今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、歌って登れるシンガー・ソングハイカー加賀谷はつみさんです。
加賀谷さんは千葉県流山出身で、13歳から音楽活動をスタート。2011年に全国47都道府県で路上ライヴを行ない、翌年「本日のスープ」でメジャー・デビュー。2013年には飲料メイカーのメッセンジャーに起用され、カリフォルニアにあるマウント・シャスタ4,317メートルに登頂。
その後も国内で山に登り、頂上でギターを弾いて歌う活動を続けながら楽曲制作を行ない、今月、3曲入りのCDをリリースされました。また今年、「山の日」アンバサダーに就任され、さらに注目を集めています。
今回は、山登りのキャリアが10年になる加賀谷さんに、初心者を山に誘うときのコツや、ドラマチックだった山頂ライヴ、そして「山の日」アンバサダーの活動などうかがいます。
※加賀谷さんは、この番組に5年ぶりのご出演!(2013年2月9日放送回・2013年11月2日放送回)
実はその間に、プラベートで変化もあったそうですよ。山登りのスタイルも変わったんでしょうか。
「昔は結構、ガチなピーク・ハント登山をしていて、“そこしか好きじゃない!”っていうところが多かったんですけど、今は割と低山を楽しむことも増えて、お花とかキノコとかにも興味を示し出すようになりました!」
●加賀谷さんはこんなに小柄で可愛らしい女性なのに、結構ガッツリ登るイメージがあったんですけど(笑)、最近は変わってきたんですね!
「そっちも楽しいんですけど、もうちょっと自然を楽しむとか、初心者の友だちを連れてどこに行ったら喜んでもらえるかとか、そういうことを考えるのが最近は楽しくなってきました」
●先ほど、プライベートも変わりつつ、というお話がありましたけど、どんな変化があったんですか?
「なんか、結婚とかしちゃって、無事にお嫁にいったりしてですね(笑)」
●そうだったんですね! 実は私も苗字が変わりまして……(笑)。じゃあ結構、旦那さんと山登りも行かれたりしているんですか?
「最近、ようやくですね。もう、全く(山登りに)興味がない人だったんですけど。昔は私が北アルプスの地図を広げて、“明日はここからここまで行くんだ!”とか話していると、変態を見るような目で“本当に、よく行くね……へぇ〜”みたいな感じだったのが、最近は多分、健康面も気になりだしたのか、ちょっと歩きたいという気持ちもあるみたいで、“俺も行きたいなぁ”とか言い出しているんです。ここ1〜2年ぐらいでは、鎌倉アルプスとか筑波山とか、1時間半ぐらいで登れるようなところとかに行ったりしています」
●へぇ〜! 旦那さんと山に登ると、違った景色とか見えてきたりしますか?
「どっちかっていうと、(今までは)同じ登山レベルの人か、自分より先輩と行くことが多かったので、(それ以外の)誰かを連れて行くと、自分も成長しますね。時間のことも考えるし、“この人の体力だと、いつお昼を食べたほうがいいかな?”とか、そういうことも考えるので、人を連れて行くのも面白いなと思いつつ、あとは本当に(山登りを)嫌いになってほしくないので、いかに辛いところを紛らわして絶景を見せて……みたいな(笑)、そういうところも考えたりしていますね。
やっぱり最初の登山とか、初心者の時に嫌いになっちゃうともう、絶対に嫌になっちゃうじゃないですか。それが凄くもったいないと思うので、その山の選定には毎回、“じゃあどこに行こうかな、次は、次は……”って凄く考えますね。“じゃあ、下山した時のご褒美で、美味しいビールが飲めるところはあるかな、美味しいご飯が食べられるところはあるかな?”とか、そういうことを考えたりとか、それもまた面白いなと思います」
●最近、そういうふうにして行って印象に残っている山ってありますか?
「最近は寒いじゃないですか。冬だからこそ、低い山を楽しむというか、夏は虫が多くて暑くて行けないところを、冬だからこそ歩いてみよう!っていうことで、私、この前初めて三浦アルプスに行ったんですよ!」
●神奈川県の三浦半島にあるアルプスですよね!
