2001.12.30放送 橋谷晃さんのネイチャー・スキーの薦め 橋谷晃さんはネイチャーリング・スクール&ショップ、木風舎の代表。ザ・フリントストーンには7年前に出演していただき、雪の山をカンジキをつけて歩きながら、動物達の足跡を追うという、アニマル・トラッキングの魅力についてお話していただいて、我々は早速、木風舎でカンジキを購入。東山温泉のスキー場に繰り出し、みんながゲレンデ・スキーを楽しんでいるのを横目で見ながらゲレンデじゃないところを歩き、私たちなりのアニマル・トラッキングを楽しんだ想い出があります。その橋谷さんに久しぶりに出演いただいて、今回はネイチャー・スキーの魅力をうかがおうというわけです。 『あの頃、7年前にはまだネイチャー・スキーという言葉はありませんでしたね。実はこの言葉は仲間内から出てきた言葉なんです。当時は、まだクロス・カントリー・スキーと呼ばれていたんですけど、クロス・カントリーというと、どうしてもスキーの競技をイメージされてしまうんですね。だから、もっと気軽に自然を楽しむというようなイメージで、いってみればハイキングなんだからネイチャー・スキーでいいんじゃないかということで、そう呼ぶようになったんです。道具もクロカン用のものとは少し違うテレマーク・スキーを使いますし。まぁ、雪の中に入るときに、クツだとズボズボ入ってしまって大変ですよね。カンジキをはくと少し楽になる。スノーシューだともっと楽になる。それがスキーをはくとさらに楽になるというわけなんです。ましてや緩やかな上りだったりしたらすごく楽なんです。というのはスキーの方が接地面積が多いですからもぐらないということと、スキーの場合、歩き方のパターンが違いますよね。完全なすり足歩行というか、足をよいしょと持ち上げて雪の中にズボンという感じではなく、スーッ、スーッと滑らせていくだけになりますから、足を地面から離して持ち上げる力がいりませんから非常に楽。しかも、カンジキやスノーシューだと一歩は一歩ですが、スキーだと一歩足を踏みだすとスーッと進んでくれますから、この感覚が非日常で面白いんですね。自分が他の動物に生まれ変わったみたいに、雪の上をスーッ、スーッと動けるという、それだけで無条件に面白い。しかも雪の森で、薮が全部雪に隠れてますから、どこでもいけちゃう。他の季節の他の遊びにはない感覚なんですよね。』 ネイチャー・スキー・シーズンというと、まさにこれから。 『1月の半ばからが本格的なシーズン・インになります。普通のゲレンデ・スキーよりも少し遅いんですね。フィールドがいったん雪に覆われてもまだ、草が起きてるとスキーで入っても沈んじゃうんです。そこにさらに雪が積もると、雪の重みで草とか潅木が寝てしまうんです。植物って凄いですよね。木の枝なんか、しなって雪の中にもぐってますから、春になるとしなったまま出てくるんです。これがある日、ある部分の雪が溶けるとピーンと立ち上がって、いつの間にかちゃんとしてるんですね。』 そういう自然の凄さ。その1本の木を見るだけでも楽しいですよね。 『楽しいです。ホントに。ネイチャー・スキーの講師をはじめて10年以上になりますが、毎年通るところってあるんですよ。たとえば志賀高原なんですけど、大きなダケカンバの木の股からね、小さなシラビソが芽を出してる。このシラビソの赤ちゃんが毎年大きくなってくる。おっ、今年もまた大きくなったねといいながら通るんですけど、楽しみなんですね。おそらく僕の生きてるうちには見ることはないんでしょうけど、100年位したら、シラビソが大きくなって、ダケカンバは朽ちてなくなって、シラビソの木の根元が二股に割れてる、なんか変な形をした木だなぁということになると思うんです。森ってそういう時間が流れているんですよね。森の中に入ると、そういう時間が自分の中にも流れてくるような、ふーっと息抜いて、そんなにあくせくしなくていいんだよなっていう気持ちにさせてくれる、そういう力がありますね。自然の時間とか、森のサイクルとかを見てると、あぁ、自然に生きていけばいいんだなと、そんな気がしてきますね。』 その気持ちが都会に戻ってくると、戻されてしまうこともあるんじゃないですか。 『う~ん、あのね、皆さん異口同音におっしゃるのが「おかげさまで月曜日、元気に仕事できました」というんですよ。カラダは疲れているはずなんです。いつも使わない筋肉使っているし、旅もしてるしね。「いつもより笑ってるんです」とか「周りの人に対して優しくなれるんです」とかいっていただくことが多いんです。僕はもうどっぷり自然の気につかってますから、たまにこうしてスタジオなんかにくると、あぁ山行きたいってなるんですけどね。森の時間が町にいても自分の中に流れていて、今、こうして町にいても森の中ではリスが木から木に移っていてね、アカゲラが木をたたいていたり、クマはそろそろ寝たかなぁとか、そういうことをリアルに感じられる、時間を彼らといつも共有していられる、そんな気がしてますね。』 