2018年12月1日

わけあって、絶滅しました。
〜その理由に迫る!

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、図鑑制作人・丸山貴史(まるやま・たかし)さんです。

 丸山さんは1971年、東京生まれ。大学卒業後、ネイチャー・プロ編集室の勤務を経て、イスラエル南部にあるネゲブ砂漠で、小型の哺乳類ハイラックスを調査。その後、累計250万部を超える大ベストセラー『おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』シリーズなどの図鑑の編集・執筆などを行なってらっしゃいます。
 そんな丸山さんの新刊が『わけあって絶滅しました。世界一おもしろい 絶滅したいきもの図鑑』! この本もとても売れていて、2018年11月現在、40万部を突破しました! 今回は丸山さんに、絶滅してしまった生き物、そして絶滅しなかった生き物、それぞれの理由をうかがいます。

50キロのツノが原因!?

※そもそも丸山さんは一体なぜ、絶滅に注目したんでしょうか。

「僕が子供の頃っていうのは結構、絶滅動物っていうものに興味があって、実際に(絶滅動物を)紹介する図鑑っていうのは結構出ていたんですよね。ただ最近はなんか、絶滅した動物っていっても恐竜ばっかりで、西暦に入ってから滅びた動物っていうのは取り上げられることが少なくなっていると思っていたんです。
 それで、自分が大好きだったものですから、そういったものをまとめて紹介したら面白いんじゃないかということで(今回の本を書きました)。ちょうど、ダイヤモンド社さんの編集の方が、“絶滅ってどれくらいパターンがあるんですかね? ちょっと試しに、50くらい挙げてください”って急に言われまして、“じゃあ、頑張ってちょっとひねり出してみます”というような形で、こういうことになったんですね」

●確かに気になりますね、絶滅のパターン!

「最近滅びたものに関しては人間が記録を残しているので、割と克明にわかるものはあるんですけど、化石のものについてはほとんど、みんな想像でしかないんです。人間に滅ぼされたって言っちゃえば、全部同じものと言えばそうなんですが、例えばその中でも、人間が連れてきた犬によって滅ぼされただとか、中には人間がカタツムリを導入したことで滅びたものもいますから、そういうふうに細分化していくと、絶滅のパターンが増えていくかなという感じですね」

●“人間が原因”以外のものには、どういったものがあるんですか?

「人間が地球に登場する前に絶滅したものっていうのは、例えば大絶滅と言われているものが過去にだいたい5回あって、5大絶滅って言われているんですけども、一番有名なのが白亜紀の末に起きた、10キロメートルぐらいの隕石が地球にぶつかったことによって、土砂が巻き上げられて地球が暗くなっただとか、二酸化炭素が増えただとか、いろいろな理由が重なり合って恐竜や翼竜、首長竜なんかはみんな、絶滅してしまったんですね」

●例えば、ほかの動物同士でケンカしちゃって絶滅した、みたいなこともあったりするんですか?

「そうですね。古い体の仕組みを持った動物が、新しく進化してきた動物に棲息環境、つまりニッチですね、それを乗っ取られるということはありますね。ただ、意外とそれは多くないんですよ。なんでかっていうと、もう現在、その環境に合わせて適応しているわけなんで、すでに適応しているやつを押しのけて、動物同士が直接ニッチを奪い合うっていうパターンはあまりないんですよね」

●そう考えると、人間って結構、罪深いですね。

「そうですね。人間という種は、1種で滅ぼした数が一番多いというふうに考えられていますし、地球が滅ぼしたもの以外では人間がトップですよね」

●じゃあぜひ、具体的に“わけあって絶滅してしまった”生き物たちにはどんなものがいたのかを教えていただきたいんですけど、私も実際に本を読ませていただいて、非常に気になる生き物がいました! まずは、オオツノジカ! これはみなさんお馴染みの“鹿”ですけども、この本に載っているイラストでもそうなんですが、とにかくツノが大きいですよね。

「名前ぐらいは聞いたことある方も多いんじゃないかと思うんですが、実際に見てみると、今、生きている生き物の中にもヘラジカっていうのがいるんですけども、日本の鹿みたいにツノがアンテナみたいな形じゃないんですね。平べったい、手の平みたいな形になっていて、オオツノジカはその手の平のようなツノをドーンッ! って真横に広げて、さしわたし3メートルぐらいあるんですよ。だけど体の大きさはニホンジカの2倍まであるかどうか、ぐらいなんですよね。それで(ツノの)重さが最大で50キロぐらいになったっていうんですよ。それが頭の両脇についていたら、そりゃあ、首も痛くなるでしょうしねぇ(笑)。森の中なんて、そんなの歩けないですよね」

