今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、岩沢幸矢(いわさわ・さつや)さんと平井大(ひらい・だい)さんです。
岩沢さんは1943年、東京生まれの74歳。茅ヶ崎育ちの岩沢さんは、兄弟デュオ「ブレッド&バター」で1969年にデビュー。現在までに41枚のシングルと30枚のアルバムを発表。美しいメロディとハーモニーは多くのファンを魅了している“湘南サウンド”のパイオニアなんです。さらに国内外の有名ミュージシャンとのつながりも広く、まさに日本のミュージック・シーンの礎を築いたレジェンドです。そして今月、19年ぶりのソロ・アルバム『マストの日時計』をリリースされました。
平井さんは1991年、東京生まれの26歳。ギターとサーフィンが趣味で、小さい頃から海に親しみ、3歳のときに祖母に買ってもらったウクレレがきっかけで音楽に興味をもったそうです。2013年にメジャー・デビュー。2016年に「ライフ・イズ・ビューティフル」がヒット。そして今月、1年ぶりのアルバム『ON THE ROAD』をリリース。サーフロック界の期待の若手として注目を集めています。
※まずは平井大さんにご登場いただきましょう。平井さんが海に行くようになったきっかけは何だったのでしょうか?
「僕の父がサーフィン大好きなんで、小っちゃい時からちょくちょく連れて行かれて、ハワイに行ったりももちろんしましたし、父が休みの日は僕も学校を休んで海に行ったりしていました(笑)」
●親子でサーフィンっていいですね!
「そうですね。夏になるとどうしても遊泳地区になるから、ボードをビーチに入れられないですよね。夕方5時から遊泳地区じゃなくなるから、それ以降はサーフィンができるんですけど、それまでの時間が僕はすごく楽しくて、家からウクレレやギターを持って行って、夕方5時まで親父とセッションして、それからサーフィンする、という休日でしたね」
●本当に小さい頃から海と音楽がセットといいますか、一緒に楽しんでいたんですね。
「それが僕の日常だったし、今でもそれは変わらないですね」
●実は私も何回かボディボードをやったことがあるんです。波待ちの時に、あまり波のないようなところにしか私はいけないんで、そうすると波に漂っている時間が長めになるんですが、波待ちの時間はサーフィンをやっている人ってどんなことを考ているんですか?
「波待ちがやっぱり一番気持ちいいんですよね。波に乗っちゃうと一瞬で終わっちゃうから、波を待っている時間がサーフィンの中では一番長いと思いますしね。波待ちの時は、何も考えないで“無”になっているのが一番いいと思います。海と一体となって“自分とは何だろう?”とか、瞑想に近い部分はありますね。友達と行ったらいろんな会話が生まれるんだろうけど、僕はそういうことが多いかな。波待ちに関わらず、海に行くとそういう時間が僕にはあるので、そういう意味も込めて、リセットできる感じですね」
●“無”かぁ~。私、いろいろ考えちゃうんですよね、“早く波来ないかなぁ”とか、“きょう、このあと何食べようかなぁ”とか(笑)。そういうことは考えずに、ひたすら自然を感じているんですね。
「そういう機会は都会とかに住んでいると多分全然ないから、いいきっかけだと思いますね。“自分と向き合う”っていうのは、なかなか難しいじゃないですか。時間に追われて、“仕事に行かなきゃいけない!”とか、“学校が始まる時間だ!”とか、そういうことが実はすごいストレスになっていると思うから、そういうのを一回全部“フリー”にするんです。
多分、ライヴをしている時の感覚と同じで、僕はライヴをしている時は何も考えていないんですよね。その音楽と一体となって、自分から出てくるものを表現しているわけですからね。それは波待ちの時間と結構似てるんじゃないかなと思いますね」
●あ~、なるほど!
