2018年12月29日

総集編「ベスト・オブ・ザ・フリントストーン2018」
第2弾〜気付く。生きる〜

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンは、総集編「ベスト・オブ・ザ・フリントストーン2018」第2弾! 今年2018年の下半期に出演してくださったゲストの中から、番組スタッフ全員が本当に悩みに悩んで、なんとか選び出した4人の、また聴きたいコメントを再編集してお届けします!
 今回は、自然科学ライター・川上洋一(かわかみ・よういち)さんの、自然と共存していた江戸の町づくり。レミオロメン・藤巻亮太(ふじまき・りょうた)さんの、自分を変えたヒマラヤ体験。国際環境NGO「グリーンピース・ジャパン」・石原謙治(いしはら・けんじ)さんによる、マイクロプラスチック汚染問題。そして、旅人でエッセイスト・たかのてるこさんの、旅は世界最大の学校。以上の4つのお話をお送りします。

未来に自然を残すために(川上洋一さん)

※まずは今年2018年8月にご登場いただいた、自然科学ライター・川上洋一さんです。あのテレビの人気バラエティ番組で、大都会新宿の屋上に生き物たちを呼び戻すプロジェクトにも参画中。大都会・東京に生息する生き物に、本当に詳しいんです! そんな川上さんが『東京いきもの散歩〜江戸から受け継ぐ自然を探しに』という本を出されたときに、江戸の人たちと生き物の、ちょっと粋な付き合い方についてうかがいました。

「江戸の人は生き物がやって来たりするのを風物詩として感じていて、例えばホトトギスの鳴き声が夏に(その年に初めて)聴こえてくるのを“初音”って呼んで、それを聴くのを楽しみにしていたり、新そばを食べに行って、雁(がん・かり)が渡ってくるのを見ながらそばを食べるのが楽しみだったんです。結構そういう形で、生活の中に潤いとして生き物の動向を取り入れていたんですね」

●粋ですね!

「そうなんですよ、本当に!」

●狭いスペースではあったけど、そこにうまく自然と人々が共存している町づくりができていたっていうことなんですね。そうやって江戸時代から受け継がれてきた自然ですけども、これから私たちが未来に自然を残していくにあたって、どんなことを意識していけばいいでしょうか?

「そうですね、江戸の人たちと同じような、センスっていいますかね……結局、生き物が一緒にいるのを邪魔だとは思わなかったわけなんですよね。その中から楽しみを見つけていた。例えば、ホタルがいるような水辺っていうのには、やっぱり蚊もいるんですけど、その蚊をなくしてしまえば、ホタルも一緒にいなくなる、というような感じで、“これがいるためには、あれはちょっと我慢しておこう”とか、そういうような部分はあったと思うんですよね。

 ですから、ちょっとした余裕といいますか……蝶々が飛んで来る町っていうのは、どっかで蝶々が木の葉を食べているわけですよ。そうすると、どこかで蝶々は害虫として棲んでいるわけですよね。でも、それを害虫だからといって退治してしまったら、もう蝶々なんか飛ばないような町になってしまう。

 じゃあ、それぐらい食べられるのはちょっと我慢しようとか、そういう所から落ち葉が落ちてくるのもちょっと我慢して、自分の家の前ぐらいはちょっと片付けようとか……。そういう、自然と譲り合うような精神が必要なんじゃないかなと思うんですけれどね」

チューニングされていく!?(藤巻亮太さん)

※続いて今年2018年9月の放送から、レミオロメン・藤巻亮太さん。藤巻さんは、この番組にもご出演いただいたことのある登山家・野口健さんと仲よくなったことをキッカケに、山登りにハマってしまいました。そんな野口さんと一緒に行ったヒマラヤで、とっても疲れているはずなのに、逆に元気になっていく、そんな不思議な体験をしたそうです。

「レミオロメンで全都道府県ツアーっていうのをやっていて、とにかく1年中、もうライヴばっかりやっている年で、もうライヴに疲れていてボロボロの状態で、その翌日にヒマラヤに行ったんですよね。だから、“これ、絶対に僕、倒れるんじゃないかな!?”と思って、もう不安しかなかったんですけど、これが凄くて、(ヒマラヤに)着いてから歩き始めたら、逆に元気になってくるんですよ! やっぱり自然の力って凄くて、もうライヴも1年バーっと駆け抜けて、吹き出物で顔にブツブツがあったりで、すごく疲れたような感じでゲッソリして行ったんですね。
 ですけど、1日トレッキングで7〜8時間歩いたかな、村から村までだいたい10キロぐらいの山道を歩いて行くわけですよ。そうすると次の村について、そこで泊まって、また高度を上げて登って……。普通に歩いたら疲れそうなものなんですけど、自然の中を歩いているとね、癒されていくんですよね! それは凄くびっくりしました」

●都会で使う力と山で使う力は、違うものなんですかね?

