2018年2月17日

生き物に学ぶ、“強さ”の多様性

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、現役女子大生の学生作家・篠原かをりさんです。

 子供の頃から昆虫が大好きだった篠原さんは現在、慶應大学・環境学部に在籍。研究テーマは、昆虫タンパク。家ではスズムシに、イモリ、ウーパールーパーなど、昆虫から小動物まで約450種を飼育しているそうです。ただ生き物が好きなだだけでなく、生物模試の偏差値はなんと105!その百科事典並みの知識で、今クイズ番組でも大活躍なんです!
 そんな篠原さんが、先ごろ『サバイブ 強くなければ、生き残れない』という本を出されました。この本は、サバイブという切り口で書き下ろした、漫画で読めるビジネス本。篠原さんの、生き物の膨大な知識が活かされています。今回はそんな篠原さんの、昆虫から哺乳類、類人猿、そして人間までの、生物に関する膨大な知識に迫ります!

ブランド品より昆虫!

※篠原さんは小さい頃から生き物大好き!! クリスマスプレゼントは、おもちゃではなく、“ある物”だったそうです。

「家族がそんなに虫が嫌いじゃなくて、昆虫採集に連れて行ってくれたりとかしたんですね。私が“ダンゴムシが好き!”って言ったら、おばあちゃんがダンゴムシを集めてくれたりとか、ということもありました。図鑑をもらったこともありますね! 自分のお小遣いで買えないような、かなり高い図鑑を買ってもらって喜んでいましたね」

●そういう図鑑をみて、“こういう生き物がいるんだ”と知っていったわけですね。

「そうですね、“いつか、こういう生き物を飼いたい!”と思いながら見ていました」

●(笑)。女性がファッション誌を見て“こんな洋服が欲しいなぁ”って思うような感覚で見ていたんですか?

「“この虫が手に入れば……!”っていう思いで過ごしていましたね」

●じゃあ、すごいいいブランド品とか、美味しい物をもらうよりも、昆虫をもらうほうが嬉しいんですか?

「絶対に虫のほうが嬉しいですね!」

●なんで虫に惹かれるか、自分ではどう思っています?

「虫って寿命が短いので、生き残るための最低限の機能しかないんですね。多分人間だったら、よりよく生きるために妬みや嫉みとか、逆に憧れや楽しい、苦しいといった感情がありますが、虫にはそれが一切なくて、そのストイックさというか、シンプルさがありつつ、でもそれなりに、例えば、出会いの少ない虫のオスだと、交尾した瞬間に死ぬとか、もう生涯が全力っていうところに惹かれますね。
 あと、例えばコノハムシっていうナナフシの仲間がいるんですが、その虫は葉っぱに似ているカマキリのような姿なんですね。葉っぱを食べる虫で、たいして思考能力もないんですが、葉っぱを自分の姿に似た形に切り取って食べるんですよ。そうすることによって、自分の姿に似た葉っぱが増えて、天敵から狙われる確率を下げているんですね。そんなこと、考えないとできないはずなのに、よくそんな上手いこと、その生態にたどり着いたなというところが、感心しちゃいますね。好きですね」

●なるほどね〜。本能でやっているような、生き様みたいなところが好きなんですね。機能的なところも好きだと言っていましたが、それはどんなところですか?

「例えば、砂漠に住む虫で、水分がない中で、霧の中で逆立ちして(水滴を)自分の体を伝わせることで、自分の口に水分が流れ込むような生態を持っている虫がいるんですね。普通なら、砂漠に住むっていうことを諦めるのに、その小さな虫が砂漠に住んで命を次につないでいっている。そんな“機能が勝っている”ところが好きですね」

●あと、虫って美しいですよね。タマムシとか、人間が出せないような色をしている昆虫って結構、いるじゃないですか。

「そうですね、例えば車の色とかにもモルフォ蝶の構造色っていうのが使われていたりしていますね。でも、タマムシのようにピカピカしている虫っていうのも、虫の目から見ると光を反射して、敵から見つからないようにキラキラしているんですよ。人間から見ると逆に(目立って)見えるんですけれど。“それであんなに美しくなるんだぁ……”って思いますよね。私は結構、キラキラした虫が好きなので、宝石とかも綺麗だけど、それよりも虫の微妙な色合いの違いがいいんだよな〜、って思うことはありますね」

●人工的な美しさと、自然の美しさの差って何なんでしょうね? やっぱり、生きるためにできた色だからですかね?