「まぁ、ライヴ会場に波は来ないですけどね」
一同「(笑)」
※海に行った時に曲を作ったりはするのでしょうか。
「海に行った時は全然メロディも詞も浮かばないです。基本的に日常で曲を考えたりとかはしていないので、海に行った時とかも絶対に考えないですね(笑)」
●そうなんですか!? 平井さんの歌詞の中に“空”や“風”といったワードが多いので、“これはきっと自然の中で考えたり、自然にインスパイアされているのかな”と思っていたんですが、海にいる時はそうでもないんですね。
「そうですね。自然からインスピレーションはいっぱいもらっているんだろうけど、自然は自分を一回ゼロに戻す場所で、多分ゼロに戻したところからいろんなインスピレーションが湧いてくるから、逆に、何も考えない時間が僕にとってはすごく大事なんじゃないかなと思いますね」
●なるほど。今回リリースされたニュー・アルバム『ON THE ROAD』の中にも、そういった要素がたくさん含まれているんでしょうか?
「そうですね。これも本当に僕が日常で感じていることをメロディや歌詞にする、といった作業だったので、“何かデカいことをしたから曲が浮かんでくる”ということは、僕にはあまりないから、“マイペースに生きる”っていう自分の日常から、実は曲っていうのが生まれてくるんですね。今回はそれがもっと素直に表現された1枚になっているんじゃないかな、と思います」
●だからなんですかね。私も聴かせていただいたんですが、すごく楽に聴ける、リラックスできるようなナンバーが多いなと思いました。この番組でも、すごく壮大な自然なども取り上げるんですけど、実はその辺に生えている道草をクローズアップしたりもするんですよ。
「素敵ですね!」
●そういう、日常の身近にある自然もすごく素敵ですよね。
「そうだと思います。人間も自然の一部だし、地球の一部でもあるから、大事にしていかなきゃいけないと思いますね。地球を大事にするということは、自分を大事にするということにもつながるし、平和な世の中につながっていくと思います」
●そういった意味では、今回のアルバムに入っていて、タイトル曲にもなっている、「Story of Our Life」、これもひとりひとりの人生に注目したナンバーなんじゃないかなと思っているんですが、ぜひこの曲をご紹介いただいてもいいでしょうか?
「『Story of Our Life』は僕の人生などに焦点を置いた曲ですけど、今まで自分が音楽をやってこれたことや、いい時も悪い時も“愛”に支えられていたし、それは今後もずっとそうだと思うんですけど、それに対しての感謝の気持ちだったり、これからもそういうふうに歩んでいきたい、という思いをのせた一曲です」
●もしよければ、その曲を弾いて歌ってはいただけないでしょうか?
「All light! やってみましょう!」
※放送ではここで「Story of Our Life」の弾き語り!
※続いては、岩沢さんにご登場いただきます。岩沢さんにとって、海とはどんな存在なんでしょうか。
幸矢さん「家から5、6分のところに海があって、家の庭も砂場だったんで、砂と裸足の生活が多かったですよ。夏になると夜も海で遊びましたね」
●夜の海で、どんな遊びをするんですか?
幸矢さん「毛布を持って何人かの子どもたちと一緒に行って、特に月の綺麗な時とか、ほとんど裸の状態で海に入っていましたね。あの頃は夜光虫とかいっぱいいましたから、海水をガァーっと高く振り上げると、月に照らされて自分の体が光るんですね。まるでティンカーベルみたいな感じになるんですよ! 昼間の砂の温もりを、夜、枕にして寝ると、すごく気持ちよく眠れましたね。もっとも、その時はすでに、ものすごく疲れているんですけど(笑)」
●自然で遊ぶというよりも、一体化している感じですね! 幸矢さんの音楽は、その海からすごく影響を受けられたんじゃないですか?
