今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、極地建築家・村上祐資(ゆうすけ)さんです。
村上さんは1978年生まれ、横浜市出身。東京大学大学院で建築学を学ぶなか、「地球上の厳しい環境の地にこそ、美しい暮らしがあるはずだ」という思いが生まれ、南極観測隊・越冬隊として昭和基地の閉鎖的な生活などを体験。また、アメリカの火星協会が主催する「模擬火星実験」のクルーに、日本人としてただ一人選ばれ、“日本で最も火星に近い男”と呼ばれるようになったそうです。
そんな村上さんが、いま進めているプロジェクトが「シラセ エクスペディション・ゼロ」。南船橋に係留されている、現役を引退した南極観測船「SHIRASE」の中で、2月23日から日本初の、民間による宇宙生活実験が始まるんです! 何を目的とした、どんな実験なのか、なぜSHIRASEなのか!? その全貌に迫ります!
※気になるプロジェクトの全貌をうかがう前に、まずは「なぜ極地なのか」「なぜ建築なのか」そして「なぜ宇宙なのか」、その根底にある思いからうかがいました。
「宇宙の建築を考える場所って日本にもなくて、世界には1箇所あるんですけど、ほとんどないんですよね。僕が(建築を)やっている中で一番、どうしても気になっていたものっていうのが、“分厚い鎧”ですよね。それを人がまとった時に、その中で人はどれくらい耐えられるのか。
そこで自分がフィールドに出て行って、極地って呼ばれる場所ですね、いろんなものがそぎ落とされた中で、命を預かるってことが一番、住まいの原点だと思っていますから。そこに自分自身が飛び込んで行って、滞在するんじゃなくて、住む時間の中に身を置きたいなと思っていたんです。それをこの15年間ぐらい、実はやってきまして、だいたいトータルで1000日ぐらい極地に住んでしまったことになるんですけどね(笑)。
たまたま、凄く古い建築雑誌の中に、あるインタビュー記事があって、それが“バイオスフィア2”という、1990年代に実際にあった結構壮大なプロジェクトでした。アリゾナの砂漠で、地球のありとあらゆる要素、海だとか熱帯雨林、農場とか、そういうのを全部ひとつの入れ物というか、その中に閉じ込めて、空気の出入りもないんですよ。
本当の意味で、空気や食べ物すら、水も何もかもを自給自足している中で、男女8人の研究者が2年間住み続けたんですね。そこまで壮大なことをやったっていうのは、人類史を見てもなかなかない。そういうプロジェクトをプロデュースした、ある生物学者のインタビュー記事がなぜか建築の本の中にあったんですね。
それを見た時に、僕は嫉妬したんですよ、多分。“なんで建築の人じゃない、生物学者の人が、人間が生きる原点というか、命を預かるところに一番近くでタッチしているんだ!?”って思ったんです。その人のインタビューの最後に、“いずれ人が宇宙の、別の惑星に住むような時になったら、こういったものがモデルになる”って書かれていて、多分リップサービスだと思うんですけど、僕はバカ正直に“おお〜!!”と思っちゃったんですね(笑)。“なるほど、宇宙の住まいを考えることをやれば、モヤモヤしなくてすむんだ!”と、そういうのがきっかけだったんですよね」
※そこで、まずは地球で極限の状態を体験できる「南極」での観測越冬隊に参加した村上さん。そこでの共同生活で、こんな事件が起こったそうです。
「いろいろ(今までに起きた問題は)ありますけど、“カルピス問題”っていうのがありましたね」
●カルピス問題!?