「作り出せるものじゃないですね。人間は多分、自然界のものを見て、自然界からなんとか色を抽出して作っているので、自然界のごく一部の色しか再現できていないんですけれど、まだ人間が再現できていない色がたくさんあるっていうことなんだと思います」

青いクワガタ!?

※自宅で約450種以上の昆虫や小動物を飼っている篠原さん。実は、青いクワガタも飼っているそうです。

「クワガタだと累代飼育という、例えば、オオクワガタだと大きいものを掛け合わせて、さらに大きいものをつくり、どんどん子孫を強くしていくというゲーム性もあるんですけれど、私が好きなのはイロムシと呼ばれる、色が綺麗なクワガタですね。
 例えば、パプアキンイロクワガタだと、基本は緑っぽい感じのものが多いんですけれど、たまに真っ青だったり赤かったり真っ黒だったりと、珍しい色がでてくるんですね。その瞬間に“おお、これは!?”って思うことはありますね」

●なんでそんな珍しい色がでてくるんですか?

「遺伝子の表現によっていろいろと色合いが変わってきて、足だけ青っぽいクワガタから、青の遺伝子が上手くくっついて、真っ青なクワガタが生まれたりするんですね。まさに高校で習ったような遺伝の勉強を実践している感じで楽しいですね」

●真っ青なクワガタって、見てみたいですね〜。

「本当に綺麗ですね」

●なんとなく先入観で、“クワガタは黒いもの”って思っているから、びっくりしちゃいそうです。

「南国のクワガタとかだと、逆に黒色が少ないくらいで、オウゴンオニクワガタのような真っ金とか、あとはオレンジや緑、紫などいろいろいますね。黒いのは日本のクワガタくらいですね」

●そうなんですね! じゃあ、私たちが知らない昆虫や昆虫の色はまだまだたくさんあるんですね。

「逆に真っ白いコガネムシとかもいて、マレーシアとかにいるんですけれど、ペンキで塗ったような白なんですよ。よく白いコガネムシのアクセサリーを付けていたんですけれど、そしたら“コガネムシを捕まえて塗ったの?”って聞かれましたね。そのぐらい白いです」

●そういった海外の昆虫とかも見たり勉強されたりしているんですか?

「どっちかというと、海外のクワガタを飼うことのほうが多いですね。でも、現地に行かないとなかなか生きている姿は見られないんですね。日本に持ち込めないということもあるので、いつかは見に行きたいな、っていう虫はたくさんいますね」

●昆虫とか自然の生き物って、結構私たちの生活に役に立っているというか、切っても切り離せないですよね。

「先ほどの車の色などの美術面でもそうですし、あと、今は蚕の研究がホットなんですけれど、その蚕でいうと、桑の葉って血糖値を下げるんですけれど、桑の葉を食べた蚕の血液中の物質の方が、さらに血糖値を下げる働きがあるんですね。なので、糖尿病などの病気に役に立つんじゃないかという研究が進められていますね。
 あと、モンシロチョウからガンの研究が進められていたりします。私たちの身近にある病気を昆虫由来の成分で治そうとか、また昆虫の脳から今まで倒せなかった菌の抗生物質が発見されたりもしています。昆虫じゃないんですけれど、最近発見されたクモはバク転で移動するんですけれど、それが火星探査のロボットに使われたりと、さまざまな利用方法がされていますね」

●そういうお話を聞いたり研究をされていたりとかすると、今まで育ててきた時とは違う、昆虫に対する見方とかは変わったりしました?

「今までは私の支配下におけると思っていたんですけれど、“これは侮れないな”と思いました。いつか昆虫に助けてもらう瞬間がくるな、と思っています」

牧場を営むアリ!?

※篠原さんの新刊『サバイブ 強くなければ、生き残れない』は、生き物たちから生き抜くための「強さ」を学ぶビジネス書。一口に「強さ」と言っても、力強さだけではない様々な強さが登場します。「圧倒的なスピード」「ずる賢さ」「何があっても動じない心」などなど。そんな中でも気になった強さが「求めない」! 一体どんな強さなんでしょうか?

