2007年12月9日
アル・ゴアさんのノーベル平和賞・受賞記念スペシャル
今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンはアル・ゴアさんのノーベル平和賞・受賞記念スペシャルです。 |
今年1月、この番組で、アメリカ前副大統領「アル・ゴア」さんの映画「不都合な真実」を取り上げてご紹介したのを覚えていらっしゃいますか?(2007年1月21日放送の「WWFジャパン・小西雅子さんを迎え 映画『不都合な真実』を考える」参照)
この映画はご存知のように、地球温暖化の危機を訴える「アル・ゴア」さんのスライド講演の模様を、彼自身のコメントを交えながら構成したノンフィクションで、次々に明らかにされる温暖化のデータや「アル・ゴア」さんの口ぶりから、その深刻さがひしひしと伝わる優れたドキュメンタリー映画と評されました。
そんな「アル・ゴア」さんは大統領候補から“地球環境の伝道師”に転身したように受け取られがちですが、実はハーバード大学在学中の1968年に、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を世界に警告した授業を受けたのが転機となり、下院議員時代もクリントン政権の副大統領時代も、“環境”に関する仕事をしており、すでに“環境”は40年にも及ぶライフ・ワークとなっているんです。
そして今年10月、そんな長年にわたる環境への取り組みが認められ、“温暖化対策への理解を深めるために、最大の貢献をした個人”として、科学者の集団である国連の「気候変動に関する政府間パネルIPCC」と共同で「ノーベル平和賞」の受賞が決まりました。ちなみに、環境関連の活動家が「平和賞」を受賞するのは、2004年のケニアの環境運動家「ワンガリ・マータイ」さんに続いて二人目。
そんな「ノーベル平和賞」の授賞式が、12月10日にノルウェーの首都オスロで開かれます。そこで、今週の「ザ・フリントストーン」は「アル・ゴア」さんのノーベル平和賞・受賞記念スペシャルとして、「アル・ゴア」さん他、若き環境活動家「セヴァン・スズキ」さんや環境意識の高い海外のミュージシャンからのメッセージなどご紹介します。
「アル・ゴア」さんの地球温暖化を訴えるスライド講演は、世界各国で行なわれているもので、その講演回数はすでに1,000回以上、30年以上にも及ぶ活動となっています。そういうことも評価されての今回の「ノーベル平和賞」受賞だったと思うんですが、2006年にアメリカで公開された映画「不都合な真実」は、当初、わずか77館での上映でしたが、その後、600館に拡大。全米ドキュメンタリー映画史上に残る記録的な大ヒットとなりました。
今年発表された「第79回アカデミー賞」では「最優秀長編ドキュメンタリー賞」と「最優秀オリジナル歌曲賞」を受賞したのをはじめ、世界の主要な29の映画賞を軒並み受賞しています。
そんな映画「不都合な真実」は、今年の夏にはDVD作品として発売され、さらに世界中に環境意識を広める役に立っていますが、温暖化の方は映画制作の後もどんどん進行しています。ここでDVD作品発売に際して寄せられた「アル・ゴア」さんからの特別メッセージ、聴いていただきましょう。
ゴアさん「新たな科学的証拠は毎週挙がっています。それらの中にはCO2の排出量が、世界中の海の酸性度を変化させてしまうほどの影響があることを示しています。これは驚くべき結果です。我々は毎日7000万トンのCO2を大気中に排出しており、その内の2500万トンが日々海に吸収されています。それが海を酸性化させ、結果として“生命の綱”を脅かしているのです。この状態を改善せずに続けていけば、極めて危険だと言わざるを得ないでしょう。
この研究によって海洋生物の命を脅かしているのは、映画の中で詳細に語られている地球温暖化だけではなく、海の酸性化にも原因があることがわかったのです。
ほかにも、状況が切迫していることを示す新たな研究結果が出ていますが、見通しは明るいという見解もあります。財界の首脳や政治家、あるいは宗教指導者などが、この拡大しつつあるムーヴメントに加わり、この危機を脱するための意義のある解決策を見出そうと動き出しているからです。
映画の完成後、数ヶ月のうちに、アメリカ合衆国最大の州であるカリフォルニア州が、温室効果ガスの排出削減を義務づける法案を可決しました。そして今では330を数える都市が京都議定書に沿うよう声を上げています。ちなみに、映画制作時にはその半分ほどしかいなかったのです。つまり政治家たちの中にもいい変化が起きているのです。また、合衆国で影響力を持つ宗教指導者の多くがCO2削減に繋がる変化を呼びかけ始め、その動きも加速しています。もちろんまだ十分とはいえませんが、以前よりは私も楽観的になっています。
