今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、佐々木知幸さんです。
ネイチャーガイドの佐々木知幸さんは、千葉大学・園芸学部で植物生態学を学び、現在は造園家、樹木医、そしてネイチャーガイドとして活躍されています。そんな佐々木さんが先頃『道ばたの草花がわかる! 散歩で出会うみちくさ入門』という本を出版、植物好きの間で評判なんです。今回はそんな“みちくさ”のスペシャリストである佐々木さんに、みちくさのお話をたくさんうかがいます。
●今回のゲストは、ネイチャーガイドの佐々木知幸さんです。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします」
●佐々木さんは先頃『道ばたの草花がわかる! 散歩で出会うみちくさ入門』という本を出版されました。今回はこの“みちくさ”について色々とうかがっていきたいと思います。早速ですが、“みちくさ”って、どんな植物ですか?
「結構すごい奴らだと思っています。この本で定義を決めようと思って、考えました。やっぱり、山の中じゃなくて、一番身近な“街中”“公園”“河原”に限定しようと思いました。別に自然とかそんなに興味がなくても、街中に歩いている中にある草のことを“みちくさ”というようにしました。なので、すごく強いものばかりが残っている状態です」
●標高が高かったり気温が低かったりして、山の方が周りの環境が厳しいんじゃないかと思うんですが、都会の方が厳しいんですか?
「ずっと厳しいと思います。色々な条件はありますが、山の中間ぐらいの森の中だと、他の植物とかたくさんありますよね。そうなると、地面の中にあるバクテリアやキノコの仲間などが草を助けてくれたりするので、居心地がいいんですよね。それが街中だと、夏ってめちゃくちゃ暑いじゃないですか。逆に冬だと遮るものがないから、めちゃくちゃ寒いですよね。それだけ厳しい環境だと思います」
●私たち人間の影響で厳しい環境になっているんですか?
「“ほぼ人間のせい”といっても過言ではないと思います。ただ、そこに適応しているのが、みちくさの特徴だと思います」
●具体的には、どんな種類があるんですか?
「この本を作るために写真をたくさん撮っていったら、500種類ぐらいはあったと思います」
●意外とあるんですね! パッと思いつくものだと“タンポポ”とか“スミレ”とかですが、そういったものが500種類あるんですね!
「街ごとに違うものがあったり、外来種もあったりしますし、園芸植物が脱走していたりして、取材が終わった後に振り返ってみたら“こんなにいたのか!”とビックリしました。“これ、どうやって選べばいいんだろう?”ってぐらいありましたね。選ぶのが大変で、涙を呑んで外したものもありました。そのぐらい多彩なみちくさが生えてます」
※“みちくさ”を見つけやすい場所をうかがいました。
「“何かと何かの隙間”がポイントです。一番分かりやすいのが“建物と道路”です。その間に土が溜まったりすると、みちくさ達がすかさず生えてきます。なので、どんな方でも見つけやすいのは、そういうところが分かりやすいと思います」
●私がよく見つけるのは、排水溝のグレーチングから顔を出している植物、ああいったところにもいるんですよね?
「あれはいいですねー! そこは道路の隙間といったところに比べると、グレーチングの部分でガードされるし、周りから水がよく来ますし、土もある程度あるので、いい環境なんです」
●私が見るのは、毎年同じところに同じピンク色の小さな花が咲くんですよ!
「代々受け継がれて咲いているんでしょうね」
●実は今回、“みちくさ”を持ってきてくださっているんですよね!
「今回持ってきたのは、今収録しているスタジオの最寄り駅からここまで来る間で摘んできたものです」
●この時期の都会でも5種類ぐらい採れるんですね! 様々な形をしていますし、ピンク色のものからタンポポのように黄色い花までありますが、紹介していただいていいですか?
「この時期でもお花が結構咲いているんですよね。この花はタンポポに似ていますが、茎の先につぼみも含めて6個ぐらい花がついています。これは“ノゲシ”といいます。これはどこでも見つけられるみちくさです」
●私、タンポポと間違えている気がします!
「よく似ていますが、ノゲシの方が小さいんですね。あと“ハコベ”は春の七草で有名ですよね。春の七草ということで、1月7日に皆さん七草粥を食べたかと思いますが、本当は旧正月でやっていただいた方がいいので、立春のときがいいですね」
●(ハコベを)見つけるポイントはどういったところですか?
「葉っぱがスペードみたいな形をしていますよね。これがペアになっているのが見分けるときのポイントですね」
●先端には白くて小さい花が咲いているんですね。あと、茎が太いのがあるんですが、これは何ですか?
「これは“チチコグサモドキ”といいます。“ハハコグサ”という名前を聞いたことがあるかもしれませんが、これも春の七草の仲間です。春の七草で“御形(ごぎょう)”というものがありますが、ハハコグサのことを表しています。ハハコグサは黄色くてかわいいお花が咲きますが、父は地味なんです。実は、これ花なんですよ」
●これで咲いているんですか?
「花らしく開いてないですが、これで咲いています」
●父って地味ですね!
※春の初めに楽しめる“みちくさ”には、どんな植物があるのでしょうか?
