今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、シンガー・ソングライターの東田(ひがしだ)トモヒロさんです。
東田さんは1972年、熊本県生まれ。2003年にメジャー・デビュー。旅とサーフィンとスノーボードをこよなく愛し、ふるさと熊本での、自然に寄り添った暮らしから紡ぎ出される音楽はファンから長く愛されています。去年、通算13作目になるアルバム『naturally』を発表。そして今年7月にミニ・アルバム『ひだまり』をリリースし、現在、積極的にライヴ活動を行なっています。また昨年、ふるさと熊本が地震の被害にあった時には、熊本地震復興プロジェクト「ハレルヤ熊本」を立ち上げました。
そんな東田さんは、ご家族と一緒にお米や作物を育て、その恵みをいただきながらナチュナルな生活を送ってらっしゃいます。今回は、そんな熊本での暮らしぶりや復興支援活動のお話などうかがいます。
※まずは、東田さんが立ち上げた熊本地震復興プロジェクト「ハレルヤ熊本」がどんな活動をしているのかを聞いてみましょう。
「“益城町”っていう一番被災が大きかった町があって、そこに“皆乗寺(かいじょうじ)”というお寺があるんですけど、今回はそこで春にライブをやったんですよ。そこには、この秋にとり壊される本堂があって、その本堂をステージにしてライブをやったんですね。そしてライブが終わった後、住職の粟津(あわず)さんが泣きながら、歯を食いしばりながら“この本堂はとり壊しになるんですけど、10年後か20年後かわからないんですけど、また建て直したいんです”っていうふうにおっしゃっていたんですね。だから“ハレルヤでもなにかできることはないかなぁ”と思って、集まった募金を寄付させてもらったんですけど、また、そこに少しだけでも寄付できたらなぁ、と思っています。
それともう一箇所ね、“大豆トラスト”っていうプロジェクトを、僕の仲間が“南阿蘇村”というところでやっていて、どういうものかというと、地震で地形が変わって、たぶん断層がずれたんだと思いますが、以前までたくさん水が出ていた場所に、水が出なくなっちゃったんです。その水を利用して水田をやってらっしゃった農家さんが何軒もあったんですけど、水田ができなくなっちゃったから、代わりに大豆を植えてもらって、水田に見合う量ではないんだけど、“水田だったらこの区画はこのぐらいの金額”というように、その大豆の一部を僕らが買って支援する、というプロジェクトをやっているんですね。それに今年も参加します。
去年はね、そこで収穫された10万円分の大豆を買ったの。もうひとつ僕がやっているプロジェクトがあって、福島県の南相馬に、よつば保育園という保育園があるんですけど、そこには九州から季節の野菜や果物を送っているんですよ。なので、その保育園に買った大豆を送ったんですね。だから今年も南阿蘇村でいくらかの大豆をハレルヤ熊本で買って、“南”つながりですが(笑)、その収穫された大豆を南相馬にある、よつば保育園に送って、味噌とかワークショップをやって使ってもらおうかな、というふうに思っていますね」
●ああ、いいですね。両方ハッピーですね!
「そう! 両方ハッピーになれるんで“これはいい流れだな”と思いましたね。ナイスプレーだと思ったので、今年もやろうと思っています。なので、今年の秋は皆乗寺の支援と、大豆トラストをやりたいなと思っています。もうほんのちょっとですよ、僕のところに集まる募金は。でもね、みんなの気持ちがすごいあったかいんですよね」
●そういった活動は、改めて熊本を考えるきっかけにもなるんじゃないかなと思います。そして、東田さんは7月5日に新曲を出されたんですよね。どんな曲なのか教えていただけますか。
「『ひだまり』っていうタイトルの曲なんですけど、最初に作った時は、“あ、自分がこんな感じの歌を作るんだ”と思いながら、ひたすらメロディと歌詞をノートに書き留めつつ、録音していって、“あ、こんな歌ができたんだなぁ”という感じの、自分でも驚きの一曲だったんですね。東日本大震災があって、自分も熊本で地震というのを経験して、また、長崎のある集落とも出会ったんですが、この3箇所にはそれぞれのふるさとがあるわけじゃないですか。その情景が胸によぎって書いた曲ですね。なんとなく、“この歌をうたうことで、この地震という大きな出来事をひとつ、乗り越えたいな”というふうに思った、そんな曲ですね」
●では、ここでリスナーの方に、その曲をさっそく聴いていただきたいんですが、もしよろしければここで演奏していただいてもいいでしょうか?