●なんでそんなにツノを大きくしちゃったのかなっていうのが気になるんですけど(笑)。

「うーん、これはやっぱり、メスが好んだんでしょうね。鹿に限らないですけど、だいたいツノがある動物っていうのは、メスがより大きいものを好むっていう傾向があるんで、どんどん大きいものばかりが子孫を残して、勢いがついちゃうんですよね。
 最初は多分、ツノ同士を突き合わせて闘ったらツノが大きい方が強いとか、実際に役に立った部分はあると思うんですけど、途中からは飾り化しちゃったんじゃないでしょうかね。しかも鹿っていうのは、牛やレイヨウみたいに伸び続けるものじゃなくて、毎年落として新しいツノを作り直すんで、50キロ分のカルシウムやりん酸なんかを体の中からひねり出すと、やっぱり骨ってボロボロになっちゃうみたいなんですよね。
 しかも、そのオオツノジカが滅んだ時代っていうのが、乾燥化が進んで森林が少なくなってきた時代なんで、食べていた葉っぱもちょっと数が少なくなってくると、ツノに使っちゃったミネラルを回収できなくなって、骨粗しょう症で死んじゃったんじゃないかっていう説もありますね」

●いや〜、見栄は張らない方がいいですね(笑)。

「そうですね〜」

デコり過ぎて絶滅!?

※続いては、オパビニアという、なにやら聞きなれない生き物。カンブリア紀に棲息した、4センチから7センチぐらいの海洋生物なんですが、とにかく見た目が不思議なんです!
 シャコのような胴体に、目が5つ、ホース状の口のようなものの先には、何でも掴めるハサミ! みなさん、想像できますか!? この不思議な生き物が一体、どうして絶滅してしまったのでしょうか。

「この生き物はカナダのバージェス頁岩(けつがん)というところで見つかった、いわゆるバージェス動物って言われているグループなんですけど、こいつはどんな動物と近いかっていうのがよくわかっていないんですよね、あまりにも特殊過ぎて! 目が5つっていうのも、複眼の塊みたいな、キノコみたいなものが5個、頭から飛び出していて、前からは掃除機のホースみたいなものが出ているんですけど、これが口じゃないみたいなんですよね」

●口じゃないんですか!?

「下側に口があるみたいなんですけど、その辺もよくわかっていないんですね。横にはヒレがビラビラと並んでいるんですけど、体の下を見るとイボ足みたいなものがついていて、そこでも歩いていたんじゃないか、とも言われていますね」

●ヒレがあるのに、足もある(笑)。

「そうなんです。だから、ちょっといろいろ付け過ぎちゃったんじゃないかって思うんですね。何でも付いていればどんな状況にも環境にも適応できて便利のような気がしますけど、結局、無駄なものを付けていると、そこにエネルギーを取られちゃったりだとか、効率が悪くなっちゃうんですね。
 カンブリア爆発って言われる、一番最初のカンブリア紀に生き物が物凄く適応放散して、いろんな種類の生き物が出てきたんですね。その時にオパビニアは実験的な形に進化したんですけど、結局ちょっとやり過ぎちゃって、子孫を残さず終わってしまったんじゃないかなっていう感じですね。それを今回の本では、“デコり過ぎて絶滅”というふうに言っていますけど、まぁやっぱり、あまりゴチャゴチャ付けるとよくないのかなと思いますね」

●それでは続きまして、ステラーカイギュウ! この子は、ジュゴンですかね?

「ジュゴンやマナティに近い、カイギュウ類と言われているやつですね」

●ステラーカイギュウは大きいんですか?

「7メートルぐらいあったと言われていますね」

●なぜ絶滅してしまったんでしょうか?

「彼らはもともと滅びかけていたんですよ、人間に発見された時点で。彼らはダイカイギュウっていうグループなんですけど、カイギュウ類であるジュゴンとマナティは、主に草を食べているんですね。草といっても、海の中の草なんで、“海草”と書いて“かいそう”と読むんですよ。海藻ではないんですね。
 だから、ワカメや昆布ではなくて、アマモ、つまり海水の中で生えている草っていうのがあるんですね。そういったものを食べているんですけども、ダイカイギュウはワカメや昆布といった海藻を食べられるように、腸が進化したんですよ。だから浅い沿岸の、しかも寒いところにいたんですね。そうするとどうしても分布域が狭まってしまうんですよ。

 日本にも昔はダイカイギュウって結構いて、化石も見つかっているんですけど、人間が現れる前に(ほとんどが)滅びちゃっているんですね。その生き残りがアメリカとロシアの間にあるベーリング海峡っていう、人が誰も立ち寄らないようなところで、たまたま少数生き残っていたんですよ。それを運が悪いことに人間が、たまたま船が難破しちゃって、そこに(生存者が)たどり着いたんですね。そしたらそこに、ちょうど簡単に捕まえられる、デカくて美味しくて、逃げもしないっていう動物がいたんで、それを食って飢えをしのいだんですね。

