今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、清水国明さんです。
1950年、福井県生まれの清水さんは、原田伸郎さんとコンビを組み、「あのねのね」で1973年にデビュー。「赤とんぼの唄」が大ヒットし、一躍人気者となりました。1980年代になると、ラジオ番組がきっかけで、鈴鹿8時間耐久ロードレースに挑戦することを発表し、オートバイのレースに没頭。1990年代には、アウトドアズマンとして知られるようになり、2005年にライフワークとして河口湖に「森と湖の楽園」をオープン。2011年の東日本大震災のときには、いち早く支援活動に取り組み、さらに山梨学院大学の客員教授として防災教育にも力を入れています。
この番組では、そんな清水さんに毎年4月にご出演いただき、清水さんが今、どんなことに夢中になっているのかをうかがう「定点観測」をさせていただいています。この定点観測も今回で22回目! 今回は一体、どんなお話が飛び出すのでしょうか!?
※もしあなたが無人島を手に入れたとしたらどうしますか? まずは、清水さんが夢中になっているという無人島のお話をうかがいます。
●国明さんといえば、まずは瀬戸内海に浮かぶ無人島“ありが島”が思い浮かびます。毎年楽しいお話を聞かせていただいていますが、今年はいかがですか?
「僕は“ありが島”の島主ですが(笑)、昨日までずっと島に行っていました。やっぱりいいところですね」
●改めて、“ありが島”とはどういうところなのか、教えていただけますか?
「山口県岩国市と愛媛県松山市のちょうど真ん中に位置する、瀬戸内海にある無人島です。9人ぐらいの仲間に“男のロマンだ!”と声をかけ、みんなでお金を出し合って買った島なんです。僕がその島の管理人としてログハウスを建てたり、水路を掘ったりしていますが、みんなで使っている島ですね。周りにはプライベートビーチがいくつもあって、そこでは何をしても大丈夫です。ありが島は、瀬戸内海随一の漁場でもあるので、魚もたくさんいます」
●海の幸や山の幸、島の幸がたくさんあるんですね!
「山の幸については残念ながら、ありが島にはヤギが50頭ぐらいいるので、例えば山菜とかがぴょうこんと出てもすぐに食べられてしまうんです。その代わり、ありが島には下草や雑草が全然ないんです。そんなヤギと一緒に暮らしています」
●島を購入された当初は、全くライフラインなどはなく、それも自分たちで少しずつ作っている、というお話を以前うかがったのですが、今ではだいぶ出来上がってきたんでしょうか?
「そうですね。アウトドアをする人たちは“あえて不便を楽しむ”と言っていますが、本当は不便が好きなわけではなく、不便な状況を快適にしていく“プロセス”を味わうことが楽しいんですよね。僕は、無人島で自分の能力をフルに発揮して、だんだん便利にしていくことを楽しんでいるんですよ。だからログハウスを建てたり、水路を掘ったり、太陽光パネルを敷くことで電気も確保できるようにしてきました。そして今回は、お風呂を作りに行ったんです」
●お風呂ですか!?
「薪の風呂なんですが、これがいいんですよ! 枯れ木は山ほどあるので、それを使って1時間ぐらいかけてお湯を沸かすんですが、湯船のお湯の面と海面の高さが同じになるので、見晴らしがいいんですよ。誰もいない周りの景色を見ながら、のんびりとお風呂に入るのが気持ちいいですね」
※ありが島には、さまざまな魅力が詰まっていますが、そこには私たちでも行くことができます! では、実際にありが島に行った人たちはどんなことを感じたのでしょうか?
