2018年6月23日

カメの生き方〜多様なカメの世界

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、写真家・川添宣広(かわぞえ・のぶひろ)さんです。

 1972年生まれの川添さんは、早稲田大学卒業後、出版社勤務を経て2001年に独立。爬虫類や両生類の専門の写真家として、また専門誌や図鑑を手がける編集者として活躍されています。そして先ごろ、図鑑『世界のカメ類』を文一総合出版から出されました。
 今回はそんな川添さんに、ニホンイシガメの生態や世界のユニークなカメのお話などうかがいます!

世界一美しいカメ

※甲羅が硬いカメ、一体どうやって大きくなっているのでしょう?

「甲羅は“甲板(こうばん)”という板が何枚も組み合わさって出来ているんですね」

●甲羅の、ひし形みたいな部分ですね。

「そうです。その間に白い、“成長線”と言うのがあって、年輪みたいに成長しているのがよく見えるんですね。観察してみると、継ぎ目が広がっていく感じですかね」

●ひし形とひし形のつなぎ目の部分が、成長に合わせて広がっていくんですね。個体によって甲羅の模様なども違うんですよね?

「違いますね。成長によっても違うし、個体によっても違うし……。例えば、日本だけにいるニホンイシガメでも、個体によって結構色が違うんです」

●へぇ〜! じゃあ、川添さんが今まで見た中で、印象に残ったカメはいますか?

「えっとね……だいたい世界中で、写真が撮れるカメは撮ってきたんですけど、いろんな美しいカメがいるんですね、緑色だったり赤だったり。でも、僕はニホンイシガメが世界一美しいなと思っていますね。日本的な美しさって言いますか……いつも思いますね。“何てカッコいいんだろう、綺麗だな”と思います」

●実は今、発売されたばかりの図鑑『世界のカメ類』が私たちの手元にありますので、ニホンイシガメの写真を見てみますか!

「見てください!……これがそうなんですけど…」

●色としては、緑と茶色と黄色っていうのかな……3色ですね。

「野生下の個体で、コケが付いているので緑に見えるんですけど、黄色だったり赤かったり、黒い模様がちょこっと入っていたり…。
 島根県でイシガメを“可愛い、カッコいい!”なんて言いながら撮っていたら、同じ川に1メートルくらいのオオサンショウウオがいたんで、その写真も撮ったんですよ。“わぁ〜、凄いな〜!”“君も凄いねぇ〜!”とかブツブツ言いながら撮っていたんですけど、そしたらそのオオサンショウウオが(カメの近くに)やってきたんですよ。“どうすんのかなぁ、(カメを)食べちゃうのかなぁ”ってドキドキしながらじっと見ていたら、この図鑑を見てわかるように、イシガメは割と川床の色に似ていてですね、そのイシガメは“俺、石だから”みたいにじっとしていて、その上をオオサンショウウオが通り過ぎていくっていうことがあったりしましたね」

●なるほど、日本の川の底にある石の模様に似ているっていうことですね!

「そこの川は、凄くイシガメみたいな柄の川底でしたね」

自然を丸ごと観察!

●そんなニホンイシガメは、どんな暮らしをしているのでしょうか?

「冬は冬眠して、冬眠が終わるとみんなやる気になっていてですね、春が繁殖期なんですけど、その頃になるとよく移動したりするので、観察しやすい時期ですよね。それで交尾して、川の土手みたいなところに土を掘って、よく卵を産みつけるんですけど、土を後ろ足に乗せて綺麗に外へ出して、また埋めるという、凄く器用に産卵するんです。それが5月〜6月ぐらいに孵化してくるんですね。大人のイシガメは大きな川にいるんですけど、子ガメは流されちゃうため、近くの用水路で暮らしていたりするので、そういう所に夏前に行くと、割と子ガメがいたりしますね」

●子ガメは可愛いですか?

「可愛いです! よく“銭亀(ゼニガメ)”なんて昔に言われていた、あんなイメージのカメですね」

●ゲームのキャラクターでも“ゼニガメ”っていますよね(笑)。でも、そんなイシガメが今、減ってきているんですよね?