 そこで終わればまだ何とかなったんですけど……。ステラーさんっていうドイツ人の医者が発見したんですけど、ヨーロッパに帰って“こんな動物がいたぞ”って報告したんですね。そしたら漁師たちが“それはちょっと聞き捨てならないな”って言って、ヨーロッパからわざわざベーリング海峡まで船で狩りに行ったんですよ。そしたら、発見されてからわずか27年で狩り尽くされちゃったんですね。
 しかも悲しい理由としては、例えば1頭を攻撃して、モリとかを突き刺してそのまま囮にしておくと、他の仲間が寄ってきて、本当かどうかはわからないですけど、モリを外そうとしているかのようなそぶりをしたって言うんですよ。そのおかげで、1頭を捕まえてモリを刺しておくと、どんどん次から次にやって来るんで、一網打尽という形で、絶滅に拍車をかけてしまったんですね」 

●そういう仲間思いなところが裏目に出てしまったんですね。

「そうですね。だから、“優し過ぎて絶滅”と今回の本では言っていますけれどもね」

●胸が痛いですね。

強くて頭もよかったのに絶滅!?

※では、私たち人間はどうなんでしょうか。私たちのご先祖様であるホモ・サピエンスとかつてライバル関係にあったネアンデルタール人がどうして絶滅してしまったのか、うかがいました。

●私が小学生の頃は、ネアンデルタール人からクロマニョン人になって、人間になったっていう進化の過程を習ったんですけど、今ではその過程は違うと言われているんですよね?

「そうですね。ネアンデルタール人は、人間というか、ホモ・サピエンス・サピエンスとは近いけれども、一応、別種または亜種ということで、人間の直接の祖先ではないです。何でかっていうと、同時期に生息していたことがわかっているんですよ。ネアンデルタールっていうのは、ヨーロッパの寒いところで数を増やしていて、暖かいところからやってきたホモ・サピエンスと競合して、結果的に滅ぼされたんじゃないか。それも割と最近のことで、2万年ぐらい前まではネアンデルタール人は生きていたんじゃないかって言われていますね」

●テレビの特集で見たんですけれど、ネアンデルタール人は凄く屈強な肉体で、狩りも凄くうまいんですよね。

「しかも、脳も今の人間よりも大きいんですよね。だから頭がよくって、肉体的にも強かったって考えられているんですよ」

●なのになぜ、絶滅してしまったんでしょうか?

「これもひとつの説でしかないんですけども、ホモ・サピエンスは大きな群れをつくることができたんですね。それに比べてネアンデルタール人は、家族もしくは10人以下で暮らしていたっていうことがわかっているんです。
 それは何でかっていうと、今の人間、つまりサピエンスっていうのは、みんなで共通の価値観みたいなものを共有することができた。それによって、目先の肉だとか利益だけじゃなくて、自分たちのコミュニティみたいなものをつくることができた。そうするとそこに、みんなが共通に崇めるもの、“神様”のような概念を考えることができたんじゃないかって言われていますね。
 そうすると、同じ神様を共有する者同士ですと、血縁関係がなくても協力して立ち向かうことができるんです。普通だったら、知らない他人のために命をかけたりはできないと思うんですけど、そこに上位の概念である“神様”をおくことによって、みんなが一致団結してネアンデルタール人と戦い、勝利したんじゃないかっていう説がありますね」

●ホモ・サピエンスがネアンデルタール人を絶滅させた、ということなんですね。

「今ではそう考えられていますね。やっぱり、似たような生き物が同じ場所で暮らすことは、なかなか難しいんですよ。なので、ほんのわずかでも優れている方が全部、駆逐しちゃうっていうのが多いですね。それで、ある程度少なくなってきて、ネアンデルタールとネアンデルタールの間にサピエンスが入ってきちゃうと、なかなかネアンデルタール人同士で交流ができなくなってしまうんです。ほかの野生動物でもそうですけど、一部の森で生きていても、他の森を道とかで分断しちゃうと、後尾ができなくて滅びちゃうんですよ。そういったことが起きていったんじゃないかと思いますね」

見てみたい絶滅動物は?

※それでは、今度は絶滅しなかった生き物について、オウムガイという、まるでアンモナイトのような形の貝がいるんですが、実はある意外な秘訣で生き残ったそうなんです。

「まあ、貝といっても巻貝や二枚貝ではなく、タコやイカに近い仲間なんですよ。ですから、触手みたいなものがいっぱい出ていますよね。触手が50本とか100本とか出ているらしいんですけど、貝殻はまん丸くて、そこから短い触手がたくさん出ていて、動きが物凄く鈍いんですよ。深海にフヨフヨと浮かんでいて、活発な生き物ではないですね」

●なぜ、その子が生き残れたんですか?