「争いって、よりよく生きようとか、たくさんご飯を食べようとか、たくさん縄張りが欲しいなどの理由で起きるんだと思うんですね。争いに勝てばいいけれど、負けたら全部失うものだと思うんです。中にはエサをほとんど食べなくていい動物とか、自分たちの自給自足だけで生きる動物とかもいて、求めなければ、同じ種類どうしの争いを完全に避けることができる、という点ですごくいいなと思いますね」

●ハキリアリのエピソードを、著書のなかで紹介されていますよね。

「ハキリアリっていうのは、日本だと上野動物園とかで見ることができるアリの仲間で、アリといっても侮れなくて、名前の通り葉っぱを切るんですけれど、その葉っぱを食べるのかというとそうではなくて、切った葉っぱを持ち帰って、巣の中でその葉っぱを農場代わりにしてキノコを育てて、そのキノコを食べて成長するアリなんですね。
 そのキノコもどこかから持ってくるというよりは、そのアリの巣の中にしか存在しないキノコで、その巣の中以外では生きられないキノコなんです。だから、それだけでひとつの生態系を守って暮らしているんです。アリは職業が細分化されているんですけれど、葉っぱを切ってくる役や兵隊役など、とりわけ自分の職業に特化しているんですね。それと、農場だけじゃなくて牧場も営んでいるんです」

●ええ!?

「アリって、アブラムシなどの甘い蜜を出す生き物を巣の中で育てて、その虫にエサをあげる代わりに甘い蜜をもらうんですね。蜜がありキノコもあるんで、完全に豊かな暮らしが自分たちの生活圏の中だけで完結されているんです。
 それだけさまざまな仕事があるからこそ、仕事の分業化も進んでいるんですね。生まれた時に自分がどの仕事に就くかっていうことが、体の大きさで変わってくるんですが、兵隊用の大きなアリもいれば、葉っぱの上に乗って葉っぱをトリミングする役目のアリもいたりと、上手く生きているんですよね。
 アリの中には、どこかの巣を襲って、その巣の中のアリの卵をいっぱい持ってくるような凶暴なアリもいるんですけれど、ハキリアリは一切争いではなく、ただ完結した世界で生きているんですね。それもひとつの強さで、逆に最後まで残るのはそういう生き物なのかな、と思いますね」

●求めずに、自分の仕事を淡々とこなす。総合商社のように、いろんな業種があるんですね! 最近、この番組は縄文時代に興味を持っているんですけれど、そのお話を聞いて、なんとなく縄文時代の暮らしに似ているのかな、とも思いました(笑)。

「でも、縄文時代よりもちょっと進んでいるかもしれないですね。縄文時代だと採集と狩猟だけだったのが、弥生時代から始まった“農耕”の段階までハキリアリは進んでいるので、人間を超えている瞬間もあるぐらいの、すごいアリですね」

●なるほど! ちょっと縄文人はハキリアリに負けちゃいましたけど(笑)、そんなにすごいんですね!

「しかも特に、誰が勝ちとかがないので、そういった争いもなく、自分の仕事をこなしさえすれば自分が満足いく食料をもらえる、“満たされているがゆえの世界”っていう感じですね」

●なんだか、学ぶことは多そうですね。あと、著書のなかにもあった、ボノボとチンパンジーのお話が本当に面白かったです!

「ボノボとチンパンジーは、遺伝子的には一番人間に近い動物で、チンパンジーはよく見ますが、ボノボは見た目はほとんど一緒で、ちょっとチンパンジーより小っちゃいくらいなので、素人にはほとんど見分けがつかないですね。
 人間の持っているような凶暴性を持ったのがチンパンジーで、コミュニケーションで解決できるのがボノボ、そしてその先に人間がいるので、(そういう意味では)一番参考にしやすいかなと思いますね。
 チンパンジーはものすごく争いが多くて、チンパンジー同士でもいじめはあるし、ただのケンカで殺しちゃうこともあるんで、かなり(力の)強い動物なんですね。でも、ボノボは全く争わないんですよね。争いになりかけてカチンと頭にくることも多分あると思うんですけど、そうなった時はオス同士でもメス同士でも子供同士でも、交尾の真似事をして解決するんです。そうすれば怒りが収まるようなんですよ」

●イチャイチャすればすぐ仲直りするって、ケンカしたカップルみたいですね(笑)。

「どうしてここまで(性格が)別れたかっていうと、チンパンジーとボノボは本当に近い動物なんですけど、チンパンジーはエサが少ない地域に残ったので、だから肉食に近い雑食なんですね。逆にボノボはほとんど草食で、果物とかを食べるんですね。そういった豊かな地域に残ったので、コミュニケーションをとって解決できるようになったんです。
 あと、ボノボはよく笑ったりと知能がとても高くて、人間の言葉を何十、何百って理解して、“こういう場合にはこの言葉を使う”っていうのを学習したボノボもいるんですよ。“パックマン”っていうゲームがあるじゃないですか。そのゲームをただ操作するだけだと、できる動物っているんですけど、あれを完全にルールを理解してやりこなせる動物はボノボだけらしいですね。私もできなかったんで、完全にボノボに負けてるんですけど(笑)」

人間の“強さ”とは?

