2009年6月28日
島系環境ライター・有川美紀子さん
|
●有川さーん!
「はーい。有川でーす。」
●お久しぶりです。小笠原の母島に引越しをされて約1ヵ月が経つわけですが、いかがですか?
「やっとこのところ天気が安定して、毎日晴れているので日焼けで真っ黒になってしまいました(笑)」
●もうそんな感じなんですね!(笑) 島の暮らしってどうですか?
「ここは飛行機がなくて、カレンダーよりも、船の入出港がスケジュール代わりになりますので、そのリズムにまだ慣れきっていません(笑)」
●(笑)。船が入ってくる1週間ごとにサイクルが変わっていくっていう感じなんですね。
「そうなんです。うっかりそれを忘れて買い物に行くと、スーパーに何も品物がなかったりしています(笑)」
●早く慣れないと大変そうですね(笑)。ちなみに小笠原は1972年に国立公園に指定されているんですが、最近、国立公園区域の見直しがあったそうですね。
「そうなんです。今回の改正は小笠原が今、目指している世界遺産の登録とも関係しているんですけど、国内の色々な自然に関する法の整備をしていこうということで、国立公園自然公園法だけではなくて、鳥獣保護法なども含めて、あとは森林生態系保護地域の指定とか、種の保存法とか、そういう国内法を一気に見直すっていう動きの一環として、国立公園の地域の変更と公園計画の変更がありまして、正式には8月には発表されると思いますが、もう目前という感じですね。」
●兄島が特別保護地域に格上げされたというふうにうかがったんですが・・・。
「そうなんです。兄島は1989年ごろに空港の計画が持ち上がっていまして、でも、空港を造ろうとしていたところが実は一番重要な生態系を持っているということで、結局、1997年に環境省が『ここの生態系は守るべき』ということで、その計画が廃案になったんですけど、計画が持ち上がった理由が『国立公園の普通地域だったから』っていうことだったんですね。そこが今回、特別保護地域に格上げされたので、これでようやく兄島も安心かなという感じです。」
●そんな兄島っていうのは誰でも入れるんですか?
「基本的には一般の方っていうのは入れないんですね。で、学術研究のための上陸っていうことだけが特別に許可されているんですが、7月6日に特別なイベントがこちらであります。」
●じゃあ、そのときは入れるんですね?
「ええ。それが、ここ一時期、野ヤギがたくさんいて、固有の植物を食い荒らしていたんですけど、その野ヤギの排除に成功したということで、住民を対象にしたヤギのいなくなった島を見に行こうという観察会が開かれるんですよ。父島から1キロも離れていないんですけど、住民の方もなかなか行く機会がないので、価値を再認識しようっていうための、特別な1日ということですね。」
●小笠原といっても色々な島がありますけど、特に人が住んでいるのは父島と母島だけということで、小笠原に住んでいる人も、他の島の事を完全に把握しきれていないことっていうのも、たくさんあるでしょうからね。
「それはあるかもしれませんね。」
●逆にいうと、だからこそ生態系を守るには理想的な国立公園ともいえるのではないでしょうか。
「そうですね。分けてというよりは、一括に考えてやらなきゃいけないことでもあったりして、というのは、父島母島以外の島にしかいない生物っていうのもいるんですけど、父島母島でその生物が減っているのと同時に、外来種がいない属島でも減っているということがあって、それは父島母島から飛んでいったり、供給があったから成り立っていたんじゃないかとかいわれていたりもするので、やっぱり一括して小笠原全体で何かしていかなきゃいけないということで、属島にも外来種が入っていますので、理想的かどうかは今の取り組みでは何ともいえないかもしれませんね。」
●まだ島のサイクルに慣れていない有川さんですけど、これから徐々に慣れながら、今後もレポートをお願いしたいと思うんですけど、来月も是非、レポートをお願いしますね。その頃には慣れていてくださいね(笑)。
「はい。多分、大丈夫だと思います(笑)」
●どうもありがとうございました。
小笠原の母島に暮らす“島系環境ライター”有川美紀子さんでした。有川さんには来月も小笠原レポートをしていただく予定ですので、お楽しみに。
有川さんの著書『小笠原自然観察ガイド』
山と渓谷社/定価900円
小笠原の基礎知識から動植物の図鑑や観光案内など、とてもわかりやすく紹介。小笠原の行くときにはぜひ持っていきたい一冊。