2009年10月25日

島系環境ライター・有川美紀子さん
小笠原電話レポート第5弾・2009年10月編

有川美紀子さん

 THE FLINTSTONEでは小笠原で“島系環境ライター”として活動されている有川美紀子さんに小笠原特派員として、月に1回、電話でレポートを入れていただいているんですが、今月はどんなことをレポートしてくださるのでしょうか、さっそく呼んでみましょう。

●有川さーん!

「はーい。こんばんは。」

●1ヵ月ぶりのご無沙汰です。今回はどんなお話でしょうか?

「今回はノアの予言のお話をしたいと思います。」

●ノアの箱舟じゃなくて、ノアの予言なんですね?

「箱舟って思いますよね。ところが、ノアというのはもうひとつありまして、NOAA:アメリカ海洋大気圏局なんですね。で、そのNOAAから、あることが小笠原の現象として予報されてました。それは何かというと、10月22日にNOAAのサイトに、北マリアナ諸島と日本の間に海水温の上昇が起こると書かれていたんですね。それが何を示していたかというと、その1ヶ月後に小笠原でサンゴの大規模な発火現象起きてしまったんです。」

●えーっ!?

「要するに、みなさんご存知の通り、サンゴは褐虫藻(かっちゅうそう)と共生しているわけなんですけども、海水温が30度以上になると、その藻が『熱い』と言って抜け出て死んでしまうわけなんですね。そうするとサンゴも死んでしまう。で、今まで小笠原で広い範囲での発火現象というのは確認されていなくて、今年初めて聟島列島・父島列島・母島列島という非常に広い範囲で一斉に発火現象が起こってしまったんです。理由は分からないんですけども、暖水塊が西から小笠原の方にズンズンと押し寄せてきて、8月の中旬ぐらいには余りに高い水温で、海水面が20センチも膨張して盛り上がってしまうぐらい水温が上がってしまったんですよ。」

●そんなに盛り上がってたんですか!?

「盛り上がったんですよ。で、平均水温が大体27.1度ぐらいなんですが、9月までの間、非常に高い状態が継続されて、8月は過去最高を上回る月が何日もあったぐらいだったんです。そういう時に一斉に褐虫藻が抜け出てしまったサンゴが白化現象を起こして、あちこちで海面を透けて見えるぐらい白いサンゴが、死屍累々(ししるいるい)という感じで、海面下に居たんですね。で、小笠原の研究者の団体である、小笠原自然文化研究所の海温担当研究員・佐々木哲朗さんにお話を聞いたところ、日本列島ではあまり被害がなかった台風14号が、小笠原には結構被害をもたらしたんですね。で、その台風が過ぎた後は波が非常に立つので、海の中がかく乱されて水温が下がり始めて、最近では復活してきたサンゴも大分見受けられるというお話です。」

●あ、良かったー!

「ただ、今までに、この発火というのが小笠原で経験が無いものですから、今後どのように復活していくのか、もしかしたら1回死んでしまったところに新しい種類が来るのか、それとも前の種類が戻るのか、あるいは戻らないのか、それは小笠原自然文化研究所で今後も継続調査をしていくというお話です。」

●でも実際、なぜそんなに海水温が上がったのかという原因がはっきり分かってないということは、この先もまた何かがあった時に起き得るということですよね?

「そうですね。それが短絡的に『原因は○○だ』と今はまだ言えない状態だそうですが、1つ私達が何か出来るとしたら、小笠原に皆さんがいらっしゃった時に、もしダイバーの方で潜ったりした場合に、『あ、ここ発火している!』とか、何かを目撃したら、写真を撮っていただいたりするとデータの蓄積に繋がるということですね。その時に場所と水深が分かればなお良いということです。」

●じゃあ、これから小笠原に遊びに行かれる方も是非そういう形で協力をしていただきたいですね。でも、早く白いサンゴが普通に復活してくれると良いですね。

「そうですね。私たち住民も見守っていきたいですし、サンゴにも頑張ってもらうしかないんですが、豊かな海が戻ってくるといいなと思っています。」

●また変化があったら是非知らせてくださいね。

「はい。リアルタイムの情報は先ほど申し上げた小笠原自然文化研究所のホームページにトピックスとして載ってますので、検索してみてください。」

●有川さん、ありがとうございました。来月もよろしくお願いします。


*有川さんのお話にも出てきた、小笠原自然文化研究所のホームページ。サンゴの白化情報が写真つきで詳しくアップされているほか、小笠原の生息する鳥類のデータベースなども載っています。
・小笠原自然文化研究所のHP:http://www.ogasawara.or.jp/index.html

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