「全国的に数は減っていますね。僕も全国に行っていますが、(イシガメを)観察できる機会は減ってきています。いろいろな要因があって、環境開発とか、外来種として問題になっているアライグマに襲われるとか、ペット用に乱獲とかもあったりしますね。カメは簡単に拾えるので……。いろんな要因で数を減らしていますね」

●千葉でも(イシガメは)見られたりするんですか?

「関東だとあまりイシガメは観察できないんですけど、房総の方に観察できるところがあって、イシガメ観察会などがよく行なわれているみたいですよ」

●そうですか! それはbayfmのリスナーの方としては耳寄り情報ですね! でも、無闇やたらに見に行っちゃダメですよね。観察する時の注意点はありますか?

「野山に行くので、ひとりでは行かないことと、水辺ですから、危険な生き物にも注意しなくてはいけないですね」

●カメに触ったりとかもダメですよね。

「橋の上とかから、“あ、いた!”なんて観察しているのが楽しいと思います。触ると大概、逃げちゃうんですね。体温が温まってくると、水の中にチャポンと入ったりして、よく見たら変なところから出てきて……。ずっと観察しているのが楽しいですね。さっきのオオサンショウウオのように、周りの生き物も含めて観察するのが楽しいと思います」

●それってなかなか、ペットとして飼っていると観察できない部分だから、自然の中での観察ならではの楽しみかもしれないですよね!

「生き物を見る時って、目当てがイシガメでも、何を食べているかとか、その食べているエサがまた何を食べているかとか、いろんな生態系が全部つながっているので、丸ごと見るのが凄く楽しいと思います。“水辺でカエルがいるからヘビが来るのか!”とか、“カメがいるところは田んぼのそばで、カエルもいるからマムシに気をつけよう”とか、全部ひっくるめて考えたり観察するのが、非常に楽しいと思います。写真を撮っていていつも思います」

●やっぱり、つながりを感じるんですね。

「そうですね」

パンケーキのカメ!?

※千葉はウミガメの産卵の北限域で、様々な場所で保護活動などが行なわれています。以前この番組にご出演いただいた、館山のシーカヤックガイド、藤田健一郎さんによれば、今年2018年も無事にアカウミガメの上陸が確認できたそうです。もしかしたらこの夏、海に遊びに行った時、砂浜の近くでウミガメが産卵しているかも!? でも、流木やゴミがあると子ガメは海に帰るのが難しくなってしまうので、ぜひ綺麗な砂浜を心がけたいですよね。

 そんなカメですが、世界にはちょっと風変わりなカメもいるそうですよ。

「カメに甲羅があるのは、手足を収納して身を守るためなんですけど、(図鑑を見ながら)このオオアタマガメは、名前の通り頭がデッカくて、頭を引っ込められないやつとかいるんですよ。あと、ナガクビガメとかヘビクビガメっていう、首の長いカメがいて、それは僕たちが知っているカメとは違って、首が長いから横にたたむように頭を収納するんです」

●どういうことだ(笑)!? 頭を横に曲げて甲羅の中に入れるっていうことですか! 頭を甲羅の中へと引くんじゃないんですね(笑)。

「ハコガメっていう、収納した後の蝶番(ちょうつがい)のようにパタンとなっていて、本当にハコ状になっちゃうカメとかもいます。もう、完全に手足も見えないですね。日本にいるセマルハコガメとかも、そういうカメですね。
 あと、アメリカにいる陸ガメでパンケーキガメという、美味しそうな名前のカメがいるんですけど、平べったくて本当にパンケーキみたいで、甲羅が柔らかいんですよ。外敵から逃げる時に岩の隙間に入りやすいように、平べったい形をしているんです」

●世界でだいたい、カメは何種類くらいいるんですか?