「“1年草”という、成長して花を咲かせて種を落として枯れることを1年で行なう花が多いんですが、春にいきなり花が咲くわけではないんです。実は、秋ぐらいから芽を出して準備をしているんですよ。そういうウォーミングアップの状態を見ていただくのがオススメです」
●例えば、どんな植物を見ればいいですか?
「“カラスノエンドウ”というのが、早くから準備をしている植物になります。秋ぐらいから芽生え始めていて、エンドウマメやスイートピーの葉っぱとよく似ているけど、見てみると小さいものになります」
●この本にも掲載されていますか?
「季節ごとに並べているんですが、春のページに載っています」
●ありました。この紫色のキレイなお花を見たことがあります! 豆の写真も載っていますね。
「豆科なので、豆ができます。これは用意周到で、早くから準備をしています。公園の明るいところが居場所ですが、先に見つけておくと、段々咲いてくるのを楽しめるものですね」
●春の訪れを感じられそうですね。他にはどんなものがありますか?
「見たことがあるものでいえば“ハルジオン”じゃないでしょうか。真ん中が黄色で、その周りに薄いピンクの花びらのようなものが囲っているキク科の仲間がいます」
●これもよく見たことがあります。駐車場の隅の方に群生していますよね。花が咲くのは春ぐらいですか?
「3月ぐらいに咲き始めて、4月に満開になる感じですね。今ぐらいだと茎がまだ伸びていく前の、地面にくっついている状態ですね。ここからの流れを考えると、地面にくっついている状態から咲くまでがドラマチックなんですよね」
●すごいですよね! 気がつくとそこにあるんですよね!
「大体そんなもんなんですよね。なので、今のうちにその葉っぱを見つけておけば、段々と盛り上がってくる過程を楽しむことができます」
●“みちくさ”を長年観察されて、変化を感じることってありますか?
「これは色々な人が言っていることでもありますが、外国から来る植物を見ると“新しいのが来たな!”って思いますね」
●逆に、最近見なくなったものってありますか?
「たくさんありまして、この本にもあえて載せているものもあります。その中でも絶滅危惧種になってしまったものもありますね」
●どんなものがあるんですか?
「“イヌノフグリ”という植物があります。“オオイヌノフグリ”という名前を聞いたことがあるかと思いますが、これは青くて小さいキレイな花を咲かせるんですね。それに似ている花なんですが、元から日本にいるのは“イヌノフグリ”で、“オオイヌノフグリ”はヨーロッパから来た植物なんです。オオイヌノフグリが来たのはつい最近ではなくて結構昔なんです。それだけ長い時間をかけてみんなの記憶に残るぐらいにまで定着して、イヌノフグリの方はいなくなってしまっているという状況にあります」
●みちくさって、子供のころの思い出の風景の中に当たり前にあるものなので、なくなってしまうと寂しいですよね。
「あと、日本のものでなく外国から来たものでも一時、一世を風靡したのに、いなくなってしまったものもあるんですよね。“ブタクサ”という花粉症の原因になる草があります。今回の本に載せようと思って探したんですが、いないんですよね。あるときブームになるんですが、日本の植物と暮らしているうちに、しがらみが出てくるみたいです。やっぱり競争しないといけないので、元からいた植物たちもずっと黙っていないんですよね。そうなると、結果的に消えてなくなるものもあります」
●“みちくさ”を観察すると、色々なことを感じられそうですね。佐々木さんは“みちくさ”から学んだことや感じたことって、ありますか?
「いっぱいあるんですが、まず1つは、花は春に向けて秋から準備をしているわけですよ。それなのに、自分は締め切りがあるのに、なんでもっと早くやらなかったんだろうって、いつも身につまされますね(笑)。あとは“柔軟性”ですね。高山のてっぺんにも生えていて、“みちくさ”としてその辺りで生えているものもあるんですよね。“オオバコ”というのがそうなんです。標高2000メートルぐらいの登山道に生えているものが、街中にも生えていたりするんですよ。その環境に合わせて生活していく術を彼らは身につけているので、そういうのを見習いたいなといつも思っています」
●コンクリートの隙間から頑張って生えているのを見ていると、環境が悪いなんてことが言えなくなってしまいますよね。
「一方で“自分なりの道を切り開く”ことも教えてもらいましたね。それをすると、大変だけど競争相手がいないので、オリジナルなことができればと思っています」
佐々木さんにお話をうかがってから、普段何気なく見ている“みちくさ”が、なんだか前よりも数倍愛おしく感じるようになりました。これからどんどん“みちくさ”が増えていく季節、いつものお散歩にプラスして“みちくさ”探しをしてみては如何でしょう。
文一総合出版/本体価格1,800円
道ばたの草“みちくさ”が、春・初夏・夏・秋と季節ごとに載っていて、とても見やすく、観察するときのポイントを書いてくださっているので、その植物の特徴がよく分かります。
清右衛門こと佐々木さんが案内する植物観察会。2月のテーマは“雨水、柔らかな芽吹き”。春の気配を感じながら、草や木々のあれこれを楽しく学びます。おやつとお茶付き!
◎開催日時:2月19日(日)の午後1時30分
◎詳しい情報:北鎌倉・たからの庭のホームページ