今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、動物ツアーガイド・松井淳(まつい・あつし)」さんです。
松井さんは1973年生まれ。千葉大学を卒業。習志野市にある谷津干潟自然観察センターなどに勤務された後、オーストラリアへ移住。現在はケアンズを拠点に、動物ツアーガイドとして活躍されています。そして先ごろ、『オーストラリア ケアンズ探鳥図鑑』を出されました。
今回はそんな松井さんに、色鮮やかな野生のインコなど、野鳥の楽園ケアンズで見られる鳥のお話などうかがいます。
※谷津干潟自然観察センターでは野鳥のガイドをされていた松井さん。なぜオーストラリアに移住することになったのでしょうか。
「そうですね、あそこがオープンした年ぐらいから関わっていて、その後3年ぐらいいましたね」
●そんな松井さんが今ではオーストラリアのケアンズに移住をされたということなんですけれども、これは何かきっかけみたいなものがあったんですか?
「谷津干潟とオーストラリアは、姉妹都市とは違うんですけれど、“姉妹湿地”といって、谷津干潟と(オーストラリアの)ブリスベン市にあるブーンドル湿地が姉妹湿地というのを結んだんですね。その繋がりとかもあったんで、行ってみようかなと思っていたんです。あと、エアーズロックとかも見てみたかったんですけど、“その後はまた違う国に行こう”くらいの感じに思っていました(笑)」
●そうなんですか!? それが、今ではもう何年目になるんですか?
「1999年に行っているので、もう19年オーストラリアにいますね」
●次に行く予定の国があったけど、もうすっかりオーストラリアにハマっちゃったんですね(笑)。私は行ったことはないんですけど、オーストラリアってすごく広いじゃないですか。海だったり山だったり森だったりと、いろんな自然があって飽きないんじゃないですか?
「そうですね。私の住んでいるケアンズと西の端にあるパースは、距離で考えると東京からモンゴルぐらいの距離ですし、海あり山あり砂漠ありですね」
●特に松井さんがいらっしゃるケアンズは、どんなところですか?
「ケアンズは暖かい所ですね。赤道を挟んだ位置でいうと、フィリピンぐらいになるはずなんで、一年中ほぼ、冬でも最高気温が25℃ぐらいあって、森が深くて干潟があるんで、割と房総や沖縄と似た感じだと思いますね。あの辺りから来た人は“(ケアンズは房総や沖縄と)あまり変わらないね”って言いますね」
●日本みたいに四季はないんですか?
「ケアンズだと、基本は雨季と乾季。つまり、雨の多い時期と、雨があまりない時期ですね。その季節の変わり目に2週間ぐらいずつ、変な時期があるんで、強いて言うならそこが春と秋になるかな、という程度ですね」
●割と一年中暖かくて、穏やかなんですね。
「そうですね。冬で最低気温が10℃切ると、けっこう寒いですね」
●そうすると、そこにいる植物や生き物なども、南国っぽいものが多いんですか?
「そうですね。カラフルなインコとかオウムとかがいますね。インコなんかは日本で言うムクドリみたいな感じで、街路樹とかそこら中にいっぱいいて、夕方から夜はギャーギャーうるさいですね。オーストラリアにいるインコは種類が多いので、それだけで30〜40種類ぐらいいるんじゃないでしょうか」
●何ていう名前のインコがいるんですか?
「よくいるのはゴシキセイガインコっていう、レインボー・ロリキートという鳥ですね。オーストラリア中にかなりいるんで、多分オーストラリア人からしても身近な鳥ですね」
●色がレインボーなんですか?
「こんな感じなんですけど……」
※松井さんが『オーストラリア ケアンズ探鳥図鑑』を開いてゴシキセイガインコの写真を見せてくださいました。
●あまりにも色がカラフルなんでイラストかと思ったんですけど(笑)、これは写真ですね!
「だいぶ派手ですけどね(笑)」
●すごいですね〜! クチバシが赤で、頭が青で、体が緑とオレンジと黄色! こんなカラフルな鳥が身近にいるんですね!
「庭の木に花が咲いていれば、だいたい来ますしね」
●なんか、すごくハッピーな気持ちになれそう!
※松井さんの家の庭には、一体何種類の鳥がやってくるのでしょうか?