「よく、“気がいい”って言うんですかね、ああいうことって本当にあるんじゃないかなって思うぐらいだったんですね。僕、ギターを弾きますけど、チューニングしないと音も不協和音になってくるんだけど、そういう、自分自身がチューニングされていくような感じでしたね」

●あー、なるほど。整っていく感じなんですね。

「整っていく感じがありましたね」

●山ってやっぱり、凄いですね! 他にも、自分の中で変わったことはありますか?

「歩きながら健康になっていったってこともあるんでしょうね。規則正しい生活になり、早く寝て早く起きて、睡眠もたっぷりとって、美味しいものを食べて……っていうのもあったんでしょうけど、それとは別に、当時20代をレミオロメンで駆け抜けてきて、最初はやっぱりやりたいことから始まって、責任も出てきてやるべきことが増えてきたりとか……。

 特に20代のよさって、駆け抜けることだと思うんですけど、駆け抜けるって言っても限度があるよねっていう時期もあって(笑)、だんだん後半になっていくと失速していくんですよね。当然、疲れてきて、何に疲れているかもわからなくなって、最後には何が苦しいのかもわからなくなってくるんですよ。仏教用語で言う“無明(むみょう)”というか、なんかこう、何に悩んでいるのかがわからない状態に多分、なっていたんだと思うんですけど……。

 野口健さんと行ったヒマラヤの旅っていうのは、10日から2週間ぐらい歩くんですよね。そんな経験って今までしたことがなかったんですけど、本当に大自然の中を2週間ぐらい歩いた時に・・・(ヒマラヤは)日本からだと、物理的にも凄く遠い場所ですよね・・・日本で音楽活動をしている自分と、精神的にも凄く離れられたというか、音楽をやっている自分を初めて客観的に見ることができて、歩きながら“あっ、俺、こんなことにこだわっていたな”とか、“うわぁ、こういうことを大事にしていたんだけど、そんな大事じゃなかったかもな”とか……。

 要は、思い込み、ですかね。それで自分自身を苦しめていたんだなっていうのが、2週間ぐらい歩くことで凄く整理できたんですね。今でいう座禅とか冥想とか、あれって今、流行っているっていうじゃないですか。ああいうのに近かったんじゃないかなって思うんです。
 結局、2週間何をしたかっていったら、ひたすら歩いただけなんですけど(笑)。歩いていると、そういうものに近くなるんですよ。右足と左足を交互に前に出しているだけですから、単純作業なんですけどね、登山って。でも、その単純作業の中に、自分自身が癒されていくものがあって、心の中の絡まった糸がほどけていくような感覚があったんです。30代の僕にとって、静かなんだけど、衝撃的な出来事でしたね」

深刻なマイクロプラスチック汚染(石原謙治さん)

※今年2018年で、興味深いニュースのひとつに、スターバックスコーヒーが2020年までにプラスチック製ストロー廃止する、というものがありましたよね。今、それだけ大きな問題になっているプラスチックですが、その中でも、小さなプラスチックゴミ、つまりマイクロプラスチックによる汚染はかなり深刻な状況になっているんです。
 そこで、今年2018年9月に、国際環境NGO「グリーンピース・ジャパン」・石原謙治さんに、マイクロプラスチックとはどんなものなのか、そしてどんな問題があるのか教えてもらいました。

「マイクロプラスチックというのは、5ミリ以下の小さいプラスチック片のことを言うんですけれど、マイクロプラスチックには実は2種類あります。ひとつは、もともと小さいサイズで作られたマイクロプラスチックです。例えば、洗剤や歯磨き粉の中にツブツブを見たことがあるかもしれませんが、それは、昔はプラスチックで、研磨剤として使われていました。こちらに関しては、今では日本でもたくさんの化粧品メーカーや日用品のメーカーさんたちが、マイクロプラスチックは自主規制するという動きにはなっています。

