今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、植物案内人の帖佐仁美(ちょうさ・ひとみ)さんです。
子供の頃から植物が大好きだった帖佐さんは現在、その素晴らしさを伝えようと、植物を育てるための教室や、自然を感じるワークショップを数多く開催されています。また、植物を育て自然素材を手作りする「GREEN FINGERS」も主宰。さらに「BE-NATURE SCHOOL」の自然体験ガイドとしても活躍してらっしゃいます。
今回はそんな帖佐さんに秋の森の恵み、ドングリやクルミなどの、木の実のお話をうかがいます。
※帖佐さんは200ほどの植物を育てていて、中でもドングリなどの木の実は、そのまま鉢に植えて育てています。一体なぜドングリにハマってしまったのでしょうか。
「いろんな形の、いろんな実があるんですよね。色もいろいろあって、そういうのを歩いているうちに見つけるっていう楽しみもあって、拾っては育てる、みたいなことをやるようになりました」
●どんな形の木の実があるんですか?
「自然のものって、どれも凄く美しいんですよね。どうしてこんなに左右対称で綺麗なんだろうとか、人間では作り出せないような美しい形があるんです。それと秋はやっぱり、だんだん葉っぱが落ちてきて、いろんな木の実が見つけやすくなってくるんですね。なので、ぜひ皆さんも森の中に行ってみて、“これが私にとっての面白い形!”っていうのを探してもらいたいなと思います」
●これからの季節だと、どんな木の実が落ちてそうですか?
「木の実っていうと、ドングリとかクルミが代表的なものだと思うんですけど、これからだと、例えば、誰でもわかるものだと松ぼっくり、あとはモミジバフウも実をつけるんですけれど、それはサクランボのちょっと大きくなったような形で、茶色くて丸い球形をしているんです」
●私、丸いタイプ、好きです! 細長いのもいいんですけど、丸いタイプって女子の心をくすぐるというか、可愛いんですよね(笑)
「あとは、メタセコイアっていう木にも丸い実がついて、柄がついていてサクランボみたいな形なんですよね。それとヒマラヤスギの実とか、松ぼっくり系でも細長い形だったり、もっと小さかったりと、いろんな形があるので、近所の公園でもいいのでぜひ、歩いて探してみて欲しいなと思います」
●ドングリを拾って、その場で楽しめる方法を教えていただけますか?
「クルミのことでいうと、拾ったクルミをその場で食べてみるっていう、つまりテイスティングをしてみるっていうのはオススメです」
●でも、木の実って硬いですよね?
「そうですね。なので、あるいは拾いたてのものを家に持ち帰って割って、食べてみるっていうことでもいいと思うんですけど、やっぱり新鮮な野生のクルミの実って、凄くジューシーで、なんとも言えないほど美味しいんですよ! なので、ひとつは食べてみるっていう楽しみ方があるかなと思いますね」
●よくローストした状態でスーパーとかでは売られていますよね。
「ローストすると、ちょっと香ばしいんですけれども、生のままで食べてみるっていうのは、本当に拾いたてならではの、なんとも言えない野生の味がするので、いいんじゃないかなと思います」
●他にも、例えばドングリは食べても大丈夫なんですか?
「ドングリは、エグくて食べられないものがほとんどで、その中でも食べて美味しいドングリっていうのがあるので、それは同じように茹でて炒ったりして食べるといいです」
●どんな種類が美味しいんですか?
「マテバシイと、スダジイっていうのがあるんですけど、それが食べて美味しいドングリです」
●どんな味がするんでしょうか?
「ピーナッツほど香ばしくはないけれども、イメージとしてはピーナッツに近いですね」
※そんなドングリを、縄文人はよく食べていたと言います。帖佐さんはワークショップの時、受講生にこんなことを聞かれたそうですよ。
「“縄文人はどうやってこの硬い実を割っていたんですか?”って聞かれたんですね」
●私も気になります!
