今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、ハワイのスペシャリスト、そしてエッセイストの近藤純夫(こんどう・すみお)さんです。
近藤さんは1952年生まれ、札幌出身。出版社勤務などを経て、エッセイスト、翻訳家として活動。ケイビング(洞窟探検)の専門家としての顔も持ち、1992年から日本洞窟学会の会員、1994年からはハワイ火山国立公園アドバイザーなどを務めてらっしゃいます。また、アロハ検定の執筆・監修も行なってらっしゃいました。ハワイの伝統や文化、神話や自然に関する本も多く出版、まさにハワイを知り尽くしたスペシャリストでいらっしゃいます。
今回はそんな近藤さんに、思わず写真に収めたくなる絶景スポットのお話などうかがいます!
※近藤さんの新刊フォトエッセイ『撮りたくなるハワイ』。この本はハワイ諸島のうち、6つの島、北から順番にカウアイ島、オアフ島、モロカイ島、マウイ島、ラナイ島、ハワイ島の大自然を、美しい写真とエッセイで綴った一冊です。
それぞれの島にはどんな魅力があるのでしょうか。思わず撮りたくなるスポットを、まずはハワイで一番大きい島、ハワイ島からうかがいました。
「ハワイ島は何といっても、火山が活動して溶岩が流れているアクティブなところが魅力ですよね。これってなかなか見られないので、ぜひこれを見るために行って欲しいなと思います。実際、ハワイ島では一番人気のあるツアーでもあると思うんですよね。
ただ、みんなが行く所に行くと、やっぱり混んでいたりとか、予約が取りにくかったりするんですけれど、実はその場所に行かなくても広い場所から溶岩は見られるので、ネットで“ハワイ島、溶岩”とか、“誰も行かない所”とかで検索してみてもいいと思います。そうすると、危険じゃなくて車で行けるようなところでも、たくさん見られる場所があるので、ちょっと工夫してみるのもいいと思いますね。
あともうひとつ、溶岩を見られる場所っていうのは街中じゃないですよね。つまり、暗い場所ですよね。そうすると、そこで空を見上げると満点の星があります。それも一緒に楽しめるので、今回の新刊『撮りたくなるハワイ』の表紙も、それを意識しました。
マウイ島の場合はですね、本当に緑の多いところなんですね。でも真ん中に大きな“ハレアカラ”という山がありまして、この山がいろんな映画に使われるぐらいに、ちょっと地球的じゃない、“なんだ、これは!?”と思うような大地が広がっているんです。車で頂上まで行けますので、ぜひ頂上で降りて見て欲しいなと思います。ちょっと体力があれば、10〜20分降りて行くと、そこでしか見られない植物とか珍しい鳥とかも出てくるので、そういうのも楽しんで欲しいですね。
僕はここで、夕方に写真を撮ることが多いです。ここから撮る夕方の写真は、本当に綺麗ですね。雲海が広がって夕陽が霞んで、クッキリ写ってはいないんですけれども、わぁっと柔らかい光が入ってきて、幻想的に山の麓を照らすんですよ。すっごい綺麗です! ファンタジックな感じでいいと思います。
モロカイ島とラナイ島は小さな島なんですけれども、自然と一体感を持ちながら、もちろん星も見えるんですけれども、昼間でもいろんな鳥の声を聴いたり、風の音を聴くっていうのを楽しめるところなので、小さな島だからこそできることを楽しむっていうのはいいと思いますね」
●写真を撮るだけじゃなくて、撮っている最中もいろんなことを感じられるんですね。
「そう! すごく体感して欲しいなと思います。日本から(オアフ島の)ホノルルとかに来ると、“ああ、ハワイに来た〜!”“清々しくて、緑も綺麗だなぁ”っていうふうになるじゃないですか。でも、小さな島からオアフ島に戻ってくると、“わぁ、都会だぁ!”“すごくいっぱい人がいる!”って思うんです。人間って変わるんですよ。静かなところにいると、自分も静かなタイプになっちゃうんです。“オアフ島すごい都会だなぁ”とか思いながら戻って来るんですが、でも、意外に気づかない面白い場所っていうのはたくさんあるんです!
