ出てくるんですよ。しかも、自分の食糧を背負って走る大会だったですが、僕にとってはとても面白かったです」
●そんなレースをもっと多くの人に知ってもらうために、長い距離を走る大会を企画・運営されているんですよね?
「そうですね。そういう大会に出て感じたのは、キャンプをしながらゴールに向かっていくので、出ている選手同士仲良くなって、“競走”じゃなく“共走”になるんですよね。その中に人間ドラマがあって、人生のような縮図があって、みんなが成長して仲間と一緒にゴールをするんですよ。これを日本でやりたいなと思って、“白山ジオトレイル”という大会を始めました。場所は石川県の白山麓で、そこは“霊峰・白山”と呼ばれていて、“日本三霊山”のうちの1つなんですが、そこで7日間・250キロを走る大会をやっています。例年8月の下旬に行なっていて、今年は8月21日から27日の7日間になります」
●250キロと聞くと、ピンと来ないと思いますが、どのぐらいになるんでしょうか?
「東京からだと直線距離で石川県金沢市の手前ぐらいになります。東海道だと名古屋の手前ぐらい、東北に向かうと福島県の中間ぐらいが250キロになりますね」
●新幹線で行くとあっという間ですが、その距離を走るんですよね!
「そうですね。北陸新幹線だと2時間半ぐらいで行けちゃいますからね(笑)」
●1日でどのぐらい走ればゴールできますか?
「1日あたり30~40キロぐらいですね」
●ということは、フルマラソンより少し少ないぐらいの距離を7日間毎日続けるんですよね。
「それに、7日分の食糧を背負った状態でスタートするので、15キロぐらいの荷物を背負ったまま走ることになります。まさに、修行をするようなレースになりますね」
※“白山ジオトレイル”は、普通のマラソンと一番違うところはどこなのでしょうか?
「普通のマラソン大会だと1日でゴールしてしまうので、その後みんなで焼肉行ったりすることができるじゃないですか。でも、このレースは7日間やらないといけないですし、僕が出場してきた海外のレースだと1日2,000キロカロリー以上の食糧を持たないといけなかったので、この白山ジオトレイルも同じルールでやっています。なので、手持ちの食糧のカロリーを計算しながら、1日分の食糧のカロリー分を摂るようにするんですね。人間は何もしなくても1日2,000カロリー弱は消費すると言われているので、それに加えて走る分も考えないといけないのが面白いですし、逆に非常時ではどのぐらいでも、もつのかという応用が利くんじゃないかと思っています」
●確かにどのぐらい必要なのか分からないので、そういったことを知るいいキッカケになりそうですね。
※実は、以前この番組にもご出演いただいたプロ・フリーダイバーの篠宮龍三さんは、この“白山ジオトレイル”のサポーターでもあるんです。赤坂さんと篠宮さんには、どういった共通点があるのでしょうか?
「篠宮さんはフリーダイバーということで、酸素をいかに使わないで海の中を潜っていくので、それに対するトレーニングをしていることをうかがったんですね。僕は長い距離を走るので、いかに酸素をあまり使わずに、7日間、体を効率的にもたせるのかという点で話がすごく合いまして、それで親交を深めました」
●フィールドは違えど、共通点は“酸素”なんですね。
「その話の中で興味深かったのは、“考えないこと”というところで一致したことですね。体の中で酸素を一番使うのは脳なので、どんなことであれ、頭で何かを考えれば考えるほど酸素を使ってしまうんですよ。なので、“無になる”ことが一番大事なんです。マラソンも本当に気持ちよく走っていると、何も考えてないんですよ。そこは共通すると思いましたね」
※“白山ジオトレイル”は、一体どんなコースなのでしょうか?
「アスファルトの道も走ることはありますが、基本的には白山麓の登山道や林道を走ります。4日目以降は白山ジオトレイルのメインとなる白山国立公園内の山頂、2702メートル「霊峰・白山」に登っていただいて、下りていただきます。なので、4日目と5日目は登山をすることになります。そこが普通のマラソン大会とは違う点になります」
●当然宿泊することになると思うんですが、宿泊はどういった感じになるんですか?
「基本的には私たち大会運営側がテントを用意しています。スタート時に4~5名のテントメイトを発表して、参加者はテント以外の全てのものを持ってスタートします」
●毎日仲間と一緒に寝られるというのは、すごく楽しそうですね!