「私の家は、ケアンズの市内の中心から車で10分ぐらいのところなんですけど、引っ越して1年ぐらいなります。今のところ、庭で見た鳥が76種類。ケアンズのエリア全体だと普通に見られるのが、多分350種類ぐらい。オーストラリア全体でだいたい800種類ぐらいなので、ほぼ半数以上はケアンズの辺りにいますね」
●それだけたくさんの種類の鳥がいるっていうことは、植生が豊かなんでしょうね。
「結局、暖かいんで一年中何かしら花が咲いていたり、実がついていたりしていますね」
●なるほど。そういうのを食べに来る鳥が一年中いるんですね。
「単体だと年に一回しか花を咲かせない木もあるかもしれないですけど、トータルで見ると常に何かしらの木が花を咲かせていたり、実がついていたりしていますね」
●本当に、鳥たちにとっても人間にとっても楽園のような場所ですね。
「そうですね。住みやすいですよ」
●庭に70種類近くの鳥が来るということなんですけれども、松井さんはどういうふうにその鳥たちを観察されているんですか?
「植木鉢の皿に水を入れて、それを外へ置いていると鳥が水浴びに来るんですね。パラパラと来ては水浴びをしてどっかに行く感じですね」
●人間が近くにいても全然驚かないんですか?
「そうですね、鳥との距離は近いと思いますよ」
●何かフレンドリーになる背景みたいなのってあるんですか?
「オーストラリアって入植して約200年、建国して約100年で、ある程度バードウォッチングとかが文化として成り立った段階で人が来ているんですね。最初から庭に花を植えたり鳥が来たりということを想定してつくっているんじゃないかなと思います」
●なるほど! じゃあ、地元の人たちにとっては、生活の一部に鳥がいるということなんですかね?
「結構、庭にエサ台を置いたり鳥が来る木を植えたりとかは、みんなやっているみたいですね」
※ケアンズといえばやっぱり、グレートバリアリーフ!
グレートバリアリーフは、世界最大のサンゴ礁群。全長は2,300km以上、面積は日本列島の北海道から九州までとほぼ同じ、35万平方キロメートル。宇宙空間から地球を観た時に唯一、肉眼で確認出来る地球上の生命体。そこには30種以上のクジラやイルカの仲間、1,625種類の魚類がいるそうなんです。
そんなグレートバリアリーフがあるオーストラリアの野鳥達は、日本にいる野鳥とは少し生態が違うようです。
「ちょっと他と違うのは、あんまり朝は早起きをしないとか、ですかね」
●へぇ〜! 鳥ってすごく早起きなイメージがありました!
「もちろん、早起きする鳥もいるんでしょうけど、鳥の姿を見ようとそんなに朝早くに頑張らなくてもいいんですね。基本的に食べるものが豊富なので、(鳥たちも)あくせく取らないでいいんですよ。なので、天気が悪かったらちょっと休みがちになったり、ということをしても大丈夫なんですね」
●逆に日本の鳥、例えばニワトリなんかは朝早くから“コケコッコー!”って鳴いていますけれど、あれは食べるものが少ないからあんなに早起きなんですかね?
「少ないというよりも、虫がいっぱい動く時間とかが限られているんだと思います」
●鳥のライフスタイルって、食生活に密着しているんですね!
「例えばフウチョウの仲間で、踊る鳥がいるじゃないですか。その鳥はオーストラリアとニューギニアの方に多いんですけれど、そういった系統の鳥は食べるものが豊富だったから、踊るようになったんだと思います。
メスに対するアピールが、例えば日本だと千葉市の鳥はコアジサシですが、その鳥はオスがメスに魚を持って行って求愛したりするんですね。けれど、周りにいっぱい食べるものがある状態だと、食べものを持って行ってもメスは喜ばないんですね。
でも、何かしらで優劣をつけて選んでもらわないといけないんで、なぜかそこから“踊る”っていう方向にいっちゃったっていうのが、フウチョウの仲間なんです」
●そういうことかぁ! 人間に置き換えちゃいますけど、いつもプレゼントをもらっているような綺麗な女の人にアプローチしようとすると、“もうプレゼントなんて飽きているから素敵なダンスを見せてくれ!”という感じなんですかね(笑)。面白いですね!
※ここで、日本ではペットとして親しまれているセキセイインコの野生の生態についてうかがっていきます。
●野生のセキセイインコってどんな感じなのかなって、興味があります!
「野生のセキセイインコは胸板が厚いですね」
●そうなんですか(笑)!?
「ちょっとムキムキした感じには見えます(笑)。セキセイインコはひたすら飛び回っているので、必然的に筋肉質になるんですね。だいたい500〜600羽とか、多い時は万単位の群れで飛んでいますね」
●セキセイインコの群れって、日本で想像すると変な感じがしますね(笑)。
「もう本当に、黒いのが動いている感じで、上を通ると下で会話をしていても聴こえないぐらい羽音がすごいですね」
●日本から来たお客さんは結構びっくりされるんじゃないですか?