幸矢さん「僕の親父が映画の監督をやっていたんです。だから意外とハイカラな感じだったんですよ。昔は、茅ヶ崎に別荘地があったんですね。僕の近所に加山雄三さんが住んでいたんですが、僕の家と加山さんの家は約1キロくらいでしたね。加山さんの家に行くと、道沿いからドラムやエレキギターの音が聴こえてくるんですよ。そこで音楽に出会ったんです。
あと、中学の先輩に尾崎紀世彦さんがいて、一緒の水泳部だったんですよ。県大会に出たりとかしていたんですけど、音楽の方が好きだったみたいで、僕の家にウクレレやボンゴとかを持って来て、まだみんなが音楽をやっていない時に、尾崎さんとはいろいろと楽しんでいましたね。そんな影響があって、なんとなく音楽を好きになっちゃったのかな、と思っています」
●茅ヶ崎は、そういう人が集まる町なんですかね。
幸矢さん「きっとハイカラで、別荘地帯だったから、“海の軽井沢”っていう感じの所だったんだと思います」
※続いて、岩沢さんのニュー・アルバムのタイトル・トラック「マストの日時計」がどうしてできたのか、岩沢さんの奥様、Mannaさんにお話をうかがいました。
Mannaさん「幸矢さんの茅ヶ崎の先輩に国重光煕さんという、ヨットマンの方がいらして、国重さんは1970年から3年かけて“ひねもす2世号”というヨットで世界を一周したんですが、その国重さんが『ひねもす航海記』という本を出されたんですね。3年間の記録が書かれているので、6センチくらいの厚い本なんですが、それを読むと不思議なことがいっぱい書かれていたんです」
幸矢さん「例えば、夜の海に光がバァーっと広がっていたことなどが書かれていて、“え、何それは!?”“宇宙船なんじゃないの?”などと思ったんですが、あんまり詳しく書かれてないんだよね」
Mannaさん「あんまりどころか、それが何だったかとかが全く書かれていないんですよ。また、国重さんは、人間みたいな形をした変な生き物に“にょろりくん”っていう名前をつけて飼っていたんですよ! だけど、それがその後どうなったのかも全然書かれていないんですよ。日誌ですから、次の日を読むと“玉ねぎに芽が出てきたから早く使って捨てなきゃ!”とか、食べ物のことばっかり書かれてもいました。そして、ふと読んでいる途中で、冷蔵庫もGPSもない旅だったということに気付いたんですね。“すごい冒険旅行だったんだな”ということがわかりました。
そんな“ひねもす号”が役目を終えて丘に上がる時に、国重さんに“マストだけは庭に飾るから見に来いよ!”と、幸矢さんと誘われたんですね。見に行くと、庭にマストが立っていたんですが、それを見て国重さんと話した時に、10秒くらいの短い会話の中で“これからはもう冒険はしないの?”と私が聞いたら、“晶(あきら=国重さんの奥さん)がいるからさ”と、すごく照れた感じでおっしゃって、それが私の心にひどく響いたんですね。
世の中にいる“冒険家”と呼ばれる方たちは、家族を持っても命をかけて冒険の道を選ぶ方ももちろんいますよね。私からみると、国重さんのように家族を選ぶことによって“冒険はしない”という決断がとても男らしい冒険のように思えたんです。“晶がいるからさ”と、ぽろっとおっしゃったのを聞いて、“あ、これはラブソングになるのかしら”と思って作ったのが、『マストの日時計』です」
●そうだったんですか! 実在する、モデルになった冒険家の方がいらっしゃって、その方の冒険、そして冒険が終わった後のストーリーも聞かれて、この曲ができたんですね。ちなみに、幸矢さんだったら、どうしますか? 今も奥さんが隣にいらっしゃいますが、冒険はもうやめますか?