※では、私たち人間には、どんな「強さ」があるんでしょうか。

「人間は寿命が長いんですが、特に歳をとった後の寿命が長いっていうのが特徴で、一部、シャチとかもいるんですけど、シャチも歳をとった後に長く生きられるので、その分、仲間にその知恵を授けることで、仲間の生存率が上げたりしているんですね。
 人間も歳をとったからこそ、“あの時、ああしておけばよかったな”って思う時があるわけじゃないですか。でも、動物って本来、“ああしておけばよかったな”って思った瞬間にはもう死んでいるんですね。それを人間は長く記憶を蓄積して、他の人間が気づいたこととかも知識として得ることができるので、すごく進化しやすいんです。
 他の動物だとなかなかコミュニケーションによる知識の蓄積が難しかったので、上手くいった個体がどこまでいけるか、で終わっていたんです。なので“反省を活かせる”っていうところが人間の“強さ”ですね。人類の反省も自分の反省も、活かす時間が残っているということと、活かす記憶力があるというところが、一番の強みですね」

●やり直しができる。有り難いですね!

「他の動物だったら失敗したら“あ〜、やっちゃったな”で終わっているところを、何度でもやり直せるっていうのは、やっぱり強いですね」

●もうひとつ、“周りの環境を変えることができる”ということも著書のなかで書かれていましたよね。

「ビーバーが人間の他に唯一、周りの環境を変えることができるんですが、他の動物も巣とかは作ることができても、環境自体を変えていくっていうのはなかなか難しいんですね。それが人間は家単位じゃなくて、街をつくったりもしますよね。人間関係にしても、周りを変えていっていますしね。自分以外の他を認識する能力がすごく高いので、自分と他人を認識して、より住みやすいように変えていっているんです。人間にしてもビーバーにしても、いい影響を及ぼすこともあれば、悪い影響を及ぼすこともあるんですけど、上手くいけば地球単位で変えられるので、強い力だなと思いますね」

●普通は与えられた環境で、自分がそれに適応していくしかないわけですもんね。いいほうに使えるといいですよね。では最後に、篠原さん自身を昆虫に例えるとしたら、どんな昆虫ですか?

「フンコロガシだと思いますね」

●フンコロガシ!? どんなところですか?

「結構コツコツ型で、みんながそんなに好きじゃないものを一番好きで、集めて、しっかり自分の食いぶちを稼ぐために糞を転がしてっていうところで、フンコロガシに似ているかなと思いますね」

●でも、糞ですよ?

「でも、フンコロガシにとっては宝物なので、誰からどう言われようと自分が好きだと思う宝物を大事にできるような人間になりたいなと思って、フンコロガシかなと思います」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 自然界にはいろいろな強さがあるんですね。でも、考えてみれば私たちにもさまざまな強さが眠っているのかも。周りから見れば一見、強さにみえなくても、それを活かすことでサバイブ! 出来そうですね。

INFORMATION

『サバイブ 強くなければ、生き残れない』

サバイブ 強くなければ、生き残れない

 ダイヤモンド社 / 税込価格 各1,350円

 サバイブという切り口で書き下ろした、漫画で読めるビジネス本です! 「負けない」「あきらめない」「争わない」など、チャプター別に漫画と解説と豆知識で構成されています。篠原さんの、生き物の膨大な知識にきっとびっくりしますよ! 詳しくはダイヤモンド社のHPをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「(MEET) THE FLINTSTONES / THE B-52's」

M1. LADY MADONNA / THE BEATLES

M2. BLUE AIN'T YOUR COLOR / KEITH URBAN

M3. YOUR BODY IS A WONDERLAND / JOHN MAYER

M4. SURVIVOR / DESTINY'S CHILD

M5. MONKEY MAN / AMY WINEHOUSE

M6. 小さな生き物 / スピッツ

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」