今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、神長正さんです。
この時期に見られるホタル。それを東武動物公園では、世界初の劇場型施設「ほたリウム」で、一年を通してホタルを鑑賞することができます。これはきっと飼育や繁殖の方法に秘密があると思い、東武動物公園にうかがって、ホタルの飼育係・神長正さんに直撃取材してきました。今回はそのときの模様をお送りします。
※まずは、ホタルは何種類いるのかうかがいました。
「日本には約40種類、世界には2,000種類いるといわれています。その中で皆さんが知っているのは、ゲンジボタルやヘイケボタルなど、水の中にいるホタルだと思いますが、陸にしか生息しないホタルもたくさんいます」
●ホタルといえば光るイメージがありますが、光らないホタルもいるんですか?
「光らないというより、“匂いを出す”ホタルも中にはいますし、オスかメスのどちらかしか光らないホタルもいます。匂いを出すホタルはフェロモンのような匂いを出して呼び寄せて、交尾をします」
●ホタルが光っているのは、異性を呼び寄せるためなんですか?
「そうですね。種類によって違いますが、ヘイケボタルは卵・幼虫・サナギは敵から身を守るために光って、成虫になるとオスとメスの求愛行動のために光っているといわれています」
●卵や幼虫のときにも光っているんですね! でも、その光る目的は成長過程によって違うんですね。
「そうなんです。なので、種類によって変わってきます」
●大きさはどうなんですか?
「ヘイケボタルに関しては、割と小さい方だと思います。オスだと1センチぐらいで、メスが1.2センチぐらいです。大体ご飯粒ぐらいの大きさですね」
●ガラス容器に入れた、生きているホタルを持ってきていただいています。
「これがホタルの卵になります。大きさは0.6ミリぐらいで、黄色っぽい卵がそうです」
●今見る感じでは、藻のようなものがあるんですが、ここに卵が付いているんですね。
「当園ではミズゴケを使っていまして、成虫が卵を産みます。1匹につき、50~100個程度の卵を産みますね」
●ここにあるんですね? 見つけられるかな・・・。これですか? カズノコの小さいようなものが付いていますが、これがホタルの卵なんですね! これも光るんですね。
「そうです。特に、孵化の2、3日前がよく光っているのが見られます」
※続いて、ガラス容器に入った幼虫を見せていただきました。
●この黒いものですか?
「はい。イモムシみたいに丸まっているのが幼虫です」
●そうなんですね! 分かりづらいですね(笑)。
「自然の中では多分見つからないと思います(笑)」
●米粒が丸まったような形で大きさもすごく小さいですが、これが幼虫なんですね。幼虫が成虫になるのは、自然界ではどのぐらいの確率なんですか?
「約3パーセントぐらいといわれています」
●そんなに少ないんですね!
「そうですね。やはり、外敵や人の手によって少なくなってきているのが現状です」
※続いて、成虫を見せてもらいました。
●光ってますね!
「きょう羽化したばかりの成虫です」
●お尻のところが光ってますね。小さくて優しい光ですが、目立つ色ですね。これでオスがメスを一方的に呼んでいるのではなく、それぞれがそれぞれで光ってお互いを呼んでいるんですね?
「そうですね。その光り方も求愛のときと交尾しているときと産卵しているときとでは全く違って、求愛のときはすごく強い光を放ちます。交尾しているときは、お互いがゆっくり光って、産卵しているときは薄くゆっくりといった感じです。そういう感じで、光り方が違います」
●その光り方を知っていれば、今どういう状況なのか分かるんですね。聞いた話ですが、関東と関西と、地域によって光り方が違うそうですが、本当ですか?
「それは私も未だに分かりませんが、地域差があるということと、ホタルは酵素を使って光っているので、温度によって変わるのではないかともいわれています。どちらなのか未だに分かりません」
●ホタルは酵素を使っているんですか?
「はい。ホタルの中にある物質が体の中で混ざって、光を発するようになったといわれています。そちらの研究はかなり進んでいると思いますが、飼育研究に関してはあまり進んでいないと思います」
●ここで研究されていることは、かなり貴重になってくるということですね?
「私はそう思っています!」
●後ほど、その成果をうかがっていきたいと思っていますが、その前に、世界初の劇場型鑑賞施設「ほたリウム」を実際に見にいきたいと思っていますが、よろしいですか?
「是非一緒に行きましょう!」
※ここで、実際に行ってきました。放送では、その一部として館内放送が流れました。
※神長さんは、ホタルの飼育と繁殖が最初の4年間は全くうまくいかなかったそうです。どうやって乗り越えたのでしょうか?
「うまくいかなかった4年間は本当に大変でした。何が原因だったのか、未だに分かっていません」
●その原因を改善して4年後によくなったわけではなく、色々やっていったらうまくいったって感じなんですか?