「ざっと300種類ぐらいですかね。爬虫類では少ない方です」

●それでも、私たちがイメージするよりも、かなり奥深いですね。

「そうですね。海にもいれば川にも、陸にも、砂漠みたいなところにもいたりと、いろんなところに適応しているので、たくましいなと思いますね」

●そこが凄いですよね! どんな環境にも対応しちゃう、そういうふうに進化しちゃうんですもんね!

「長年、そうやって生き抜いてきたんでしょうね。だから、世界中でいろいろと環境開発とか乱獲とかの影響で、全体的に数は減ってきてはいますけど、それでもたくましいなと、いつも思います」

※約2億1千万年前には既にいたと言われているカメ。ゆっくりゆっくり時間をかけて、環境に適応した進化を遂げていったのでしょうか。そんな中から、川添さんが印象に残っているのはどんなカメか聞いてみました。

「これは、日本にいるカメじゃないんですけど、ホシガメっていう陸ガメがいてですね、黄色いクリーム色の甲羅に放射模様が入っていて、それが凄く綺麗で、名前の通り“ホシガメ”っていう感じなんです。その写真を撮りにスリランカまで行ったことがあって、すぐ見つけられるだろうと思っていたんですね。そしたら、なかなかいないんですよ。
 タイミングとか雨季・乾季とか、いろいろあるのかなと思ったんですけど、よーく見たら草陰にいて、シマウマじゃないですけど、(甲羅の模様が)現地の草むらに溶け込んじゃっていたんですよ。ちょっと目を離したらもう、どこにいるのか分からないぐらいだったんです。なのでやっぱり、この模様にも意味があるのかなと思ったりしましたね」

●忍者じゃないですけども、隠れやすい模様のカメっていうのも結構いるんですね。

カメに罪はない

※カメについて、日本では今こんな変化が起きているそうです。

「かつてイシガメがよく見られた川で、ミドリガメが増えてきたりといったことは起こっていますね。生き物って、誰かがいなくなると誰かがそこに入り込んできたりするっていうことが多いんで、今はイシガメがいたところにミドリガメが増えてきているんでしょうかね」

●ミドリガメって、強いんですか?

「強いですね。ただ、侵略的外来生物だとか、悪い話ばっかりなんですけど、全部人間が悪い話なんです。人間が(外来種を)連れてきて、人間が放して、本人たちは“えっ、ここ、どこ!? 知らない国なんだけど!”みたいに感じながらも一生懸命生きて、一生懸命生き物として繁殖して……。それで、今度は増えてきたから、また人間の都合で駆除しようとしている。全部、人間の都合を押し付けられているだけなんです。
 もちろん、在来のイシガメとかに悪影響を及ぼしていたりするのは知っているんですけど、本人たちはただただ一生懸命生きているだけで、よく見たら凄く可愛いですし、今だとテレビの連続ドラマにもカメが出ていたり、僕の両親もカメを可愛がっています。本当に可愛いんですけどね」

●カメ側には罪はない、ということですね。

「ないと思います。ただただ、一生懸命生きているだけなんです」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 昔話に登場したり、お財布の御守りになったり、最近では朝ドラにも登場したり、日本人にとって身近な存在の亀ですが、まだまだ知らないことがたくさんあるんですね。マイペースに一緒懸命に生きる亀に、これからはもっと注目していきたいと思います。

INFORMATION

『世界のカメ類』

新刊『世界のカメ類

 文一総合出版 / 税込価格4,860円

 世界のカメ類、約300種を紹介した図鑑。世界にはこんなに多種多様なカメがいるのかと驚かされます。甲羅の形、色、模様も多彩!
 詳しくは、文一総合出版のオフィシャル・サイトをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「(MEET) THE FLINTSTONES / THE B-52's」

M1. TWISTIN'THE NIGHT AWAY / トータス松本

M2. THE RIVER OF DREAMS / BILLY JOEL

M3. EVERY BREATH YOU TAKE / UB40

M4. AS LONG AS WE'RE BOTH TOGETHER / MICHAEL FRANKS

M5. LOOK AT THE STARS / TOPHER MOHR

M6. Turtle Walk / 槇原敬之

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」