「距離的には10キロぐらいで、標高は200メートルとか本当に低いんですけど、でも展望としては海が見えて、横浜の方も見えて、気持ちがよくて……。私、その時初めて単独で行ったんです! いつもは山友を誘って、平日登山部で行くんですけど、どうしても(山友が)捕まらなくて。もう、1ヶ月山に行かないと凄く“山ロス”が溜まっちゃうんですよ! “これはもう、絶対に山を注入しないと私はダメだ! ひとりで行くか〜!”と思って、三浦アルプスにエイッて行ったんですね。そしたら、意外と街に近くても植物が生き生きしているんです。
ただ、平日の朝イチとかに行くと誰ひとりも会わないので、逆にいうと静かな山歩きを楽しめて、自分も見つめられるし、ひとりごとも凄く多くなるし(笑)。人と会うと、凄く嬉しいんですよ! “はあ〜っ! どこから来ました!?”みたいな、いつもより饒舌になっちゃうというか。それもそれで楽しかったですけどね。だから、行ったことあるところだったら、ひとりで行くのもありかなっていう気がしました」
※加賀谷さんに、この季節おすすめの山の楽しみ方をうかがっていると、こんな話になりました。
「やっぱり、お手軽絶景、それがいいんじゃないかと思っております。だから、秋冬はそういう山歩きを重ねて、体力を維持するというか。そして夏には自分が挑戦する山に行くっていうのがいいかなっていう感じですね。
最近は年に一度、夏に自分を追い込む登山をするっていうのを目標にやっています。それで去年は甲斐駒ケ岳(かいこまがたけ)の黒戸尾根(くろとおね)に、山友と初めて行ったんですよ。別のルートからは行ったことはあったんですけど、もう登山歴10年になるんで、“黒戸尾根は登山者として、そろそろ行かねばな……”と思っていて、その友だちも(登山歴が)同じくらいだったので、“行きましょう!”ということになって行ったんです。
いろんなところから聞く話だと、“辛い!”“大変だ!”っていうじゃないですか。だからもう、心して行ったんですよ! そしたら思ったより大丈夫で、歩けて、そんなに苦痛でもなくて、そこで“あ、自分たちの登山レベル、ちょっと上がったんじゃないの!?”っていう成長も感じられて、凄くふたりで喜んだんです! 時期も秋だったので、本当にキノコがたくさんで、もちろん道中は凄く長いんですけど、いろんなキノコがキラキラと出迎えてくれて、それが楽しかったです。意外と楽しめましたね!」
●山頂の景色はどうでした?
「山頂はちょっとドラマチックだったと言いますか……。雲行きがちょっと怪しくて、山頂に着く頃にちょっと雨がパラパラ降ってきちゃったんですけど、ちょうど山頂に着いた時に、山頂にいらっしゃる方々が私のことを知ってくれていたんで、“凄くライヴが見たい!”という感じで待っていてくれてたんです。
でも、雨が降っているのでギターは出せないじゃないですか。“どうしようかな、どうしようかな……”って思っていたら、黒戸尾根の途中に七丈小屋(しちじょうごや)っていう小屋があって、そこに花谷泰広(はなたに・やすひろ)さんという、日本を代表するクライマーがいて、今回、黒戸尾根に行くっていうのは、花谷さんに会いに行くっていうのも目的で行ったんですね。
それで、“どうする、はつみちゃん? 無理しなくていいんじゃない?”って花谷さんに言われながら、“でも、こんなに待ってくれていたら、やりたいですよね!”って私は言っていたんです。そしたら、お客さんがたが“傘はあるよ”って言って傘を2本ぐらい貸してくれて、それを花谷さんが私にさしてくれて、そこで私が歌を歌い出したんですね。
それで、1番を歌い終わったら雨が止んで、花谷さんがパッとはけて、そこからはちょっと太陽が見えたりして、全部歌い切ってライヴができたんですよ! 凄くドラマチックでいい山頂ライヴになりました!」
●へぇ〜! なんか、ライヴの演出みたい!
「そうなんです! だから凄く感動して、お客さんたちも凄く感動してくれて、その中に百名山をずっと頑張って登っているお母さんがいて、凄く泣きながら感動してくれていて、“実は私、きょうが100座目なの!”って言ったんです。“そんな時にこんないい歌が聴けてよかったわ〜!”って泣いてくれて、もうなんか、全てが最高でした! やっぱり、一期一会のお天気と出会いと、そういうのがたまらないですね!」
●いろんな奇跡が、ぎゅっとそこに詰まっていますね! ちなみに、なんの歌を歌われたんですか?