 もうひとつは、大きな製品が小さいマイクロプラスチックになってしまうというものです。例えばレジ袋やペットボトルといったものが、細かく砕かれてしまうということがあります。ベランダに干してある洗濯物に使われている洗濯バサミが、1年ぐらい経つとパリパリになってしまうんですけど、実は紫外線によってプラスチックがパリパリになって砕けてしまうということなんですね。それが他の製品にももちろん適用されまして、加えて波とか風とか、そういったものでバラバラになって、大きな製品が小さなマイクロプラスチックになってしまう、ということが起こっています」

●確かに(洗濯バサミが)パリパリになって手についたりして、“あれっ、プラスチックがこんなに……”なんて思うんですが、あれが海の中に同じようにあるということなんですね。

「はい。先日に行った荒川でも、たくさんのマイクロプラスチックがありました。私も非常にびっくりしたんですけれど、そうした大きな、日常的なプラスチックがマイクロプラスチックになっているんだということを、まじまじと感じました」

●マイクロプラスチックだと、大きなプラスチックごみを食べられないような海の生き物も食べちゃうんじゃないかと思うんですけれど、どうなんでしょうか?

「そうですね、海の魚とかもプラスチックを取り込んでいるんですけれども、例えば東京湾でカタクチイワシを採取した研究者の報告によると、東京湾のイワシの8割からマイクロプラスチックが検出されている、という発表がありました。なのでマイクロプラスチックは、実は私たちの身近なところでもかなり広がっているということが、よくわかるかと思います」

●じゃあ、私たちが食べている魚の中にマイクロプラスチックがあるとすれば、私たちも気づかない間にプラスチックを食べちゃっている、ということですか?

「そうですね。魚とか貝とかの中にプラスチックが取り込まれていますね。魚などは、取り込まれたプラスチックは内臓にあるので、それを取り除けば、だいたいは取り除けるんですけれども、知らないうちに(私たちがプラスチックごと食べてしまっている)ということは十分にありえるかなと思います」

●そうすると、海の生き物が可哀想、だけじゃなくて、実際に私たちの生活にも、かなり大きな影響を与えつつあるということでしょうか?

「そうですね、それが今、一番心配されていることだと思いますね。実は海の生き物に対する被害というのはいろいろとわかってきたんですけれど、それが人体に対してどういった影響を与えているのかというのは、まだまだわからないことが多いんです。これからの研究の課題となっていますので、非常にダークなところがたくさんあるかと思います」

●日本の周辺がマイクロプラスチックのホットスポットだというのは、本当なんですか?

「はい。環境省が行なった調査によると、日本の近海のマイクロプラスチックの量というのは、世界の平均の27倍もあるということで、非常に高いと言われています」

●そうすると、私たち日本人はより一層、マイクロプラスチックに対してシビアに考えていかなければダメですね。

「それに加えて、日本はひとり当たりのプラスチックの使用量が世界で2位なんですね。なので、たくさんプラスチックを使っている経済大国として、この問題をどう考えていくのか、深刻に捉えないといけないと思います」

●何か、日本が国全体として対策などはとっているんですか?

「今年2018年の6月に、G7による会議があったんですけれども、そこで“海洋プラスチック憲章”というものが提案されました。しかし、これに日本とアメリカだけが署名しなかったんですね。それが国内・国外のメディアでたくさん報じられて、今のプラスチックをめぐるムーブメントも、そこを契機に起きていると考えられます」

●そうなんですか!? だって先ほど、日本はプラスチックに関して考えていかなきゃいけない状況だってわかったのに、なぜその憲章にサインをしなかったんでしょうね?

「政府によると、産業界との調整が間に合わなかったということを述べているんですけれど、先日やっと環境省が“これからの方針にG7の海洋プラスチック憲章の内容を反映していく”というコメントはしているようです」

*G7サミットで署名を見送ったが日本政府ですが、その後、国内外から「プラスチック問題にしっかり取り組んでほしい」という要請を受け、世界のプラスチック対策をリードする方向に進んでいるそうです。今後、日本政府がどんな対応をしていくのかにも、ぜひ注目していきましょう。

旅は世界最大の学校!!(たかのてるこさん)

※最後にご紹介するのは、今年2018年8月にご登場いただいた、旅人でエッセイスト・たかのてるこさんです。たかのさんは、世界65カ国以上を訪れた旅のスペシャリストで、数々の紀行エッセイの本を出版。中でも2002年に出した『ガンジス河でバタフライ』は、宮藤官九郎さん脚本、長澤まさみさん主演でテレビ・ドラマにもなりました。そして今年は『生きるって、なに?』という本を出されています。
 そんなたかのさんは、ダライ・ラマに会うためにチベットエリアを旅した時に、立ち寄った神社仏閣で「ダライ・ラマに会えますように」とお祈りをしていると、地元の人にある意外な言葉を言われたそうです。

「“えっ!? 神社・仏閣って、私利私欲を祈る所ちゃうの!?”って思ったんですよ」

●私もそう思っちゃっていました(笑)。違うんですか?

