今回も前回に引き続き、スペシャル・エディション「ベスト・オブ・ザ・フリントストーン2014」をお送りします。前回は今年1月から6月までの上半期に出演していただいたゲストの中から5名のかたをセレクトし、記憶に残るメッセージをご紹介しましたが、今回は、7月から12月までの下半期からセレクトした4名の方にご登場いただきます。
※まずご登場いただくのは、11月にご出演いただいた沖縄の版画家・名嘉睦稔さんです。
睦稔さんは沖縄・伊是名島出身の、大自然に育まれた特別な感性を持つアーティストで、ダイナミックかつ繊細な作品で多くの方を魅了しています。そんな睦稔さんを、木版画展が開催されていた京橋の画廊「Island Gallery」に訪ねて、お話をうかがいました。
そのとき、こんな興味深い話をしてくださいました。睦稔さんはときどき、あえて森の中に自分の身を長く置くことがあるとおっしゃっていたんですが、夜になると、森の変化を感じるそうです。
睦稔さん「僕の経験からすると、森は、夜10時ぐらいになると変化するんですよ。5分間隔で森が変わっていきます。木の葉っぱが揺れているわけではないんですが、木が動き出すような感覚があったりするので、森がものすごく騒がしくなるんです。それが夜中3時ぐらいまでですね。もちろん波がありますが、いつもその辺りから始まるので、何かあるんじゃないかと思います。ただ、昼もその時間になると似たような状態になるので、ある一定のバイオリズムがあるんじゃないかと思いますね。しかも、それは1本の木だけじゃなくて、全体がそういう状態なんですよ。
例えば、人間は昼に活動する生き物なので、朝、鳥が鳴き出したころから、車のエンジンがかかる音や遠くにある高速道路の音がどんどん大きくなってくるじゃないですか。そういう“人が動き出す”感じが、森でもその時間になると感じるんですよ。もしかすると、植物は夜に活動しているんじゃないですかね。
そういう風に石になっている自分が想像をめぐらせていると、近くにフクロウが来て鳴き出したり、クサムシが遠くで動き出したら、それが連動してすぐ近くまで来たりするんですよね。そんな中にいると、木たちがもしかしたら走り回っているんじゃないかと思ったりするんですよ。そういうときって、自分は暗い闇の中にいるので、自分が闇の中に消えていくような感じがするんですね。そんな感じで、昼に活動する人間にとって、闇の中に取り込まれると恐怖を感じるんですね。恐怖感が少しでも出てくると、想像が連鎖していって、逃げ出したくなるぐらい怖くなるんですよ。でも、それをこらえると、恐怖心がなくなって、木が変化していくのを感じることができるんですよ。そのときは、周りと親密な関係になっているんだと思いますね。もちろん、私の錯覚かもしれないですよ」
※続いては、国際水ジャーナリストの吉村和就さんです。
吉村さんは“グローバルウォータ・ジャパン”の代表、そして“国連テクニカル・アドバイザー”として国際的に活躍されていて、日本を代表する水環境問題の専門家でいらっしゃいます。そんな吉村さんは、私たちの生活に欠かせない“水”に関するお話を分かりやすく解説してくださいました。その中から、実際には目には見えていない水“仮想水”について、こんな指摘をされました。
吉村さん「“水問題”というと、皆さんは水道やペットボトルなどの“自分に見える水”のことを考えると思いますが、この“仮想水(ヴァーチャルウォーター)”というのは、日本は食料の約60パーセントを海外から輸入していますけど、その食料を海外で育てるときにかなりの量の水を使っているんですね。それを国内で育てることになったときに必要な水のことをいいます。そして、それを計算すると、大変なことになるんです。日本では今、1年間で約580億トンの水を使っているんですが、食料と一緒に入ってくる水の量が約640億トンなんです。なので、国内で食料を育てることになると、単純計算で今の倍の量が必要になるんですね」
●日本って、水が豊かなイメージがありますが、それでも足りないんですか?
吉村さん「そうですね。皆さん携帯電話を持っていますよね? その携帯電話を1台作るためには912リットルの水が必要なんです」
●携帯電話には水の要素はないですよね?