「その時は『PEAK HUNT』という曲を歌いました」
※加賀谷さんは今年から、「山の日」アンバサダーにも就任しました! 登山家の野口健さんや、なすびさん、アウトドアスタイル・クリエイターの四角友里さんなどが務めるこのアンバサダー、一体どういった経緯でアンバサダーになったのでしょうか。
「これはですね、私が山頂で歌ったり動画配信したりするのを、結構山の業界のかたが見てくれていて、それでどんどん広めてくださって、それが山の日協議会のかたにも届いて、それで“ぜひ、加賀谷さんみたいな人に、「山の日」アンバサダーをして欲しいです”っていうお話をいただきました」
●活動内容としては、どんなことをされるんですか?
「山の日っていうものをまだ認知していない方がたくさんいるので、そこをもうちょっと知ってもらいたいなということなんですが、アンバサダーの顔ぶれを見ると本当に凄い先輩たちばかりなんですよ!」
●この番組にもご出演いただいた、野口健さんとか、なすびさんとかがいらっしゃるんですよね!
「もう本当に頭が下がる思いなんですけど、その先輩方に任せるところは任せて、本当に山に関してビギナーの方々や女性の方々とか、それこそママさんとかそういう人たちに、(山までの)アクセスがよくって、お子さんと歩くには…とか、女の子同士で初めての登山には…とか、そういう切り口で皆さんに、山の日とともに山を知っていただけたらなと思います」
●そうなんですよね! 結構、山ガール・ブームで山に登る女子は増えているんですけど、実際に私の周りの友だちはまだまだで、“一緒に山に行こう!”って言っても、“いいよ、行こう!”って言ってくれる人はなかなかいないんですよね〜。
「そうなんですよね〜。“スニーカーで行けるから、行こうよ!”とは誘えないじゃないですか。最初にトレッキング・シューズをどうやって買ってもらうか、みたいところから始まるというか(笑)」
●確かに(笑)!
「“一回買えば、もうどこでも行けるんだから”っていう気持ちでいますけどね。でも、20代の頃よりも、30代になると周りの人も、昔よりも運動したいとか、自然を感じたいという気持ちが強くなっているので、それこそ私みたいに、まだお子さんがいなくて旦那さんとふたりで趣味を見つけたいとかっていう友だちもいて、“山とかいいよね〜!”とか最近言うようにもなっているんです。
なので、私の旦那さんのように、好きなウエアをゲットするところから始めて、一歩踏み出してフィールドに行ってもらえると、ファッションも楽しみながら自然も山歩きも楽しくなるんじゃないかなと思うので、そういう人が増えたらいいですね」
●なんか、キラー・トークみたいなの、あります? 山にちょっと興味はあるけど、でもまだ一歩が踏み出せないという人に、この一言を言えばガッツリこっちに引き込めるよ! みたいな(笑)。
「やっぱり、みんな体力が心配みたいで、“大丈夫だよ、1時間半か2時間ぐらいだから!”ってこっちは言うんですけど、やっぱり初めての人に1時間半とか2時間はキツイみたいなんですよ。私、もう感覚が麻痺してるな〜と思ったんですけど、“えっ、そんなに!? 歩けるかな……”って思う人もいるので、下山はロープウェイで降りられるとか、そういうところにまずは連れて行くのがいいかもしれないですね。
登りだけ頑張れば、あとはロープウェイでいいよとか、そういうところだと“じゃあ、行けるかも!”って思うみたいですね。登った先に何も展望がなかったりすると、“もう(山登りは)いいや”ってなっちゃうので、その選定も悩みつつ……」
●さっきおっしゃっていた、お手軽絶景ですね!