ひとつだけ言いますと、例えば、“カイムキ”っていう市街地は、結構ホノルルの街の中では古いんですね。ダイヤモンドヘッドに近い方です。そこを登って行くと古い街がたくさん続くんですが、その辺の道って山の方に向かって一直線なんです。1〜2キロメートルもまっすぐで、曲がってないんです。なので、下から来るとずーーーっと坂の上までまっすぐな道が見えるんです。それを登って行くのも気持ちがいいし、登りきったところから振り返ると下が見えるわけじゃないですか。そうすると下の方にダイヤモンドヘッドが、ちょこん、とあったりして、これがまたすごい綺麗なんですよ! 街を綺麗に見るっていうのは、結構面白い体験ですね。
古い街ですから、“昔はこんな家に住んでいたんだ”とか、“あ、おじいちゃん、おばあちゃんがたくさんいるな”とか、ちょっとお店に入ったら“こんなハンバーガー、まだ作ってるの!?”とか、いろんな面白い古い文化を守ったお店があるんです。中には、“歳をとったんで辞めます”っていうお店も多いので、一期一会じゃないですけれど、“行くなら今でしょ!”みたいな(笑)。そういうところが、古い街並みにはたくさんあるので、楽しんでもらえたらいいなと思っています」
●街並みも、文化も魅力的なんですね。
「そうなんですよ。そして最後に、カウアイ島。ここはハワイ諸島の中で一番古い島で、600万年ぐらい経っているんですね。だから緑に覆われていて、ニックネームは“ガーデンアイランド”なんです。緑の多い所なので、最もハワイの固有種というのが多い所で、植物やお花、鳥とかもカウアイ島からスタートして他の島に移り住んでいるものがたくさんあるんです。しかもコンパクトな島なので、出会う確率が高い。そういう意味でも、花や鳥が好きっていう人にはオススメです」
●本当に、“元々のハワイ”を感じることができるんですね。
「そうですね。先ほど紹介しましたオアフ島の場所(カイムキ)は、昔の文化を感じる場所。カウアイ島では、昔の自然を感じて欲しい、というのはありますね」
※ハワイの言葉で有名なのは、「アロハ」や「マハロ」などの挨拶ですが、そんなハワイ語を知っていると、また違った景色が見えてきたりするのでしょうか。近藤さんが大好きなお花の、ハワイでの呼び方から、こんなお話になりました。
「たくさんのことを言うと膨大なので、例えばひとつ言うと、ハワイ諸島には“オヒア”という木があるんですね。オヒアの木っていうのはフトモモ科で、ユーカリなどの仲間です。このオヒアは、ハワイ諸島で最も多い木なんです。どの島にもたくさんあるんですけれども、思い入れが強いのか、お花に対して別の名前をつけているんですね。
オヒアに咲く花のことを“レフア”と言うんです。なので、まとめて“オヒア・レフア”と言うこともあるんですけれど、赤い花をつけるんですよ。僕が最初に知った花でもあるんです。夏になると、たまに蜜をつけて、それがもう、本当に甘い香りを漂わせているんですね。ナチュラルストアに行くとオヒア・レフアの蜂蜜も売っています。
オヒア・レフアって、実は世界でも珍しい、ちょっとした特徴があるんです。ハワイでなきゃ出来ないことなんですけれども、木ってとても大雑把に分けると2つの種類があるんですが、ひとつは、太陽の光がいっぱい入ってこないと育たない植物。これを、太陽で育つ樹と書いて、“陽樹(ようじゅ)”と言います。もうひとつは、あんまり太陽の光がありすぎると育たない植物があるんです。これは、陰(かげ)で育つ樹だから“陰樹(いんじゅ)”と言うんです。
日本も含め、どんな森もそうなんですけれど、最初は何もない所から木が育ちますよね。ということは、陽樹しか育たない。陽樹が育つと、今度はその木の枝に葉っぱがついて、日陰ができますよね。その日陰の所で育つのが、陰樹なんです。日本でいうと、樫(かし)の木とかが陰樹なんですね。ハワイでいうとコーヒーの木も陰樹です。
ところが、ハワイ諸島は陰樹がゼロだったんです。陽樹は育つじゃないですか。それで、受粉するとタネを落としますよね。育つと思います? 親が陰を作っちゃっているから、(陽樹の)子供は育たないんです。親がいる限り、子供は絶対にできないんですね」
●じゃあ、親だけがどんどん成長していくんですね。
「けど、あるところで親も成長は止まりますよね。オヒアの木の樹齢って、700年ぐらいなんです。700年間、他の木は育たないんです」
●ええっ!?
「そして700年経つと、寿命を迎えて倒れます。倒れると光が入ってきますよね。そうすると、発芽しなかった種子が、初めてそこで育つんです。だから、全部なくなって、育つ。なくなってから、また育つ、ということです。つまり(ハワイ諸島では)、どんな森の木も絶対に同じ歳なんです。もちろん例外もあって、光の当たる所で新しい木が出ることもありますが、平均的にはそうなんです。これはハワイでしか起きないんです。面白いでしょ〜?」
●がらっと世代交代するんですね!
