2002.5.19放送

ビーチ・カルチャー・マガジン『BeSan』
編集長・橋本英明さんを迎えて


月刊『アウトドア』編集長として10年前に出演していただいて以来、親しくおつきあいをさせてもらっている橋本さん。番組への出演ということでいうと随分久しぶりになりますが、今回は新しい雑誌を携えての登場。「ビーサン」というとすぐに連想するのが、ビーチ・サンダルだし、ビーチ・カルチャーというと連想するのはサーファー。お話はそのあたりから始まりました。
「もちろんサーファーの方も読者としては視野に入ってますが、サーファーじゃなくても、海に興味があって、ビーチの文化が好きだという人たちを読者としては想定してスタートしたんです。サーフィンはやったことがないけれどいつかやってみたいとか、そういう世界に憧れがあるとか、そういう人のライフスタイルの手助けになるような情報を集めた雑誌を作ろうというのがきっかけです。ビーサンというのはシンボルのようなものだからタイトルに付けたんです。」

橋本さん御自身もサーフィンはやってますよね。
「ええ。でも最近は年なので、若いころのような元気はなく、健康維持程度に海に入ってます。」

やはりビーチ・カルチャーというと始めにサーフィンが浮かんでしまうんですが、でも、もっと広いものなんですよね。
「分かりやすく言っちゃえば、ビーチでの暮らし全般ということですから、そこでは着るもの、食べるもの、聴く音楽、それらをひっくるめてビーチ・カルチャーということですね。例えばアメリカだと西海岸沿いを移動してるとプロ・サーファーが集まるレストランに、普通にサーフィンをやらないおじぃちゃんやおばぁちゃんが食事をしてる。個人的にはそういう世界が好きですね。そういうトータルなものとして、アメリカ本土なら本土、ハワイならハワイといった土地によって、音楽や着るものが微妙に違うけどその土地なりのビーチ・カルチャーがあると思います。
 楽しみ方の幅みたいなものだと思いますけど、アメリカのビーチなんかにいくと、なんにもしない人がいるんです。ただいる。ベンチに座って海を見てるとか、本を読んでるとか、とにかく何もしない。でもいることに気持ち良さを感じる。もちろん海がきれいだという前提はありますけど、ゆとりというかなぁ。日本はせっかく休みがとれたから何かしなくちゃいけないということでセカセカやりがちじゃないですか。だから過ごす時間のぜいたくさを、文化的な意味で楽しんでいけるような、いるだけで幸せなんだと。そのかわり目の前にある海は汚しちゃいけないんだと。
 『BeSan』の1冊目で、茅ケ崎のサーフ・ショップ『フリュードパワー』のオーナーの藤沢譲二さんにインタビューさせてもらってるんですけど、ビーチって言うのは素足で歩けて寝ころべなきゃっていう言葉があって、僕はその言葉が短い中にすべてがあると思って好きなんですけど、まさにそうだと思います。怪我するんじゃないかといって靴をはいたり、マットを敷かなきゃ寝ころべないというのは、正しい姿じゃないような気がしますね。そんなことを気にしないで、走り回って転がって何も問題がないという環境であれば、多分何もしなくても気持ちがいいんじゃないかと思いますけど。」

この新雑誌の『BeSan』は創刊が今年の2月。今、2号目も発売されているんですが、この第2号、“アロハ・シャツの魅力”や“ハワイ特集”なんかもあるんですが、私の目を引いたのが、時代ごとのカルチャーを作ったブランド。60年代から90年代まであるんですけど、カルチャー的にはどうなんですか?
「ビーチとはいっても街の生活と切り離されてるわけではないので、ファッションの流れにしても、音楽のはやりにしてもビーチだから特殊ということはないと思いますけど、ロングボードの最近の人口の増加についていえば、日本の場合、昔はサーフィンは若者の遊びという位置づけでしたけど、最近はオジサン達も楽しんでますよね。だから年齢層の広がりはあるんじゃないですか?これはいいことだと思います。ハワイに行ってもアメリカに行っても、はっきり言って大丈夫かなというようなおじいさんが元気に冷たい水に入ってますよね。」

それがある種、向こうのビーチ・カルチャーの素敵なところ。決まったジェネレーションだけじゃなく、幅広くカルチャーになれる。
「まさにそうなんです。世代交替をしていくんです。おじいさん、お父さん、息子と3世代でビーチで暮らしている人がたくさんいるんですよね。だからビーチを汚しちゃいけないとか、こういう人は助けるとか、そういうことが世代を超えて伝えられていく。カリフォルニアやハワイがそうなんですけど、日本も今段々、親から子供へという感じで2世代サーファーが増えてます。あとちょっとで3世代までいくんじゃないかな。」