「よく、何かの景品で“〇〇1年分!”とかありますけど、それと同じようにカルピス1年分をちゃんと持って行ったんですね。それである時、僕らは毎日、1日一回ミーティングを食事の後にやるんですけど、結構真剣なオペレーションの話とかいろんなことをするんですけど、その中でシェフが“緊急の議題があります……”と言ったんです。“このままでは、カルピスがなくなります、どうしますか!?”。
すると、そこでいろんな意見が出るわけですよ。“ああ、それは大問題だよ!”“カルピスがなければ僕らは生きていけない!”みたいな話になって、“じゃあ、ここからセーブして最後まで持たせるようなペースでやるべきだ”って言う人もいれば、“いやいや、お前ら何言っているんだ。ここは南極だ。なくなったらなくなった時に考えるのが俺らの本当の底力だ!”とか……カルピスですよ(笑)!? っていう議論でああだこうだ言って、最後に多数決を取って、一応、(カルピスを)維持する派というのがその時の結論になりましたけどね。
やっぱり、いろんなミッションをこれまでやってきましたけど、人間って“ないもの”には気付くんですね。“あるもの”には気付きにくいんですよ。見渡せばいっぱい、物があるはずなのに、“あれがない、これがない”。やっぱり、ないものを見つけがちなんですよね。一回、ないものに気付いちゃうと、気になって気になってどうしようもないっていうものが、どんどんストレスになっていっちゃうんですよ」
※そんな村上さん、南極に行った後、「マーズ・ソサエティ」というプロジェクトに参加します。一体どんなプロジェクトなんでしょうか。
「耐えられるはずの宇宙飛行士が、どうも半年ぐらい(ミッションを)やっていくと、ちょっと弱音を……みたいな状況が段々見えてきたんですね。火星に行くミッションって3年はかかるんですが、そうなると、未知の世界なんですよ。これはやっぱり、もうちょっと極限の状態で、人間が火星みたいな場所でどうなるかを知っておかないと、(火星に)送り出せないんじゃないか、というのが課題として上がってきたんです。
“地球にある火星”って呼ばれる場所が実はいくつかあって、北極とか、アメリカのユタの砂漠、ハワイの火山の近くとか、そういうところに“ここは火星だぞ”ということで基地を建てて、人を住まわせるっていう実験を“マーズ・ソサエティ”というアメリカの研究団体がやり始めていたんですね。僕はその中の選考過程で1番に選ばれてしまったんですよ。それでそのミッションの中で副隊長になったわけなんですが……」
●どうでした、インターナショナル・チームは?
「もう、だんだん僕の特技みたいになってきちゃっているんですけど、ファースト・インプレッションでだいたい“この人がこういうことをしでかすな”っていうのが想像つくようになっちゃっているんです。これはね、海外の人の方がピタリと当たるんですよね。なぜかっていうと、人間には関心事と無関心事っていうのがあるんですが、そういう、何かを強くやりたいっていう人、例えば“火星に行きたい。そのために僕はこういうことをやってきたんだ!”っていう人は、会った瞬間に自分の関心事を面白おかしく喋ってくれるんですよ。
でも、ミッションをやっていく、これから一緒に生きていくってなった時に、僕は大体そこは無視しているんです。それよりも彼が触れなかったことや、彼がどういうところで無関心だったかっていうところが、長くミッションをやっていく上で必ず、危ないシーンで出てくるんですよね。だから、そういう意味ではめちゃめちゃ無関心の領域がデカい人たちが来ているっていうのも、国際ミッションの特徴かなっていうふうに思いますね。
ミッションの中での関心事っていうのは、要はいわゆる“クレーターに行きました”“こういうサンプルをたくさん採りました”あるいは、“報告書でいい文章を書きました”とかっていうのはもう、自分の名前も残れば、ミッションとして大事な成果になっていくわけですよね。これがもうプライオリティの一番上だと思うんですが、それと比べて日々の雑用、掃除とか皿洗いとか、そういったものっていうのは、別にやっても褒められないし、やっても名前は残らないし、っていうようなところって、最初はみんな、いいクルーであろうと思うのでやるんですよ。だけどいつの間にか、やらない人が増えていく。それで、誰かがしわ寄せのようにやっている。
それで、ここで驚くのが、(クルーはみんな)賢い人たちなので、普通に考えれば、食べた食事の回数と人数を割れば、だいたい自分がどれくらいの回数、皿洗いをしないとバランスが悪いかって明らかにわかるじゃないですか。だから、“わかっちゃいるけど忙しくてやってないのかな?”って、皿洗いをやっている人は思うんですけど、これがね、驚くぐらい全然わかっていない」
●(笑)。