「そうなんですよ! しかも面白い話があって、このことに気づいたのは比較的最近なんです。学者も知らなかったんですね。数十年前に寿命で、オヒアの木がどんどん倒れたんですね。そうすると、“なんで全部倒れるんだろう?”と思うでしょ? “病気に違いない!”“ウイルスかな?”とか考えるわけですよ。でも、どうやっても何もわからなくて、木はなすすべなく倒れていくわけです。そこから次に、どんどん生えてくるっていうことになって、そこで初めて“えっ、もしかして……”ということでわかったんです」
●すごいですね! ハワイの自然って面白いというか、不思議ですよね〜!
※もうすぐ大型連休! ということで、この時期オススメのハワイを教えてもらいました。
「僕は自然系の人なので、あまりショッピングなどの情報についてはお伝えできないんですが、自然については、この大型連休から6月にかけてが、最もオススメなんです。なぜかっていうと、まず4月の下旬から鳥が繁殖期を迎えます。そうすると、求愛活動をしますので、鳥をたくさん見られるわけです。求愛活動をする時期というのは、エサもたくさんないとやっていけないわけで、花が一斉にあちこちで開くんですね。なかなか見られない花も5月の頭から6月の中旬ぐらいにかけて、一斉に開きますので、お花が好きな人は楽しんでもらえると思います」
●特に見ておいたほうがいい、という花はありますか?
「うーん、そうですね……マニアックなものは、見るのにちょっと手立てが必要になってくるんですが、僕の好きなものをひとつ言うと、固有の植物ではないですけれど“ジャカランダ”というのがあります。紫色のお花をつけるんですけれど、これはキリの仲間ですね。
これが4月の中旬から大型連休にかけて花開きます。一個一個の花を見ても“ふぅ〜ん”っていう程度の花なんですけれど、ちょっと離れて見ると、霞みがかったように幻想的に見えるんです。桜に勝るとも劣らないですね。僕は桜も好きですけれど、ジャカランダは負けてないです」
●どのあたりに行くと見られるんですか?
「ホノルルでも見られます。例えばカハラに行く途中、高速道路に乗らないで、下の方、先ほど言った、古い街並みを通りながら行くのもいいと思います。そこでジャカランダも見るというのはいいですね。
ハワイ島とかに行くと、カイルア・コナに海岸の道があるんですが、並行して山道もあるんです。その山道に行くとジャカランダが至る所に咲いています。楽しんでください。あと、ハワイ島は“ワイメア”という街があるんですが、そこは街路樹に結構ジャカランダを植えていますので、楽しめると思います。
マウイ島だと、ハレアカラに登る途中にあります。まぁ、でもホテルのフロントで“ジャカランダ見たいんだけど”って言えば、教えてくれます。ちなみにジャカランダって、僕の世代だと結構、子供の時に日本でお世話になっているんです」
●えっ、どういうことですか?
「ジャカランダって元々、南米の木なんですけれど、南米ってスペイン語が多いですよね。スペイン語でジャカランダのことを、“ハカランダ”って言うんですよ。ハカランダって、ギターの素材だったり、スキーの板に使っていたりしていたんです。ヒッコリーとかハカランダが結構使われていたんですね。昔の日本では結構、ポピュラーだったんですよ」
※他にもオススメの場所があるかうかがったところ、私、長澤もいつか絶対行ってみたい“あの場所”についての話が出てきました。
●他にも例えば、オススメのネイチャーツアーとかはあったりしますか?
「ネイチャーツアーだと、最初に言いました、星を見るツアーとか、流れている溶岩を見るツアーとかは、日本では絶対に体験できないので、ぜひ楽しんで欲しいなと思います」
●流れている溶岩、見てみたいんですよね〜!
