2005年6月26日
「星になった少年」:坂本小百合さんを勝浦ぞうの楽園に訪ねて今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンのゲストは坂本小百合さんです。7月公開の話題の映画「星になった少年」の原作者である「市原ぞうの国」の園長「坂本小百合」さんが登場します。「小百合」さんは日本人初のぞう使いだったご子息「哲夢(てつむ)」さんの意志を継ぎ、勝浦にぞうたちがゆったり過ごせる場所「勝浦ぞうの楽園」を建設、この秋オープンさせる予定です。そんな「小百合」さんに「楽園」のことや映画についてうかがいます。 ぞうと電話で話ができる!?●現在、私達は勝浦のぞうの楽園にお邪魔しています。ようやくこちらに来ることができました。 「この間から来たい来たいとおっしゃっていて、結局1年半後になってしまいましたね」 ●私の右手にはサンディさんとアキコさんがいます。 「アキコはアジアゾウなので雨でも外ОKなんですよ。でも、年をとっているので寒いといけないので中に入れてますけど。サンディはアフリカゾウですから、体が濡れるのをあまり好まないのよね。乾燥地帯で暮らしているぞうさんですからね。だからサンディは市原(ぞうの国)にいたときも、雨の日は外には出さなかったですね」 ●現在、勝浦ぞうの楽園にはこの2頭が暮らしているんですね。この子たちが一番高齢なんですか? 「いえ、アキコはおばあちゃんで、サンディは栄養障害とか足の故障とかがあって体にハンディキャップを負っているアフリカゾウです。22歳なので、年からいえば本来は倍くらいの大きさじゃなくちゃいけないんです」 ●サンディってそんなに若かったんですか? 「そうなんです」 ●こちら(勝浦)で療養も兼ねてのんびりしているんですね。サンディとアキコちゃんをこちらに連れてくるときって大変だったんじゃないですか? 「再度、檻に入る訓練をしまして運んできました。そんなに大変な事ではなかったですよ。こっちではお迎えにランディを待たせていたし、他にいるぞうさんたちはあちこち行ってますからね。全然場所が変わっても平気ですから、ここで待ってて、アキコが着いたときに、ちゃんとランディが『今度はここで暮らすみたいだよ』みたいな話をしていたようでした。最近は私、ランディと電話で話せるようになってしまってね」 ●えーっ!? 「昨年イベントで出かけたときに、着いたところの近くに自衛隊の基地があって、戦闘機が飛んだらしいんですよ。それでランディがビックリして食欲不振に陥ってしまったことがあったんです。私その時北海道にいたので、北海道から電話したんですよ。『ランディ、食べないと、明日から仕事しなくちゃいけないし、食べないとダメだよ。乾燥した草を食べたくなくても、リンゴがいっぱいあるでしょ。リンゴ食べなさい、リンゴリンゴ』って言ったら、それまで何も口にしていなかったのにリンゴを食べたという実話があるんです」 ●小百合さんの声を聞いて食べる気になったんですね。 「『リンゴはお腹にいいから食べても大丈夫だよ』って言ったら、それからリンゴをムシャムシャ食べ始めてくれたみたいなんです」 ●それはすごく分かる気がします。そんなランディちゃんがアキコちゃんにもサンディちゃんにも大丈夫だよって伝えてくれたんですね。2頭はこちらに住んでどのくらいになるんですか? 「アキコは1年以上経ちましたし、サンディもそろそろ1年になりますね」 ●最初に連れてきたころと今とでは何が違いますか? 変わりましたか? 「昨年、すごい猛暑だったじゃないですか。それで、アキコが体調を悪くしまして血便が出たりしたことがあって、食欲がなくなったりしてお薬をたくさん飲んだりしたんですよね。その時がすごく心配でしたね。暑かったり寒かったりがぞうさんは一番大変ですからね。その時はお散歩に行かなかったんです。それまではお散歩に行くと、『今日はこの木を食べよう、あっちの木を食べよう』、『今日は枯れたススキがいいかなぁ、青い葉っぱがいいかなぁ』って選んで食べていたんですけど、もう2、3ヶ月前に切り倒した木があったんですね。それが重なってあるところにアキコが行きまして、茶色い枯れた葉っぱをムシャムシャと食べ始めたんです。普段は青い葉っぱを食べるのに、どうしてだろうと思ったら、それが自分の体が要求している食べ物だったんだと思うんです。