「都会暮らしに慣れている人がありが島に行くと、不便さにびっくりするんですね。
例えば“ジェネレーター”と呼ばれている発電機があるんですけど、“ジェネレーターに付いているヒモが切れていたから使えなかった”とか、“スイッチを入れたのに動かず、真っ暗の中で過ごした”といったプチクレームが来たので、僕が行って確かめてみたら、“ヒモが切れたんなら結べばええやないかい!”“スイッチをオンにすれば動くやん!”という程度のことだったんです。
今の人たちは、そういった自分で工夫するなどの“生命力”が著しく低下しているんじゃないかと感じています。世の中はすごい便利になってきたんだけど、それに反比例して“生き延びる力”や“サバイバル能力”が減退してきているのは明らかだと思います。サバイバル生活をするためにありが島に行った人はよく“すごく感動する”と言うんですが、それは、“自分の家に着いた時に感動する”という意味なんですよ(笑)」
●ありが島に行った時ではなく、帰って来た時に感動するんですね(笑)。
「ありが島にいる時は“二度と嫌だ、こんなところ!”と思うんですが、自分の家に帰って来て電気を点けると“おお、明るいじゃん!”、トイレで“おお、流れるやん!”と思うんですね。いつでも電気が点いたりトイレが流れたり、コンセントを入れればいろんなことができたりと、その素晴らしさに感動するわけなんですね。今まで当たり前だと思っていたことに感動できると、今の幸せに感謝することができるんですね。ところがそれに気付かない人は“もっともっと!”“まだまだ!”と言って、さらに便利なものを求めてしまうんですよ。ありが島に1回でもキャンプしに来ると、十分なほどありがたみを感じるんですよ」
●ありが島から帰って来ても“ありがとう!”なんですね。
「ありが島は不便なだけなんですが、そういう意味では“ありがとう”なのかもしれませんね」
●そういった不便な環境が、私たちにいろいろなことを教えてくれたり、気付きにつながったりするんですね。
「何に気付くかというと、“いかに自分が文明や人の力を借りないと生きていけないか”ということなんです」
●ありが島では企業研修もされているということですが、そういったことも教えられているんですか?
「教えるというよりも、体験してもらうんですね。実際に上陸してもらって、どうやってそこで生き延びるかを体験してもらうんです。暑い、寒い、臭い、痛いといった状況を克服してもらって、みんなで力を合わせて食料を採って、暖を取って、最終的にイカダを作って隣の島まで漕いで出るんです。僕は特に教えたりはせずに、“下手くそだなぁ”とか思いながら遠目に見ているんですよ(笑)。本当に死にそうな時だけ“それはやったら死ぬからアカンよ”と言って止めますが、あとは見ているだけですね。つまり、皆さんに自分自身で気付いてもらうという研修をやっています。
この研修が評判なんですよ。普通の企業研修は部屋の中でやりますよね。“ラーニングピラミッド”というセオリーがあるらしいんですが、それによると部屋の中での講義だと5パーセントぐらいの人しか納得しないんですよ。ところが野外に出て体を使いながら自然の中で学んだり教えたりすると、95パーセントの人が納得できるんです」
●そんなに違うんですか!?
「僕がやっている研修は、まさにこのセオリーが当てはまるんです。この企業研修に参加すると、みんなと力を合わせていく“チームビルド”や、力を合わせる上で必要になるコミュニケーション能力、“生きるぞ!”というモチベーションなどがとても上がります。この研修は始めてから3年が経ちますが、参加している企業の中には、“以前は就職してもすぐに辞めてしまう人たちが多かったが、研修に参加して以降は、ほとんど辞める人がいなくなった”という企業もあるんです。そういう企業は、またリピーターとして来ていますね。なので、やはり効果はあるんだと思いますよ」
●これからの企業には、ありが島が必要ですね!
「ありが島で研修をしないで社員を育てようと思うのは、無理なんじゃないですかね(笑)。まあ、そんなことはないとしても、みんな全てのことを“わかったような気になっている”んだと思うんですよ。なので、“知っていること”と“できること”は違うということを、身をもって体験してもらったほうがいいと思うんです。地獄の特訓とかをするのではなく、日常生活の中で自分がいかに無力なのか、そして逆に、人と力を合わせるといかに気持ちがいいのか、または感動できるのか、ということを体験してもらうことが必要だなと思いますね。そこが今、一部の人に受けているんだと思います」
※ありが島には、清水さんの愛息、国太郎くんもよく遊びに行くそうです。国太郎くんは島ではどのように過ごしているのでしょうか?