「もちろん、喜んで! ちょうど旅に持ち歩いているギターがあるので、それで演奏します」
●よろしくお願いします!
「こちらこそ!」
※放送ではここで、新曲「ひだまり」の弾き語り!
●いやぁ、東田さん、私この曲を聴いて、なんだかちょっと涙が出そうな、そんな感じでじ〜んとしちゃいました。小さい頃におじいちゃんと行った田舎町の情景が浮かんできたなぁ。でも、今は行けなくなっちゃったんで、懐かしいなぁ。
「そうなんだね」
●このCDの売り上げの10パーセントを、ある場所に寄付されるんですよね。
「そう、これね、パタゴニア(*)を通じて、長崎の川原(こうばる)っていう、さっきちらっと話した、長崎のある集落のことなんですけど、そこに寄付するんです。
そこは今まさに、ダムに沈むかもしれないと言われている場所で、ただそれは60年前ぐらいに立ち上がった計画なんです。なので今、そのダムを造ったとして、現代の長崎の、そこの生活にフィットするのかどうかということを、もう一回考え直してもいいんじゃないかなとみんな思っていて、そこで問題提起をしているんですね。僕も確かに、豊かな自然を壊してまで何か新しいものをつくる時は、この現代では、もう一回みんなでディスカッションして、本当に必要かどうかを考えたほうがいいと思うんですね。それが子どもたちに、またその次の子どもたちにとって本当に大事なものかっていうのを話し合ってもいいんじゃないかなって思っていて、“話し合うための場づくり”を一生懸命やっているんです。そこに10パーセント、ミニ・アルバム『ひだまり』の売り上げを寄付します」
*パタゴニア(Patagonia)は、アメリカのアウトドア・アパレル・ブランド。自然環境の保護活動にも熱心。
●なるほど。確かにライフスタイルが変わっていく中で、いろいろと必要なものと不必要なものが変わってきているような、そんな感じがありますよね。
「そうだね」
●川原とは、どんなところなんですか?
「もう、本当に静かな、小さな村なんですよね。13世帯、53人ぐらいの方々が暮らしていて。(ダムの建設予定地は)僕も驚いたんだけど、本当に小さな、綺麗な小川なのね。“え!? ここにダム造れるんだ!”っていうぐらい小さな川で、まずそこに驚いたんですよね。
あとホタルがね、長崎で一番集まってくるというか、乱舞する村なんですよ。緑もすっごい豊かなところなんですよね。こんな大事なところだから、やっぱり自然を残したい。生き物たちもたくさんいて、生物の多様性というのも、今は特に訴えられているこの時代ですしね。自分たちの暮らしもだけど、“自然を守りたい!”と言って、彼らは頑張っているんですね。すごいところですよ」
●東田さんはどうしてその場所と出会ったんですか?
「小林武史さんという、ミュージシャンの先輩がいて、あの人はダイビングがすごい好きなんですね。そして海が好きなんです。僕はサーフィンが大好きで、千葉にも何回も通ってるんですけど(笑)。彼もまさに、僕が話したことを言っていて、“やっぱりこれからは自然を残していかなきゃダメだよ”っていうのを訴えていたんです。それで、地震のあとに連絡があって、一緒に川原に行ったんですよ。それで“できることをやろう”となって去年、この村でフェスをやったんです、村の田んぼで!」
●田んぼで!?
