今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、白石康次郎さんです。
海洋冒険家の白石康次郎さんには、今年1月にもご出演いただき、30年越しの夢でもある世界一過酷なヨットレースへの熱い想いを語っていただきました。
そのヨットレースとは、4年に一度開催される「ヴァンデ・グローブ」。フランスのヴァンデという港町から、全長18メートルの大型ヨットに乗って、約80日間をかけて、たった一人で世界一周48,000キロを走破し、再びヴァンデに戻ってくるという、世界中のスキッパーが憧れているレースなんです。ヨーロッパでは、サッカーのヨーロッパ選手権に次いで、メディアを賑わす世紀の大イベント。
そのレースにアジア人として初めて出場が決まったということで、今回は白石さんの、さらに熱いトークをたっぷりお届けします。
●今回のゲストは、ついに、世界で一番過酷なヨットレース「ヴァンデ・グローブ」への出場をアジア人として初めて決めた海洋冒険家の白石康次郎さんです!
「やりました! 確か前回(この番組に)出たのは(今年の)1月ごろだったと思います。5月の予選レースに出場しないといけなかったんですが、前回出た時点では資金ゼロ円でした。出たいという気持ちはあったんですが、あの後多くのスポンサーに支援していただいて中古のヨットをフランスで買いました。そのヨットに初めて乗ったのは4月10日でした。
予選レースのスタートはニューヨークなので、そこまでヨットに乗っていかないといけなかったんです。実は、それが今回のレースの山場でした。もうギリギリだったので、3週間で整備して出航しました。案の定、船が壊れました。整備不足だから、そうなりますよね。どこが壊れたかというと、発電機が壊れました。自動操舵装置が使えなくなりました。
クルーは僕とフランス人のジルの2人のみです。バッテリーが残り少なくて、(修理のために)近くの島に寄ってたら時間的に間に合わないと・・・10日間以上、ヘッドランプ1個で舵を握って、大西洋を渡らないといけないんですよ。2人だから、1日12時間は舵をとらないといけなくなるんですね。僕はいいんですが、クルーのジルには申し訳なかったんで、『近くの島に寄って、ちゃんと整備をしてから行こう』といったら『コウジロウ、我々は電源を失っただけだ。このまま行こう』って言うんですよ。彼は51歳の古いセーラーで、昔はいい装備なんてなかったんですよ。そこからはメールとGPSだけ、1日二回、電源を入れて、あとは電源を切って、ハンドリングで大西洋を渡りました。
やっとの思いでアメリカに着いて、10日間で準備をして、1人で予備レースに出場しました。出場した14艇、全てが優勝候補だったんですね。なぜなら、ヴァンデ・グローブに向けての最終レースなので、他のチームは性能を試すためなんですよね。自分の船の仕上がりと相手の仕上がりを確認するのと、このレースからヴァンデ・グローブまで5ヶ月ぐらい間が空くので、無茶しても整備ができるので、フルスロットルで走るんですよ。
スタートしたんですが、その日にほぼ半分がクジラに激突しました。クジラの群れに入ってしまったようで、6艇ぐらいが港に帰っていってしまいましたね。ちなみに、僕も激突しました。でも、僕の船は幸いにもダメージはなく、そのまま走ることができました。また、スタートしたときは濃霧で、100メートル先が見えなかったんですね。自分は本当にスタートできたのか分からないぐらいで、隣にいた船しか見えませんでした。なので、タンカーにぶつかる寸前までいきましたし、たくさん苦労をしましたが、結果的には7位になりました。それでビックリしたのが、みんなが褒めてくれたんですよ。たった3週間で整備して出るなんて、他のスキッパーはどんなことなのかよく分かっていますからね。これによって、晴れて出場が決まりました」
●出場する前から色々あったんですね!