道のりはまだ長い。しかしこの一歩が更なる変化をもたらすのです。そして多くの人々がこのことを知り、それぞれの生活スタイルを変えれば、必ずこの危機を解決できると私は信じています。この『不都合な真実』のDVDを他の人たちと一緒に観て、地球環境を守るための新政策に支持して下さることを願っています。また、皆さんがそれぞれの生活スタイルを見直し、環境への負荷が少ない製品を買うよう心がけ、家族や友人、隣人にも同じことを勧めて下さることを願っています。この動きに大勢が加われば、政策も変わります。そして国が政策を変えれば、危機を脱し、解決へと向かえるのです」
皆さんは、1992年にリオで行なわれた「地球サミット」で、ある少女が世界中から注目されるスピーチを行なったことを覚えていらっしゃいますか? その少女とはカナダ生まれの日系4世、世界を代表する若き環境活動家「セヴァン・スズキ」さんです。
「セヴァン」さんは9歳のときに「子供環境NGO」を立ち上げ、地元の環境活動に取り組み、12歳のときに仲間とともにブラジルのリオデジャネイロで開催された「地球サミット」に自費で参加。最終日の本会議で各国のリーダーに向けて、環境保護に取り組んで欲しいという6分間のスピーチを行ないました。そしてこれがのちに“伝説のスピーチ”として世界中に紹介され、一躍有名になりました。
そんな「セヴァン・スズキ」さんが、以前この番組にも出演してくださった明治学院大学教授の「辻信一」さんが世話人を務める環境・文化NPO「ナマケモノ倶楽部」の招きで先ごろ来日し、各地で講演会を行ないました。そこで「セヴァン」さんが「明治学院大学」で行なった講演から一部、ご紹介しましょう。
セヴァンさん「2007年。あのリオの『地球サミット』から15年経ちました。『地球サミット』は環境や開発における重要な問題について協議するために、世界中から首脳たちが集まる最大の場として開催されました。このサミットは人類や環境の問題をどう解決するかという、その後の道筋をつける場だったのです。しかし、それから何が起きたのか・・・。この15年の間、我々の政府は環境問題に関する政策を全く無くしてしまったかのように進んできました。それはまるで、地球サミットを開催したことで問題が解決したかのような態度だったのです。しかし、反対に全ての環境問題はどんどん巨大化していき、我々は無視できないほど大きな問題、気候変動に直面したのです。ちなみに、この会場で気候変動について聞いたことがある方は、どれくらいいますか?・・・ほぼ全員ね。でもこれが4年前ならこれほど多くはなかったんじゃないかしら。
気候変動については、70年代から認識があったのです。当然『地球サミット』でもわかっていましたし、1997年にはあなた方の国が京都で気候変動に関する会議を開催しました。しかしこの間、私の国であるカナダは、京都議定書に正式に同意しながらもそれを全く無視し、その結果、京都議定書で約束したことを実現するためには、更に困難な状況に自らを追い込んでしまったのです。我々の政府はリーダーとして失格でした。
ちょうど私が日本に向けて出発するころ、北米ではカリフォルニアの山火事がニュースを独占していました。そして日本へ来て、久しぶりに新聞に目を通していたら、ジャパン・タイムスでは1ページを割いて世界中の気候に関する出来事を取り上げていました。干ばつやハリケーン、そしてこれらの異常気象による経済的な打撃について語られていたのです。この話をしたのは、これがまさに21世紀の現実だからです。気候変動は全生命に影響を及ぼします。中には他より多くの影響を被るものもいます。
でも、いいニュースは、世界中がこの問題を認識したことです。70年代に初めて気候変動について指摘されてから、今ようやく、何とかしなければならないという点で世界が合意したようです。この1年くらいの間に、気候変動の問題意識は一般にも広がりました。これは非常に重要なことです。なぜならこの新しい認識が我々を次の段階に進めてくれるからなのです。問題を知った今、何をするべきか・・・。我々はこの気候変動問題に、正しい策が講じられることを見極めなければなりません。もうその場しのぎの解決策や、間違った判断を下している余裕はないのです。ただ、誤解しないでいただきたいのは、気候変動はそれ自体が問題なのではなく、我々が自然界との根本的な繋がりを絶ってしまった結果だということ。自然界と分離してしまった我々の社会における様々な事柄が積み重なって、気候変動という地球規模の問題を引き起こしてしまったのです」