幸矢さん「どうなんだろうなぁ(笑)。僕は男らしくないかもしれないから、冒険はまだずっと続けるかもわからないですね」
Mannaさん「どうぞどうぞ、冒険に旅立ってくださいよ! オーケーですよ!」
一同「(笑)」
※岩沢さんは裸足で自由に歩ける、綺麗で安全な海岸を子供たちへ、そんな思いで始めた“ベアフット(*)協会”の会長でもいらっしゃいます。どうしてその活動をしようと思われたのでしょうか。(*ベアフットとは裸足という意味)
幸矢さん「1981年に辻堂海岸で海岸清掃をやったんですよ。今ではビーチクリーンと呼ばれていますが、それは、以前にこの番組に出してもらいました、僕の娘のAisaが生まれた年だったことと、海がひどく汚れていたからなんです。
70年代の半ばくらいから経済成長の影響もあってか、本当に海がゴミだらけになっていたんです。 “こんな汚れた、泳ぎにくい海を子どもたちに残したくないな”っていう気持ちがあったので、“じゃあ、自分たちでビーチクリーンを始めようか!”“綺麗で安全な海を子どもたちに残そう!”という言葉をつくったんです。“綺麗になったら、その後は裸足になってそこで無料コンサートをやろう”“君の拾ったゴミと汗が入場料”ということで始めたんですね。それをずっとやっていくうちに、全国的に広がっていったんです。“ベアフット協会”っていう名前にしたのは、1998年でしたね」
●理事の顔ぶれがかなり多彩だということを聞いたのですが、どんな方がいらっしゃるんですか?
幸矢さん「名誉会長は加山雄三さんです。理事にテリー伊藤さんや南こうせつさん、野口健さん、夕陽評論家の油井昌由樹さんほか、ムッシュかまやつさんもいました」
●すごいですね! ところで海は綺麗になってきましたか?
幸矢さん「全国的にゴミを拾う人たちが増えてきていて、いろんな団体もあるので、綺麗になってきていると思います。僕たちは福島のほうにもずっとゴミを拾いに行っていて、福島にある四倉海岸には毎年行っていたんですけど、3.11の震災がものすごくショックで、海もだんだん綺麗になってきたし、別のことを考えようということで、今ベアフット協会では“Wish Flower 花に願いを、歌に思いを”という気持ちで、海に花を手向けるという運動をしています。福島のほうに向かってお祈りを捧げて、沖に出て花をまく、という運動です。これは茅ヶ崎から藤沢、鵠沼、葉山、逗子、千葉など、だんだんと広まってきています。毎年3月11日近くの土曜や日曜にやっています」
●“Wish Flower”に参加された方は、どんな感想をおっしゃっていますか。
幸矢さん「自分の家からお花を持ってきたり、地元のお花屋さんが提供してくださったりして、みんなでお祈りをし、そこでさらに歌を歌ったりするんですが、みんなとても気持ちのいい顔で帰って行かれますね」
Mannaさん「演出されているようなイベントではもちろんないんですが、海岸それぞれにやり方があって、例えば茅ヶ崎だとアウトリガーのチームが沖までお花を持って行ってくれるんです。鵠沼だとロングボーダーやサップの方たちがたくさん集まって、みんなで集めたお花を沖まで持って行って海に捧げていますね。葉山では、沖縄の古い船“サバニ”が、みんなが集めたお花を沖まで運んで、祈りとともに捧げているんです。意図して“そういう風にやりましょう”と言ったわけじゃないんですけど、それぞれの場所と参加する人たちの思いで、素敵なことが起きています」
●海はつながっているというか、そこでお花を手向けることによって、どこまでもつながっていけるような感じがしますね。
幸矢さん「そうですね。日本は海に囲まれている島国なんですけど、あの震災の後からは特に、子どもたちが海に行かなくなったりとか、子どもたちだけで海に行くのをとても嫌がっていますよね。もっともっと、母なる海を愛するというか、そういう風になっていくといいですね」
※この他の岩沢幸矢さんのトークもご覧下さい。
海と関係の深いおふたりのアーティストに「海と音楽」のお話をたっぷりとうかがっていくうちに、なんだか私も海に行きたくなっちゃいました!
80年代に湘南にあった伝説のライヴ・ハウス「リトルジョージ」へのオマージュ作品、昨年亡くなった名ギタリスト「松原正樹」さんの作品なども収録されています。
また、8月6日(日)には、ラドンナ原宿で昼・夜、2回のライヴもあります。
詳しい情報は、ブレッド&バターのオフィシャル・サイトをご覧ください。
日常から生まれた、「人生は旅だ」と感じる楽曲が全11曲収録されています。
また、平井さんは現在、全国ツアーをしており、夏フェスにも積極的に参加されています。
詳しい情報は、平井さんのオフィシャル・サイトをご覧ください。