「幸運としか言いようのないことですね。だって、何億円というお金をスポンサーから集めて『レースに出られませんでした』という報告をしないといけない可能性と紙一重の状態だったんですよ。なので、ものすごいプレッシャーの中で大変でしたが、みんなの応援もあって、乗り切れました」
※本戦である「ヴァンデ・グローブ」がどれだけすごいレースなのか、改めてうかがいました。
「“ヴァンデ・グローブ”は最初、フランスで行なわれたレースです。単独無寄港で世界一周するヨットレースです。援助もなしです。1度でも援助を受けたら失格になります。トップの人は80日で一周するぐらい速いです。なので、冒険でもありスピードレースでもあります。4年に1度行なわれ、今回で8回目となります。今回の出場は過去最多の30艇です。
レースを見ることができるヴィレッジが1ヶ月間開かれているんですが、延べ100万人来ます。ヴィレッジがある町は1万数千人しかいないのに、100万ですよ! “メディア・インパクト”という数字があって、ヨーロッパでメディアに一番インパクトがあるのはサッカーで、二番目がこのヴァンデ・グローブなんです。ツール・ド・フランスや(テニスの)全仏オープンよりもはるかに人気が高く、地元では小学校で教えてます」
●国民的行事なんですね。
「なぜ日本で有名になっていないかというと、日本人が出ていないからです。僕は10年前に“5オーシャンズ”というレースに日本人で初めてクラス・ワンで出て2位になりました。そのときからこのヴァンデ・グローブには出たかったんです。でも、5オーシャンズが終わったあとにメインスポンサーが倒産してしまったんですね。それでそのときは断念しました。そして、その4年後、今度は東日本大震災がありました。それで再び断念。それで今回です。ついに現実のものになりました」
●“5オーシャンズ”と“ヴァンデ・グローブ”には、何か関係があるんですか?
「“5オーシャンズ”は以前“BOCチャレンジ”という名前で、そちらの方が歴史が古いんです。第1回が1982年に行なわれて、僕はそのとき高校生でした。これは単独世界一周で、このレースは港に寄ります。優勝したのは“フィリップ・ジャント”という男で、50フィートの部門で優勝したのは、僕の師匠でもある多田雄幸さんです。その第1回を見て“ヨットレースに出たい”と思いました。そのフィリップ・ジャントが『今度はノンストップでやってみよう』ということで、自分の故郷のレ・サーブル・ドロンヌという小さな港町を出発したのが、“ヴァンデ・グローブ”の第1回目なんです」
●5オーシャンズの前に行なわれたレースで優勝した伝説のスキッパーが作ったレースなんですね。
「僕も20代のころに“いつかこのレースに出てみたい”と思ったんですね。最初に単独無寄港で世界一周したのは、それを意識していたからなんです。第1回のヴァンデ・グローブで、最年少で世界一周した人は28歳だったんですね。その記録を26歳のときに破りました。なので、僕はヴァンデ・グローブとは深い関わりがあるんですね。ちなみに、この番組に出て、世界3周目ですから。こんな番組、ベイエフエムでもないと思いますよ」
●それだけ、白石さんの挑戦がすごく好きなんです!
「ありがたいことですよ。出たいと思って30年近く経って、やっと出られるような人間になったということでしょうね」
●白石さんの挑戦はヴァンデ・グローブに繋がっていたんですね!
「そうですね。これ以上のレースはないので、頂点のレースに出られるのは本当に嬉しいですね」
※白石さんはどんな船でヴァンデ・グローブに出場するのでしょうか?
「5オーシャンズのときと一緒で(全長が)60フィートあります。メートルにすると18メートルなので、バスよりも長いです」
●すごく大きいですね!
「マストも28メートルを越えるので、ビル7階ぐらいの高さがありますね。セール面積が70坪ぐらいあります。こういう船は日本にはないんですよ。普通であれば、10人ぐらいで動かしますね。それをたった1人で動かします」
●1人でコントロールできるんですか!?
「やるんです! 1人でやることに面白さがあるんですよね」
●たった一人でヨットの上にいるじゃないですか。1日の大体のスケジュールってどんな感じなんですか?
「風によって変わってきます。1人ということは、2つ以上のことを同時にすることができません。寝ながらは見張れないので、レース中は1時間以上は寝ません。仮眠だけですし、ベッドもありません。食べ物も軽い方がいいので、主食は“アルファ米”という、登山用の乾燥米です。お湯もキッチンがないので、登山用のバーナーでお湯を沸かして、15分で炊けます。美味しいですよ。そのアルファ米の優秀なところは、ものすごく荒れているとお湯も沸かせなくなるので、水を入れると1時間で食べられるようになります。おかずは海苔の佃煮や缶詰1個ぐらいで、あんまり食べないですね。なので、スキッパーは出航前にかなり太らせます。僕もかなり太らせているんですが、帰ってきたら、レース中は忙しいので、10キロは痩せます。
風がないときは楽じゃなく、風がないときはセールをいっぱい張るので大変なんです。一番楽なのは、同じ方向から同じ量の風が吹くときですね。風の変化がないときは、一度セットをしてしまえば、自動操舵装置に任せるので、僕は音楽を聴いたり本を読んだりするのが、リラックスタイムかな。満点の星空の下でクラシックを聴くのはいいものですよ」
●星は陸地から見るのとは全然違いますか?