そんな『BeSan』の最新号の中で、気になったのが“MADE IN HAWAII”というところでコア・ウッドというのがあったんです。周りから隔離された島で、自生する固有種を使って伝統が受け継がれていく。“神ノ木”っていわれてるんですよね。この木を使って、ウクレレや家具が作られている・・・。
「美しい話ですよね。実際、そのコアの木も減ってるらしいんです。それを地元の人たちがボランティアで山に植林をしたりしてるんです。似ているものに、沖縄の八重山黒木というものがありますが、やはり育つのが遅くて、堅くて重い。これも減ってるんですが、ハワイも同じ状況で、減らさないように頑張ってる人たちがいるわけです。」

これがまっすぐ伸びたものだったらカヌーやサーフボードも作れるという・・・。
「そうですね。今のサーフボードは軽いもので出来てますけど、元々古くからハワイにあるサーフボードはコアの木です。重いんですけど、16フィートとかの長さの板を作ったりしてました。今でも残ってますけど。」

なんか、記事を拝見していると、ビーチだけじゃなくて、島の内陸の方まで続く、精神的なものもあって、深いなぁと思っちゃうんですけど。

「確かにコアの木って山の木じゃないですか。で、ビーチとの関連は?と聞かれたりすることもあるんですけど、ハワイって小さな島なので水の循環が手に取るようにわかるんです。山に雲が出て雨が降って、今度は日が照ればそれが水蒸気になってまた空に帰っていくのがはっきり見えるんですね。このコアの木も水の循環の中にあって、潮風だったり海の影響は間違いなく受けてると思うんです。学者じゃないのではっきりとはわかりませんけど。だからそこにあるべくしてあるんじゃないかと思うんです。そういう意味で魅力的な木ですね。」

この『BeSan』、2月に創刊されて2号目が出たばかりなんですが、次も決まってるんですか?
「一応予定なんですが、7月に出したいなと思って準備をしているところです。」

どんな感じになるんですか?

「内緒なんですけど・・・。これまでの路線は大きく変わることはないと思います。それで新しい魅力を見せていければと思います。」

スタートしたばかりですけど、こんな雑誌にしたいという目標を聞かせて下さい。

「1冊目から心がけてはいるんですけど、ビーチって閉鎖的ではない空間だと思うんですね。どんな人が来ても去っていっても、必ず人が交差するところ。それに海と陸の境じゃないですか。違うものが接するエッジには新しいものが生まれたり面白いものがあったりすると思うんですが、何かの境でいろんな人が接触する中から新しい文化が生まれてくる。それを自分としては常に見ていたいし、有機的な空間だから雑誌自身もそうなっていけばいいなという、その場は線だから日本だけじゃなく、世界中にあるし。」

日本も大分変わってきてるのかもしれませんが、まだまだ海にいく目的というのはサーファーが海に行くとすれば、家族は留守番とか、車の中で待ってるとか、家族みんなでいってそれぞれが楽しめる場、その中には何もしないということも含まれるような、もっともっとこの夏は海に出る、ビーチ・サイドを楽しむ、ビーチ・カルチャーを楽しむっていうのがあってもいいのかなと。
「家族でいって一緒に楽しめればベストだけど、別々なことしててもいいじゃないですか。今、ビーチ・バレーのコートなんかも出来てきてるし、犬と散歩するのもいいし、楽しみ方は色々だと思いますよ。」

フリントストーンとしても、その線で何が行われるのか見ていきたいと思います。

『Be San(ビーサン)』

地球丸/定価730円
「地球丸」の新しい雑誌『Be San』2号目の売りは「ハワイ取材」。「アロハシャツの魅力」と題した大特集や、ハワイの歴史や文化などにスポットを当てた「アイランド・スタイル」という企画もあります。また60年代から90年代のビーチ・カルチャーを作った懐かしいブランドやグッズを紹介した特集もありますし、何よりこの雑誌、エコロジーの視点もあるという、まさに、読みごたえ・見ごたえ十分。ぜひ、チェックしてみて下さいね。なお、3号目は7月20日頃発売の予定。ホーム・ページではバック・ナンバーの購入もできます。
お問い合わせ:地球丸・営業部
電話:03-3432-7901
http://www.chikyumaru.co.jp

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