温暖化の原因はひとえに我々人類の営みにあるわけですが、私たちが繁栄や文明を謳歌しながら、温暖化を引き起こさずに生きるためにはどうしても考えなくてはならない、一つの概念があるように思います。それは「豊かさとは一体何なのか?」ということ。その問いに対して「セヴァン」さんはこんな風に答えていました。
セヴァンさん「一般的に使われている『豊かさ』という言葉を考えたとき、『進歩』という言葉も思い浮かびます。21世紀に入り我々は進歩を遂げ、その先端にいると考えています。確かにテクノロジーを用いてある程度、自然界をコントロールできるまでに進歩しました。しかし、もし我々が幸せでなければ、何のための進歩なのでしょうか。もしかしたら、ここまで進歩を遂げたからこそ、そういった疑問を抱くことができるようになったのかもしれません。
このステージに上がる前、裏のセミナールームで待機する予定だったのですが、蛍光灯があまりにもまぶしくて、たまらず部屋の外で待つことにしました。そのときスタッフから聞いた話では、彼女たちの親の世代にとって、明るさとは豊かさの象徴。暗い部屋は貧しさや遅れているということを連想させるのだそうです。確かに我々の親の世代は、生産的で強い経済社会を築くために必死に働いてきました。同じように、貧しさの中で育った人は極端に豊かさを求めがちです。これらはすべて現状に対するリアクション、すなわち、反応しているだけなのです。そう考えると、明るさが豊かさの象徴だと教えられて、明るさを求めて突っ走ってきた人たちは、果たしてその道を進むことを選んだのでしょうか・・・。自分たちの生き方を選択できたのでしょうか・・・。
我々の親の世代は、暗闇で生活しなければならないという抑圧から子供たちを解放し、より自由に生きられるようにと必死で働いてきたのです。
我々の世代はある程度、経済的な安定と繁栄、そして何よりも平和な時代に育ちました。そんな我々世代は抑圧から解放され、豊かさの意味を問うまでに進歩を遂げたといえるのかもしれません。ある意味、我々はとてもユニークな位置に立っているのではないかと思います。本当に欲しいものは何かを問わなければならないのです。ですから『豊かさ』とか『進歩』、『自由』といった言葉を聞く度に、その意味を再定義しなければならないと感じるのです」
映画「不都合な真実」が世界的に大ヒットし、地球温暖化防止の気運が高まる中、「アル・ゴア」さんの提唱により、今年7月7日に、世界8ヶ国・9都市で史上最大規模のコンサート「ライヴ・アース」が同時開催。日本では、幕張と京都で開催されました。
地球温暖化の危機とその解決を訴える目的で行なわれたこのコンサートには、世界のそうそうたるミュージシャンが100組以上も出演し、そのライヴの模様は各国のテレビやラジオ、インターネットで、24時間に渡って放送され、地球上でおよそ20億人の人たちが、歴史的コンサートの目撃者となりました。
ここで、ザ・フリントストーンに寄せられた海外アーティストからのメッセージ、ご紹介しましょう。まずは日本でも2006年に大ブレイクしたロック・グループ「マルーン5」です。
ミッキー(ベーシスト)「環境問題はみんなの問題だよ。ただオレたちの場合は、大勢の人にメッセージを伝える機会に恵まれているんだよね。環境問題が一人ひとりの問題だっていうこと、そして問題を解決するために、誰もが直接的に行動できるということをみんなに伝えられる立場にあるんだ。だからオレたちもできるだけそういうことを訴えていくつもりだよ」
アダム(ヴォーカリスト)「この問題に対して一致団結するのは大事なことなんだ。オレにとっては失恋について曲を書くのと、自分たちの行動がどう環境に影響を及ぼすかを考えることとは同じくらいパーソナルなことなんだ」
ミッキー「環境問題は、長年、政治問題として捉えられてきたけど、ようやく全人類の問題だって、みんな気づき始めたんじゃないかな」
続いては、「ライヴ・アース」のベルリンのステージにも参加した、女性シンガー・ソングライター「ケイティ・メルア」さんです。
ケイティ「やれることはやるようにしているわ。庭には雨水を貯める水桶を置いて、貯めた水は植物の水まきに使っているの。それからタクシーに乗るときは、ロンドンにあるハイブリッド車専用のタクシー会社を利用するようにしているのよ。あと、できるだけリサイクルしたり、省エネで寿命の長い電球を使うようにしているの。そういったちょっとしたことでも役に立つんじゃないかしら」
持続可能なライフスタイルをリードするのは若い世代
