今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、森沢明夫さんです。
船橋在住の作家・森沢明夫さんは、千葉県を舞台にした小説『夏美のホタル』や『虹の岬の喫茶店』、そして『あなたへ』などで知られている人気作家です。この三作品はすべて映画化され、『夏美のホタル』は「有村架純」さん、『虹の岬の喫茶店』は「吉永小百合」さん、『あなたへ』は「高倉健」さんが主演し、大変話題になりました。
そんな森沢さんが先日、最新のエッセイ集『東京湾ぷかぷか探検隊』を出されました。今回はその本から、東京湾でのユニークでマニアックな遊びについてうかがいます。
●今回のゲストは、作家の森沢明夫さんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします」
●前回は『夏美のホタル』のお話をしていただきましたが、今回は小説家ではなく“探検家”としての一面に迫っていきたいと思います。というもの、森沢さんは先日『東京湾ぷかぷか探検隊』という最新のエッセイ集を出されているからなんです。早速ですが、このタイトルはどういう意味があるのでしょうか?
「“東京湾にぷかぷか浮いているようにゆったり遊びましょう”という意味で付けました。ゆるい感じです(笑)」
●確かに、ゆるい感じが伝わってきます(笑)。隊員数はどのぐらいいるんですか?
「イラストレーターのうぬまいちろうさんと僕の2名です」
●うぬまさんとはどういった出会いだったんですか?
「僕が大学生のときに編集者のアルバイトでアウトドア雑誌を作っていたんですが、そのときにイラストレーターとして一緒に仕事をしたことが最初で、そこから25年ぐらいの長い付き合いになりますね。僕もうぬまさんも野宿をしたり野遊びしているので、“一緒に遊びましょう”ということでスタートしました」
●ちなみに、今までどんなところで遊んできたんですか?
「国内では石垣島や宮古島などですね」
●おふたりは、どうして東京湾で遊ぼうと思ったんですか?
「東京湾って工業地帯のイメージが強いですが、実は魚がたくさん棲んでいるんですね。なので、おいしい江戸前の魚もたくさんいます。“それだと、身近な海でたくさん遊べるよね!”っていう話をしていたんですね。うぬまさんが神奈川のマリーナに“勇魚(いさな)号”というボートを持っているんですね。そのボートで東京湾に出て、釣りをしたり泳いだりしています」
●「そんな近くで魚が釣れたり泳いだりできるなら、わざわざ遠くまで行かなくても遊べるじゃん!」って思ったんですね!
「そうなんです。相当遊べます」
●この探検隊の遊びでのモットーやルールってありますか?
「“粋でロッケンロールじゃないとダメ”っていうものがあります。面白くないことをしていると“お前ロックじゃねーな!”って言われてしまうんです(笑)。そう言われると最悪だと思っちゃいますね。アホなことを振られると、アホ以上なことをやってやろうというイメージですね(笑)」
※森沢さんに、ちょっと面白い潮干狩りのやり方を教えていただきました。
「千葉だとふなばし三番瀬海浜公園で潮干狩りができます。僕らも行くんですが、僕らは潮干狩りのときにアサリはあまり狙わずにマテ貝を獲ります」
●マテ貝ってどんな貝ですか?
「(筒状で)タバコの中身がないような感じで、実は二枚貝なんです。それがアリみたいに穴を掘って隠れているので、その穴の上に塩を降ると、マテ貝が驚いて飛び出してきます。その瞬間を手で押さえて引っこ抜きます。これは、遊ぶというより狩猟的なイメージですね」
●モグラ叩きみたいな感じですね! 本当に潮干“狩り”ですね!
「しかも、その貝は美味しいんですよ」
●どうやって食べるんですか?
「アサリを食べるようにして食べてもいいし、網で焼いてもいいです」
●それが千葉の海岸で獲れるんですね。
「潮干狩りができるところであれば、大体いるので、獲れると思います。子どもでもできるので、ファミリーで楽しんでいただければと思います。みんなが掘っているそばで、狩りに勤しんでいます(笑)」
●(笑)。今までで思い出に残っているエピソードってありますか?
「神奈川側の磯で遊んでいるときに、“いそっぴ”と呼ばれているカニがいるんですが、それを獲っているおじいちゃんがいて、その獲り方が面白いんです。玉網を岩場の中に沈めておくんですが、その網の中に魚のアラみたいなものを入れているんですよ。すると、いそっぴが入ってくるので、入ったところで網を上げて獲るんです。“こんなので獲れるのか!”と驚きましたね。ウツボも獲れるんです。ウツボのときは上でモリを構えて、ウツボが来たら、上から刺すんですよ。それを見ててやりたくなったので、おじいちゃんにお願いしてやらせてもらいました。それで獲り方が身に付きました」
●森沢さんが色々な遊びを知っているのは、そういう人たちに聞いているからなんですか?