「私も考えてみたんですけど、やっぱり石で割ったんじゃないのかなぁ、どうしたんだろうねぇっていう話をしたんですが、一粒の中に力強く芽が出てくるような、エネルギーがいっぱい溜まっているというか、本当に命の塊なんですよね。なので、縄文人もそれを知っていて、大事な栄養源のひとつとして食べていたんじゃないかなとは思います」
●そういう木の実を食べると、どんな気持ちになるんですかね。動物たちも普段、木の実を食べているわけですけど……。
「そうですよね、それこそネズミとかリスとかが食べている木の実なんですが、クルミでいうと、1個1個のクルミの中に命が凝縮されているんですよね。だから、森の恵みをいただいているような気持ちになるかなと思います」
●そうですよね、だってその木の実からまた芽が出て、木になるわけですもんね! そう考えると木の実って凄いですよね!
「そうですね。結局、種なんですよね。拾って来たクルミを植木鉢に入れて育ててみた時に、初めて芽が出た時の驚きっていうのは凄くあって、あの硬い実がふたつにパカっと割れるんですよね。まず、根っこがグ〜ンって出るんですよ。それで根を張ってから若い新しい緑の芽が上にブ〜ンって出てくるんですけれども、大地に落ちていた一粒のクルミの実が、こうやってふたつにパカっと割れて出てくるっていう、エネルギーというか、生命力というか……。それは毎回、凄くびっくりしますね」
●本当にそうですよね! 私たちだってなかなか割れない殻を、パカっと桃太郎のように(笑)割って、中から芽が出てくるんですもんね。
「栗もそうなんですよ! 栗の形って、とんがっているじゃないですか。3本の小っちゃな毛みたいなのがついていて、そこからブーンって出てくるんですよね!」
●芽が!?
「はい! あと、根っこも!」
●凄いですね! あの実の中では凄いことが起こっているんですね。
「そういうことを知らずに私たちは食べていますけど、考えてみたらそういう、次の命を蓄えている、一粒の実なわけですよね」
※帖佐さんは、植物のある暮らしをサポートする活動もされています。帖佐さんが主宰されている「GREEN FINGERS」、この名前に込められた思いをうかがいました。
「GREEN FINGERSって、植物に触れると植物が元気になっていくっていう手を持っている人のことをいうんですね。それは特別な力を持っているというわけではなく、どんな人でも自然を元気にさせる指を持っていると思っていて、それで個人的に仕事をする時に、GREEN FINGERSっていう名前をつけました。
活動としては、例えば植物をきっかけに自然にもっと目が向くようになるとか、そういうきっかけづくりができたらいいなと思っていて、庭もないし、でもグリーンは育てたいっていう人のアドバイザーというか、“こんなになっちゃったけどどうしたらいい?”とか、“冬はどうしたらいいの?”とか、そういった相談に乗って、植え替えなどのお手伝いをしたりとかを、個人的な活動としてはやっています。
例えば、根詰まりしちゃうので、植木鉢を植え替えて、ちょっと茶色くなった葉っぱを整理して、伸びすぎちゃったところをちょっと切り詰めて……というように植え替えてあげると、本当に植物が、ピカピカしているっていうのはおかしいんですけど、“あ、なんか喜んでいるな!”っていう感じがするんです。“今まで窮屈だった!”っていうのが、“あ〜、よかった!”みたいな感じで、喜んでもらえている感じが毎回するんです。
人間同士も例えば、ちょっと元気のない人に“大丈夫?”って声をかけたり、元気のない人の背中に手を当ててあげるとか、そういったことと同じで、GREEN FINGERSって、植物に限って言っていますけれど、自然と人間との関係でも、関係性の築き方というか、そういうことができるんじゃないかなと思っています」
※植物にも、人間にも、寄り添う気づかいが大切なんですね。では、具体的にはどうすれば、植物が枯れるのを防げるのか、教えてもらいました。
「かくいう私も凄く枯らしているんですよ! だから、失敗すると“こうすると枯れるんだな”っていうのがわかるんですけれど、よくあるのが、水やりを忘れちゃうじゃないですか。もしくは旅行に行っていてしばらく水をやっていないとか、忙しくてなかなか水やりができなかったっていうのが続いて、植物が“水がないよ〜!”って状態の時に、 “あ、忘れちゃった、大変! 萎れてる!”と思って、今度はジャバジャバ植物に水をあげるんですよね」
●あ、まさに私、それです(笑)!