「ですよね。たくさんの会社がやっていますから、どことは言わずに、これもホテルで“溶岩ツアーを見たいんだけれど、どこがいいですか?”って聞けば教えてくれます。ツアーは大体、溶岩を見るものと、星を見るものをカップリングしているところは少ないんですね、場所がちょっと離れていますから。なので、それぞれ別々に行かれたほうがいいと思います」
●溶岩って、どんな感じなんですか? テレビとかではよく見るんですけれど、実際に目の前に、あの赤い塊がドロドロと流れているのは想像するのが難しい感じがします。
「それはねぇ、本当に不思議なんですが、ハワイには“マナ”って言葉があるんですよ。霊的なエネルギーみたいなもの(という意味なんですが)、このマナを本気で信じていて、たくさんマナを持っている人は幸せで、力も持っている、と思われていたんです。そのマナの究極が、溶岩だと思ってください。
石にマナが宿るっていうのが、ハワイの古い文化にあるんですけれど、なぜそんなことを石に対して言ったのかをいうと、元が溶岩だからです。噴火してきて流れてきたものが、例えば集落や畑を潰したりするわけじゃないですか。ということはもう、人間の力をはるかに超えている、圧倒的な力だと思うわけですよ。
“これは半端じゃない、すごい神様の力が働いているんだ!”と言われて、それが火の女神ペレだとか、そういう女神様にもなっちゃうんですよ。そういう、溶岩の持っている力っていうのを特別に思っているから、みんなそれに対して何かしら思い入れっていうのがすごくあるんです。
僕は、それは文化が作り出したものなのかな、とも思ったんですけれど、実際に(溶岩を)見てみたら大間違いで、ガンガン(マナが)自分の中に入ってくるんですよ。どんな人でも入ります。子供でもお年寄りでも若い人でも、みんなまず、言葉がなくなる。しゃべっていても、一度見ると口が開いて、そのままじっと見てます。吸い寄せられるって感じかな。溶岩はハワイでは爆発的に噴火することはあまりないので、ガイドの方の注意を聞けば大丈夫だとは思いますけれども、危ない所ももちろんあるので、そこを考えた上で見ていただければなと思います。
僕が最初にハワイ島で溶岩を見た時は、もう20年近く前になるんですけれども、確か午後1時くらいにそこに行ったんですが、初めて見るんで、もう“わぁー!”って思いながら見ていたんですよ。そしたら一緒に見に来た人に“近藤さん、もう帰ろうよ”って言われたんで、“えっ、もう帰るの?”って時計を見たら、午後の4時だったんです」
●3時間も溶岩を見ていたんですね(笑)。
「僕の感覚では10分とか20分ぐらいだったんだけど、そんなに時間が経っているなんて気づかなかったんですよね。そのぐらい、溶岩には魅力があると思ってください。見ないともったいない!」
●うわ〜、そんな話を聞いたらますます見たくなっちゃうな〜! もう、死ぬまでには絶対に見に行きます! そういう話を聞くと、溶岩に対して怖いとか、制圧しようと思ったりするんじゃなくて、それはもう神聖な霊力があるんだ、っていうふうに思うハワイの人の文化って、日本の精神と似ているところがありますよね。
「同じです! 日本にも“森羅万象”っていう言葉がありますけれど、すべての自然の中に先祖の霊が宿っているんだよ、っていう考え方はありますよね。アニミズムとかいう言葉で言われますけれども、そういうのはあると思うんですよ。
溶岩のこともそうなんですけれども、もしガスが発生したら、ガスに引火することもあるんで確かに危ないんですけれども、その危ないことも含めて、彼らは折り合いをつけながら何百年も生きているじゃないですか。その結果として持っているイメージというのは、物凄く長い間につくられた、調和した考え方だと僕は思うんです。
初めて行って、1回目に観て“わぁ〜!”って思いながら見るのとはまた違う見方がきっとあると思う。だから、ハワイの神話だとか歴史を知るっていうことは、溶岩をもっと深く見るひとつの方法かもしれないですね。どんなことにも多分、立体的に見るための他の要素が用意されていると思っていただけると嬉しいな」
●じゃあリスナーのみなさん、ぜひそれについては、近藤さんの本で勉強してください(笑)!
では最後に、改めてハワイの魅力をリスナーの方に教えてください。
「これは何度も言っているんですけれども、ハワイは太平洋プレートといって、地球の表面をちょっとずつ動いていて、日本に近づいているんですね。その近づく距離っていうのは、なんと1年間に10センチ近いんです。そうすると、10年ぶりに行けば同じ場所でも1メートル日本の方に移動しているわけですよね。すごくアクティブなんです。
つまり、噴火をしているし、地球上で動いているし、さらに島はどんどん成長して大きくなったり小さくなったりしているので、地球という、大きな営みを圧縮したものがすべてハワイ諸島で見られると思ってください。それを感じるだけでも、行くかいはあると思います」
※この他の近藤純夫さんのトークもご覧下さい。
溶岩に、夕陽が沈む雲海に、美しい花……。まだまだ私達が知らないハワイがたくさんあるんですね。そして神話や歴史を知ることで、さらに奥深いハワイを知ることが出来そうです。
亜紀書房/税込価格1,728円
素晴らしい絶景写真に、エッセイが添えられた一冊。ハワイ諸島の6つの島の大自然が紹介されています。今月末から始まる大型連休でハワイに行く方は、ぜひ参考にしてみるといいですよ!
亜紀書房から4月18日に発売予定。詳しくは亜紀書房のサイトをご覧ください。