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セヴァンさん「現在、世の中では驚くべきムーヴメントが起きています。人間として生きる、最高にエキサイティングな時期だと私は思っています。一方では、かなり怖い地球規模の問題を抱えているのも事実です。世界の人口が65億人以上という問題など、対処しなければならない大きな課題はたくさんあります。でも、我々には素晴らしいツールもあるのです。その一つがインターネットです。その素晴らしさは語りきれないほどです。我々の世代はインターネットがあって当たり前のように感じていますが、インターネットを通して得られる情報は、まさに莫大なのです。我々は知りたいと思うほとんどのことを、インターネットを通じて知ることができます。そしてコミュニケーションという意味では、世界中のコミュニティーと情報交換できる。それって驚くべきことです。現在、我々は数えきれないほど多くの人の知恵や技術、そして情熱に触れることができるのです。インターネットは現在起きているムーヴメントには欠かせないツールなのです。
豊かさの意味を再定義したり、なぜ人間は地球のみならず、人間同士で破壊行為を続けるのか・・・。それらを問うムーヴメントはどんどん強まっています。これらの理由から、特に若者として今を生きることは、とてもエキサイティングだと感じるのです。我々の世代は持続可能な社会という概念の中に育ち、そのことを踏まえた上で、仕事に就いたり、家庭を築いたりと、“21世紀の生き方”を送れるからなのです。我々は変化を選択する生き方ができるのです。
今とは違う現実や価値観の中で生きてきた我々の親の世代にとって変化するのは難しいと思います。ですから持続可能なライフスタイルという、ある意味、常識的な生き方をリードするのは、我々若い世代だと思っています。でも、我々は大人たちからのサポートが必要なのです。励まし、支えてくれる人・・・、そしてなによりお手本となってくれる人が必要なのです。我々の親の世代はいわゆるヒッピー・ジェネレーションで、自分たちが信じることのために抗議運動をしていた世代なのです。そういったアイデンティティーを取り戻してもらいたい。そして我々の年齢に抱いていたヴィジョンを思い出して欲しいのです」
AMY'S MONOLOGUE~エイミーのひと言~
私たち人間は金銭的な豊かさや快適さを必死に追求してきた結果、危機的な状況に自らを追い込んでしまいました。セヴァンさんがおっしゃるように、人間はようやく「これでいいのか?」という疑問を持てるだけ「進歩」したのですから、過去の出来事や行動を責めたり、甘んじて何もせずにいるのではなく、過去から学び、必要なところは訂正して前に進む、行動することが何よりも大切なんですよね。そしてそのための誰にでもできる第一歩は、快適さや楽なことをちょっぴり不便にするだけなのではないかと思います。お料理と同じで、みんなが一手間かけるだけで違いは出るはずです。 |
■関連作品紹介
DVD『不都合な真実~スペシャル・コレクターズ・エディション』
2枚組DVD+CD『ライヴ・アース』12月26日発売!
・気候保護同盟(ALLIANCE FOR CLIMATE PROTECTION)のHP(英語):http://www.climateprotect.org/
ロック・バンド「マルーン5」
女性シンガー・ソングライター「ケイティ・メルア」
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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」
M1. WAITING ON THE WORLD TO CHANGE / JOHN MAYER
M2. I NEED TO WAKE UP / MELISSA ETHERIDGE
M3. EARTH ANTHEM / DAN FOGELBERG
ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」
油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」
M4. HEY YOU / MADONNA
M5. WHEN YOU TAUGHT ME HOW TO DANCE / KATIE MELUA
M6. EARTH IS MY HOME(ふるさと) / SUSAN OSBORN
エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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