具合が悪かったあと、まだ少し熱があるくらいのときでした。『あ、そうか』と思って、これは動物園の管理飼育体制の中では絶対に選べない選択肢だなぁと思いましたね。それをこの間、10月のぞう会議の時にみんなにお話しして、具合が悪くなったときは青草とか乾燥した草とかじゃなくて、枯れた葉っぱをあげるのがいちばんいいと分かりましたね」 ●市原ぞうの国でも動物達は小百合さんの顔を見ると活き活きしているし、お客さんが来ても楽しそうにパフォーマンスしているんですけど、やはり勝浦ぞうの楽園の方でのんびりと木々に囲まれてお散歩をしたらリラックスできるんでしょうね。 「リラックスできるんでしょうけど、あの子たちは動物園で暮らしてきたぞうさんたちですよね。ですから、お客さんが来ないという環境が非常に退屈するんですね」 幅広い世代で楽しめる映画です●小百合さんが去年発表した「チビ象ランディと星になった少年」がついに映画化されましたね。 「そうですね。早かったですね。ビックリしました。出版したのが3月で、4月にはもうお話が決まって、それからすぐに柳楽(優弥:映画『星になった少年』では、小百合さんのご子息で主人公の哲夢さんの役を演じた)君がカンヌ国際映画祭で賞をもらって、その朝のニュースを見て、フジテレビのことだからきっとやるなと思っていたら(笑)、もう翌日には出演交渉ОKで、クランク・インするのが哲(夢さん)の命日の11月10日に決まったりとかして、全部タイでロケを行なったんです。やはり夏の映画ですから夏のシーンを撮るのに、茶色い葉っぱとか枯れ木の中では撮れませんからね。日本で撮るとどうしてもそうなりますから、タイで撮りました。タイのほうがぞうはたくさんいますしね。演技が達者なのもたくさんいますから、私のミッキーやランディやミニスターも含めて、たくさんのぞうが演じています」 ●最初に映画化が決まったときの感想をきかせてください。 「さすが哲だなと思いましたね(笑)。13回忌という節目だったし、2冊本を出させていただいたんですが、ぞうという生き物を少しでも多くの人に理解してもらいたいという思いから本を出したんですね。それがこういう形になって、大きなキャンペーンも始まっていますし、7月16日から全国公開で、多分たくさんの親子連れや子供達、おじさんおばさんに楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。映画はすごく幅広い年代が見ても泣いたり笑ったりできる映画になったんですね。哲が送りたかったメッセージを私が伝えるというだけじゃなくて、映画というメディアを通して、日本だけじゃなくて世界でもあちこち上映されるみたいなので、発信して・・・」 (と、ここで雨より一層大きいジャーッという音が聞こえる)
「この音は雨ではないんですよ。ぞうさんのおしっこなんです(笑)」 ●水たまりのところを車で走っているような音ですね(笑)。柳楽君が決まったときはどうでしたか? 「最初、ウチに初めて来たときは『この子大丈夫?』っていうくらい小さな子で、普通の男の子だったんですけど、この映画を通じてものすごく大人になったし、もともといい子だったのがさらにいい子になって、たくましくなりました」 ●柳楽君は実際にぞう使いの訓練もしたそうですね。 「ええ。身が軽かったですし、体も柔らかかったから、本当にぞう使いになっていました」 ●ランディはまだ映画を見ていないんですか? 「見せたいですよね。いいこと言って下さいましたね。どこか屋外で上映するところがあれば見せたいですね」 ●野外でアキコちゃんとサンディちゃんを含めた市原ぞうの国のみんなにも見せてあげたいですよね。 「ぞうさんのための試写会ね。いいこと言って下さいましたね。そしたら東宝に言いますわ(笑)」 ●(笑)。特にランディには是非見てもらいたいですよね。 「そうね。ランディはまだやっぱり『哲!』という声には反応しますからね。しっかり覚えています。そういう点ではいいかもしれないですね」 ●ランディちゃんは人に見られることに慣れてしまっているから、余計に「あなたが主役よ」って言って見せてあげたいですね。 「そうよね。この間、監督に『他の原作者も小百合さんみたいに頑張ってやってくれるといいのにね』って言われたのよ。だから『やめてよ監督。私、原作者って呼ばれるのにすごく抵抗があるから』って言ったら、『じゃあ、なんて呼べばいいのよ』なんてやりとりをしましたけど(笑)、私は現場では原作者という立場よりは哲の母親で、哲の本当の姿やぞうの本当の姿、哲が何がしたかったかということを伝えていきたいですね」 (ここで後ろから盛んに「ケロッ! ケロッ!」と聞こえる)