「そしたらね、“世界の幸せに君も含まれているんだから、世界の幸せを祈っとけばいいよ。何で自分ひとりだけ抜け駆けしようとするんだい?”って言われたんですよ。彼らは仏教の人たちなんで、輪廻転生を信じていて、日本でも『前前前世』っていう歌が流行りましたけど、例えば家畜のヤギとかに接する時も、“前世では(そのヤギは)自分のお母さんだったかもしれない……!”っていうような感じで接するんですって。私が人間限定で生きていることも小っちゃいって言われてね。

 初詣で家内安全とか祈るじゃないですか。それはいいことだと思っていたんですよ。確かに悪いことではないんですけど、でも、あの初詣に行く何千万人っていう人がみんな、“うちの家だけが、安全で幸せでありますように!”って祈ろうと思ってズラーって並んでいると思ったら、“小っちゃいな〜!!”って、思いません?」

●そういう風に聞いちゃうと、確かに小っちゃいかもしれない(笑)。

「“ウチの家だけ……!”とか限定せずに、みんながみんなのために祈れたら、世界が悪くなりようがないと思ったんですよ。そんな、自分と自分以外の家族とを分けないで、ねぇ」

●でも、どうやったら、そういうモチベーションになれるんですかね?

「やっぱり、みんながツブツブになってしまえば、同じなんですよね。粒子っていう単位にすると、人って、机だろうと空気だろうと同じで、宇宙から見たら点々が濃いか薄いかだけの差なんですよ! そのことを思うと、人ってつい、“あの人は優れていて、私ばっかり優遇されへんわ……”とか思いがちですけど、“ツブツブになれば一緒なんですからね!”っていう気持ちを持つことができましたね」

●旅を通して今、一番感じていることはありますか?

「小学校とか中学校とか、いろんな学校に通いましたけど、旅が世界最大の学校でした。これ以上に私にものを教えてくれた学校はなかったなぁと思うんで、老若男女みなさんに旅を勧めたいなぁっていうのは、思いますね」

●どんなことを(旅から)教わったんですか?

「私、人間には2つの“目”が必要だと思っているんですよね。それは“虫の目”と“鳥の目”。日常の没頭している時っていうのは、虫の目になっていると思うんですよ。家事をやっているとか、お仕事をしているとか、子育てとか勉強とか、それら全部は虫の目で、目の前の土をかくのに一生懸命っていう。もちろん、それも大事なんですけど、それだけだと学校とか職場でうまくいかなくなっただけで、もう絶望というか、辛過ぎる、みたいな……。過労自殺をされるかたのニュースを見ると、胸がぎゅーっとなるんです。会社に行くか死ぬかの2択とか、そのくらい狭まってしまうんですよ、虫の目って!

 でも、旅に出ると視野がぐっと広がって、本当に鳥が大空を舞いながら、下でいろんな人たちが生きている世界を俯瞰しているような。“あ、みんなで生きているんやなぁ。自分が生きている世界が全てじゃないんだなぁ”とか、“日本だけが地球じゃないんだなぁ”とか思えるようになるんです。本当に広い視野を持てるので、“辛かったら逃げろ!”って言いたいですし、人生を生きていくのに、いろんな知恵をくれるツールだと思いますね」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 自然と共存した江戸の町作り、自分を変えたヒマラヤ体験、マイクロプラスチック問題、旅は世界最大の学校。どのエピソードも心に残りました。マイクロプラスチックの問題は、来年2019年も引き続き注目していきたいですね。

INFORMATION

 今回、再登場いただいたゲストの最新情報などは、下記のサイトをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「(MEET) THE FLINTSTONES / THE B-52's」

M1. オワリはじまり / かりゆし58

M2. やさしさに包まれたなら / 荒井由実

M3. 日日是好日 / 藤巻亮太

M4. HAVE IT ALL / JASON MRAZ

M5. THE 3R'S / JACK JOHNSON

M6. さすらい / 奥田民生

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」