「そうですね。そこで初めて会った人たちが同じテントの中で色々な話をするんですよ。レースの話はもちろん、家族や仕事の話もしたりして仲良くなって、仲間になっていくんですよね。スタート地点では知らない者同士でも、日を追う毎にみんな知り合いになっていくんですよ。そんな風に変わっていきます」
●レースが終わる頃には、固い絆で結ばれているんですね!
「そうですね。バラバラでゴールはしますが、ゴールをしてくる選手がいたら、先にゴールをしている人たちがテントから出てきて、ゴールした証のメダルを持っているのに、わざわざゴールのところまで来て、ゴールした人にみんなが握手したりハグしたりしているんですよ。誰一人帰らずに待っているというのは感動的ですね」
●マラソンとなると個人競技なので、人それぞれに目標があって、それを達成するために頑張るということになると思いますが、このレースに関しては団体競技みたいですね!
「そうですね。特に、山の中を進んでいくと、応援する人が誰もいないので、仲間同士が応援者になってくるんですよ。毎年起きることなんですが、やっぱりリタイアする人が出てくるので、泣く泣く帰っていくときに、テントメイトはもちろん、そこまで一緒に走ってきた選手同士がすごく悲しそうな表情をするんですよ。もちろん、リタイアする前に励ましあったりするので、そこにもドラマがありますね」
●それは泣いちゃいますね。
※“白山ジオトレイル”には、どんなルールがあるのでしょうか?
「スタートからゴールまで自分が背負った荷物で生活していきながら、自分の足で移動していただきます。そして白山国立公園の中に入りますので、環境省にご指導いただきながら、タイムを競うのではなく、自然に親しみながら自然保護を前提に“国立公園の中は走らないでいこう”というルールを設けました」
●“マラソンなのに、走ってはいけない区間がある”というのは面白いですね!
「そのルールを設けたことで、速い選手も遅い選手も同じペースで山を登ることができるんです。それはまさに“共走”という白山ジオトレイルの方針にピッタリだと思いましたね。参加者からも『普通のマラソン大会だと制限時間があるから、ギリギリになると周りを見る余裕がないけど、自然をゆっくり楽しむことができて嬉しいです』という嬉しい感想をいただいています」
●色々なことが見えてくるレースなんですね。
「あと、7日間挑戦するというのは、かなりの覚悟も必要ですし、それぞれ自分の想いを背負っている人も多いわけですよ。過去の例だ、家族に病気の方がいて、その人を励ましたいから挑戦した人がいました。また、家族が離婚をしてしまって、自分の子供に自分の生き様を見せたいということで参加した人もいました。さらに、自分の会社の社員に自分の挑戦を見せたいという人もいて、話を聞けば聞くほど、涙なしには聞けないようなものが多いです」
●“自分のため”じゃなく“誰かのために走っている”人もいるんですね。ところで景色はどうですか?「この区間のここから見る景色は最高!」っていう場所があれば教えてください。
「やっぱり白山の山頂ですね。一昨年は日の出がキレイに見えたんです。選手全員ご来光を見るために登ったんですが、無事見ることができました。それは神々しかったですね」
●それは何日目ですか?
「5日目の朝ですね。4日目から登り始めますので、4日目の夕陽がキレイに見られるのがその日の夕方で、日の出が一番キレイに見えるのは5日目の朝になります」
●そこまで頑張れば、みんな一緒にご来光を見ることができるんですね。どんな感じで太陽が出てくるんですか?
「雲海が下に見えて、徐々に赤からオレンジになって、太陽がパーッと出てきましたね」
●その瞬間はそれまでの疲れも取れるんじゃないですか?
「そうですね」
※この他の赤坂剛史さんのトークもご覧下さい。
白山ジオトレイルを走るのは楽しいだけでなく辛かったり、苦しかったり、大変な思いもたくさんありそう。でもそんな経験を乗り越えるからこそ、自分自身と深く向き合えたり、固い絆で結ばれた仲間が出来るんでしょうね。神秘的な白山の自然の中で、そんなレースに参加してみたい方はぜひ、白山ジオトレイルのホームページをチェックして下さい。
石川県白山市の豊かな自然の中で開催されるこのアドヴェンチャーレース。現在、出場者のエントリーを受け付けています。すでに中国、香港、フランス、イギリスからもエントリーがあり、国際色豊かなレースになりそうです。
レースは8月21日から27日まで。7日間で250キロを走破します。必要な装備や申し込み方法など含め、詳しくは白山ジオトレイルのオフィシャルサイトをご覧ください。