「はい。だから、千葉の鋸山(のこぎりやま)とかもいいですよね!」
※加賀谷さんが今月発売した新曲「ミュージック・トレイル」。実はこの曲、加賀谷さんが初めてクラウドファンディングを使って資金を集め、製作したそうです。
●タイトル曲が「ミュージック・トレイル」なんですよね。
「私がシンガー・ソングハイカーと同じように、ずっと掲げているテーマというか、言葉として持っていたんですね、“MUSIC TRAIL”っていうのを。それで、グッズを作ったりもしたんですけど、そのメッセージというのが、“音楽を愛する全ての人、そしてアウトドアを愛する全ての人、全ての人たちに届けたい”という活動テーマとして、ずっとシンガー・ソングハイカーとしてやっているんですね。
(最初はその言葉を)曲のタイトルにするつもりはなかったんですけど、今回クラウドファンディングで支援を募らせてもらって、自分が見えてない部分で応援してくれている人がこんなにもたくさんいるんだっていうことを知ることができて、メッセージとしては、本当に皆さんへの感謝の気持ちを書きたいなと思って書かせてもらったんです。
それで、レコーディングした後にその曲を聴いて、“あぁ、タイトルどうしよっかな〜?”って思った時に、ふと、“あ、これが私のミュージック・トレイルだな”と、凄く自分の中で腑に落ちたんです。今までの私の音楽の道も、皆さんがいなかったら道にならなかったし、これから先の音楽の道も、皆さんが踏み跡を後ろから付けていってくれないとトレイルにならないなと思ったので、“これからもよろしくね!”っていう思いと、“私もこれからも歌い続けるよ!”という思いと、あと“本当にいつもありがとう!”という感謝の気持ちを込めて、このタイトルにしました」
●音楽と山登りって、加賀谷さんの中で通じるものがたくさんあるんですか?
「私の中では、両方とも自分を支えるものなんですけど、やっぱ登れば登るほど、音楽だけじゃなくて、人生で辛い時もありますけど、人生って本当に山登りだなっていうのを凄く感じるので、これは多分、生きている人みんなそうだろうな、私だけじゃないなと思って、そういうメッセージにしようと思いました。恋愛でも山登りだと思いますし、仕事や何かを達成するのも山登りだと思うので、それがまっすぐ届けばいいなという気持ちです」
●あと、加賀谷さんの山と音楽の関連性といったら、やっぱり山で歌っていることが凄く大きいと思うんですけども、自然の中で音楽を奏でるってどういう感じなんですか?
「そうですね……もともと自己満というか、皆さんが山頂でコーヒーを飲んだりご飯を食べるのが美味しいなと思うように、そこで歌うのが気持いいなということで始めたんですね。でも“(山は)静かだから響くでしょ?”って言われるんですけど、そんなことは全然なくて、もう山が大き過ぎて、自分のちっぽけさとか声の小ささとかを凄く感じるんですよね。そこで思いっきりワーーっと歌うと、“あ、なんか私が悩んでいたことって、こんなに小っちゃいんだ! だって、私ってこんなに小っちゃいじゃん!”みたいなことを感じるので、それだけで勇気をもらって帰れるというか、“ありがとうございました、また明日から頑張ります!”っていうのを、いつも山頂で誓って降りる、みたいなところがあって(笑)。そういう意味で歌っていますね」
●爽快感が味わえるのかなと思ったんですけど、そうじゃなくて、自分の小ささを感じるんですね。
「爽快感は……下山して、その動画を見ると感じますね」
一同「(笑)」
山登りをすると大変なこともありますが、山頂に着くとやっぱり登ってよかった! って思いますよね。人生もきっと同じ。道を進む勇気を加賀谷さんの歌からもらいました。
2月24日(日)の夕方4時から、西武百貨店・池袋本店の9階イベントスペースで「MUSIC TRAIL」の発売記念インストアライヴが行なわれます。また、2月27日(水)の夜7時30分から渋谷のCAFE PARKでワンマンライヴもありますよ。 詳しくは加賀谷さんのオフィシャル・サイトをご覧ください。
さらに「山の日」アンバサダーとして、加賀谷さんが第4回全国「山の日フォーラム」に出演します。開催は3月16日(土)と17日(日)の2日間。会場は秋葉原UDX。登山家の野口健さんや、エベレストの登頂経験があるタレントのなすびさん、アウトドアスタイル・クリエイターの四角友里さんほかが出演する予定です。
詳しくは一般社団法人「全国山の日協議会」のホームページをご覧ください。