吉村さん「全くありませんよね。でも、部品を作ったりするために使ったりするので、全部合わせると、それだけの水が使われているんですね」
●よく工場のラインで水を勢いよくかけてる映像を見たりしますが、ああやって水を使っているから、合わせるとそれだけの量が使われているんですね。
吉村さん「1つ1つの部品を作るときに、全て水が使われています。そういう風に見ると、地球環境問題が違った面からでもよく分かってくるんですよね」
※また、吉村さんはこんな話もしてくださいました。
吉村さん「実は、私たちが学生時代に水のことを学んだのって、小学4年の社会科しかないんですよ。このときには浄水場を見に行ったり、社会科見学して終わりだったんです。だから、今家庭で蛇口をひねって水が出てきますが、その水がどこの川から来ていて、使った後にどこの下水処理場で処理されているのか、そして、最終的にどこに行くのかが誰も分からないんですよね」
●恥ずかしながら、私も分からないです。
吉村さん「なので、まずは“自分が使う水がどこから来て、どこに流れていくのか”を知っていただき、そして全てを水換算で見ていただくと、水のありがたみがよく分かると思います。“日本は水に恵まれている”と思われていますけど、実は危ない橋を渡っている状態だったりするんですね。なので是非、水に関わることを色々と勉強していただいて、みんなで話してもらえればと思います」
※続いては、元パリコレモデルで現在は芸農タレントとして活躍されている林マヤさんです。
マヤさんはご主人と一緒に、茨城で野菜づくりや米づくりに取り組んでいらっしゃいます。そんなマヤさんに、田舎に暮らして、ライフスタイルにどんな変化があったのかうかがったら、こんな答えが返ってきました。
マヤさん「都会にいたときと比べてですか? 夜、呑みに行かなくなったことですね(笑)。だってお店がないですからね(笑)。夜、バスに乗って帰ってくると、カエルがうるさい(笑)」
●ということは、夜は早く寝ちゃおうっていうことですね(笑)。
マヤさん「そうですね。田んぼも畑もやっていると、昼は暑くて仕事ができないので、朝が早いんですよ。だから、早起きするためには、夜早く寝ないといけないですね。そうやって外に呑みに行かなくなった分、家で呑むことが多くなったので、ラブラブ度が上がりました(笑)」
●あら?(笑) ごちそうさまです(笑)。
マヤさん「ダーリンが聞いてたら恥ずかしい(笑)。そうやって、家で今日あったことを話したり、畑のことなど、夫婦間で話すことが増えました。都会にいたときは情報がありすぎて、その情報に追い掛け回されている感じで、自分を見失っていたところがたくさんあったんですが、都会から離れて自然の中で生活すると、自分のことを考えるようになったり、自分を探すようになったかもしれないですね。新しい発見と驚きがいっぱいです」
●四季の変化に対してはどうですか?
マヤさん「これが、すごく感じます! 特に野菜づくりをしていると、四季が分かるようになりますね。野菜って旬な時期に合わせて種を撒いて、その時期に合ったように育ててあげると、虫もあまりつかなくて、ちゃんと育つんですね。でも、スーパーに行くと、色々な野菜が1年中売ってるじゃないですか。子供たちに『ニンジンっていつできるか知ってる?』って聞いても『ニンジンって1年中あるじゃん!』って思うかもしれないですが、ニンジンって今なんですよ。そうやって、四季が分かるようになりましたね。
ニンジンの芽が出てきて、葉っぱが15センチぐらいまで伸びてくると、アゲハチョウがたくさん集まってきて、そこに卵を産むんです。そして、ニンジンの葉っぱが20センチぐらいになってくると、卵から幼虫が還って、緑と茶色の縞模様になって、葉っぱを食べて大きくなっていくんですよ。その幼虫を捕まえると、オレンジ色のツノが出るんです。そのツノからすごく臭い匂いを出すんですね。その匂いで他の虫が寄ってこないようにしてるんですよね。そうやって、それぞれの生物が自分を守るために色々なことをしていて、その姿も愛おしかったりしますね。色々な虫や植物、人などが助け合って生きているんだということを感じますね」
※最後にご登場いただくのは、動物ものまね芸でおなじみの四代目・江戸家猫八さんです。
“猫の鳥談義”という本を出されたときに、この番組に来ていただきました。猫八さんは野鳥観察のために、国内外のフィールドに出かけ、野鳥の生態のみならず、彼らが生きる環境にもしっかり目を向けてらっしゃいます。そこからこんなことを学んだとおっしゃっていました。
猫八さん「一見すると木がたくさんあって青々とした山なんですが、鳥たちにとってエサになる木の実がなるような木がないとか、鳥の観察をすると共に感じてくるようになるんですね。それを鳥から学んでます。鳥の気持ちになってみると、たくさんの種類の木があるのか、水をたくさん含んでくれるいい土なのか、湧き水として清らかな水が流れてくるのか、そういったところまで感じるようになるんですね。