「今やあいつはライバルで、いろんなことで僕が勝つんですが、(国太郎は)魚釣りに関しては“一度も負けたことはない!”って言うんですよ。昔は、僕の釣り竿に魚が引っかかった時に“ちょっと俺の釣竿を持っててくれ”と言ってあいつに渡すと“パパ、釣れたよ!”って言うんで、“おお、釣れたか! すごいな!”と言ったりしていたんですが、今では“マジであいつ、魚類なんじゃないかな”と思ってしまうほどで、例えば僕が1匹釣ると、あいつは3匹釣ってきたりするんですよ。釣りの天才ですね。
それから、都会にいる時は他の子と同じくテレビゲームをしているんですが、無人島に行くと1秒もゲームをしないんですよ。ゲーム機とかを自ら港に置いて行って、カニを捕まえたり魚を獲ったりして遊ぶんですよ。そういう効能はありますね」
●先ほど、ありが島は企業研修にいいという話がありましたが、子育てにもよさそうですね!
「そうなんですよ。子育てに一番必要な環境って何かというと、“何もない所”“何もないこと”なんですよね。なぜかというと、生きるエネルギーっていうのは“憧れ”なんですね。“こんなの欲しいなぁ”とか、“こういうのがあったらなぁ”“こんなところに行きたいなぁ”という憧れが芽生えるかどうかなんですよ。ところがこれがはじめから全部揃っていると“欲しいなぁ”“やりたいなぁ”“行きたいなぁ”という気持ちが起こらないじゃないですか。子供を成長させる原動力となる“憧れ”というのは、何もない自然の中でしか育まれない、ということが真理なんじゃないかと思っています」
●確かに私も子どもの頃、公園とかで遊んでいる時に、何もないと自分で工夫しておもちゃを作ったりとかしていました! でもはじめからおもちゃがあると、それで遊べばいいだけになってしまいますよね。
「僕も“あんなのが欲しいなぁ”とか、“あいつ、あんなの買ってもらったのかぁ。俺も欲しいなぁ”とか思って自分でチャンバラの剣を作ったりしていました。また、僕は村で育ったので、“夜でも明るい街に住んでみたいなぁ”と思い、だんだんと都会に近づいていったんですよね。そういう、“都会暮らしに憧れる”というのも憧れだし、ほかにも“有名になりたい”“お金持ちになりたい”などいろいろな憧れがあると思います。そういう憧れを育むには、何もない場所が一番いいんですよね。そういう意味では、大自然の中は子育てには最適なんじゃないですかね。長澤さんも旦那さんと2人でサバイバル生活をしたりして、そういうところで原点に帰って考えてみるのもいいんじゃないですか?」
●もし私にも子どもができたら、子育てで不安になるかもしれないので、その時は国明さんに相談させていただきます!
「もし僕に子どもを預けてもらっても、そのままほったらかしにしますけどね(笑)。でも、それがいいと思うんです。生き延びるための知恵っていうのは、人間の本能に結構インプットされているものなんですよ。それを気づかせるための環境が、今の時代にはないんですよね。その環境が、大自然の中にはあると僕は思っていますね」
※最後に、国明さんが夢中になっている“絵手紙”についてうかがっていきます。
「絵手紙はだいぶ前からやっているんですが、清水国明の絵手紙が脚光をあびる前に、片岡鶴太郎の絵手紙が有名になってしまったんですよ(苦笑)」
●ということは、国明さんの方が鶴太郎さんよりも先に絵手紙を始められていたんですか?
「そうなんですよ。だから、兄弟子と呼ばれてもいいんじゃないですかね(笑)。それは冗談としても、彼の絵手紙はすごいでしょ? そんな彼の後を追いかけているような感じになってしまうと思ったので、絵手紙を表立ってはやらずに、水面下で書き続けていました」
●国明さんの絵手紙を何枚か拝見させていただいたんですけど、自然のものをモチーフにしている絵手紙が多いのかなと思ったんですが、そういうことは意識されているんですか?