「それはすごく大きいですね! 北海道から沖縄まで、色々なところの海や川で色々な人から遊び方や獲り方を教わりました。それは相方のうるまさんもそうです。お互い日本中を旅して、そこで身に付いた知識を持ち寄って遊んでいるので、すごく楽しいですね」
●私たちが磯遊びをしたくなったら、地元の方に聞いてみるというのもいいかもしれないですね。
「遊んでいる人に聞くのがいいですね。地元の人でも、知らない人がたくさんいるので、そこで楽しそうにしている人に聞いてみると、その人なりの技術があったりするので、その方がいいですね。この本にも色々な遊び方のコツを書いているので、それを読んでいただけると、遊べると思います」
※どうやら、東京湾でジンベイザメと一緒に泳げるところがあるそうです。
「東京湾にはマグロや深海のタカアシガニという巨大なカニとかいるんですけど、僕も最初はまさかジンベエザメがいるとは思っていませんでした。でもある時、新聞を読んでいたら、南房総にあるダイビングセンターの巨大な生け簀に漁師が獲ったジンベエザメを入れて、そこでダイバーと一緒に泳がせるサービスをしているという記事を見つけて“東京湾にジンベエザメがいて、しかも一緒に泳げるんだ!”と思って、慌ててそこに電話しました」
●どういう風に一緒に泳ぐんですか?
「直径50メートルくらいの大きな生け簀があって、僕が行った時は大きなジンメエザメが2匹いて、底のほうをクルクル回って泳いでいました。僕はダイビングの免許を持っているんですけど、その時は素潜りでした。それで、5メートルくらい潜れば、すぐジンベエザメと並んで、ランデブーできるぐらい」
●すごいですね! どんなことを感じましたか?
「ここ東京湾なのに“地球ってスゲェなぁ!”って思いました。“地球感”を感じましたね。ジンベエザメがあまりにも大きくて、“こんなのがいるんだ”という感動がありました」
●ジンメエザメのスケール感から、地球の大きさを感じられたんですね。
「それぐらい、ジンメエザメと泳いだことの感動しましたね。沖縄美ら海水族館とかでもジンメエザメを見たことはありますが、ガラス越しに見ているじゃないですか。そうではなくて、一緒に泳いでいると、改めて本当に凄いことだなと思いましたね」
●ぜひ行ってみたいです! そこに申し込むだけで大丈夫なんですよね?
「そうですね。ただ、必ずそこにいるというわけではなくて、一定期間生け簀で飼った後は、海に還してあげるんです。そしてまたしばらくして、漁師の網に引っかかったら、またしばらく飼うんですね。だから、いつその生け簀にいるのかは分からないです」
●あらかじめチェックしておくことが大事なんですね。私も美ら海水族館や、大阪にある海遊館へ見に行くくらいジンメエザメが好きなので、まさか「東京湾でジンメエザメと一緒に泳げるの!?」って思いました!
※東京湾以外でもう一度行ってみたい場所はどこなのでしょうか?
「西表島ですね。そこがめちゃくちゃ面白かったので、“もう一回攻めに行きたいね!”という話はよくします」
●どんな攻め方をしたいんですか?
「大物釣りができるんです。しかもどこでもなんでも釣れるんです。道端にある水路にルアーをヒョイっと投げるだけで、現地では“タマン”と言われている、フエフキダイが釣れるんです」
●何センチぐらいなんですか?
「40~50センチはあると思います。“こんなデカイのがこの水路にいるの!?”と思ってしまうくらいです。そして、海ではまた色々な魚が釣れるので、それもすっごい楽しいし、陸ガメとかがその辺を普通に歩いていたりもするんですよ」
●そう考えると、海遊びって無限に考えられますよね。100人いたら100通りの遊び方がありそうですね!
「しかも、その土地の地形ごとに遊び方を変えられるので、西表島のようなところに行けば、カヌーでマングローブまで遡って“チヌ”とも呼ばれているクロダイや、シャコを釣ったりも出来ます。あと、東京湾には深い海溝があるんですよ」
●結構深いところがあるって言われますよね。
「深海があるので、深海魚が釣れるらしいんですよ。まだ深海魚釣りはやったことがないんで、それなりの道具は必要になってくると思うんですけど、やってみたいなぁとは思いますね」
●東京湾にもまだまだ私たちが見たことのないような生き物がたくさんいそうですよね。
「そうですね。あとシーラとか、熱帯の魚もいるんですよ」
●沖縄とかじゃなくてもいるんですね! そういうお話を聞いていたら、私も東京湾で遊びたくなってきたなぁ…。ぷかぷか探検隊に入りたいなぁ…。森沢さん、入れてくれないかなぁ…。
「(笑)じゃあ、まずは予備隊員として行ってみますか!」
●え、いいんですか!?
「船は酔わないですか?」
●私、ヨット部だったので、船に酔わないです!
「それは僕より強いですよ!」
●森沢さんは酔うんですか?
「たまに酔うことがあるんですよ(笑)」
※この他の森沢明夫さんのトークもご覧下さい。
釣りに海水浴、海辺の生き物探し、磯遊びと言えばせいぜいこれ位しか思いつかなかったんですが、森沢さんにお話をうかがうとたくさん出てきますし、どれもすぐにやりたくなるような、ワクワクする遊び方! 海の特徴の数だけ遊び方があるとおっしゃっていたので、多様性に富んだ東京湾はまだまだ遊び尽くせそうですね。
潮出版/税込価格800円
森沢さんのこの最新エッセイ集は、相棒のイラストレーターうぬまいちろうさんとの遊びのエピソードが満載です!
森沢さんの近況については、公式ブログをご覧ください。