「ある時、心理学のモニタリング試験がテーマになったんですよ。そしたらもうね、ものの見事に(意見が)割れて、皿洗いをやっているクルーは“今は最悪の状態だ”と見ているわけですね。“なんで私ばっかり……”みたいに思っているんですけど、かたや別のクルーは“今、うちのチーム、最高の状態だよね!”って言っているわけですよ! まあ、それはそうですよね。自分はやりたいことに専念できていて、“みんな(私たちのために)やってくれているんだ!”と。そう見てる!? みたいなのがわかったっていうのは、結構びっくりすることなんですね。
ただ、(皿洗いとかを)やって不満を溜めていっても、結局どこかで爆発するんですよ。不満を溜めている人ってピリピリするわけですね。やってない人は、今が最高の状態だと思っているから、なんでピリピリしているのかわかっていないんですよ。っていうギャップの中で、いろんなことが起きるんです。なので、そこで何ができるかっていったら……ほどほどに、やる。
僕なんかは結局、皿洗いをやっていたんですけど、別に好きではないですけど、楽しそうにやっていたんです。皿洗いもいろいろと考えながらやれば、楽しくなるんですよね。それは南極観測隊に通じるものですけど、誰かのためにやっぱり継続していく力だと思うんですよね。なので、楽しみながら背負わない程度にやるっていうのは多分、必ず必要になると思います」
※村上さんが進めている日本初の、民間による模擬宇宙生活実験「シラセ エクスペディション・ゼロ」。このプロジェクトは、南船橋に係留されている、退役した南極観測船「SHIRASE」の中で実施されます。
実験では船内の一部を、火星を目指す宇宙船と宇宙空間などに見立て、観測隊員が使っていた狭い部屋を宇宙船内の居住スペース、機密性のある扉の向こうを宇宙空間、そして計器類が並ぶ部屋を、地球側の司令室と想定。
また、火星と地球の通信には6分間のタイムラグが発生するということで、それを再現したり、食事は宇宙食を想定したフリーズドライ食品、シャワーもひとり3日に1回と、水の使用も制限。さらに宇宙服も用意するなど、本物の宇宙さながらの環境を再現します。
今回の実験では、隊長の村上さんほか、エンジニア、ジャーナリストなど6人が2週間、閉鎖的な空間で生活することになっています。
さあ、それではさっそく宇宙生活実験の準備が進んでいる「SHIRASE」の中を、村上さんに案内してもらいましょう!
「今、ここは宇宙船の中ですよね。ここからは、宇宙船の外に出ます。実際、例えば“宇宙船の外に隕石がぶつかって何か破損しました”とか、破損まではいかなくても、“電気系統がなんかおかしいぞ?”ってなった時に、実際に外に行かなきゃいけないことも、シチュエーションとしてはあるわけですね。そういった時は、毎日出て行くわけじゃなくて、そういうイレギュラーなことが起きた時ですけど、そういう場合は外に出ます。その際は宇宙服を着用します。今から、その宇宙船エリアに出て行きます」
*私たちは急な階段を降りつつ、宇宙船エリアに出ました。
「このエリアで宇宙服を着替えます」
●今回のプロジェクトは実際に、そういう服みたいなのはあるんですか?
「はい。まだ出来ていないですけど準備中で、自分の視界が制限されたりとか、今ですらちょっと(階段を)降りるのが大変じゃないですか。これがヘルメットとかで視界が制限されたり、音が制限される……。降りるだけでももっと難しくなっちゃったりとか。
例えば手袋でボルトを閉めたりするときに、(宇宙服を着ていなかったら)10分ぐらいで終わる作業が30分も40分もかかる。ボルトを落としでもしたら、僕らは普段、指の感触から探したり出来るじゃないですか。それも出来なくなったりとか、いろんな制約がでてきます。そういったところをシュミレーションする。その中で、いかに仕事ができるかっていうところが、宇宙服を着る意味ですね。それで、ここの扉が閉まっていて、ここを開けると、この先が宇宙です」
●おお〜!
「この先は宇宙服を絶対に着なきゃいけない。なので、着た状態でここを開けなきゃいけないんですね」
*そして私たちは、宇宙に見立てたエリアをしばらく歩きました。
「それじゃあ、地球エリアに戻りましょう」
●いや〜、なんか安心しますね。仮想宇宙の無機質なところから、ちょっとでも人の香りのするところへ戻ってくると、人間って安心するんですね。
「僕が初めてこういう閉鎖実験をやった時って、筑波宇宙センターの中にある、映画『宇宙兄弟』のモデルにもなった場所なんですけど、そこに僕は被験者として1週間入っていたことがあるんですね。その時も、出てきた後にですね、たった1週間ですよ! 1週間の間、ニュースとかわからないので、新聞を読もうとするじゃないですか。そしたら新聞が、気持ち悪くて読めないんですよ、情報量が多すぎて!」
●ええっ、そういうものなんですか!?