「“やる気がなかった”っていうふうに考えられているんですが、なぜやる気がないかっていうと、昔はやる気があるオウムガイの仲間もいたんですよ。そういったものは浅い海に棲んでいたんですね。ただ、浅い海っていうのは恐竜が滅びた時の隕石によって凄く影響を受けて、浅い海にいた生き物は大体、滅んでしまったんですね。だから、やる気のあるオウムガイは滅んでしまって、やる気がなく深海でダラダラしていたものが、たまたま現在まで生き残っているっていう、不思議ですよね」

●何が功を奏すかわからないですね(笑)!

「本当にそうですね!」

●今回、絶滅してしまった生き物、そして絶滅を免れた生き物の本を出されたわけですけれども、絶滅について改めていろいろと書いてみてどうですか、なにか感じたことはありますか?

「そうですね、人間が滅ぼしたものっていうのは理由がわかっているんで、この本でも数多く載せているんですけど、人間が滅ぼしたことを、こんなふうにふざけた感じで書くのはどうなのかなっていう気持ちもあります。けれど、絶滅した動物を知らずに、どうして絶滅したかも知らずに子供たちが忘れてしまうよりは、まずはこういった形でも読んで、“こんな動物がいたんだ!”“こんなことで絶滅してしまうんだ!”っていうことをまずは知ってもらえればと思いますね。それから本格的に勉強したければ、もうちょっと詳しい本はいくらでもありますので、お子さんたちには絶滅動物っていうものに興味を持って欲しいと思いますね」

●では最後に、もしタイムマシーンがあったら、絶滅する前に見ておきたかった生き物は、どんな生き物でしょうか?

「そうですね……うーん……どれも見たいんで難しいんですけどね(笑)、やっぱり僕は哺乳類が一番好きなので、そんな中でも陸上で一番大きかった哺乳類である、パラケラテリウムですね」

●どんな生き物なんでしょうか?

「サイに近いグループって言われているんですけど、ゾウの体に、太いキリンの首をつけたような、そんな生き物ですね。体重はアフリカゾウの2倍以上あったんじゃないかって考えられていますから、相当な巨体ですよね! 最大級の恐竜に比べるとちょっと見劣りしちゃいますけど、僕はやっぱり哺乳類でデカいっていうパラケラテリウムを一番、見てみたいですね」

●かなり強そうですね!

「頭にゴツゴツした突起があって、頭が固くなっていて、オス同士は首を振り回して、頭を打ち付けて闘っていたんじゃないかっていう説がありますね」

●凄いワイルドですね(笑)。

「今のキリンもそうですけどね」

●ちなみに、なんで絶滅しちゃったんですか?

「彼らはやっぱり、陸上動物としては体が大きくなり過ぎて、エネルギー収支が合わなくなったみたいですね。それに、やっぱり乾燥化も原因ですけども。結構、乾燥化で環境が変わって滅びたっていうのは多いんですよね。そんな中でもやっぱり、体が大きすぎると必要なエネルギーが多いので、もろに影響を受けてしまうんでしょうね」

●残念ですね。食べるものが豊富にあったら、今でも見られたかもしれないのに……。

「ただ、ここまで大きい動物だと、今の地球ではどこで暮らせるかなって考えると、なかなか思いつかないですね」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 見栄を張りすぎて、デコり過ぎて、意外な理由で絶滅してしまった生き物たち、興味深かったですね。そして、多くの生き物が人間の経済活動によって絶滅してしまい、今もたくさんの生き物が絶滅の危機に瀕しているということを忘れてはいけないと思いました。

INFORMATION

『わけあって絶滅しました。世界一おもしろい 絶滅したいきもの図鑑』

新刊『わけあって絶滅しました。世界一おもしろい 絶滅したいきもの図鑑

 ダイヤモンド社 / 税込価格1,080円

 どんな生き物だったのかが一目でわかる絵がたくさん載っていて、見ているだけでも楽しいですよ! 詳しくはダイヤモンド社のホームページをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「(MEET) THE FLINTSTONES / THE B-52's」

M1. WALK THE DINOSAUR / WAS (NOT WAS)

M2. LOVERS OF THE WORLD / JERRY WALLACE

M3. ENDANGERED SPECIES / DIANNE REEVES

M4. Little Big Town / TEXLYNX

M5. SURVIVOR / DESTINY'S CHILD

M6. やつらの足音のバラード / ムッシュかまやつ feat. 布袋寅泰

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」