「推測して“これが原因なんじゃないか”と考えてやっていったって感じですね。本当の原因は何なのかは未だに分かりません」
●そもそも、なぜこの「ほたリウム」を作ろうと思ったんですか?
「私は入社3年目で、その状況がよく分からなかったんですが、当時の社長が日本の動物がとても大好きだったので“ホタルをやりたい”ということで、私がたまたま抜擢されたのかなと思います(笑)」
●(笑)。抜擢された理由は何だと思いますか?
「私は水物が大好きなので、それでじゃないかなと思っています」
●昔から日本の風景にはホタルは欠かせないですよね!
「そうですね。昔と今では環境が全然違うので、ホタルが棲みやすい環境を作るとなると、人間にとっては住みにくい環境になってしまうというのは分かりますが、私は動物園にいる人なので、自然を取り戻す意味でも、こうやってホタルを見ることで、自然が少しずつ元に戻ってもらいたいなと思って飼育しています」
●飼育方法は、自然環境を再現するといった感じで飼育しているんですか?
「はい。自然界では(ホタルは)越冬しないといけないんですが、それを以前は関係なく、ずっと温めれば成虫になると思ってやっていました。しかし、幼虫期に何度で何日間冷やさないといけないのかを、実験を通して判明するまでに4年間かかったんですね。実験の結果、気温7度で3ヶ月以上飼育することによって、成虫になるということが分かりました。そうすることによって、幼虫も日々増えてきていて、今では約300匹の成虫を見ることができるようになりました」
●一度冷えることが、成虫になるには必要だったんですね!
「そうですね。自然のサイクルを見習ったことによって、ホタルが見られるようになりました」
●自然界に生きているホタルをお手本にしたということですが、実際にホタルを見に行ったりしたんですか?
「はい。東武動物公園は埼玉にありますので、毎日仕事終わってから秩父の方にホタルを見に行ってました」
●実際に見てどうでしたか?
「自然は偉大だなと思いました」
●ホタルは成虫になると、大体どのぐらい生きられるんですか?
「成虫はわずか10日間しか生きられません。実は、成虫になると水しか飲むことができないため、10日間しか生きられないといわれています」
●となると、水がすごく大事ですね! 今、自然界では河川の汚染も問題となっていますが、ホタルの減少はそれが影響しているんですか?
「それもそうですし、街灯があちこちに増えたこと、人の手による河川や護岸工事によって、段々棲めなくなったと思います」
●なぜ明るくなると、ホタルが減ってしまうんですか?
「ホタルは暗いところじゃないと光れないんです。明るくすると、ホタルは動けないんです。そうなると、交尾もできなくなるので、子孫が残せなくなってしまいます。なので、明るくなると、ホタルは減ってしまいます」
●ホタルを育てていて、嬉しかったり感動したことって何ですか?
「私には子供がいるんですが、同じ年代ぐらいの小さい子供たちから“ホタルを初めて見た。キレイだった!”って言ってくれると嬉しいですね。今は次の世代もホタルを見たことがない人がすごく多いので、1度見てもらいたいですね」
●この番組のスタッフにも、ホタルをきょう初めて見たという者がいるんですが、子供の頃にホタルを見たことがないっていう人は増えていますか?
「増えていると思います。都内でイベントをやると、都内の人は全くといっていいほどホタルを知らないんですよね。そうすると、“ホタルってこんなにも貴重なんだ”ということを体感するみたいで、もったいなってすごく感じます」
●最後に、神長さんはホタルを通してどんなことを伝えたいですか?
「私は4年間、ホタルの飼育がうまくいかなくて、その間どうしていいのか分からなくて悩んでいました。周りからも批判されたり、“ほたリウムという施設を無くして全部イルミネーションに変えてしまった方がいい”という人が多くて辛い時期を送っていました。でも“絶対に光らせる!”という想いで取り組んだ結果、今のほたリウムがあるので、それが分かった上で、ほたリウムに入っていただけると、よりキレイなホタルが見られると思いますので、是非きてください!」
ホタルの成虫は10日しか生きられず、しかも水しか飲まないんですね。本当に儚い命。そう思って改めてホタルの光を見ると、より一層尊いものに感じられます。
東武動物公園にある、年間を通してホタルを鑑賞できる世界初の劇場型施設「ほたリウム」にぜひお出かけください。開館時間は、基本は午前11時から夕方の4時まで。料金は400円。所要時間は約15分。定員は18名で入れ替え制となっています。
その他にもホワイトタイガーなどの動物もたくさんいますし、アトラクションも充実しているので、1日中楽しめます!最寄りの駅は東武スカイツリーライン・東武動物公園駅。そこから徒歩10分ほどです。
ほたリウムで育ったヘイケボタル約500匹を園内の遊歩道に放ちます! 幻想的なホタルの光を体感しましょう! 当日は、神長さんによるホタル解説や、“光る折り紙”を使ったワークショップも開かれます。
◎開催日時:7月16日(土)と23日(土)の夜7時25分から8時まで