「セキセイインコやオカメインコ、あとはキバタンとかモモイロインコ、キンカチョウなどは日本で結構ポピュラーなんですけど、そういうのを飼っている人とかが、“野生のを見たいです”って言って来ることも結構ありますね」
※動物達の楽園オーストラリア。固有種の数は哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類で約1,350種!
日本は131種、ガラパゴス島で110種なので、群を抜いています。では、ケアンズには一体どれくらいの鳥類の固有種がいるんでしょうか?
「鳥でいうと、ケアンズの辺りだけで12種類ぐらいで、ほかにもいるけど、ほぼケアンズの辺りにしかいないかな、という鳥も含めると30種類ぐらいになりますね」
●代表的な鳥ですと、どんな種がいるんでしょうか?
「大きい鳥だと、ヒクイドリとかですね」
●これも『オーストラリア ケアンズ探鳥図鑑』に載っている写真を見ていますが、これまた面白い鳥ですね! クジャクに近いような、顔が青色で体が黒で、トサカが付いていますけど、大きさはどれくらいなんですか?
「ヒクイドリは、地上からの高さは1.5メートルぐらいは普通にありますね」
●全然低くない! “タカイドリ”ですね(笑)!
「ダチョウの仲間ですね。ケアンズの辺りには結構います。オーストラリアの固有種っていうと、オーストラリアは大陸で、周囲との繋がりがほとんどないので、ほぼみんな固有種に近いですね」
●それだけ固有種がたくさんいるっていうのは、やっぱり守られているからなんですか?
「守られているのと、あとは他の大陸から随分遠くまで移動して(オーストラリアに)来たので、(それ以降は)行き来がないっていうことですね」
●オーストラリアって厳しいですよね。私たちが入国する時にも、外来種を持ち込まないように靴の裏の土を落としたりとかしますよね。そういうルールも固有種が守られている理由のひとつなんですかね?
「そうですね。多分、主な目的は農業なり産業を守るためではあるんですけれど、それと同時に固有種を守るっていうことにも繋がっていると思います」
●ツアーガイドをされている時にも、お客さんに注意していることとかはありますか?
「州をまたぐと果物とかを運べないんですね。荷物に果物があると、陸路で移動していても検疫があって“ここから先は持ち運べない”ことはありますね」
●それぞれの自然というのが、お互いに独立して守られているんですね。
「道の脇に無料洗車場みたいなのが突然あったりするんですが、それは外来の植物のタネが運ばれないようにするためなんですね。義務ではないんですけれど、“タネを落としてくれ”っていう看板があったりしますね」
●松井さんが思うケアンズの自然の一番の魅力って、どんなところでしょうか?
「やっぱり、生き物と人の距離が近いところですかね。あちこち行っていますけど、“距離”という点では、圧倒的に近いんじゃないかなという気はしますね」
●逆に、オーストラリアに行ったからこそわかる、日本の自然の魅力はどんなところでしょうか?
「日本は四季があって、四季折々の変化っていうのは、すごく日本的な感じですね。動物や鳥についても、春になるとさえずったり、そういうメリハリのあるところはいいと思いますね。ケアンズだと、一年中ダラダラとしていて、気がついたら年が明けている、という感じですから(笑)」
●人間もやっぱりそんな感じになっちゃうんですか(笑)?
「なりますね! もうちょっと四季がはっきりしていたら、こんなに何年もいなかったかもしれないですね」
●それで、気がついたらもう19年もいたんですね(笑)。
「“なんかきょう、花火が上がっているね。なんだっけ?”って思っていたら、年明けだったとか、そういうレベルなんですよ」
●人間ものんびりと過ごしているんですね。
野鳥も人間と同じように、楽園に暮らせばゆったりのんびりしちゃうんですね。しかもシギなどの渡りをする鳥も、ケアンズに来れば警戒心が少し薄くなってしまうそう。これは人間に例えると、バカンス中みたいな感じなのかもしれませんね。
文一総合出版/ 税込価格 5,400円
野鳥の楽園ケアンズと、その周辺で見られる鳥が満載。カワセミやインコの仲間など魅力的な鳥およそ330種と、観察フィールド20か所を紹介。この図鑑を持ってケアンズに行って、松井さんのガイドツアーに参加してみたい! 詳しくは、文一総合出版のHPをご覧ください。