「これはカエルの声でございます(笑)」 ●時折、色々な音がするのでその都度小百合さんに解説していただきたいと思います(笑)。 「(笑)。ですから、哲の思いを伝えるという意味ではパーフェクトにできています。やはり、突然愛するものを失った悲しみ、突然家族を失った悲しみって立ち直れないんですよ。時が解決しないしね。立ち直れないんですけど立ち直れないながらも、1日も早くプラス思考に持っていくためにもなる映画になると思うんですね。この間の電車事故もありますよね。ああいう形で私も息子を奪い去られてしまったわけですから、それを運命として受け入れなきゃいけないんだと思いながらも、自分の運命を呪ってしまうんですね。一時期は死んでしまいたいと思ったこともありますし、そのあと、亭主と諸々の問題があったときに、ハッキリ言って『この人と結婚しなければ哲は死ななかった』ってそこまで思いましたね。そのくらい強い怒りが自分の中にあるんですね。それをバネにしてこういう楽園の構想が出来上がってきたし、哲がやりたかったことが、哲が亡くなって5、6年してやっと分かってきたしっていうところから、ここまでになりましたからね。あとはこれを続けていくっていうことを、誰に継承していくかっていうのが大きな課題ですね」 ぞう使いになれます●今日、晴れていれば楽園の中を歩きながらお話をうかがいたかったんですけど、残念ながら雨なのでぞう舎の中でアキコちゃんとサンディちゃんに見守られながらお話をうかがっています。原作を読んで、動物達を色々な観点から見られるようになる作品だなと感じました。 「共存というのがとても大きなポイントになると思うんです。だけど、動物園は要らないって考える人もいるし、動物愛護団体の中ではぞうさんにバスケットをさせちゃいけないっていう考え方もあるんですよ。でも、ことぞうに関して言うならば、タイなどでは家畜なんですね。哲は家畜としてのぞうさんのあり方を日本で伝えたがっていたんですね。それから、タイと日本の掛け橋になりたいとも言っていました。それを哲は亡くなっても充分に果たしましたね。タイでロケをしたということは、莫大なお金がタイ国に落ちたわけですし、タイでのぞうさんの調教、タイでのぞうさんの学校の話なども映画の中にふんだんに出てきます。親ぞうと子ぞうの子別れの儀式なども出てきますし、タイではぞうさんってこうやって暮らしているんだということも分かります。そうすると、私がやろうとしているぞうと子供達の触れあいという大きな目的を思いきり大きな画面で伝えてくれるので、これから非常に仕事がやりやすくなるかなぁと思っています(笑)」 ●この映画が上映開始してすぐに夏休みに突入するので、市原ぞうの国は大変なことにってしまいそうですね。 「その大変になることに加えて、なおかつ大変なイベントがあるんですよ。『ぼくもわたしもぞう使い』という一泊宿泊型体験動物園イベントなんです」 ●ホームページに載っていました! 「これは小学校高学年を対象にして、夜はぞうの餌やりをしたりとか、朝は糞にまみれて掃除をして、動物園の入り口でチケットをもいだりとか、その次の日のぞうさんショーにはぞう使いとして出演するという、一生の思い出に残るようなイベントにしたいと思っています」 ●子供達にとってはいいでしょうけど、ぞうさんたちにとってはちょっと迷惑かもしれませんね(笑)。 「(笑)。でも、映画を見た子供達がきっと喜んで参加するだろうなと思います。火、水、木曜日と週の真ん中だけなんですけど、1泊2日で動物園に泊まって、それもラクダの上に寝られるように今作っていて、ほぼ出来ています。ハンモックにしようとも思ったんですけど、今の子は20~30センチ上から落っこちたって骨折するかもしれないとか脅されて(笑)、しょうがないからベッドを置きます(笑)」 ●(笑)。これって、子供だけが対象なんですよねぇ?(笑) 「あなたもそう聞きたいでしょう?(笑) どんな取材の方でもみんな言うんですよ。私の友達もそうなんですけど、『なんで大人でやらないの!?』