「そう! そこに友だちのミュージシャンを呼んで、小林さんと僕と、あとCaravanっていう仲間と、Salyuっていう女性シンガーと、BRAHMANというバンドからTOSHI-LOWという、これも古い友だちなんですけど、みんなでそこで一夜限りの幻のフェスをやったんですね。フェスは素晴らしかったんですよね。小さい田んぼに700人ぐらいの人が集まってくれて、素晴らしい一夜だったんだけど、“継続するためにどうしよう?”と考えたアイデアが(収益の)10パーセントをパタゴニアに寄付するという、そこに繋がってくるんですね。だから、きっかけをくれたのは小林武史さんだったなぁ」
●いいですね、田んぼフェス!
「最後ね、みんなでステージに上がってセッションして、小林さんがどうしてもやりたいっていう曲で、僕も大好きな曲なんですけど、ビートルズの『ACROSS THE UNIVERSE』っていう、ジョン・レノンが書いた曲をみんなで歌ったんですよね。
もしかしたらうまくいかないかもしれないけど、“やることを最後までやる”っていうのが自分の流儀なので、それを貫きたいなと思っています」
※東田さんといえば、サーフィン! そこで、東田さんに千葉でお気に入りのサーフスポットを教えてもらいました。
●千葉はどのあたりによくサーフィンに行かれるんですか?
「すっごい好きな“マリブ”っていうポイントがあってね。あれは勝浦かな? そこにあるんですよ」
●千葉の波はどうですか?
「千葉の波は最高っすね! 部原(へばら)っていう場所があって、そこの波もすごく好きなんですけど、なんかあの界隈は、いると落ち着くんですよね。懐かしい感じがするし、みんながそれぞれのサーフポイントを昔から守っていて、誇りに思っていて…。秋になると素晴らしい波が現れるんです。僕は今年も友だちと部原でサーフキャンプやって、ライブのことも忘れてしばらく千葉に滞在しようかなと思っています」
●千葉の自然というのは、どうですか?
「海も山も本当に美しいし、九州にはない雰囲気があって、特に南房総は島に来たような感覚になるというか。あそこは半島になっていて(太平洋に)突き出ているから、ちょっと空気感が変わっていくんですよね。御宿から南、鴨川、館山。あの辺もすごく好きなんですよね。白砂になっていって、海もまた少し北の方とは変わっていて、クリアになっていくんですよね。あの感じがいいですね。すごく好き」
●世界中の海をまわっている東田さんに千葉の海がいいと言ってもらえると、すごく嬉しい(笑)!
「千葉は抜群ですよね。人柄も素晴らしい」
●みなさん、優しいですか?
「優しいですね」
●今度、千葉でもオリンピックがありますしね!
「そうですね。(サーフィンも)オリンピックの種目になって、千葉もその舞台のひとつになるみたいだから、盛り上がるでしょうね!」
●どうですか、東田さん?
「いや(笑)、応援はするけど、僕は人と競い合うのは苦手なんで、ワイワイとエンジョイ・サーフィンを続けていこうかなと思っています(笑)」
●じゃあ、これからも旅とサーフィンを継続されるんですね。
「そうですね。音楽とサーフィンっていうのは、本当にシンクロする部分が多いんですね。すごいシンプルなんですよ。ギター1本でステージに上がるのと、サーフボードひとつ持って海に入っていくのは感覚が似ているんですね。流れを観ながら一番楽しいところ、一番気持ちのいいところにトライしていく。あとは流れに任せていくというのがすごく似ていて、最近はより深くそこを追求していきたいなと思うようになっていますね」
※それでは最後に、地元の熊本で始めたというお米づくりについてうかがいましょう。一体いつ頃からやっているのでしょうか。
「今年で5年目だと思うんだけど、僕の家族と、あとちょうど歳が同じくらいの子どもたちをもっている家族の、4家族でやっているんですね。“一反(いったん)”ってどれくらいかわかります? 四角いおっきい田んぼが一反だとして、毎年、一反ちょいぐらいを手植えして、手刈りするんですね。それで“掛け干し”って言って、竹を組んで2週間ぐらい(稲を)干して乾燥させるんですね。それが今年で5年目なんです。
すごくうまくいく時もあれば、あんまり獲れないっていう時もあるんだけど。でもね、自分たちで手をかけて、収穫したお米を食べる、新米を食べるという時は、その喜びはひとしおですね。だって、40年間お米と触れ合って来たのに、“お米ってどうやって作るの?”。田んぼも飽きるほど見て来たはずなのに、“どうやって作るんだろう? ましてや、手作業でやったらどうなるんだろう?”っていうのを知ったのが、つい最近なんです。
それで、楽しいんですよね、土と触れ合うっていうのは。そしてなによりも、自分のこどもたちに経験させてあげたくて、田植えの時なんかも子どもたちは水着で来るんだけど、最終的に裸ん坊で田んぼに飛び込んだりするんですね。田植えを経験して初めて知ったんですけど、田植えで子どもたちが全裸でたくさんの泥の中の微生物と触れ合うことで、いろいろな菌を取り入れて、それで免疫力を高めるんだって! それで1年間風邪を引かないんだって!」
●そうなんですか!?