「そうですね。星というと、皆さんは北半球の星を見ているんですが、南に下がっていくと北極星が沈んできて、北斗七星が大きくなってきます。すると、今度は南十字星が出てくるんですね。さらに南に行くと、オリオン座が日本で見るときとは逆さまで見えます。そして、今度また北上していくと、今まで自分が見てきた星が広がって、北半球に『帰ってきた』って感じがしますね」
●星を見てそう思えるんですね。
「星の景色で、今どこにいるのかが大体分かりますね」
●昔の人もそういう風にしていたんじゃないでしょうか。
「昔の船乗りは1年かけて世界一周してましたけど、そうだったんじゃないかと思いますね」
●野暮なことを聞きますが、途中で「止めちゃおうかな」と思ったことはないんですか?
「毎回思いますね。船酔いのときは毎回思いますね。『なんで、こんなことをやってしまったんだ。康次郎、お前は何度やれば分かるんだ!? 前もそうだっただろ!』と思うんですが、同時に『そのうち楽しくなる』ということも知っているんですね。正直、苦しいです。今回も酷かったんですが、なんとか乗り切って、フランスのレ・サーブル・ドロンヌで大歓迎を受けました。やっててよかったですね」
●本戦が楽しみですね!
「そうですね。今は一時帰国していて、さらなるスポンサーを集めたりクラウドファンディングで資金を集めたりしています。あと、僕のもう1つの使命は、日本に“こういうヨットレースがある”ことを広めることだと思っています。そういう意味では、この番組はすごいですね。僕と20年以上付き合ってくれているのは、この番組だけですよ! いつか『僕のことを“康ちゃん”って呼んでくれるの、この番組だけだよ』と言いたいですね。この番組の何が嬉しいかって、僕がまだ全然有名じゃないころから(番組に)呼んでくれていたので、この番組には本当感謝しています」
●これからも微力ながら応援させていただきたいです!
「そういえば、前も衛星電話で番組に出ましたよね。今度もやりましょうよ!」
●いいんですか!?
「いいですよ! お気軽にお電話ください(笑)。ただし、出られない場合がありますよ(笑)。何度かチャレンジしてくださいよ。今回は、前回のレースと絶対的に違うところがあって、今はSNSがあることですね。Facebook、Instagram、YouTube、Twitter、ラジオではこの番組だけですね。さらに、今は衛星生中継ができるようになっていて、テレビもやってくれると思いますし、大会のホームページで僕の動向が追えるようになっていますので、みんなも楽しんでほしいです。一緒にレースをしましょう! スタートはフランス時間の11月6日、13時02分です。多分、ネットで生中継されると思います。それまで一生懸命整備をします! 是非、この番組を通じて、応援していただければと思います!」
※この他の白石康次郎さんのトークもご覧下さい。
白石さんは、今回のレースの第一目標は、“結果ではなく49歳になっても夢を追い続ける自分の姿を見てほしい”、そして子供たちには、“嵐が来ても自分の力で乗り切ることの大切さを感じてほしい”とおっしゃっていました。白石さんの30年越しの夢。私たちフリントストーン・チームの夢。そして、きっとみなさんの夢にもなると思います。ぜひ一緒に応援しましょう!
白石さんは現在、フランスでトレーニングを含め、レースに臨むための準備中。そして現在、新品のメインセールを購入するための支援を募っています。風を受けて走るヨットはこのセールがとても重要です。金額は一口1,000円から。魅力的な特典も色々ありますよ。白石さんを応援したいという方、ぜひご支援をお願いします。また、レース前の準備を手伝ってくださるクルーも募集中です。
そして、白石さんを応援するツアーがあります。日程は11月3日から7日。発着は羽田空港。観光やレース観戦の他に、白石さんとの夕食会もありますよ!
◎詳しい情報:白石さんのオフィシャルサイト