「もういっぱいなのに、これでもかってぐらい、翌日も水をあげたりするんですよね。そうすると極端な、全く水がない状態と、凄く水がある状態が繰り返されると、多少のストレスなら植物は大丈夫なんですけど、あんまりそれが続くと“もうダメです……”って枯れちゃうんですよね」
●耳が痛い。“水やり忘れた!”って思ってしこたまお水をあげて、それでまた忘れて、またあげて……。私、それでした。
「表面の土が乾いたら水をあげるっていうのが、基本ですね」
※最後に、こんなお話をしてくださいました。
「子供たちはね、自然っていうか、植物と仲よくする方法を知っているんですよね。今はもう秋で、葉っぱがどんどん落ちてくる季節なんですけれど、公園で子供たちが遊んでいるなと思って見に行ってみたら、落ちている葉っぱを綺麗に色ごとに、本当に美しく、絵画のように並べていたりして、なんか、大人が教えなくても凄くわかっているんですよね。
だから私があえて言うことはなくて、子供たちに向けて考えるとしたら、自然を、子供たちに楽しんでもらえるような環境を、残していくっていうことが大人の責任というか、私のやらなきゃいけないことかなと思っています」
●大人に向けては、どんなことを伝えたいですか?
「植物ってある意味、私たちのことを見ていると思っているんです。手をかければかけるほど、応えてくれるんです。“あぁ、きょうこの日に、この花が咲いてくれた!”っていうこともあったりして! “私、すぐ枯らしちゃうんです”っていう人が多いんですけど、でも、だからといって植物のないお部屋とかって寂しいし、もっと地球上に緑が増えて、自然が豊かになっていけるように、一鉢から始めて、点が線になり面になるように、トライしてもらいたいなと思います」
●じゃあ私も早速、木の実を拾って来ようと思います! 普通に、プランターとかに植えておけば大丈夫なんですか?
「そうですね、植木鉢に入れて、しばらくは芽が出てこないんですけれども、めげずにずっと水をやっていただくと、最初に根っこがグーンと出て来て、そして春になったら緑の芽が吹いてきます」
●すぐ芽が出てくるわけじゃないんですね。
「そうなんです。それでもし芽が出たらずっと育てられるんですが、落葉樹なので、秋になったら葉っぱが落ちるんですね。あんなに小っちゃくても葉っぱが落ちるんです」
●小ちゃいって、何センチぐらいなんですか?
「例えば1年目で高さが20センチぐらいなんですけど、秋になるとちゃんと紅葉して、黄色っぽい葉っぱになって、落ちてしまうんです。そうするとまた、翌年の冬芽がついて、春になると新芽がわぁっと出てくるので、ぜひやってみてください!」
●面白いですね! 植木鉢でも、ちゃんと四季折々の移り変わりを、小っちゃい木から感じることができるんですね。早速、やってみます!
小さい頃、何気なく集めていたドングリですが、その実には「命」が詰まっていたんですね。今年はそんな木の実を拾って、クリスマスリース作りなどに挑戦してみたいです。
帖佐さんが活動している「BE-NATURE SCHOOL」では「大人の自然塾」やフィールド・プログラム、セミナーやイベントなど、魅力的な催しを行なっています。どんなプログラムやイベントがあるのか、ぜひオフィシャルサイトをご覧ください。
また、帖佐さんが主宰している、人と自然が出逢い、つながる場「GREEN FINGERS」についても、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。