「そうですね。知らないと思いますが、私は昔、歌手だったんです(笑)。歌うことは、何かを伝えるための手段の一つですよね。しゃべることや、文章を書くこともそうですが、“絵”という手段でも何かを伝えたかったんです。
僕は、“おお、上手いね!”と言われるような絵は描けないんですけど、絵手紙というのは、下手でいいんです。むしろ、“下手がいい”んです。だから、僕はイチゴや柿などは“ヘタ”の部分から描くんですね(笑)。ヘタの部分から描くと輪郭が紙からはみ出してしまうんですよ。でもこの、はみ出すくらいバランスのわるい絵がいいんですよね。つまり絵手紙は、いかに作為的じゃなく、自然にヘタな絵になるかを目指す芸術なんですよ。これがおもしろいんです!」
●最近は何か描かれているんですか?
「描くための道具は揃っているので、例えばイチゴや柿をもらったりすると、“ありがとうございました”などを文章で書くよりも、絵を描いて“感謝”の文字を書くほうが僕は楽なんですね。中には、その絵手紙を送った人に“もらった絵手紙、額に入れて飾っていますよ!”と言われることもあるんで、“これはいいな”と思っているんです。そうやっていつも人に渡してしまうので、意外と描いた絵手紙は僕の手元には残っていないんですよ」
●現代はSNSが発達しているので、例えば絵文字で相手にすぐに送れるじゃないですか。でも、それよりも絵手紙を描くほうがいいのかもしれないですね。
「真心を伝えるためのツールとしては、絵手紙はいいかもしれないですね」
●私も手紙をもらうとすごく嬉しくなるんですが、こういう時代だからこそ、絵手紙などの需要が見直されているんじゃないかなと思います。
「そうですね。それと、文章を長々と書くと、その裏にある“嘘”や“本心じゃない部分”が透けて見えてくると思うんですよ。僕も文章を書いていると、“俺、こんなにいい人間じゃないな”と思ってしまうんですよね(笑)。でも、絵と一緒に“ありがとう!”とか“またね!”など一言だけ書くと、手紙をもらった人が僕の気持ちを想像してくれるんですよ。それが絵手紙のいいところだと思いますね」
●私も絵手紙に挑戦してみたいんですけど、コツは絵が下手でも気にせず思いのままに描くことでしょうか?
「そうですね。筆の持ち方でも、きれいに線を描こうと思って、筆を短く持って力を入れて描くよりも、筆の端を持って“ああ、そっちじゃない!”って言いながら描くほうがいいんですよ。その時は“ああ、なんて下手なんだ!”と思って描いた絵を放っておくんですが、しばらくしてからもう一度その絵を見ると、時間とともに絵がにじんでくることもあってか、不思議と“お、この絵ええやんか!”って思うんですよ(笑)。なので、上手に描こうと思ったり、人から“すごいね!”って言ってもらおうと思わないで描く絵がいいんだと思いますね」
※この他の清水国明さんのトークもご覧下さい。
何もない「不便さ」をモチベーションに変えて、便利にしていくプロセスを楽しむ。何でも楽しんでしまう清水さんの秘訣が、今回改めて解った気がしました。いつか私も子どもを連れて「ありが島」に行く日を今から楽しみにしています。
瀬戸内海の無人島「ありが島」でのサバイバルキャンプや企業研修について、詳しくはありが島のHPをご覧ください。
清水さんがプロデュースした人工のビーチ「タチヒビーチ」が東京の立川にオープン! 砂を大量に敷いたビーチで昼寝やビーチバレー、そしてBBQなどが楽しめます。立川で南の楽園を満喫しましょう!
◎期間:4月29日から
◎時間:朝10時から夜10時まで
◎場所:東京都立川市泉町935 多摩モノレール「立飛駅」前の広場
◎詳しい情報:タチヒビーチのHP