橋谷さんにとって雪の森の魅力ってなんですか? 『まずきれい。本当にきれい。さらに自由さ。そこでスキーをはいて入っていくことで、自分の行きたいところどこでも行ける。夏だったら通ってる道一本、そこしか通れないのを、今だったらそこに住んでる動物達と同じように動ける自由さ。こうして自由に動いてると、本当に森のフトコロ奥深く、入れてもらってるんだなって気分になってくるんですよね。』 木風舎ではいろいろなツアーがありますよね。 『はい。スキーをはいたことの無い初心者から楽しんでいただけるようになってます。まぁ、スキーに慣れるという意味ではゲレンデ・スキー経験者はすぐに慣れると思いますが、ただ、スキーを全くやったことの無い人にとっての親しみやすさからいったら、ゲレンデ・スキーよりもネイチャー・スキーの方が親しみやすいんじゃないかと思います。ゲレンデは初心者用スロープなんてものがありますが、そうはいっても斜面ですから、スキーをはいた途端にツーッといっちゃうかもしれない。でも、ネイチャー・スキーは全くの真っ平らからはじめるので、自分が歩かないと進まないんですね。それと目的がゲレンデ・スキーの場合はどうしてもうまく滑るということになりますので、転ぶのは悪になってしまうんですけど、ネイチャー・スキーの場合は主目的はいい自然に会いに行くことですから、転ぶのも一つの遊びっていうか。ふかふかの雪の中にドーンとねっころがれば、それもそれで楽しいやって感じですよね。その意味でも初心者にも親しみやすいと思います。』 橋谷さんのことはテレビで見たことがあるという人も多いと思うんですけど、私は初めて橋谷さんにお会いしたときに、「この方、なんでこんなににこやかなのかなぁ、イライラしたり腹立つことはないのかなぁ」と思ったんですけど、でもその後番組を進めていくうちに、何度も森の中に入ったりして、「あぁ、こういうところに毎週のように入っていたら笑顔になるわ」って思いましたよ。 『面白いのはね、スクールなんかやってて、みんな最初は緊張してるんですよ。でも1時間後、みんな口の両端上がってる。ニマーッとしてるんですね。』 みんな橋谷さんになっちゃうんですね。 『その変化はほんとに面白いです。みんな子供になっちゃうんですね。この人会社に帰れば偉い人なんだろうなと思うようなおじさんが休憩時間に一所懸命雪だるま作ってたりね。やっぱりそれも自然の持ってる力だと思うんですよね。自然の中ってありのままでいるしかないじゃないですか。これもいらっしゃる人の声でよく聞くんですけど、「自然も良かったけど、そこで会った人がみんな良かった」って。僕らもお世辞じゃなく、「なんで、こんなにいい人ばっかりくるの?」って感じるんですけど、もしかしたら、それはそこに来て自然のおかげでいい人になっちゃうのかもしれない。ゆったりした、人に優しくなれる面が自然というもののおかげでね、出てきやすいのかもしれないと思うんです。』 実は、木風舎は1982年に立ち上がって、来年で20年。この20年、様々なことが起きましたけど、今、この20年間を振り返るとどのような変化がありましたか。 『そうですね、例えばエコロジーという言葉がありますよね。今知らない人はいませんよね。でも、20年前は全く通じませんでした。そういう時代の変化を考えると、時代は必ずしも悪い方向に行ってないのかなという気がします。もちろん、悪くなった部分もあると思いますが、みんなが一人ひとり、もう少し生き方とか大切にしたいものとかを見つめ直して、何が自分にとって大切なのか、それを大切にするためにはどうしたらいいのか、どうやって生きていったらいいのか、それを考えはじめてる時代じゃないかなと思うんです。だから僕は時代に対して絶望していません。希望を持ってます。いまだに悪くなってるところはあるし、地球のどこかで戦争は起こってる。でも、人間ひとりひとりが、自分が大切にしたいことを大切にしていければ、きっと世の中良くなるんじゃないかと思ってるんです。』 ほんとに満面笑みの橋谷さん。これからもこの活動をずっと続けていって欲しいと思うんですが、次は是非フィールドでお会いして、ネイチャー・スキーの手ほどきを受けたいなと思っています。 ●著書紹介 橋谷晃さん『ネイチャースキー』 山海堂/1,835円 全国の書店で好評発売中。ネイチャー・スキーのことをより知りたいかたは是非! 橋谷さんのホーム・ページはこちらです。 最初に戻る ON AIR曲目へ ゲスト・トークのリストへ ザ・フリントストーンのホームへ photos Copyright (C) 1992-2001 Kenji Kurihara All Rights Reserved. |