「情報酔いしちゃうんです。そうなるとは思わなかったけど、それぐらいの差は出てきちゃうんですよね。だから今回、(ミッション期間は)15日ですけど、15日は短いようでいて結構、いろんなことが起こるんですよ。まあ、それがなければいいチームということなんですけどね。じゃあ、ちょっと一旦、地球エリアに出ます。
今回のミッションで特徴的なのが、地球エリアの中も実は、ミッションのエリアなんですね。司令室っていうのがあって、そこから彼らをサポートするっていうところを真剣にやろうと。どうしても、これまでの宇宙のミッションは、現場のことばっかりを大事にしちゃって、サポートっていうところが弱かったんですよ。だけど、サポートこそ僕は、ミッションをやっていく上で“key”だと思っているんです。今から、そのサポートする司令室をお見せします」
*というわけで、このあとモニターや計測機器がいっぱいある、まさに司令室!という感じの部屋に行ったのですが、そこで村上さんが、「実は日本人って宇宙で結構、活躍できそうなんだよね」というお話をしてくださったんです。一体、どういうことなんでしょうか。
「それこそ“おもてなし”ってよく言いますけど、僕、日本人ってサポートする能力に長けているんじゃないかと思っているんですね。そういったところが、日本人がもしかしたら宇宙に行くことで活躍するかもしれない。行かなくてもサポートすることで活躍するかもしれないっていうことを、今一度、宇宙っていうフィールドで、僕らは何が下手で何が上手いんだろう、みたいなものから考えるきっかけになれればいいなと思っているんですね」
●日本人ってなんでサポートが上手いんでしょうね?
「やっぱり、僕らの言葉が曖昧なんですよね。英語だと“きょう、何を食べたい?”って言われたら必ず何か答えなきゃいけないし、YESかNOで答えなきゃいけないんですね。僕らは結構、“うーん、何かな…何かな…”って、ORで答えているんですよ」
●よく、私の旦那も言っています“何でもいい”って(笑)。
「“はっきり言ってよ!”っていうほうが正しそうに聞こえるんですけどね。何か目的があってミッションをやっていく時は、はっきりしないと進まないわけですよ。だから、打ち上げ日が決まっていて、それに向けて“きょうはこれをしなきゃいけない”っていう時は、ORで言われても“はっきりして!”っていう気持ちの方が勝る。
だけど、人が火星にたどり着いた後っていうのは、そこからがずっと長くって。ただ行って帰ってくるんじゃないんですよ。そこに根を下ろすフェーズになって、“滞在”から“暮らす”っていうふうになった時に、何でもかんでもYESかNOでやっていく生活は、苦しいんですよ。全部がガチガチになっていく。
そうなった時に、やっぱり僕らの、曖昧な思考、どちらかというと弱点かもしれないけど、その思考で物事を考えている人がいると、ギスギスしがちな宇宙ミッションの中で、何かできることがあるんじゃないかと思っているんですね。例えば僕、英語を喋っていると性格が変わっちゃうんですけど、それぐらい言語って大事なものなんですよね。なので、そういう思考の人がいると、波風を立てずに“まぁまぁ、落ち着いて”っていう感じで、何かできることはあるだろうなっていうのは、僕のこれまでの経験からあるんですけどね」
※最後に、プロジェクトのこれからについて、村上さんにうかがいました。
「いよいよ今月、2月23日からプロジェクトが本格始動するんですけど、この「SHIRASE」という船は、引退した南極観測船です。一度はスクラップになると決定したことを、いろんな人の思いで、今もこうして残っている船なんですが、これを、僕らの未来を考える場所にしたいんですね。
そのために何をするかっていうと、この船を“地球から火星へと向かう宇宙船”と見立てて、この中で、ある区画を閉鎖して、閉鎖環境という中で、宇宙船の中での生活、それを実験するというプロジェクトを始めたいなと思っています。もう、てんやわんやで、いろんな準備があるんですが、一回だけじゃなくて、これは数年かけて長い目で見てやるプロジェクトなんです。