って言うから、『大人は勝浦でやらない? キャンプでもなんでも出来るから』って答えるんですよ」 ●あ、そうですね! こちらの勝浦ぞうの楽園はまだ一般公開はしていないんですか? 「もうちょっと先ですね。9月の末くらいから週末だけ、土、日、月に公開することになりそうかなという感じです」 ●もうすぐ、本当のサファリ体験が出来るんですね。 「そうですね。そのうち、山の上をぞうが歩いて散歩コースのようにできると思いますし、少しずつやっていこうと思います。一気にやったら、自然が一気に壊れちゃいますからね。少しづつ参加型で、アキコの糞でニンジン作りましょうとか、キャベツ作りましょうとか、サトウキビを作りましょうとか、ぞうさんの餌をみんなで作ってあげるみたいな。本当にぞうのことを考えている人達が自然に集まってくると思いますね」 老“ぞう”ホーム!?●小百合さんのこの先の目標、夢などを教えていただけますか? 「常に夢を追いかけているみたいによく言われますけど、夢じゃなくてひとつひとつ確実に自分のものにしていっていますね。日本中のぞうさんたちがリタイアしたらここで暮らせるような施設をもっと充実させていくことがこれから先の夢であり、仕事であり、達成していくべきことだと思いますね。引き取りたいぞうさんが今、日本に何頭かいるんですね。『早く電話してこないかなぁー』って持っていますから(笑)。年取ったぞうさんを抱えている方は早く私に電話してきて下さい(笑)」 ●(笑)。勝浦ぞうの楽園はぞうさんはもちろんのこと、飼育担当の方にとっても楽園ですから、ご一緒にこちらで老後を過ごしていただいて、共に過ごされるといいと思います。 「全然ОK! カップリングでОK(笑)」 ●(笑)。そうして楽園がどんどん広がって・・・。 「そのうちアパートでも建ててね(笑)」 ●(笑)。でもメインはぞうさんたちですから、ぞう好きの方が集まるといいですね。 「ぞうを好きな人ってすごく深いですよね。この動物園を始めて、特に楽園の構想、アキコの引っ越し、報道によって『こんなにぞうのことを考えている人がいっぱいいるんだ』って、ぞう友達がたくさん増えました」 ●小百合さん、そんなぞう達にいつも囲まれていいですね。 「(笑)。確かにぞうに癒されてます」 ●今はサンディちゃんとアキコちゃんだけの楽園に、年老いたぞうさんたちが集まるといいですね。 「1匹で長いこと暮らしているぞうは、是非最後の1年でも2年でも10年でも20年でもいいですよ。食べ物はたくさんありますから、ご遠慮なくどうぞ(笑)」 ●拍手で送られるような最後を迎えさせられるといいですね。今度は晴れた日に来たいと思います。今日はどうもありがとうございました。 ■このほかの坂本小百合さんのインタビューもご覧ください。
|
■「市原ぞうの国」園長「坂本小百合」さん情報
映画『星になった少年』の原作『ちび象ランディと星になった少年』
映画『星になった少年』
市原ぞうの国 夏休み特別イベント『ぼくもわたしもぞう使い』
※「哲夢」さんがこよなく愛した「ランディ」を始めとするぞうさんたちや他の動物たちに会いにぜひ「市原ぞうの国」へお出かけ下さい。また「勝浦ぞうの楽園」はこの秋には一般公開する予定。詳細が決まり次第お知らせします。
|
オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」
M1. MOTHER & CHILD REUNION / PAUL SIMON
M2. AS TIME GOES BY / ROD STEWART duet with QUEEN LATIFAH
M3. SHINING STAR / MANHATTANS
ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」
油井昌由樹アウトドアライフ・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」
M4. KEEP AN EYE ON SUMMER / THE BEACH BOYS
M5. 楽園~マカル・サリ~ / 夏川りみ
M6. shining boy & little randy~星になった少年~ / 坂本龍一
エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
|