「そう! みんなね、殺菌しすぎ(笑)。殺菌しすぎて自分の免疫力が落ちるから、免疫力を高めるサプリが必要になって、どんどんお金が必要になったりしていますけど、そうじゃなくて、自然と触れ合うことによって免疫力を高めて、余計なものを購入しないで元気に生きていくっていう、そういう時代にどんどんシフトしていかないと、子どもたちがかわいそうだよね。大変だよ、そんなの」
●だから昔の子どもって風邪をひかなかったんですね(笑)!
「そうなんだよね(笑)!」
●いましたよね! ずっと1年中、半袖短パンなのに全然風邪を引かない男の子とか!
「だから、なるべく裸足で土の上に立つ時間とか、裸で海に飛び込む時間を自分に持たせるようにしていますね」
●なるほどねぇ。
「そうそう、すごい大事なことなの。やっぱり、自然から切り離された人間は、心も体もダメになっちゃうと思うんだよね。だから、自然と共に生きていくっていうことを絶対に辞めちゃダメなんだよね。だって考えてみたら、お金を持っている成功した人たちって、最終的に何をしたいかっていうと、自然を買い漁るんだよね。リゾートを買い漁るじゃん」
●確かに。
「自然との触れ合いを求めていくの。だったら最初から自然と共に、自然を壊さずに、自然と生きていく。それが一番ナチュラルな暮らしだと思うから、みんなでそういう空間をシェアしていくような地球になって欲しいなと、僕は願っているんですけどね」
●私もその意見、賛成です!
「よかった。でもね、いきなりじゃなくても、徐々に、現代的なやり方でスタイリッシュにやれていけたら、心を病む人が減っていくんじゃないかなというふうに思っているんだけれど、どうなんだろう」
●そう思いますよ! 今は“キャンプに行くぞ!”って思って行く人が多い気がします。
「それもいいと思いますよ!」
●それだけでもリフレッシュするから、それがもっと自然にできたら、もっと普段の生活からよくなっていくんじゃないかなと思います。
では最後にもう一曲、お願いしてもよろしいでしょうか?
「いいんですか! じゃあ、せっかくだからもう一曲、自分が大好きな曲を演奏したいなと思います。ビートルズのナンバーなんですけど、『blackbird』っていう曲を演奏します」
※放送では、『blackbird』のカヴァーを弾き語りで披露してくださいました!
※この他の東田トモヒロさんのトークもご覧下さい。
「人間は自然とは切り離せない、共に生きていかなければならない」
そんな風に東田さんおしゃっていましたが、ご自身もお米を手作業で作ったりと、まさに自然と寄り添った生活をされていて、その姿に改めて自然と共に暮らす素晴らしさを感じました。
今回、スタジオで歌ってくださったタイトル曲を含め、4曲収録。東田さんらしい温もりのある楽曲ばかりです! 大手通販サイトから購入できます。
そして、ライヴもありますよ!
9月23日(土)は千葉県・一宮町のワンワールド・サーフショップ。
9月25日(月)に東京・恵比寿のジョリーズ・リカーストア・サウンドスタジオ。
9月30日(土)には東京・西馬込のブルーヌードスタジオ。
ぜひお出かけください。
自然保護や復興支援の活動含め、詳しくは東田さんのオフィシャル・サイトをご覧ください。