僕らは「シラセ エクスペディション・ゼロ」というふうに今回のミッションを呼んでいますけど、“ゼロ”っていうのはまず、もともとは宇宙と無関係だった船が、これまで体験してきたような、模擬火星実験をやる環境になりうるか、というところを当面の目標にしています。それが僕の目論見通り、“そういう環境になりうる、凄いポテンシャルがあるものだ”ということが証明できれば、クルーの公募を始めて、年に2回ずつ15日間のミッションを、つまり合計30日間やっていきたいなと思っています。
年に2回やることで、いろんなことが比較できるんですね。例えばチーム・ビルディングという観点で言うんであれば、ひとつのチームは男性だけ、もうひとつは女性だけで、そこでどんな違いがあるのか。あるいは、お酒。宇宙でお酒は禁止なんです。だけど、南極観測隊はお酒がOKなんですね。お酒があったほうが平和になることってやっぱりあるんですが(笑)、お酒があるチームとないチームの中でミッションをやってみるとか、いろんなシチュエーションを変えて、いろんなことを知りたい。
それは必ずしも、人が宇宙に行くためだけのものではなくてですね、何が生きていくために必要なことかっていうのは、僕らの日常の話だと思うんですね。多分、みなさんがSF映画で見ているのとはだいぶ違うと思うんですね。本当に出てくる問題っていうのは、やっぱり僕らの日常の些細な問題が物凄く濃い状態で出てくるんですよ。
(僕は)ここにしかいない誰かと共に生きていくっていうことをずっと、密室の中でやってきたわけです。その中で、やっぱり苦しいこともありましたけど、大事なこともたくさん見てきたので、そういったものを日本っていう場でみなさんにお見せしたいなっていうのが一番、本当のやりたい目的です。それがむしろ間接的に、宇宙に反映されていく、宇宙の世界がよくなっていく、っていうことを目指す場づくりをしたいなっていうのが、このプロジェクトです」
●私たちが参加することはできるんですか?
「そうですね。宇宙の世界っていうのは基本的に、今まではセレクション、つまり選ばれた人がやってきました。急にそれが変わることはないと思いますけど、今、民間の一般の方が宇宙に行くっていう議論もされています。“誰でも(宇宙に)行ける”っていうためには、物凄くブレイクスルーをしなきゃいけないんです。誰でもっていうのは、つまり物凄く大きな器が必要になってくるので、急には変えられないんですよね。そこにじゃあ、一体何が必要なのかっていうのは、いきなりは無理ですけど、こういうプロジェクトに関わってもらう。
今までニュースとか見ると、“宇宙が近づいてきた気がするけど、お金を持っている人たちとか、博士課程だとか研究者の人じゃないと宇宙に関われないのかな”っていう気持ちに、逆になっちゃうと思うんですけど、そう思っちゃうと宇宙ってどんどんそうなっていくんですよ。“私は関係ないかもしれない”っていう人が、実際にここに入って来て、その目で見たもので“ここは違う”っていうもので何か提案してくれないと、宇宙はどんどん悪くなっていくと思うんです。
自分の生活の端っこに何かしら関わっているんだっていう思いで参加してくれたり、あるいは興味を持って応援してくださったりだとか、そういうふうに関わっていただきたいなと思っています。いずれ本当に宇宙が、“滞在する”じゃなくて“暮らす”場になって欲しい。その礎(いしずえ)になれたらいいな、というのが僕の夢ですかね」
火星移住計画はよく耳にしますが、火星への往復が約3年、更に誰でも行ける時代となれば、宇宙船での暮らしも本当に重要になってきますよね。そして閉ざされた空間での共同生活は、普段の私たちの日常暮らしを見直すキッカケにもなりそう。今後もこのプロジェクトに注目していきたいと思います。
村上さんが2月23日からスタートさせる、日本初の、民間による模擬宇宙生活実験「シラセ エクスペディション・ゼロ」では現在、クラウドファンディングで支援金を募っています。支援は3,000円から。リターンはSHIRASEで行なう報告会への招待や、村上さんが極地で撮った写真パネルほか、公式ワッペンやTシャツ、帽子など。募集は2月28日まで。詳しくはクラウドファンディングのサイトをご覧ください。
また、今回のプロジェクトを含め、村上さんの活動を詳しく知りたい方は、NPO法人「フィールドアシスタント」のオフィシャル・サイトをご覧ください。