これは一番重要なんですが、“鳥や動物たち、自然たちは昔と同じ生き方をしている”んですよ。環境が変化したというのは、人間が環境をいじっているからであって、彼らは我々みたいに急な環境変化についてこれないんですよ。そういう意味では、動物たちは不器用なんですね。
それを考えると、確かに今は色々と考えながら人間の開発をしてくれていますが、まだ足らないところがあると思います。例えば、開発をすることでミゾゴイという鳥の棲むところがなくなってしまうということがあるんですよ。そういうときに考えないといけないのは、彼らは僕たちと同じように地球で過ごしているんだけど、生息エリアは人間よりも狭くて不器用なんですよ。それを人間が『ここを開発するから、他に移ってくれないか?』と言っても、彼らはそれほど器用じゃないし、別のところもないんですよね。ミゾゴイは地味で存在すら知らなかった方が多いと思いますが、彼らは日本だけで繁殖している鳥なので、生息できる場所が減っていくと、もう生きていけないんですよ。
少なくとも太陽系の中で、“水の星”と言われているぐらいに水と緑がたくさんあって、太陽からの位置もちょうどよくて、ちょうどいいぐらいのこの星が回ってくれてこの環境を作ってくれてるんですよ。こんなにも生き物が生きやすい星はないじゃないですか。一番大事なものってなんなのか、そういったことが分かるだけでも分かるじゃないですか。いくら素晴らしいものを作って開発しても、僕たちにとって一番大事なこの地球という星がダメになってしまったら意味がないじゃないですか。そういった考え方を優先しないといけないようなときがもう来ていると思います。それは色々な場所に行って、鳥が減っていたり、鳥のさえずりが聴こえなくなったりすると感じるんですよね。もう、鳥のさえずりとかが聴こえなくなってくる“沈黙の春”がもうすぐそこまで来ているんですよ。だから、人間も考えないといけないです。私はそれを鳥から聞いてきました。鳥は『私が棲むことができるこの環境を、もうそろそろいじらないでよ!』とさえずっています」
2回にわたって“ベスト・オブ・ザ・フリントストーン2014”をお送りしました。改めて振り返ってみると、2014年も本当に多彩なゲストの方々に番組にご出演いただきました。最大の共通項は“みなさん自然が大好き”ということ。どなたも自然のお話をされている時は素敵な笑顔で、キラキラとした目が忘れられません。そして、もう一つ思ったことは、“みなさん自然に対してとても謙虚だ”ということ。“自然と共に”“自然に生かされている”そんな言葉が多く聞かれたように思います。来年も素晴らしいゲストの方々にお話をうかがいながら、みなさんと一緒に自然や環境のことを考えていければと思いますので、2015年もどうぞよろしくお願いします!!
名嘉睦稔さんの作品展は、今後も京橋の画廊「Island Gallery」で定期的に開催されます。詳しくはアイランド・ギャラリーのオフィシャル・サイトをご覧ください。
吉村和就さんは、2015年2月28日(土)に、千葉工業大学津田沼キャンパスで開催される習志野市国際交流協会主催の文化講演会で司会進行を担当されます。2部構成となっており、第1部は千葉工業大学惑星探査研究センター上席研究員の荒井朋子さんが、第2部はサントリー株式会社名誉チーフブレンダーの輿水清一さんが講演を行ないます。参加費は無料。詳しくはグローバルウォータ・ジャパンのオフィシャル・サイトをご覧ください。
◎日時:2015年2月28日(土)午後1時~4時
◎場所:千葉工業大学 津田沼キャンパス 2号館3階大教室
◎入場:無料
◎詳しい情報:グローバルウォータ・ジャパン
林マヤさんの野菜づくりや近況については、マヤさんのオフィシャル・サイトをご覧ください。
四代目・江戸家猫八さんは息子さんの小猫さんと共に新春寄席に出演されます。
2015年1月1日(木・祝)から10日(土)まで、浅草演芸ホールと上野鈴本演芸場。
1月11日(日)から20日(火)まで、池袋演芸場と新宿末広亭に出演! 是非お出かけください。詳しくは、各会場のホームページをご覧ください。
文一総合出版/本体価格1,600円
猫八さんの新刊となるこの本には、野鳥観察のために出かけた国内外の旅のエピソードが満載。表紙のイラストを描いたのは息子さんの江戸家小猫さんです。
ユニバーサル・ミュージック/税込3,240円
今回、森山直太朗さんが11月にリリースしたニュー・アルバム『黄金の心』から「こんなにも何かを伝えたいのに」をオンエアいたしました。このアルバムにはヒット・シングル「若者たち」など、森山さんらしい素晴らしい楽曲が満載、全10曲収録。森山さんの近況やツアー情報、アルバム情報はオフィシャル・サイトをご覧ください。